※本記事は、「タイパ・コスパ重視」のキャリア選択は、誰にとって得なのか ― Z世代論を燃料にしたキャリア情報流通構造論 からの続きのネタです。
1. 前回記事の振り返り:キャリア情報は、人が動く方向に流れやすい
前回の記事では、「タイパ・コスパ重視」のキャリア論について、主にキャリア情報市場の側から考えました。
退職や転職を勧める情報は、ネット上で流通しやすい傾向があります。転職エージェント、求人媒体、退職代行、キャリア系メディアなどは、それぞれ立場や目的は違いますが、人が動くことで収益機会が生まれやすいという点では共通しています。
もちろん、転職や退職そのものが悪いわけではありません。明らかに報われない環境や、成長機会のない環境から移ることは、普通に合理的です。ただし、「嫌なら辞める」「合わないなら動く」「どこでも通用するスキルを身につける」といった言葉が、リターン・コスト・リスクの計算を省いたまま流通してしまうと、話は少し変わります。
今回の記事では、その続きとして、もう少し労働市場側に寄せて考えてみます。
なぜ「ポータブルスキルを持って、会社に依存せず、条件の良い場所へ動く」というキャリア論が説得力を持ったのか。そして、その考え方にはどのようなリスクがあるのか。
その背景には、企業が非コア業務を外部化してきた流れがあると考えています。
2. ポータブルスキル需要は、非コア業務の外部化に支えられている
ちょっと難しいかな....? な章タイトルですが...。まずは説明。
非コア(ノンコア)業務の需要
ポータブルスキルという言葉は、一般的には『持ち運びできるスキル』つまり、「会社が変わっても継続で使いやすいスキル」という意味で語られます。
たとえば、プログラミングスキル。言語ごとの少々の違いはあれど、基本的には汎用的に多くの人が使える様に作られた『モノ』を使うスキルです。会社をまたいだところで、そうそう使い方は変わりません。その他、ローコード開発や、特定のITツールの活用経験などは、IT業界内で同様の募集を見つけるのが容易な方のスキルとなるかと思います。
IT以外でも需要が大きい、経験者を欲しがる企業の多いスキルの話をするならば、例えば営業のテレアポ経験。採用支援業務。その他よくある営業事務関連。このあたりの仕事は多そうな印象で、これらの会社固有の知識に依存しない、別の会社でも使えるスキルを持っておくことは、たしかにキャリア上の保険に見えます。
ただし、この『持ち運びできるスキル』の需要は、個人の能力だけで成立していたわけではありません。背景には、企業側が業務をコア業務と非コア業務に分け、非コア業務を外部化してきた流れがあります。
平成・令和と、日本の労働市場では正規雇用と非正規雇用の二層化が進みました。背景には解雇の難しさや、報酬を簡単には下げにくい構造があります。企業側から見ると、将来的に不要になるかもしれない業務や、景気によって必要量が変わる業務を、正社員として長期に抱え続けることにはリスクがあります。
そのため企業は、社員が担当するコア業務と、それ以外が担当する非コア業務と言う形に分けるようになります。
コア業務と非コア業務
コア業務は、企業の競争力や利益に直結し、意思決定にも近い領域です。顧客理解、事業判断、商品設計、業務設計、組織運営、長期的な技術判断などが含まれます。こうした領域は、社内に知見を蓄積し、責任を持って判断できる人材を育てる必要があります。いわゆる新卒ターゲット。総合職的なやつですね。
一方で、非コア業務(ノンコア業務)は、企業の中核的な利益創出には直接関与しないが、事業運営を支える補助的な業務のことです。
平成は主に派遣社員・パート・期間工などを利用してきましたが、令和で流行るのがBPO(Business Process Outsourcing)です。
BPOは簡単に言うと「自社の業務プロセスを専門的な外部企業に委託する手法」のことで、ビジネスプロセスをコア・非コアに分解し、非コアをその業務に特化した企業に委託するというものになります。自社の業務負担が軽減されるとともに、自社のリソースをより付加価値の高いコア業務に集中させることができます。
