インタビュー:重本 隆之
国内系コンサルティング会社のダイレクトマーケティングチームで、経営コンサルタントとして4年間従事。その後、起業しEC事業やコンサル事業を展開。社会により大きな影響を与えられる仕事を志向し、大手インターネットサービス会社でグループ横断でのマーケティング施策や新規サービスの事業責任者を経験する。前職では総合PR会社にてD2C事業子会社の立ち上げから拡大までを役員として牽引し、2020年12月PtoC事業立上げの新規事業責任者としてUUUM入社。
インフルエンサーを軸とした、新しいブランディング
ーまず初めに、PtoC事業の具体的な内容について教えてください。
PtoC(Person to Consumer、P2C)事業は、YouTuberやインスタグラマーなどのインフルエンサーである人(=Person)を軸としてブランドを立ち上げ、商品・サービス展開を行う事業です。
従来の一般的なメーカー業の場合、商品を工場で生産し、卸売り業者を介して各店舗に並べられ、タレント等をキャスティングして広告をマスメディアやWebに展開し、店舗等で販売してきたと思います。PtoC事業では、インフルエンサーと一緒にブランドを企画し、それが売れていったら店舗展開まで広げていこうというステップではなく、ブランド企画の段階から卸売業者や小売店舗との連携ができる座組みを構築し、ファングッズの延長線上ではなく一般消費者にまで利用が広がるコンシューマーブランドを立ち上げていくという構想で事業計画を作っています。
PtoCと同じようなビジネスモデルとして、芸能人などのタレントプロデュースブランドがありますが、TVを主として活躍をしてきた芸能人は自分のプロデュースブランドをテレビ等の番組内で紹介することは、番組内容との関連性やスポンサーとの関係性などからも難しいことも多いですよね。一方、デジタルの自分の発信力を武器に影響力をつけてきたインフルエンサーの場合は、自分でコントロールができるSNSなどを通じて自らプロデュースをしたブランドについての情報発信や購買への興味喚起などを積極的に発信していくことができます。
SNSの普及が加速することでフォロワー数の規模が拡大し、加えてテキストや画像だけでなく動画・音声などインフルエンサーとフォロワーとのコミュニケーション方法がよりリッチになっていったことで、エンゲージメント(SNS投稿に対して、いいねやコメントなどの反応をする層)の高いフォロワーを数十万から数百万規模で抱えることができるようになっています。高いエンゲージメントのフォロワーを抱えるインフルエンサーのブランドは、そのブランドの認知や好意度をSNSを介して向上させるだけではなく、購入をしてもらう態度変容まで相当の規模感を持って実現ができるようになってきました。インフルエンサー発ブランドの年商がグローバルでは数百億円、日本国内でも数十億円の規模に1−2年の短期間で成長をしており、そんな市場が今まさに出来上がってきています。
また実際にインフルエンサーを中心にブランドを展開している事例はすでにありますが、これらインフルエンサーマーケティングを取り扱っている企業は、DtoC(Direct to Consumer、D2C)で展開していることが多いです。DtoCは実店舗をメインの販売チャネルとはせずにWEB上で販売することで、卸売業者や小売店舗へのマージンが不要となるため商品原価にコストをかけることができ、より良い商品を消費者に届けることができます。
コスト構造の変革による消費者便益の増加や高い利便性等もあり、DtoC市場を含むEC市場は成長を続けています。しかしながら、EC化率※は物販全体で7%弱のシェアを占めるのみで、各商品ジャンルごとのEC化率は様々で、書籍、映像・音楽ソフトで34%、衣類・服装雑貨等で14%、化粧品、医薬品6%、食品、飲料、酒類3%などとなっています。ご自身の生活でも消費の多くはリアルで行っていると思いますし、Webが伸びているとはいえWebの中だけで戦おうとすると、市場規模が限られてしまいます。
※EC化率:全ての商取引金額に対するEC市場規模の割合
引用:経済産業省『令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)』 https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf
前職でインフルエンサーと一緒にブランドを立ち上げた時も、インターネットとリアルの店舗で商品を販売した時、リアルでの売上比率の方が大きかったのです。YouTuberなどデジタル出身のインフルエンサーはインターネットの中での親和性は当然高いですが、やはり24時間のうち皆さんの私生活のメインはリアルにありますよね。そういう面でも、リアルでの接点の場を最初から座組みに入れていかないと、事業規模がスピード感を持って成長していかないと考えています。
さらに、WEB広告に限らず交通広告やテレビCM、雑誌での拡散も含め、一般的なブランドがやっているようなマーケティング施策もUUUMのP2C事業では展開を視野に入れて事業計画を立てていきます。デジタル領域以外への広告投資により収益性が下がったとしても、まずはP2Cブランドがコンシューマーブランドとなるために事業規模の拡大を実現していきたいと思っています。
▼P2C(Person to Consumer)ビジネスモデル
クリエイターのストーリーから生み出される商品
ーなぜPtoC事業をUUUMの新規事業として立ち上げたのでしょうか?
