Engagement Suite | ぶれない組織を作るシンプルな解法。
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11月4日にオンライン開催され、累計1,500人以上の方にご視聴いただいた「FUZE 2020」。今回は、その中からウォンテッドリーCEO、仲暁子によるオープニング・セッションおよび株式会社セールスフォース・ドットコム人事本部長の鈴木雅則氏、Slack Japan株式会社ビジネスグロース営業部部長の生垣侑依氏のお二人をスピーカーとしてお迎えしたセッションの様子をお届けします。
新型コロナウイルスの感染拡大により、企業組織のあり方にも大きな方針転換が強いられているいま、ビジョンを実現するための組織づくりの担い手としてどんなアクションをとるべきかーーそんな問いかけから始まったウォンテッドリー仲による開始のセッションでは、この予測不能な時代のキーワードとして「流動化」を挙げます。
終身雇用の終焉やジョブ型雇用へのシフト、テレワークの浸透によるワークプレイスの分散化、副業・兼業の拡大によるゆるやかなつながりをベースとした新しい組織体系......。こうした新しい時代の訪れを前に、「たくましく成果を出せる組織/置いてけぼりになる組織」の二極化が進んでいくことが予想されます。
流動化という大きなトレンドに対応するために問われているのが「自律して働くことのできるメンバーが集まった組織(=自律型組織)」に生まれ変わることができるかどうか。組織運営を山登りになぞらえると、その成否をうらなう4つの指標が見えてきます。
ウォンテッドリーでは自粛期間への突入後、こうした自律した働き方へのシフトを加速するためのツール群を相次いでリリース。バリューの浸透促進と従業員サーベイの両輪で組織のコンディションを計量・可視化する「Pulse」、お得な特典利用を通じて挑戦しやすい環境づくりを実現する福利厚生サービス「Perk」、社内へのビジョン発信やナレッジシェアリングを促すデジタル社内報「Internal Story」の提供を開始しました。
「採用」と「従業員エンゲージメント」にまつわる沢山の知見を通じて、組織づくりのフロンティアを1ミリでも前に進めたいーーそんなFUZE 2020の所信声明とともにセッションが締めくくられました。
続くセッションでは、株式会社セールスフォース・ドットコムの鈴木雅則氏、Slack Japan株式会社の生垣侑依氏のお二人をお迎えし、社員と組織がつながりや一体感を維持するためのエンゲージメントの重要性について、具体施策を交えつつ丹念に解き明かしました。
写真中央:鈴木雅則氏(セールスフォース・ドットコム人事本部長)
写真右:生垣侑依氏(Slack Japan株式会社 ビジネスグロース営業部部長)
聞き手:川口かおり(ウォンテッドリー株式会社 執行役員 ビジネス担当)
ーーまず最初に、従業員エンゲージメントとは何か?という問いから、エンゲージメント施策の目的について考えたいと思います。
セールスフォース・ドットコム鈴木氏(以下「鈴木」):従業員エンゲージメントの目的は、会社のコアバリューを中心に据えつつ「働きやすさ」と「働きがい」を社内に構築することで、個人と組織とが一体感のあるつながりを維持することと定義できるでしょう。企業の取り組みとしては、福利厚生面の充実を含めて「働きやすさ」を醸成すること、また、バリューを反映した人事施策で「働きがい(エンゲージメント)」を生み出しつつ社員が没頭できる環境をつくることの2点が大切であると考えています。
特にコロナ禍においては、「働きやすさ」への投資が必須項目になっています。しかし、それはあくまで仕事に集中する環境をつくるための前提条件です。そのベースラインを超えたところで、組織の中でパフォーマンスを発揮するためのエンゲージメント施策が求められることになります。この両者のバランスを取りつつ、前に進めることが重要だと思います。
Slack Japan生垣氏(以下「生垣」):従業員エンゲージメントを通じてチームの一体感を生み出す要素として、マネジメントの観点から3つを挙げたいと思います。1つ目は「アライメント」であり、トップの明確なメッセージにより目指す方向が共有されている状態です。2つ目が「アジリティ」で、世の中の変化/チーム内の変化に対して能動的かつ俊敏に対応できる体制づくりのことです。
3つ目が「透明性」であり、チーム内の情報格差をなくし、各メンバーが主体的に動ける環境を社内に生み出すことが、働きがいの創出につながっていきます。透明性を確保することにより、(オープンな情報共有で)能動的に他チームへのサポートを提供したり、他チームのプロジェクトに参加できるようにするための仕組みを整えることが、マネジメント観点からみても大切です。
ーーコアバリューやアライメントについて触れていただきましたが、方針を言語化することの意義についてはどうお考えでしょうか?