その他も、従来通りの派遣、業務委託、フリーランス、副業、などなど、さまざまな形で外部化が進んだ印象です。
なお、外部化される業務が低価値という意味ではありません。会計士や社労士なども業務の外部化ですしね。
3. 「横に広げるキャリア論」は、なぜ魅力的に見えるのか
ポータブルスキルを重視するキャリア論では、スキルを「縦に伸ばす」よりも、「横に広げる」方向の話がされることがよくあります。
『会社に依存しないスキルを持とう』
『どこでも通用する人材になろう』
『複数のスキルを掛け合わせる。』
『副業で案件を取る。』
『手を動かせる人材になる。』
『会社の肩書きではなく、個人の市場価値で生きる。』
こうした言葉は、かなり魅力的に見えます。
実際、一理あります。ひとつの会社の中だけでしか通用しない知識に閉じてしまうのは危険ですし、会社が変わっても使えるスキルを持つことは重要です。営業しか知らないより、マーケティングも分かる。事務処理しかできないより、ExcelやBIツールも使える。開発だけでなく、クラウドや業務理解にも触れている。そうした横の広がりが、キャリア上の武器になる場面は普通にあります。
ただし、ここで注意したいのは、横に広げることが、ビジネスプロセスを上下に深く理解していくことの代わりになるわけではない、という点です。
ここでいう「縦に伸ばす」とは、単に新しいツールを覚えることではありません。その会社の『儲け方』つまり、ビジネスプロセスの上から下までをつなげて理解し、自分の責任・権限を高度化いくことです。
これらは、短期間で横に移動するだけでは得にくいものです。多くの場合、組織内で一定の信用を得て、その信用をもとに、ビジネスプロセス上のより広い範囲を任されることで積み上がります。
一方で、横に広げるキャリア論では、この「信用を得て、ビジネスプロセス上の責任範囲を広げる」という時間のかかるプロセスが軽視されやすい。新しいスキルを学ぶ。別の職種に触れる。副業で小さな案件を受ける。複数の分野を少しかじる。そうした経験は増え、複数の業態の作業者レイヤーでの対応能力は育つことになりますが、その人材は【だれかに活躍できる環境を用意してもらわないと利益を生めない】人材であり続けることになります。
4. 非コア業務は、将来的に自動化・選別のリスクを抱える
外部化された労働集約的業務を専門とするリスク
非コア業務は、需要がある間は「どこでも使えるスキル」として見えやすい領域です。
アプローチ可能な転職先や案件数もかなり多くなります。
しかし、いま需要が大きいことは、将来的にも高い市場価値を持ち続けることを約束しません。
非コア業務は、企業が外部化しやすい業務です。外部化しやすいということは、手順化しやすい、切り出しやすい、他社から調達しやすい、という性質を持っている場合が多いです。これは、需要がある時期には「誰でも戦力化しやすい」という強みに見えますが、需要が弱くなったときには「代替しやすい」という弱みに変わります。
さらにまずいことに、標準化しやすい業務は、AIやRPA、SaaS、業務システムによる自動化の対象にもなりやすい。
これが、『非コア業務の作業者レイヤーに留まり続けるリスク』と言えるかと思います。
BPO業者・アウトソーサー自体が消えるわけではありません。彼らにも自社のビジネスプロセスがあり、そこにはコア業務や標準化しづらい業務が存在します。クライアント企業による内製化ニーズもあるとは思いますが、BPO業者は顧客から受託した業務に関しては専門業者です。一定の規模を持って同種業務を扱うため、自動化投資のコストメリットは、個別のクライアント企業よりも大きくなりやすい。そのため、クライアントから受託した業務に対して、AIやRPA、SaaS、業務システムによる自動化を進めることになります。
このとき、コアとなる人材は、作業者の代わりにそれらの仕組みを設計・管理・改善する側に回ることで、事業を継続できます。
アウトソースを受ける立場が問題なのではなく、作業者レイヤーの経験を「横に広げる」ことのみを繰り返すことが問題です。
好況期・不況期の影響と選別