PtoC事業の拡大性や再現性を考慮していく中で、成功要因として最も重要なのがP(Person)だと考えています。
YouTubeやインスタグラムなど各SNSの特長を比較すると、YouTubeは動画によるリッチなコミュニケーションができるため、画像だけの世界よりも視聴者はよりインフルエンサーのことを知った気持ちになれます。視聴者に「これいいね」と思ってもらうだけではなく、「これを買いたい」という購買行動にまで繋げていきたいとき、YouTubeの方がグッと人を動かす力が強いと感じています。
その中でも、トップクラスのクリエイター(UUUMは、主にYouTuberのことをクリエイターと呼びます)・インフルエンサーが多数所属する当社の強みを活かすことで、スピード感・規模感を前提とした PtoCのビジネスを拡大できると考えました。
ー重本さんが感じる、この事業の一番の魅力は何でしょうか?
一番は新しいモノの作り方・消費のあり方をつくっていける点です。例えば、マーケットインの思考でのものづくりでは、ターゲットやニーズがあってそれを解決するためにこういう商品を出していこう、どういうマーケティングで商品の魅力を伝えられるかを考える、という流れが一般的だと思います。
今回のPtoC事業は、インフルエンサー自身のストーリーやキャラクターとファン・フォロワー層をかけ合わせた時に、一番強みを出すことができるブランドや商品ジャンルって何だろう、という視点からブランドづくりをしていきます。さらに、このブランド・商品をファンだけではなく、ブランドを出したインフルエンサーのことを知らない多くの一般層の生活者に届けるには、どのようなコミュニケーションで伝えることが最適かをインターネットに囚われずに広い視点で思案すると、TVCMなどの巨額の広告費を使用しなくとも、1年で数十億円規模の売上が作れる事業になると考えています。
UUUMに所属するトップオブトップのクリエイター・インフルエンサーがいて、UUUMが積み上げてきた大手企業さんとの関係性があるからこそ、実現できるスケールや座組みを描いて実現することができます。絵空事ではなく、リアリティのあるビジネスとして新しいモノの作り方、消費のあり方を社会に投げかけていけると言うのは、とてもワクワクしませんか?
1年後、3年後に振り返った時に、新しい価値観や消費行動を創ってきたと思える仕事ができるチャンスは人生にそんなに多くないと思っています。一緒にこのワクワクするチャレンジを楽しめるアソビナカマ(UUUMの社員呼称)やパートナー企業を集めていくのも、RPGゲームの仲間集めのようで楽しさや魅力に溢れていると思います。
ー手掛けていくブランド・商品はどのように決めていくのでしょうか?
大きく2つの方法があります。
1つ目は、ブランドとしてクリエイター・インフルエンサーと商品ジャンルとの親和性、市場規模感、パートナー候補企業との座組などが上手くはまるかなど加味しながら、「このクリエイターがこういうジャンルのブランドを出すファンやフォロワーも喜ぶし、面白そうだね。一般層へのニーズもあるしイケそうだね!」と思えるものをまずは事業部として企画し、経営陣に提案します。そこでGoがもらえたら、クリエイターに提案・議論をしてインフルエンサーとしての自分のキャラクターやフォロワーなどを考慮するとどういったブランドが良いのかなどを決定していきます。
2つ目は、クリエイターさんが作りたいブランド・商品の要望をもらって動かしていくパターンです。1つ目と同じような視点で実現化については議論をし、PtoC事業でやるかUUUM内の別組織にあるオリジナルブランド事業で展開をするかを決めていきます。
PtoC事業として今進めているものは化粧品や食料品になりますが、アパレル・ガジェット(電子機器等)・趣味品など「クリエイター×商品ジャンルの親和性」が高ければドンドン新しい商品ジャンルにもチャレンジしてみようと思っています。
楽しんで、新しい価値観を生み出す
ー今後事業を成長させていくにあたり、一緒に働くメンバーとチームとして意識していきたいことはありますか?
目の前にある日々の業務は、ブランド企画、商品企画や生産管理、写真や広告クリエイティブの作成、ECサイト構築、物流倉庫との連携などの企画から具現化まで多岐にわたります。
もちろんそれぞれの主担当業務へのスキルや経験はもっていて欲しいです。一方で、専門領域はあるものの、事業としては新規事業なのでチームメンバーも少ないので、対応業務範囲は多岐に渡るのでドンドンと未経験領域での業務に自ら手をあげてチャレンジしてくれると嬉しいです。完璧なスキルセットよりは、もっと新しいことをやるぞという野心を持って議論を一緒にして、「それ面白いですね!」と言い合える環境を目指しているので、世の中に新しい価値観や手法を生み出して、色んな人を動かしていくことに楽しさを感じる、スタートアップマインドを持っている人を仲間に迎え入れたいです。
すでに3、4ブランド企画を進めていて、初年度から大きく事業を育てていきたいと思っています。周りからすると本当にできるの?というような一見難易度が非常に高いと思えることであっても、楽しんで議論して乗り越えていける人と一緒にPtoC事業を具現化していきたいと考えています。「新しいモノの作り方や消費のあり方を創っていく」ということに楽しさややりがいを持って取り組めるチームや事業を一緒に創っていきましょう。