鈴木:チームとして足並み揃えて行動するためには、やはり組織の目指す方向性がしっかりと言葉で定義されていることが大切です。たとえば当社では人事部が「エンプロイーサクセス」と呼ばれているのも、ミッションを表現する言葉を大切にするという姿勢のあらわれだと言えます。もちろん組織のフェーズによっては動きながらあるべき姿を考える必要もあると思いますが、どこかで腰を据えて言語化しなくてはいけないことだと思います。
生垣:(アライメントを担保するためにも)組織としてメッセージに落とし込んで発信をし、さらにエンゲージメントサーベイを通じて社内からそれに対するフィードバックを募ることで改善のサイクルをまわすことが大切です。
ーー次に、従業員エンゲージメントを高く保つための具体的な取り組みについてお聞かせください。
鈴木:セールスフォース・ドットコムでは高いエンゲージメントの実現のため「カルチャー」「テクノロジー」「データ」の足し算を重視しています。カルチャーは企業戦略であり、4つのコアバリュー(信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、平等)をベースに組織づくりを行っています。コアバリューについては単なる社内標語に留めるのではなく、具体的な人事施策に落とし込みながら、それを実現するためのメカニズムを組み上げていくことに力を入れています。
データやテクノロジーに関して言えば、私たちはCRMを提供しておりますので、自社のテクノロジーを従業員との関係づくり(ERM)に活用する方法をつねに模索しています。また外部のテクノロジー環境と社内の体験ギャップを埋めることも大切です。そのために社内情報を網羅的に検索できる仕組みや、メール自動配信を用いたオンボーディング体験など、最先端のデジタル環境の恩恵を社員体験に反映させることにも取り組んでいます。
生垣:弊社では、先ほど述べた3要素の実現のために社内でサービスであるSlackを活用しています。たとえばコロナ以降では、全社向けのアナウンスを行うSlackチャンネルでCEO自ら「仕事を頑張りすぎないで」という社員の心理面をサポートするメッセージを発信しましたが、こうしたトップの語りかけはまさしくアライメントにつながる重要なアクションです。
他にも、社内の情報の透明性を保つためにSlack Japan内での部門間フィードバックチャンネルを開設しています。このチャンネルでは、各チームが自分たちの取り組みの内容およびその振り返りを全社員に向けて発信し、コメントや絵文字を通じてフィードバックを得られるような仕掛けをつくっています。
ーーエンゲージメント施策をどのように評価されていますか?
鈴木:年に2回行う従業員サーベイを通じて、従業員がどれだけ働きがいをもって仕事に取り組めているかを定点観測しています。また社員がエンゲージメント高く働けていなければ自社を知人におすすめできないため、リファラルレートも注目すべき価値のある指標です。エンゲージメントの強化は、事業推進だけでなく、採用強化にも直結するため、投資する価値のある領域だと考えています。
生垣:組織としてはサーベイの定期的に行うほか、マネージャーからメンバーへのフィードバックを行うだけでなく、メンバーからマネージャーへのフィードバックを行う機会を年2回設けています。それによって自分たちの声が届いているかどうか、を客観的に判断することができ、マネージャーがアクション改善のための半期プランをつくるきっかけにもなっています。
フィードバックの内容を取り入れるかどうか判断する基準としては会社のミッション/ビジョンや、会社の掲げるOKRにアラインしているかどうかを重視しますが、サーベイや1on1を通じて得られたフィードバックを聞き入れる態度がマネジメントにおいてはまずなによりも大切なことです。Slack Japanでも、日頃の1on1を通じて感情面での共有をメンバーに促すなど、ビジネスだけないことも積極的に聞き入れる姿勢を大切にしています。
ーー 「エンゲージメントを低い状態から上げることは大変。高く保つことが大切」という話がありましたが、そのためには何をすればよいでしょうか?