需要が強い時期には、人が足りない。案件が多い。処理量が多い。アウトソーサー企業も人を集める。そういう状態では、標準化された労働集約的業務の経験も十分に市場価値を持ちます。むしろ、アウトソーサー企業側の立場で考えた場合、「頭数を集めないと受託業務を受注できない」「頭数が売上や利益に直結する」という構造が成り立ちます。さらに業務が標準化されていれば、採用後の戦力化や収益計算もしやすい。その結果、複数のアウトソーサーが人材を奪い合う局面では、相対的に条件が上がりやすくなることもあります。(大きな市場のある労働集約的業務では賃金が上昇しやすい。)
しかし、その需要が弱まったとき、選別が始まります。
単価が高い人から外される。
年齢が高い人から不利になる。
同じ作業しかできない人が選ばれにくくなる。
AIや自動化で置き換えられる部分が増える。
外部調達市場の中で、より安く、より若く、より扱いやすい人材と比較される。
このとき、「どこでも使えるスキル」は、市場での評価が変わります。
需要がある間は、「どこでも使えるスキル」です。
需要が弱まると、「誰でも調達できるスキル」に見えてくる。
原因がAIによる自動化ならば、「AIと競合するスキル」となります。
ポータブルスキルを持つこと自体は悪いことではありません。しかし、そのスキルが非コア業務の外部化市場に支えられている場合、需要の変化には弱くなります。市場が広い間は動きやすい。けれど、市場が縮んだときには、同じ市場の中で一斉に選別されることになります。だからこそ、「転職先が多い」「案件が多い」「どこでも使える」というだけで安心するのは危険です。
見るべきなのは、その業務が企業の中でどの位置にあるのか。その経験が、ビジネスプロセスの上から下までを理解する方向につながっているのか。それとも、切り出された作業領域を横に移動しているだけなのか。
非コア業務もビジネスプロセスの一部です。その経験を積むこと自体が悪いという訳ではなく、むしろ必須。そこから業務設計、改善、管理、顧客理解、仕組み化、自動化、品質責任などへ進む必要があります。
問題は、非コア業務の実行経験だけを横に並べ、それをそのまま長期的なキャリアの保険だと考えてしまうことです。需要が強い間は成立しても、自動化や市場縮小、年齢による選別が始まったとき、その保険は思ったほど強くないかもしれません。
5. 35歳以降に問われるのは、コア業務側の経験である
年齢が上がって変化する労働者需要
よく言われる話ではありますが、30代半ばを過ぎる頃から、中途転職市場での見られ方は少し変わります。
30代半ばともなれば、賃金もそこそこ高くなっているはずです。また、キャリアとしても35歳というひとつのマイルストーンを超えた段階で、そこから大きく育てる前提では見られにくくなります。
企業からの投資対象というより、むしろ投資回収フェーズ。
例えば、『標準化された作業の担当者でありながら賃金が高額』なのであれば、より安い若手人材でよい、という判断も起きやすくなります。
『歳を取る』という事は、『年下の安い競合の数が増える』という事であり、にもかかわらず、必要な賃金額は上昇。つまり【企業から見て経済性が低くなる】と言う事になります。
ですので、【年下の安い競合と競合しないこと】が必要になります。
つまりこの年齢帯で問われやすくなるのは、ビジネスプロセス全体への理解と、その中のコア業務側の経験です。
アウトソーサーが募集する標準化された労働集約的業務での需要とは異なり、頭数が売上や利益に直結するタイプの需要ではありません。しかし、このような人材は「利益を生む根幹」を担当するわけですので、組織内のバランスが許せば、企業は積極的に採用を行うはずです。
似た業態の会社で縦のスキル伸長を行った人材。つまり担当できるビジネスプロセスの範囲を広げ、その中の重要な部分を担当できる人材の給与は、一般的に高くなるでしょう。いわゆるハイクラス人材ですね。このタイプの労働者には、あまり仕事が減ったと言う感覚は無さそうです。
氷河期世代による証明
かたや、非コア業務の実行経験だけを横に並べてきた人は、状況が異なります。
いろいろな会社を経験した。
いろいろな業務に触れた。
いろいろなツールを使った。
いろいろな現場を見た。
