スタメンが掲げる「人と組織で勝ち続ける」という理想。理想を体現すべき開発組織は、今「第二創業期」の混沌と可能性の只中にあります。
プロダクト組織インタビュー第五弾は、プロダクト組織の「未来」と「現在地」を異なる3つの視点から描きます。
以前には、CEO大西やCTO野口のインタビューで「TUNAG(ツナグ)というプロダクト」「技術面でのスタメン」について取り上げました。(CEO大西・CTO野口のインタビューは以下です。)
今回はまた別の「組織」という角度から、バックグラウンドも関係性も異なる新たな話者の視点を切り取りインタビューしました。
写真左:創業CTO.株式会社スタジアム取締役 小林 一樹/写真中央:シニアQAエンジニア 新倉 宏明/写真右:執行役員CPO 長田 寛司
長田 寛司 | 執行役員CPO 2010年に新卒で株式会社フロムスクラッチ(現株式会社データX)に入社後、2012年に株式会社モンスターラボで法人営業を経てプロダクトマネージャーとして4億円規模のプロジェクトの成功に貢献。2016年に執行役員、2021年にモンスターラボ及びグループ会社2社の代表取締役に就任し、APACリージョンの企業成長を牽引。2024年に株式会社スタメンに参画しプロダクト開発部部長、2025年1月に執行役員CPOに就任。
小林 一樹 | 創業CTO / 株式会社スタジアム 取締役 ヤフー株式会社の新卒一期生として入社後、グリー株式会社で執行役員VPoEとして開発部門を牽引。その後エイチーム株式会社にて新規事業立ち上げを経験。2016年にスタメンの創業初代CTOとして開発とマネジメントを担う。2020年より常務取締役VPoEとしてプロダクト組織を統括し、2023年からはグループ会社スタジアムの取締役に就任。
新倉 宏明 | シニアQAエンジニア 1997年テストエンジニアとしてスタートし、ソフトウェア品質保証の分野で20年以上を経験。グローバル環境での海外開発チームとの連携や品質保証の最適化、チームマネジメント、国際基準の導入の推進など、国内外の企業でQAチームの戦略策定やプロセス改善、品質向上をリード。2025年から株式会社スタメンのシニアQAエンジニアとして、TUNAGプロダクトにおける品質活動全般を担う。
三者三様の「現在地」
──本日はお時間をいただきありがとうございます。まず皆様に、現在の役割について教えてください。
長田: CPOの長田です。キャリアとしてはビジネス寄りの経験が多く、CPOですが実質的には組織マネジメントやピープルマネジメントが中心です。私は組織論が大好きな人間なので、今日の議論は非常に楽しみです。
小林: 創業CTOの小林です。今はグループ会社のスタジアムで取締役をしています。私はスーパーエンジニアというより「何でも屋」タイプで、組織論には「現実的な問題」としてずっと向き合ってきました。
現在のスタメングループにおいての私の役割は、現在所属している株式会社スタジアムで運営しているFANTSの業績を伸ばし、TUNAGに次ぐ「第二のロケット」を打ち上げることと、創業メンバーとして外部の視点を率直に伝えること。今日の場もその責務の一環と捉えています。
新倉: 2025年10月に入社した新倉です。30年間QA畑を歩んできました。キャリアの原点は、外資系のプロダクトでのテスト。そこから外資系の「次々と解雇される」シビアな環境で生き残る術、つまり文字通り「生き残るための生存戦略」を磨いてきました。
今回スタメンにジョインしたのは、この『生存戦略』を新たなフィールドで発揮し、組織の進化に貢献できると感じたからです。最終的に目指す「品質文化の醸成」と「組織」は表裏一体。これから本格的に試行錯誤していきます。
新加入シニアQAの「洗礼」:「思っていたより、出来ていないことが多い」
──新倉さんは、まだ入社1ヶ月とのことですが、入社当初からのギャップはありますか?
新倉: 入社後のギャップとしては、入社前に想定していた課題よりも整備途中の部分が多く、思っていたより「出来ていないことが多い」というのが正直なところです。
これはネガティブな意味ではありません。自分が想像していたより組織も若く、これからより経験値を積んでいける環境だなと。行いたかった施策が何かしらの理由で頓挫してしまったり、組織の急成長に仕組みが追いついていなかったりする。
でも、この「できていない」という事実は、「何でもできる」という可能性の裏返しなので、今はその状況を楽しみながら体感している最中です。
──その「何もない」状態から、新倉さんは何を創っていきたいですか?