鈴木:まずは思い込みを排除することが大切です。外部環境はつねに変わっていく以上、組織として取り組むべき内容も毎年変化していきます。変化への対応力をあげるためにも、定期的にフィードバックを得られるメカニズムを構築し、社員の声を受け入れながら施策の優先順位を判断するのがベストな方法です。
さらにはエンゲージメントを高く保つためには社員の要求がどんどん上がっていくことは当たり前のことと受け入れたうえで、クリエイティブに課題を解決する方法を模索していくことが大切だと思います。
社員の期待を超える施策やサービスを考案し、実行し続けるのは難しいですが、とてもやりがいのあることです。リソースが無制限にあるわけではない以上、ひとつひとつに優先順位をつけていくことが求められますが、「こんなことまで会社は考えてくれているんだ」と社員に伝わることが素晴らしい体験、ココロオドル体験につながっていくのだと思います。
ーー従業員エンゲージメント施策は社内の協力・理解を得るのが大変なこともありますが、社内に施策を根付かせるにはどうすればいいでしょうか。
鈴木:これまでの内容をまとめると、まず第一に企業文化をビジネス戦略と位置づけることが大切です。カルチャーへの投資は業績や社員パフォーマンスに直結することが各種リサーチから明らかになっています。今や企業文化は「あったらいいな」ではなく「絶対にやらなくてはいけないこと」として投資していく時代だと思います。
2つ目に、「社員を顧客と考え、最高の社員体験を提供する」ことを提案します。弊社ではそれをテクノロジーとデータを駆使して、顧客中心主義から社員中心主義へのシフトを起こしていくことと定義しています。3つ目は、「会社のコアバリューを明確化し、浸透させる」こと。そのためにもまず方向性/ミッション/ビジョン/バリューを言語化し、さらにはそれを支援するメカニズムの構築に真剣に向き合うことが大切です。
最後に、リーダーからトップダウンで積極的に情報を共有することと同時に、ボトムアップでフィードバックを得て、自分たちの取り組みが正しいかどうかの精査を行っていく。「個人の成功=組織の成功」ではないですが、まずは個人が成功するための支援を行い、メンバー同士の助け合いを奨励することで結果を出すという正のサイクルをつくることが求められると考えています。
生垣:私たちが組織として取り組んでいることとして、対外的に発信している6つのコアバリューと、4つのアトリビュート(Slack社員として大切にしている性質/Slackらしさ)があり、それぞれに社内で絵文字(スタンプ)を作成しています。これにより行動指針がトップから明言されるだけでなく、現場レベルでも広げ、定着させることによって、従業員エンゲージメントとして組織に結実していく仕掛けをつくっています。
さらにチーム単位で私が個人で大切にしていることとしては、会議よりも一対一のコミュニケーションを重視することによってメンバーからのフィードバックを得やすくすることを心がけています。さらには感情面の状態の共有を促すために1on1のアジェンダに「How are you? Are you happy?」といったカジュアルな問いかけも含めています。
他にも、チームのオフサイトミーティングをオンラインで実施することにより、リモート下でも仕事をアラインメントを取りながら共に前に進めるための一体感を醸成する試みなどを行っています。
ーー経営陣にエンゲージメント施策の重要性を説得するために、どのような働きかけをしたらいいでしょうか?という質問がきています。
鈴木:経営陣の一人として、エンゲージメントを高めたくないという経営者、そしてそれにより結果を出したくないという経営者はいないと思っています。とはいえ会社それぞれの事情もあると思いますので、まずは説明材料のためにひとつのチームないし部署でエンゲージメント施策を試験運用し、そのチームの業績がそれによってどれだけ活性化したのかというストーリーづくりをするという選択肢もあるのではと考えます。
生垣:(現場と人事・管理部門との協力体制をつくるために)現場マネージャーとしてはまず「自分のチームをこうしていきたい」という要望を人事に伝えるようにしています。チームづくりのビジョンを考え、明確化することはマネージャーとしての責任であり、それを受けて専門家として採用・チーム作りについてのアドバイスを提供するのが人事部門である、という役割分担です。
ーー最後に、今後取り組んでみたい施策があれば教えて下さい。
鈴木:コロナ禍によって、会社からの働きかけが社員との深い関係づくりに寄与するのか、それとも失望させてしまうことになるのか、これまで以上に緊張感をもって進めていくことが求められていると思います。セールスフォース・ドットコムでは出社か、リモートワークを自由に選択できるようにしましたが、コロナ禍が明けた先にどういった働き方を会社としてしていくのか、日本社会としてしていくのか、まだ結論がでていない部分です。
その結論において、社員の方を失望させない新しい働き方や社内制度をつくることによって、セールスフォース・ドットコムが社員想いの先進的な会社であると社員の方たちに思っていただけるようにしていきたいと思っています。
生垣:私たちは成長中の企業であり、まだ日本国内でも大きくなっていくことが予想されます。そのためにも在宅勤務下での採用やオンボーディング、そして入社後に活躍し続けるまでのジャーニーを描き、モチベーション高く仕事に向き合うための環境を整えていくことが大切です。
先行きを見通しにくい状況であるからこそ、組織の透明性を高く維持し、チーム内にフィードバックのサイクルを保つことを通じて、エンゲージメントの高い組織づくりをしていきたいと、一人のチームマネージャーとして考えています。