しかし、ビジネスプロセスの中で、どの範囲に責任を持ったのか。どの判断をしたのか。どの成果に責任を持ったのか。どの仕組みを改善したのか。どのように人を動かしたのか。そこが薄いと、経験年数に対して、任せられる範囲が狭い人に見えてしまいます。横にのみ広げたキャリアの副作用です。
もちろん、横に広い経験が悪いわけではありません。複数の会社や現場を見ていることは、視野の広さにつながります。さまざまな業務やツールを知っていることも、場面によっては強みになります。ただし、それがコア業務側の経験に接続していなければ、年齢が上がるにつれて評価されにくくなります。
そして、仕事が減る。
実際にはこれは、急に起きるものではありません。応募できる先、受け入れられる先が少しずつ減少し、かつ、脱出困難になっていきます。
現在45歳以上の氷河期世代、あるいはその少し下の世代でも、同様のキャリアを嘆く人は少なくありません。彼らの中には、30代後半を比較的景気の良い時期に過ごした人もいるはずです。しかし、それでも作業者レイヤーから脱出できずに終わった人は多いように見えます。
令和特有のリスク要素
現在特有のリスクは、「需要が弱まる時期」を経験していない人が増えたことです。
震災後に社会に出て、そのままアベノミクス以降の景気に乗り、裏側ではネット広告やキャリア情報市場の悪質化も進んだ。そうした環境の中では、「非コア業務の作業者レイヤーに留まり続けるリスク」を感じるのは難しいことであったかもしれません。
東日本大震災が発生したのは2011年です。その翌年以降に大卒で社会に出た人、つまり大学卒業年度が2012年以降の人は、2026年時点で概ね36歳前後以上となっています。
ついにこの世代が、35歳を超えて30代後半に差し掛かってきている、ということです。
そしてさらにこのタイミングで、AIによる自動化の波が来ています。
これによるインパクトがどの程度になるのかは、まだ分かりません。ただ少なくとも、非コア業務の作業者レイヤーに留まったまま年齢を重ねることは、とても高リスクな選択となった。それは言えそうです。
6. 情報市場と労働市場が、短期合理を増幅し、リスクを隠す。
ここまでの記事2本分の話を、一度整理します。
情報市場と労働市場のコラボ
前回の記事では、キャリア情報市場では「人が動く情報」が流通しやすい、という話をしました。退職する。転職する。副業を始める。会社に依存しないスキルを持つ。こうした行動は、求人媒体、転職エージェント、退職代行、キャリア系メディア、副業支援サービスなどにとって、収益機会につながりやすいものです。
一方で、労働市場側にも、それを受け止める需要構造がありました。
企業は、将来的に不要になるかもしれない業務や、内部に抱え続けるにはリスクがある業務を、外部化してきました。BPO、ジョブ型雇用、派遣、業務委託、フリーランス、副業、外部ベンダー。こうした労働集約的なポジションの需要の市場が広がることで、「会社を変えても使えるスキル」「どこでも通用する経験」が、短期的には価値を持ちやすくなりました。
・情報市場は「動くこと」を合理的に見せたい。
・労働市場は「非コア業務を担当してくれる人」を大量に求めている。
この二つが同じ方向を向いて噛み合い、逆らい難い大きな流れとなった。
と言う感じかなとと思います。
ポータブルスキルの合理性が守られる条件
情報市場は、「動いた方がよい」という情報を流通させる。
労働市場は、非コア業務の外部化によって、「動ける先」を用意する。
SNSや広告は、ポータブルスキルや副業や転職を、「短期合理の選択肢」として見せる。
その結果、会社に残って信用を得る、責任範囲を広げる、ビジネスプロセスの中で重要な部分を担う、といった時間のかかる選択肢は、相対的に見えにくくなります。
しかし、【「会社を変えても使えるスキル」「どこでも通用する経験」を重視する。】の合理性には前提条件があります。
非コア業務が労働集約的で、労働者需要が強いこと。
投入された労働者数以上に需要が広がり続けること。
標準化された作業でも、十分な条件で雇われ続けること。
年齢が上がっても、同じ需要で受け入れられること。
この前提が続く間は、横に広げるキャリア論は成立します。
ただし、不況の到来、AIや自動化等によって、その前提が崩れた場合、話は変わります。
