小説家志望からエンジニアへ
今、開発責任者をやっていますが、エンジニアではなく、小説家になりたかったんです。そのきっかけは学生時代にあります。自分は、ナイジェリアからの帰国子女で、転校直後いじめにあい、対人関係の自信をなくしました。その時の唯一の救いが、星新一さんの小説でした。学校に居場所がなくても、家に帰れば、小説がある。当時はそれだけで、楽しかったです。
高校卒業後、小説家を志し、アルバイトしながら、本を読み耽り、自分で文章を綴る。そんな生活をしていました。コンビニ、パチンコ、警備員、荷物の仕分け、本屋など様々な事をやっていました。
そういう生活を続ける中で、自分が小説で何を伝えたいのかが、わからなくなってきました。そんな壁にぶち当たっている時に、今の嫁さんに出会いました。自分の生きるモチベーションが小説家になることから結婚をすることに変わっていったんです。しかし、当時の僕の月給が11万円(笑)。小説家を諦め、しっかり働いて、結婚しようと考えるようになりました。まず選択肢としてあったのは、営業職。営業をするには、車の免許が必要だと思い、教習場に通いましたが、環八と第一京浜の交差点のど真ん中でエンストを起こして、パニクったことで、自分が不器用で、対応力がなく、営業に向いていないということにまざまざと気付かされました(笑)営業職を諦め、紆余曲折があり、消去法で残った選択肢がエンジニアでした。
エンジニア未経験者募集の広告を見て、SIerに入社。荒波にもまれながらも、知識やスキルを吸収し、周りからもだんだんと認められ、結果的に8年続き、プロジェクトリーダーも任せられたりしていました。間違いなく、その8年間は自分の人生とキャリアにエッセンスを加えてくれました。元々コミュ障だった自分は、世の中とうまくいっていないという感覚が強かったんです。僕にとっての世の中は、できないことだらけだった。しかし、この世の中で価値があるとされているプログラミングができるようになったことは、そんな自分に自信をつけさせてくれました。
また、エンドユーザーとつながっていたいという思いから、Slerを辞め、同じようなビジネスアイディアを持った知り合いと起業しました。しかし、社内のコミュニケーションが上手くとれず、結局、起業は上手くいきませんでした。その経験から、社内におけるコミュニケーションが非常に大切だということを学びました。
その後、トークノートの代表である小池が熱心に自分を誘ってくれました。
「Talknoteにはファンでいてくれるお客さんがすごく多いんです。これからどんどん伸びていく。でも、開発者リソースが足りていなくて機会損失も多い。そこを何とかしたい。藤井さんが来てくれたら、Talknoteはもっと良くなります」って口説かれたんですが、ここで重要なのはTalknoteの現状の問題も正直に明かされていて、同時に私が必要とされている理由もまた明確な点でした。そこに問題があるなら、解決してあげたいというのがエンジニアという生き物。そうして、自分は、2013年、トークノートにジョインしました。
意志の強さが会社の魅力
トークノートの魅力は、代表の小池です。小池はとにかく意思が強いんです。多くのスタートアップが途中でダメになっていく原因が、諦めることだと思います。だけど、うちの小池は絶対に諦めない。小池の意思があったからこそ、間違いなくトークノートはここまできていると思います。
社員は、小池同様、情熱とモラルのある人が集まっています。一般的に、困難にぶつかった時、諦めるという選択肢を選ぶ人が多い。みんな、楽がしたいんです。情熱がない人はトークノートに入ったとしても続かないと思いますし、情熱のある人にトークノートに入社してほしいと思います。
開発責任者という名の村長
自分は、開発責任者です。それは、村長的な役回りだと考えています。お代官様から要望がきた時は、村を代表し、村長がお代官様と掛け合う。一方で、村民たちからの要望もしっかりと聞いて良い村にしていかなくてはいけない。要するに、村長の仕事はお代官様と村民の間を取り持ちながら、良い村を作り上げていくことです。 この話をトークノートに落とし込むと、経営陣、現場からの要望、開発者から要望、それらをうまく擦り合わせて、物事を進めていくことが自分の仕事なんです。いわば、事業サイドと開発サイドの接着剤です。
村長思想の背景には、自分が社内でどんなバリューを出すのがベストなのかを考えるようになったことがきっかけです。人によって、バリューの出し方は異なります。開発者だったら、ドラスティックに技術を極め、開発貢献することにバリューがあります。しかし、自分のバリューの出し方は、技術で貢献することではなく、会社の接着剤になることでもいいのかなって思ったんです。それが、村長思想を抱いたきっかけでした。
プロダクトを良くしていきたいという思いの手前に、チームを良くしたいというモチベーションがあります。その良いチーム(村)とは、プロダクティビティが高く、個人のポテンシャルも高く、満足度が高いチームです。それを叶えるために、自分が一緒に働きたいと思える人間になること、自分が働きたいと思うような環境を作ることを意識しています。そんなチームがプロダクトに良い影響を与えると思っています。
物語性の強いスタートアップ
スタートアップは様々なことが起こるから物語性が強いです。物語性は非常に重要です。自分がどんな物語を生きているかを定義するだけで、自分の人生が変わってきます。例えば、「失敗」について。物語性がないと、失敗はただの損失になるが、そこに物語性があると、学びに変わり、将来に生きてくる。だからスタートアップは物語性が強いんですよ。
そういう意味でこの会社も、物語のように様々なことが起こります。39歳になった今も学びがあり、それがある限りは、この会社にいたいと思っています。かと言って、小説家になること諦めたわけではありません。もし将来何か書くとしたら、スタートアップについて書きたいですね。