エンジニアがpmconfから学んだ「プロダクト視点」の意思決定
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こんにちは。ウォンテッドリーのバックエンドエンジニアの西野です。
AIの活用が進み、開発プロセスが効率化されたことで、エンジニアの働き方が大きく変わりつつあります。私が所属するチームでも働き方が変わり、エンジニアやデザイナーも施策の企画段階から参加する機会が増えました。時には施策の企画から効果検証までを牽引する施策リーダーを担当することもあります。しかし、実際にその役割を担当するようになると、例えばリリース可否を判断するような場面で、何を基準に意思決定すべきかに難しさを感じるようになりました。
プロダクト開発における意思決定には、具体的にどのような考え方が必要になるのか。エンジニアである私が、pmconf(プロダクトマネージャーカンファレンス)の講演動画を見て考え方の枠組みを学んだ話をご紹介します。
リリース続行か延期か、何をもって判断するのか
私が施策リーダーを担当していた時の話です。リリース前の最終チェックで当初の要求と一部異なる箇所があることがわかりました。他の施策も同じリリースに含まれていたため、該当の機能だけを取り下げるには、ソースコードから切り離すための追加作業が必要でした。このとき私は「要求に合っていないものをリリースすべきではない」と考え、該当の機能を取り下げてリリースを延期する判断をしました。
しかし、チームリーダーの判断は異なりました。「要求と異なる箇所は軽微で、施策の目的から外れた状態になっているわけではない。機能を落とすための追加作業を発生させる方がデメリットが大きい」として、いったんリリースを予定通りに進め、後から差異がある箇所を修正すると決定しました。
私は施策単体の要求に一致しているかどうかに目が向いていました。一方、チームリーダーは、施策の目的と一致しているかどうかを判断の起点にしていました。同じ状況を見ているのに、判断の起点が違うことで結論が異なるという経験は、施策を推進する上での意思決定にあたって私の考え方に足らないものがあると気づくきっかけになりました。
pmconfでプロダクトマネージャーの意思決定方法を学ぶ
そこで、本職のプロダクトマネージャーはどのように考えて意思決定をしているのかを学ぶために、pmconfの過去の講演動画から意思決定をテーマにした動画を探して視聴することにしました。
最終的な拠り所になるのは自分の中にある価値基準
1つ目は、pmconf 2025での金城貴大氏の講演「小さな判断で育つ、大きな意思決定力 ― 不具合チケットから学ぶプロダクトマネージャーの基礎」です。この講演は、意思決定力の向上のために不具合チケットの優先度付けを利用しているという内容のものですが、意思決定を行うためにどういった視点を持たなければいけないのかという点が学びになりました。意思決定の最終的な拠り所になるのは自分の中にある価値基準(ものさし)であるが、それは「自分視点の正解」ではなく、「プロダクトの価値基準」を探す姿勢でなければいけないということでした。
ゴールから逆算して判断する
2つ目は、pmconf 2023での森口貴之氏の講演「その意思決定、説明できますか?」です。この講演で森口氏は、利害関係者間でのコンフリクトは、近視眼的な判断から生まれると指摘していました。現在の状況だけを見て部分的な判断を下すのではなく、プロダクトビジョンや事業計画といったゴールから逆算して判断する。そうすることでブレない意思決定ができるという内容は、プロダクトに関する判断の軸になるものだと受け取りました。
金城氏の講演は「何を基準にするか」、森口氏の講演は「どう考えるか」の話ですが、どちらも「プロダクトが目指す方向は何か」という点で共通しています。過去のリリース判断を振り返ると、私は「要求に合っていない」という目の前の状況に反応して、自分視点の正解で判断していました。プロダクトが目指す方向から見てどうか、という視点が欠けていたのだと気づきました。
自分たちのプロダクトの現在地を知る
これらをふまえて、自分たちが作っているプロダクトが目指す方向を、漠然とではなく具体的に考えようという意識が芽生えました。今までもプロダクトが目指す方向というのは共有されていましたが、そこに向かうためにどうすれば良いのかということまでは、踏み込んで考えられていませんでした。目指す方向がわかっていても、現在地がわからなければ今起こすべき行動は見えてきません。
私はプロダクトの現在地を知るために、以下の2つの行動を始めました。
- 自分が担当していない施策のPRD(プロダクト要求仕様書)に目を通す
- 自分たちのプロダクトに対するユーザーの反応(定性・定量)を注視する
他の施策のPRDを読むことで、どういった背景からその施策に取り組むことになったのかを把握し、プロダクトの現在地から今は何を優先したいのかへの理解度が上がりました。また、ユーザーの反応や行動ログから、今後どんな機能を出すと良さそうかという行き先を考えるよう意識が変化しました。こうした現在地と行き先への理解が深まったことで、「この機能は本当に今必要なのか」「ユーザーの行動傾向を踏まえてどうするべきか」といった提案や議論ができるようになってきました。
まとめ
プロダクト開発における意思決定する上で最も重要なのは、「プロダクトが目指す方向」を価値の基準にするということでした。工数や要求の網羅性など、状況に応じて考慮すべき要素は他にもありますが、それらは「目的地に向かうために、今取るべき行動は何か」という前提の上にあるべきものだと学びました。そして、今取るべき行動を見極めるには、プロダクトの現在地を知ることが出発点になります。
pmconfはプロダクトマネージャー向けのカンファレンスですが、そこで共有される実体験や思考の枠組みは、エンジニアがプロダクト視点を身につける上でも非常に有効な教材でした。この記事が、プロダクト志向への一歩を踏み出そうとしているエンジニアの方にとって、少しでも参考になれば幸いです。