需要が弱まる。
自動化が進む。
外部調達市場で選別が始まる。
年齢に対して求められる役割が変わる。
作業者レイヤーのままでは、任せられる範囲が狭いと見られる。
そうなったとき、短期的合理の選択による副産物が、長期のキャリアリスクとして顕在化します。
短期合理を選びやすい環境の中でキャリアを作ってきた30代後半、40代の一部に、現在この問題が顕在化しつつあるのだと思います。
令和のキャリア戦略は、「今この市場で動ける」という一側面だけではなく、「その市場が何に支えられているのか」「その需要はいつまで続くのか」「年齢が上がったときにも同じ評価を受けられるのか」まで見て判断する必要があります。
7. その情報は誰にとって得なのか
ここまで、「ポータブルスキル」「横に広げるキャリア論」「非コア業務の外部化」「35歳以降のキャリアリスク」について見てきました。
最後に、前回の記事でも出した問いに戻ります。
《その情報は、誰にとって得なのか。》
もちろん、「会社を変えても使えるスキルを持とう」という考えが間違っているわけではありません。むしろ、会社の中だけでしか通用しない知識に閉じることは、普通に危険です。環境が悪ければ転職した方がよいですし、副業や外部案件を通じて視野を広げることにも意味はあります。
問題は、それがどのような文脈で語られているかです。
「今の会社に依存するな」
「ポータブルスキルを持て」
「どこでも通用する人材になれ」
「会社ではなく、個人の市場価値で生きろ」
「副業で自分の力を試せ」
「合わない会社にいる時間は無駄」
こうした言葉は、かなり耳触りがよい。本人の自立を応援しているようにも見えます。実際、その通りの場面もあるでしょう。しかし、その情報が人をどちらへ動かしているのかは見ておいた方がいいと思います。
転職すれば、転職サービスの収益機会が生まれます。求人を見る人が増えれば、求人媒体や広告の価値が上がります。退職を考える人が増えれば、退職代行や関連サービスの需要が生まれます。副業を始める人が増えれば、副業支援サービスや案件紹介サービスの市場が広がります。企業側から見れば、外部調達市場が厚くなることで、必要なときに必要な人材を集めやすくなります。
つまり、人が動くことによって得をするプレイヤーは多い。
一方で、その選択の長期的なリスク・コストを引き受けるのは、基本的には本人です。
労働者が負う長期的なリスク・コスト
短期離職による職務経歴書の見え方。
作業者レイヤーに留まり続けたことによる責任経験の不足。
非コア業務の外部調達市場が弱まったときの選別。
年齢が上がったときに、より安く投資対象である若者と競合するリスク。
AIや自動化によって、積んできた経験の一部が意味消失するリスク。
これらから発生するコストは、情報を流した側が背負うものではありません。情報を流す側は、人が動いた時点で収益が確定しています。一方で、その選択が数年後にどう職務経歴へ残るのか、そのリスク・コストを引き受けるのは基本的には本人です。
情報を流した側に悪意があるという話ではありません。彼らは単に、仕事として利益を得るために最善の努力をしています。つまりこれは、『構造』としてそうなっています。
ですので、キャリア情報を見るときには、耳触りの良い言葉だけではなく、その情報の背後にある市場構造を見た方がいい。
誰がその情報を流しているのか。
誰がその情報によって人を動かしたいのか。
誰が短期的に得をするのか。
そして、長期的なリスクを背負うのは誰なのか。
この問いを挟むだけで、見え方はかなり変わるはずです。
「タイパ・コスパ重視」のキャリア選択をするつもりなら、なおさらです。短期の快適さや、目先の転職しやすさだけを見るのではなく、その選択が数年後の職務経歴にどう残るのかまで見た方がいい。短期的な賃金上昇だけではなく、その選択が数年後、十数年後の職務経歴と生涯賃金にどう影響するのかまで考えるべきです。
最後に残るのは、SNSで見たキャリア論でも、求人広告の言葉でも、副業案件の募集文でもありません。
自分が、どの仕事で、どの範囲を任され、どの責任を引き受け、どの成果に関わってきたのか。
それが、【職務経歴】として残ります。