こんにちは、ウォンテッドリーの開発組織でエンジニア・デザイナーの採用を担当している佐藤です。
簡単に自己紹介させていただくと、私のこれまでのキャリアでは、
- RPO(Recruitment Process Outsourcing)としてさまざまな業界・企業の採用支援
- 海外暗号資産取引所の日本法人立ち上げ期におけるひとり目人事
- 外資系コンサルファームでの大規模中途採用
などを経験してきました。
採用経験は約10年で、そのうち直近6〜7年はテクノロジー領域に特化しています。とはいえ、私はエンジニア出身でも理系でもなく、根っからの文系人間でエンジニアリングに関する知識は実務の中で試行錯誤を重ねながら地道に習得してきました。
そうした中で、チームに「エンジニア採用未経験」のメンバーが加わったことを機に、私がメンターとして育成を担当することになりました。そして、メンターとして、単にエンジニアリングの知識を教えるのではなく「会社やプロダクト、そしてエンジニアの価値観を理解すること」を軸に、最短距離でキャッチアップできるプロセスを設計・実践しました。
本記事では、私が実践した「エンジニア採用担当者の育成プロセス」を紹介します。
エンジニア採用に挑戦し始めたばかりの方にはキャッチアップの指針として、リーダーやマネージャーの方にはメンバー育成のヒントとして、活用いただければ幸いです。
目次
エンジニア採用担当者を育成するための4つのステップ
1.【Mindset】目指すべき状態を示す
2.【Input】知識を体系的に学ぶプロセスを設計する
2-1.職種・開発フローを理解しやすい例で説明する
2-2.業態ごとのキャリアパスを整理し共有する
2-3. 学習教材・推薦図書を選定し活用する
3.【Sync】エンジニアの視点と価値観を同期させる
3-1. 選考ログを用いてエンジニアの視点を同期させる
3-2. カジュアル面談への同席でリアルな感覚を共有する
4. 【Output】学んだ知識を業務で使える形に定着させる
4-1. レジュメ読解のトレーニングを設計する
4-2. スカウト文作成の指導とフィードバックを行う
4-3. 読書会・用語集作りで理解を定着させる支援をする
4つのステップでエンジニア採用の土台を整える
再現性のある育成プロセスでチームの力を高める
エンジニア採用担当者を育成するための4つのステップ
初めてエンジニア採用にチャレンジするメンバーがまず取り組むべきなのは、がむしゃらに知識を詰め込むことではありません。
まずは、エンジニアと同じ目線で情報を捉え、対話できる状態をつくるための「土台」を築くことが重要です。
本記事では、その土台を構築するプロセスを4つのステップに整理しました。
1.【Mindset】目指すべき状態を示す
採用担当者が目指すべきは、技術を極めることではありません。業界・市場・技術スタック・開発文化を理解した上で、エンジニアと「共通言語」で建設的な対話ができる状態です。
この土台を作るために、まずメンバーと以下の2つのマインドセットを共有しました。
エンジニアにならなくていい
重要なのは、自らコードを書くことではありません。プロダクト開発の構造や技術選定の意図を理解し、エンジニアと同じ目線で建設的に対話できることを目指します。
理解の曖昧さを放置しない
最も避けたいのは、理解が曖昧なまま対話を進めることです。知らない用語や概念に出会ったときはまずは自ら調べ、それでもわからなければ、採用チームのメンバーやエンジニアに質問して正確に理解する習慣を身につけるよう促します。
まずはこの目指すべき状態(ゴール)を定義し、学習に向き合うスタンスを揃えることから育成をスタートさせます。
2.【Input】知識を体系的に学ぶプロセスを設計する
エンジニア採用では専門用語が多く出てきますが、単語を暗記していくだけでは全体像は理解できません。まずは、全体の構造を理解することから始めていきます。
2-1.職種・開発フローを理解しやすい例で説明する
まず、身近なものに置き換えて全体の構造を捉えることから始めます。
私の場合は、メンバーの興味・関心にあわせて洋服づくりやパン屋さんの仕事に例えて、プロダクト開発の流れや職種ごとの役割を整理しました。
こうした具体的なイメージがあると、候補者のレジュメに書かれた短い一行からでも、「このプロジェクトでどの役割を担い、どんな課題を乗り越えたのか」を立体的に理解できるようになります。
2-2.業態ごとのキャリアパスを整理し共有する
次に必要なのは、技術だけでなく「市場構造」の理解です。
事業会社、SIer(システムインテグレーター)、受託開発など、業態によって求められる役割や強み、キャリアの積み方は大きく異なります。
それぞれの特徴や転職理由の傾向を知ることで、候補者の意思決定の背景まで想像できるようになります。
2-3. 学習教材・推薦図書を選定し活用する
個々の努力に任せるのではなく、チーム全体で共通の理解を持てるようにするため、推薦図書を活用しました。
今回活用した書籍例:
- 『作るもの・作る人・作り方から学ぶ 採用・人事担当者のためのITエンジニアリングの基本がわかる本』
- 『IT用語図鑑[エンジニア編] 開発・Web制作で知っておきたい頻出キーワード256』
- 『ずっと受けたかったソフトウェアエンジニアリングの新人研修 第3版』
