Wantedlyのプロフィールのフルリニューアルを記念して開催しているオンライントークイベントシリーズ 『ぼくらの転機〜ココロオドル仕事との出会い方』 。2021年1月12日(火)に行われた第2回では、MCにコラムニストの 島田彩さん 、ゲストには株式会社ウツワや株式会社ILLUMINATEの代表を務める ハヤカワ五味さん をお招きしました。
ハヤカワさんの活動がきっかけで自身の心身不調の仕組みを知り、生活が変わったというMCの島田さん。おふたりが語る「転機」とは? 急きょフルリモートで開催された対談風景の一部をお届けします。
新しくなったWantedlyのプロフィールで追う、ハヤカワさんの原点 島田:新しくなったWantedlyのプロフィールには一番最初に自分のキャッチコピーや座右の銘を入れられるんですよね。ハヤカワさんのプロフィールにある 「ILLUMINATE your choice.」 について教えてください。
ハヤカワ:私のモットーであり、会社名にもなっている言葉です。ILLUMINATE(イルミネイト)とは、「明るくする、光を当てる、照らす」などの意味があって、「ILLUMINATE your choice.」には、 人の選択を照らす という気持ちを込めています。また、「これが正解だ」ではなく、 あなたの選択を照らしていくよ 、という選択肢の幅を増やす意味も込めて、公私ともども使っている言葉ですね。
島田:私、 「illuminate」 ※をいつも使っていて、毎日助けられています。昔から五味ちゃんの活動を見ていて、五味ちゃんのツイートがきっかけで自分の定期的な心身の不調に「PMS」という名前がついていることを初めて知ったんです。そこから生活がすごく楽になって。だから五味ちゃんは私にとって転機の人なんですよね。
※illuminate:ハヤカワさんが代表を務める株式会社ILLUMINATEが提供する生理日管理アプリ。LINE上で毎日の心と体のメモや基礎体温、ピルの服用記録なども管理できる。
島田:ハヤカワさんの活動の原点は高校生時代、 キリトリ線ストッキング を発表された頃からですよね。
ハヤカワさん:そうですね。2012年だから、もう10年前か……(笑)。当時は起業とか大層な理由は考えていなくて。ロリータファッションにはまっていたので、好きなファッションに合うものを自分でつくって安価で楽しみたかったんです。
島田:自分が欲しいと思うものをつくって広める、という点で、形や規模は変われど、高校時代から今まで五味ちゃんがやっていることは大きく変わっていないのかな?と思いました。
ハヤカワ:そうですね、インターネット上でものを広めるやり方は変わってないです。高校時代から今まで、 インターネットでの出会いが転機に関わることも多かった ですね。所属するコミュニティがすごく狭くて自分には合わなかったときも、当時のインターネット上で価値観や趣味が合う人に出会うことができました。キリトリ線ストッキングも、Twitterで写真が拡散されて多くの人に知ってもらえたことで、販売に至りました。
島田:いいコミュニティに出会うのは大切なことですよね。そこから、胸が小さい女性向けのランジェリーブランド 「feast」 や、細身のワンピースブランド 「ダブルチャカ」 など、ご自分のコンプレックスをきっかけにしたプロダクトをつくるようになったのにはどんな転機があったのですか?
ハヤカワ:中学・高校時代に、体形についていじられることが多くて。痩せていることや胸が小さいことを笑いに変えるような風潮にずっと悩んでいました。
ハヤカワ:ブランド立ち上げの後押しになったのは、近所の大きな商業施設で買い物をした時の体験でした。下着を売っているお店を全部見て回ったところ、自分に合うサイズの商品は1個しかなかったんです。選択肢すらないのか、って。
島田:それはすごく悲しいですね……。
ハヤカワ: 「サイズがない」=「自分は規格外」 だと言われている気がして、とてもショッキングでした。 自分が認められていない感じがして、すごく悲しかったんですよね 。それが「feast」を立ち上げるに至った原体験でした。
ハヤカワさんの転機:女性スタッフと働いて気づいた課題ともどかしさ 島田:「ILLUMINATE」の立ち上げにも何か転機が?
