そ「インクルーシブデザイン」と聞いて、どんな仕事を思い浮かべるでしょうか。
障害のある人にも使いやすい画面をつくること。年齢や言語にかかわらず利用しやすいサービスを考えること。どちらも大切ですが、それだけではありません。
私たちは、これまで企画や設計の前提に十分含まれてこなかった人を、プロジェクトの上流から共創者として迎え、サービスやプロダクト開発を行っています。
手がかりは、ひとりの具体的な経験。その人とサービス、制度、環境との間にあるバリアを捉え、これまでの「当たり前」を問い直していきます。
そこの記事では、インクルーシブデザインとは何か、なぜSTYZが取り組むのか、実際のプロジェクトでは何をするのかを紹介します。
目次
まず30秒で:インクルーシブデザインとは
インクルーシブデザインとは、従来の「平均的な利用者」を前提にした開発では十分に反映されてこなかった経験や知見を、製品やサービスをつくるプロセスに取り入れるアプローチです。
1994年にカナダ・トロントで開催された国際人間工学連合(IEA)の第12回世界会議にて、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)のロジャー・コールマン(Roger Coleman)が発表した論文「The Case for Inclusive Design」で提唱されました。
たとえば、文字を読み取りにくい環境にいる人、片手がふさがっている人、長時間立つことが難しい人、日本語に不慣れな人。
同じサービスでも、身体の状態、文化、経験、周囲の環境によって、利用や参加のしやすさは変わります。
出典:http://inclusive.microsoft.design/
大切なのは、つくり手が相手の立場を想像するだけで終わらないこと。試作品を使い、ともに問いを立て、検証を重ね、実際の経験を持つ人と対話し、ときには同じ場所を歩きます。
STYZが重視するのは、次の3原則です。
- 排除を認識する
- ひとりのために解決し、多くの人に広げる
- 多様性から学ぶ
ここでいう「ひとり」は、ある属性や市場全体を代表する人ではありません。その経験を一般化するのではなく、設計上の前提やバリアを発見するための起点とします。
そこから生まれた問いを、ほかの知見や事業条件と照合し、異なる状況にも応用できるか、試作と検証を重ねて確かめることが、インクルーシブデザインの出発点です。
「みんなにやさしいデザイン」と何が違うのか
インクルーシブデザインは、「できるだけ多くの人に合わせる設計」とも説明されます。一方、STYZの出発点は少し異なるものです。
平均的な利用者像だけを起点にすると、特定の人と環境との間にあるバリアが見えにくくなります。そこで私たちが目を向けるのは、ひとりの具体的な経験です。
どの場面で何が起きているのか。なぜ、本人が工夫をせざるを得ないのか。
サービスや制度、周囲の環境との関係を、ともに読み解きます。
似たような考え方として、ユニバーサルデザインやアクセシビリティを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。
ユニバーサルデザインは、原則やガイドラインをもとに、できるだけ多くの人が利用できる状態を目指すものです。アクセシビリティは、情報やサービスの利用を妨げる障壁を減らす考え方。異なる条件でも同じようにアクセスできる状態を整えます。
どちらも、インクルーシブデザインと対立するものではありません。ただしインクルーシブデザインが重視するのは、「つくるプロセスに誰が参加するのか」です。
完成後に意見を聞くだけでは不十分。課題の発見から企画、設計、検証まで、当事者の経験や知見を意思決定に反映します。
なぜSTYZはインクルーシブデザインを行うのか
STYZは、当事者発想で問いを発見し、人・市場・制度・テクノロジーをつなぐ会社です。目指すのは、新しい価値の社会実装。「あらゆる境遇を打破できる社会」というVisionと、「民間から多種多様な社会保障を行き渡らせる」というMissionを掲げています。
その実現に欠かせないのが、制度や市場の平均だけでは捉えにくいバリアの発見です。さらに、継続可能な仕組みへ変え、実際に使われるところまで実装します。
ひとりの経験を丁寧に見ると、個人の問題に見えていたことが、サービスや環境の設計から生じていたと分かります。そこで見えてくるのは、個人ではなく設計の問題です。設計や制度の前提を見直せば、参加しやすい環境や選択肢を増やせます。さらに、新たな顧客体験や事業機会にもつながるでしょう。
ですから私たちは、インクルーシブデザインを、参加やアクセスの条件を見直す方法だと捉えています。善意による配慮だけで終わらせないためです。当事者にとって何が変わるのか。事業として持続可能か。双方の観点から検証します。
STYZには、「Syncable」「CULUMU」「STYZ Tech」の3事業があります。寄付、デザイン、テクノロジーという異なる知見をつなぐ事業構造です。課題の発見だけで終わらせず、社会で使われる仕組みとしての実装まで伴走します。
インクルーシブデザインのよくある誤解
「障害のある人だけを対象にしたデザイン」ではない
障害は重要な出発点のひとつ。一方で、言語、文化、年齢、妊娠や育児、デジタルへの習熟度、一時的なけがなど、環境との関係によって生じる排除も対象です。
「ひとりの意見を、そのまま採用する」のではない
N=1の経験は、問いの入口であって答えではありません。ひとりの経験を本人とともに読み解き、ほかの当事者の経験や専門知識、技術、事業条件と照合。さらに、試作を通じた確認も重ねます。
「一度ヒアリングすれば終わり」ではない
意見を聞くことと、経験や知見を意思決定に反映することは別です。調査から企画、設計、検証、改善まで、「関わり方そのもの」を設計することも私たちの仕事です。
「すべての案件で、同じ型を使う」のではない
STYZが手掛けるのは、インクルーシブデザインを前面に掲げる案件だけではありません。通常のデザイン支援や事業支援の中に、見過ごされやすい視点を織り込むことにSTYZの存在意義があると考えています。
ただし、クライアントの関心や事業フェーズを無視して、一方的に当事者の視点を持ち込むことはしません。持続可能性と実現可能性も確かめながら進む姿勢が必要です。
正解のない問いを、異なる専門性で前へ進める
インクルーシブデザインに、最初から決まった正解はありません。STYZのメンバーも常に、「インクルーシブデザインとは何か」を問い続けています。
自分たちが知らないことに気づき、当事者の声に耳を傾ける姿勢。正解がわからないまま形にしてみる勇気。そこから生まれた問いをもとに、議論し、またつくり直す根気強さ。
STYZのメンバーに求められる専門性とは、「正解」を最短距離で導くことではなく、N=1の経験を、問いに変える力です。
当事者やクライアント、異なる分野の専門家とともに、デザインや技術、事業の力で社会に実装する。そこに、STYZで取り組む仕事の面白さがあります。
これまで意思決定に十分反映されてこなかった「たった一人の声」と、自分の経験や知見を組み合わせ、社会を小さく変えていく。
その取り組みを「面白い」と思った方は、ぜひSTYZのメンバーや募集中のポジションをのぞいてみてください。
▼まずは「話を聞きたい」だけでも大歓迎です!
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