- 『ITエンジニアの転職学 2万人の選択から見えた、後悔しないキャリア戦略』
最初から難しすぎる内容に触れると心理的ハードルが上がってしまうため、メンバーの理解フェーズに合わせ、「読む・理解する・実務に活かす」のバランスを意識して無理なく学べる書籍を厳選しました。
※選定理由や読み方の工夫は、別記事で詳しく解説予定です。
3.【Sync】エンジニアの視点と価値観を同期させる
知識をインプットしたら、エンジニアのリアルな感覚と照らし合わせ、理解を定着させます。
3-1. 選考ログを用いてエンジニアの視点を同期させる
過去の書類選考や面談・面接のフィードバック(選考ログ)を大量に読み込みます。
選考ログには、自社エンジニアが重視する価値観が表れています。
例えば
- この経歴のどこに惹かれたのか
- なぜこのスキルがあっても見送りになったのか
こうした背景を理解することで、エンジニアが何を重視しているのか、求める人物像を把握できます。
3-2. カジュアル面談への同席でリアルな感覚を共有する
カジュアル面談への同席は、エンジニアがどんな想いを持って、どんな言葉でプロダクトや技術について語っているかにふれられる絶好の機会です。注目すべきポイントは以下の通りです。
- 最近注目している技術
- 技術やプロダクトに対するビジョンや目標
- 開発組織やプロダクト課題
- 技術選定の理由や背景
- 成功体験や失敗体験
同席を重ねることで、技術用語は単なる知識ではなく、意思決定や背景と結びついて理解できるようになります。こうして、エンジニアと同じ目線で対話できる状態を目指します。
4. 【Output】学んだ知識を業務で使える形に定着させる
最後は、学んだ内容を実際の業務に活かせる形でアウトプットする段階です。
レジュメ読解、スカウト文作成、言語化トレーニングを通じて、知識を「使える状態」に整理していきます。
4-1. レジュメ読解のトレーニングを設計する
エンジニアのレジュメは、単に技術キーワードを拾うだけでは本質を理解できません。同じ技術を使っていても、「どんな課題に向き合ったか」「どんな意思決定をしてきたか」によって価値の発揮の仕方は異なるためです。
そこで、以下の5つの観点でレジュメを読み解くトレーニングを行いました。
- 何を作ってきたか(プロダクト経験)
- どこまで任されていたか(責任範囲)
- どう考えて仕事していたか(思考スタイル)
- どんな技術領域の人か(専門性の軸)
- 次に挑戦したいこと(キャリア志向)
この読み方を身につけることで、候補者がどんな環境で、どんな役割を担い、どんな価値を届けてきたのかを立体的に捉えられるようになります。
4-2. スカウト文作成の指導とフィードバックを行う
エンジニアは未だ求人倍率が高く需要の大きい職種です。そのため、各社から日々多くのスカウトを受け取っており、表層的な言葉はすぐに読み飛ばされてしまいます。
そこで、候補者の経験やキャリア志向を正確に読み解いた上で言葉を紡げるよう、一言一句レベルでフィードバックを重ねました。主なポイントは以下です。
- 表層的な言葉を避け、候補者の経験や志向に沿った表現にする
- 違和感なく自然に読み進められる文章に整える
- 候補者のWill(やりたいこと・志向性)や価値観、強みを正確に反映する
このトレーニングにより、単なるスカウト文作成の技術だけでなく、候補者理解の精度も同時に高めることができます。
4-3. 読書会・用語集作りで理解を定着させる支援をする
知識は聞く・見る・読むだけでは自分の力になりません。重要なのは、自分の言葉で説明できる状態にすることです。
そこで実践したのが、読書会と用語集づくりです。
- 読書会
読んだ本の内容をチーム内で発表し合います。「読んで終わり」にせず、誰かに説明するプロセスを挟むことで、理解を深め知識を自分のものとして定着させます。 - 用語集づくり
メンバーに覚えてほしい重要な用語をピックアップし、定義や使い方を自分なりにまとめてもらいます。こうすることで、自分の言葉として使える状態を目指します。
このプロセスにより、知識を「知っている」状態から「使える」状態に変換し、学んだことを自分の力にしていくことができます。
4つのステップでエンジニア採用の土台を整える
今回ご紹介した4つのステップを踏むことで、エンジニア採用未経験のメンバーでも、「エンジニアと同じ目線で情報を捉え、建設的に対話できる土台」を作ることができます。
ここで重要なのは、個別の知識を単なる「点」として覚えるのではなく、文脈とつなげて「線」として整理することです。断片的な情報がつながることで、全体像を理解しやすくなり、実務でも応用できる力へとつながります。
再現性のある育成プロセスでチームの力を高める
エンジニア採用は専門性が高く、一見すると個人のセンスや経験に依存するように見えます。
しかし、実際には重要なのは、個人のセンスに頼るのではなく、メンバーの状況に合わせて「誰が取り組んでも成果を出せるようなプロセス」を設計できるかどうかです。
こうした再現性のある育成プロセスを構築することは、個人の成長にとどまらず、チームや組織全体の力を着実に底上げします。そして、変化の激しい採用市場において、組織としての採用競合優位性を強固に築く土台となるはずです。
この記事が、エンジニア採用に携わる皆さんの実践的なヒントになれば幸いです。