ハヤカワ:そうですね。実際にILLUMINATEのプロジェクトをやるぞ、と思えるようになったのは、自分のコンプレックスについて周りの友達やネット上で話したときにすごく共感してもらえたことが大きいです。
島田:コンプレックスはつい自分の中に秘めてしまいがちですが、信頼できる周りの人に言ってみたり、 「それ、いいと思う」 って言ってくれるコミュニティにいることも大事ですよね。
ハヤカワ:大事ですね。 否定や反論って簡単なんです。 反論と一緒に代案を出してくれる人の意見はすごく重要だけど、ただ否定してくるだけの人の近くにいるのは可能性がつぶれてしまうだけなのでもったいないと思います。
ハヤカワ:「置かれた場所で咲け」なんて話もよく耳にしますが、 自分に日が当たりやすい場所・自分が輝ける場所に行くことも大切 だと思っています。
島田:自分が輝ける場所に行くこと、それが「ILLUMINATE(照らす)」という名前にもつながる部分なんですね。
ハヤカワ:そうですね。ILLUMINATEは、女性スタッフと仕事をしている中で生まれたものでもあります。株式会社ウツワの女性スタッフから妊娠の報告を受けたとき、突然だったのですごくびっくりして、どうしていいかわからなくて焦ってしまったし、そんな自分に驚きました。毎月同じタイミングで休むスタッフはきっと生理痛が重いんじゃないかと思ったけれど、それを上司である私が指摘するのはセクハラかもしれない。 もっと相談しやすい環境がつくれるんじゃないかと、もどかしさを抱えていました。
島田:すごくわかります、私も後輩が妊娠したときに、おめでとうと思ったのと同時に、少しびっくりしちゃった自分がすごくいやでした。
ハヤカワ:事業をやっている中で、意外と 女性こそ女性の体について知らないなと気づいた んです。知らないことによって失われている可能性があるんじゃないかと。だからこそ、女性向けの健康事業をやることに意味があると思っています。
島田:私も、五味ちゃんの活動ではじめて PMS※ や PMDD※ について知りました。女性の体の話は親からタブーだと言われていたし……。でも今はちゃんとお薬やお医者さんを頼っていいんだと知れて、自分のせいじゃないんだと思えるようになりました。五味ちゃんのおかげです。
※PMS:「月経前症候群」。生理前に心身のバランスが崩れ、様々な不調を感じること。 ※PMDD:「月経前不快気分障害」。PMSの中でも特に心の不調が著しく、日常生活や社会生活に支障を来たしているような状態。
ハヤカワ:ありがたいです。PMSやPMDDって、一般的には性格の問題で、「我慢できていないだけ」と片付けられがちですが、 実は体の仕組みなんだという選択肢を照らされていないから なんですよね。私はそれを照らすことで、いろんなひとに自分をケアする習慣をつくりたいんです。
島田:メカニズムを知ると解決策も分かるから素晴らしいですよね。それが「ご自愛」にもつながるというか。
ハヤカワ:今でこそご自愛カルチャーが育ってきましたが、日本ではまだまだ自分を厳しく見る癖がついている人も多いんですよね。「今日はご自愛できなかった」という落ち込みすら発生してしまう。だから ケアを日々続けられるような体験の設計をできれば と思っています。
島田:なるほど。五味ちゃんのこれまでの活動にもすごく納得がいきました。生きる上でのだいじなことを設計してくれているんですね。
ココロオドル仕事との出会い方:自分のカードを増やす 島田:どうすれば心躍る仕事や生き方に出会えるのでしょう?
