- ブランド運営企画職
- WEB広告マーケター
- VMDディレクター
- Other occupations (1)
- Development
- Business
- Other
現在、土屋鞄製造所のランドセル専門店「童具店」で、店長を担当している上田。2014年に、アルバイトスタッフとして入社した後、社員、店長へとキャリアを磨いてきました。数年間でアルバイトから店長になった彼の軌跡を追うと、土屋鞄特有の「同僚を応援する文化」と「キャリアステップの可能性」が見えてきました。
ここで働きたい! 正社員を辞めて土屋鞄のアルバイトスタッフに
ー 入社までの経緯を教えてください。
インターネットで、知人への革製品の贈りものを探していたときに、土屋鞄のオンラインストアに出会いました。当時住んでいた家の最寄りだった京都店を訪れてみたところ、お店の雰囲気と接客の良さに衝撃を受けたのです。
物心がついた頃から人見知りで、マンツーマンで接客されるのが苦手。そんな私が、土屋鞄では、落ち着いて製品を見ることができました。声かけのタイミングがちょうど良く、とても心地良かった。
実はそれまでに、デザイン系の専門大学に通って、雑貨のものづくりを学んでいたことがありました。そこで、革小物を自分でデザインしてつくる授業を受けたことがきっかけで、革に興味を持ち、革製品に関わる仕事がしたいと思っていたんです。ただ、接客への苦手意識から、卒業後は機械系の仕事に就職。やりたかった仕事ではなかったので、あまり身が入らず、悶々とした日々を過ごしていました。
そんな中、偶然出会った土屋鞄で、「こんな雰囲気の接客であれば、自分でもやれるかもしれない!」と思い、思いきって当時働いていた職場を退職をしたのです。その後、鎌倉店の面接を受け、アルバイトとして入社。当時22歳、2014年の5月頃でした。
ー 正社員の仕事を辞めて、アルバイトとして入社することへの不安はなかったのでしょうか。
やりたいことを隠して仕事を続けるよりは、心機一転、好きなことに取り組んだ方が良いと思ったので、不安はなかったです。「革製品の仕事をするんだ」という決心が強かったのと、若さゆえの勢いもありましたね。アルバイトからキャリアアップしていこうと意気込んでいました。
面接を終えて、まだ採用可否が分からない段階から、製品を暗記するための単語帳を買い、写真を貼って勉強を始めました。とにかく無我夢中で、早く仕事に慣れて社員として働きたい気持ちでいっぱいでした。
実際に入社して驚いたのは、スタッフ同士の繋がりの強さです。チームの雰囲気が良いからこそ、お客さまに感じてもらえる居心地の良さがあるのだと実感しました。スタッフの誕生日には、みんなでケーキを食べますし、繁忙期が終わったタイミングでは、スタッフの家に集まってBBQをしたことも。
「頑張ったね」と、ねぎらう機会があるからこそ、スタッフ間のコミュニケーションが密になっていると感じます。本当に些細なことでも、人を大切にしている会社だと思います。
「お店のトップだと思ってやりなさい」。先輩との出会いが開いた店長への道
ー 「昔は人見知りだった」ということですが、今ではその片鱗すら感じません。どのようにして変えられたのでしょうか。
まだ完全には克服していませんが、自分の接客を気に入って来てくださるお客さまができてから、変わったように思います。そのお客さまと2回目にお会いしたとき、「◯◯さまですよね?」と伝えると、「覚えていてくれたんだ!」と喜んでくださって。それから、「あなたがここにいることを知ったから、これからはこのお店に来るね」と、どんどん心を開いてくださいました。
東京にお住まいでしたが、月に1度くらい鎌倉店に来店され、私が横浜店に異動した後は、横浜にも来てくださいました。次第に、プライベートな話も打ち明けてくれましたね。私と同い年の息子さんがいらっしゃるそうで、「どうしたら息子も前向きに働く意欲が出るのかな」と相談をしてくださったり。お店が忙しい時は会話をやめて、「忙しそうだから向こうへ行ってね」と、気を利かせてくれたこともありましたね。
そういったお客さまとの関係が、少しずつ自分の人見知りな性格を変えてくれたように思います。人見知りが解消され始めてから、1年半ほど経って契約社員になれました。
ー 契約社員には、スムーズになれたのでしょうか。
上司に推薦していただき、面接を受けて契約社員になれました。ただ、上司から推薦をいただけるようになるまで、個人的な課題と向き合っていたんです。その課題というのは、人当たりが柔らかすぎることと、自信がないこと。上司は、そんな私を見かねて、「1日の終わりに今日の良かった部分を3つ挙げよう」と、トレーニングをしてくれていました。
最初は、そんな時間をいただくのが申し訳ないと感じていましたし、「今日は良かったところはないです」と伝えた日もありました。すると、「悪いところは聞かないよ」と跳ね返されて。プレッシャーはあったのですが、続けていく中で、「お客さまへのアプローチタイミングが良かった」などと、少しずつ良いところを見つけていけるようになったんです。