ハヤカワ:私のすべての転機には人が関わっています。人との出会い、つながり、コネって聞くとインチキに聞こえるかもしれないけれど、そこまで複雑ではなくて。 自分の手持ちのカードだけでできることは限られているんですよね 。でも、他の人とカードを見せ合ったり、交換することができたら、選択肢は増えていく。 カードの見せあいっこができる出会いが増えれば、チャンスも自ずと増えていく思っています。
島田:相手の持っている選択肢も自分ものにできちゃうような。
ハヤカワ:そうですね。 実現できる人は、カードが多い人 だと思うので。気になる人に直接は会えなくても、過去やったことを見てみたり、本を読んでみたり、DMを送ってみたりするだけでも、できることは変わってくるはずです。
ハヤカワ:ものづくりにも繋がる話かもしれませんが、ゼロから何かを作り出せる人って天才なんです。だからこそ、天才ではない私は 組み合わせる素材をいくつもっていられるか、カードをいくつ持っていられるか を重要視しています。そういう意味で、人との出会いや繋がりをいかに増やすかを考えることが実現への最短ルートだと思っています。
イベント配信を終えて:「ご自愛」は苦手だった2人
──改めてご自分の原体験を掘り起こしてみていかがでしたか?
ハヤカワ:転機には常に自分ではない他の人が絡んでいたなあと、改めて思いましたね。これまでもピンチを乗り越えたことはたくさんあったけど、それは自分の力だけではなくて、誰かに手を差し伸べられたり、誰かと一緒に乗り越えたことが本当に多かったです。
──トークの中で「ご自愛」というワードが出ましたが、近年の「ご自愛」カルチャーについてはどうお考えですか?
ハヤカワ:正直、「ご自愛しようね」と言われて、素直にできる人ばかりではないと思っています。私自身、自己肯定感が低くてご自愛できない人間で 、そもそも自分を大切にする習慣がないのに急に「ご自愛しよう」と言われても無理なんですよね。 こういう人たちはむしろご自愛の風潮の中で自己肯定感が高い人たちとのギャップに苦しんだりするんじゃないでしょうか。だからこそ、 どうすれば自然に自分のことを大切にできるのかを一緒に考えて、習慣化をお手伝いできれば と思っています。
島田:私も、「ご自愛」と最初に聞いた時はあまりピンとこなかったんです。でも、私の「ご自愛アイテム」は確かにあって。それが ”せいろ” なんです。ご自愛しようと思ったわけではなくて、道具屋筋に行ったときにおもしろいなと思って買っただけでした。そのせいろで蒸し野菜をつくったり冷えたコンビニの肉まんを温めなおしたりしてたんですよ。そしたらなんだか 「あれ、いま私すごく自分のこと大事にしてる」 って思えてきたんです。そんな風に、 ご自愛という入口じゃなくても、「自分を大切にできることリスト」が自分の中にいくつかあるといいな って思っています。
ハヤカワ:私もそれを見てせいろ買いました。
島田:え!うれしい。せいろ、いいですよね。
──自分のコンプレックスにはどう向き合うとよいでしょうか?
ハヤカワ:コンプレックスは治したり無くしたりする必要はなくて、ほどよい距離感でやっていくことが大事だと思っています。結局、自分の脳のリソースをコンプレックスが占めている状態が不健全なのであって、 コンプレックス自体は悪いものではない んです。ほかのことに目を向けることで忘れちゃうこともあります。私自身、顔立ちがきつく見えることがコンプレックスだったのですが、中国の女優さんがやっている凛とした美しいメイクを見つけて「私、中華風メイクが似合う美女なのでは?」と思えてきたり(笑)。そんな風に、他の選択肢へ意図的に目を向けることでコンプレックスじゃなくなることがあるんです。自分の新しい良さを探していきましょう。
「ぼくらの転機〜ココロオドル仕事との出会い方」では、毎回さまざまな業界のトップランナーを招き、ご自身のWantedlyのプロフィールを拝見しながら、ターニングポイントとなった転機、そしてココロオドル仕事との出会い方についてお話を伺います。
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