そうしたトレーニングを通して、自信なく低姿勢でいると、“お客さまに「頼りない」という印象を与えてしまう”と、気付けたのは大きな収穫でした。それでもあまり前向きにはなれなかったんですけど(笑)。
そして、最大の転機が、横浜店に異動して訪れました。横浜店で一緒に働く店長から刺激を受けたことが、ターニングポイントになりました。
その店長は、私が自信がないような顔をして仕事をしていたときに、あえて店長が行う業務を課題として与えてくれたのです。月間の売上報告や、購買分析など。自信をつけさせるために、「あなたがお店のトップだと思ってやりなさい」と。時には、売り場のディスプレイを変える意図を考える宿題を出されたこともありました。
そのときに、正社員になるだけでなく、店長になることへのビジョンが見えてきたんです。今後のスキルアップの道を見せてくれたその店長に、本当に感謝しています。
店長や同僚スタッフからの期待や応援があるから頑張れる
ー 店長ではない立場で店長の仕事をすることは、大変ではなかったのでしょうか。
“丸投げ”されたことは一度もなく、煮詰まったときには、すぐに声をかけてくださって、「何に悩んでるの?」「こうじゃない?」と教えていただきました。
また、ただ答えを教えるだけでなく、「じゃあ一回、店頭に出てみよう!」と、ヒントを探すきっかけをくださることもありました。いつも声かけのタイミングが絶妙で、常に自分のことよりもスタッフのことを考えてくれていることが、伝わってきましたね。私にとって、その店長と一緒に働けたことが、大きな経験になりました。それから半年後、「正社員だよ。明日から」と、辞令をいただきました。
これは後から聞いた話ですが、店長は、「あの子は早く上がらせないと、悪い意味で腐ってしまう。上が見えなくなってしまうから」と、上長に言ってくれていたそうなのです。他店の店長もプッシュしてくれていたと聞きました。周りの人に支えられて今があることに、本当に感謝しています。
ー 念願の正社員になって、いかがでしたか。
「次は店長を目指そう」という目標ができ、その達成に向けて努力する日々でしたね。新入社員が入ってきて、社員になって初めて部下もできました。「しっかりしなきゃ」という自覚も芽生えていきました。
当時は、“いかに店長を楽にさせられるか”を重視していました。店長はバックヤードにいてほしいし、何なら裏の仕事も自分が中心となって進めて、「暇だなぁ」と言ってもらいたいと思っていましたね(笑)。自分から積極的に仕事を見つけ、「あれやっておきましたよ」と事後報告を続けた結果、1年後に店長になることができました。
ー なぜそこまで頑張れたのでしょうか。
店長や同僚のスタッフから期待され、応援してもらってきたからです。社員になったからには、今度は店長になって、「上がれるところまでは上がれたよ」と見せたくて。
昔の私を知っている先輩たちに会うと、「人が変わったね」と言われます。前は低姿勢だったのに、今は堂々としているから。失敗すると、平気で一週間も引きずっていた私が、今は前向きにチャレンジできるようになりました。そうした経験をさせてもらったからこそ、店長になるために頑張ろうと思えたのだと感じます。
初めて土屋鞄に会った時の“衝撃”をこの手でつくりたい
ー 今、店長を担当する中で、やりがいや喜びは何ですか。
店舗のスタッフたちが、生き生きと働いている姿を見ることですね。人間なので、どうしても気持ちの浮き沈みはあると思います。そんな中でも、みんなが笑顔で働ける職場にしたいです。
スタッフ一人ひとりと話をするときは、ここで得られるものや仕事の目的、自分の気持ちを正直に伝えています。「これをやっておいてください」と言われるだけでは、モチベーションが上がらないと思うんです。「あなただから任せたんだよ」と伝えることで、任されたスタッフは自分の仕事として捉えて動けますし、それがやりがいに繋がる。
何かミスがあったときも、責めることはなるべくしないようにしています。なぜミスが起きたのかを考えられるように問いかけながら、伝えるべきことは正直に話す。コミュニケーションを丁寧に取ることを心がけています。
ただ、私もまだまだ成長途中。初めて土屋鞄と出会った時に受けた衝撃をお客さまに届けるレベルには、達していないと思っています。土屋鞄を築き上げてくださった先輩たちの功績は偉大です。
今目指しているのは、そうした理想の風景を叶えること。そして、私が悩んでいるときにサポートしてくれた店長のように最高のチームをつくること。一人ひとりに役割があり、各々の意識が高く、全員で助け合えるチーム。これは今でも記憶に深く刻まれている理想のチームです。満足することのない終わりなき戦いですが、これからも追求していきたいと思っています。