新倉:私は、「品質」というキーワードで、組織を一つにまとめたいと考えています 。
開発、PdM、CS、営業と、立場が違えば思い浮かべる「品質」も全く違う。見えている視点や主語が違います。 ただ、主語が違うということは、逆に言えば「品質」というたった一つのキーワードが、組織全体を貫く共通言語になり得るということです。
「品質とは、誰かにとっての価値である」という言葉がありますが、品質とはプロダクト価値そのものです。
私の仕事は、そのバラバラな主語を一つに束ね、「我々にとっての良い品質とは、この状態である」という共通の目線を創り上げることです。
「私だけでは事足りない」。だからこそ託す「スペシャリストの意志」
──今回、新倉さんのようなシニアのQAエンジニアがジョインしたことを、CPOとしてどう捉えていますか? また、今後のプロダクト戦略において、その「品質」という観点をどう組み込んでいきますか?
長田: 私はエンジニアリングやQA、PdMといった各領域のスペシャリティを持つ人間ではありません。 現在の組織拡大フェーズにおいては、正直に言ってもう私一人では事足りず、「シニアの知見」による「標準化・仕組み化」が極めて重要になります。
だからこそ、各領域におけるプロフェッショナルが、「強い意志」を持って推進して欲しいと考えています。ただ、そういう専門知識と実行力を持つシニアは、いい意味で「クセがある人」が多いですよね(笑) 。それは当然ですが、そうした強い「個」が、それぞれの正義を突き通し「空中分解」するような事態だけは避けなければならない。
私の役割は、彼らが高いパフォーマンスを発揮し続けられるよう、「正しく推進しやすい状態」を組織として提供すること。だから新倉さんとも、QA単体の「どういう品質か」という話より、「どうすればQA(品質)の思想を組織全体に浸透できるか」「PdMやデザイナーとどう結合できるか」という議論をしています。
新倉:ちょうど今PdMチームと話しているのは、開発の初期仕様、「どういうものを作りたいか」という記述がまだ薄い、という課題です。 そこで、「受け入れ条件」つまり「できた状態」の定義をきちんと明文化する標準化を進めています。これは、エンジニアが迷わず開発でき、PdMが意図した価値をメンバーへ届けるための「共通言語」を作る作業です。この「橋渡し」こそが、組織に品質を浸透させる第一歩だと考えています。
創業者の視点:「個の強さ」が揃い、「組織の強さ」という火種が灯った
──長田さんがCPOとして「個の強い」シニアたちをまとめようと奮闘されている今、創業者である小林さんは、この状況をどう見ていらっしゃいますか?
小林: 少し前の日産のCMのような、「やっちゃえスタメン」という感じですね。開発チームは、恐らく1年半か2年ぐらい前までがとても大変な時期でした。
スタメンは元々、コロナ前に名古屋で創業した会社です。名古屋はある意味「IT不毛の地」で、業界や職種経験者がそもそもほぼいなかった。だから若手を育成するところから始めています。 加えて、早期上場のためにコストを徹底的に抑えて成長してきた歴史もあり、エンジニアの採用やブランディング、給与面でも他社に比べてコストも非常に抑えた水準でやらざるを得なかった。その弊害として、各分野で高い専門性や成功パターンを持つ人材が、足りていなかったんです。
それが今、長田さん、新倉さん、現CTOである野口さんを筆頭に、人として、技術者として、豊富な経験と専門分野を持つ「個の強さ」が、ようやく揃ってきた。
だから、私が外から見て「これはこうした方がいいのでは」と口を出すようなことは何もないです。むしろ、もうどんどんアクセルを踏んでいただきたい。その刺激は、私がいるグループ会社のスタジアムにも必ず良い影響として返ってきますから。
──新倉さんも、入社1ヶ月の視点からその「変化」を感じますか?
新倉: そうですね、入社して1ヶ月、まだ助走期間ですが、これから本格的に組み立てていくフェーズだと感じています。小林さんがおっしゃる通り、ここは「やっちゃえの世界」。長田さんも「やれない理由を探す」タイプではない。 繰り返しになりますが、ここ(スタメン)での「何もない」は「何でもできる」の裏返しだと思います。この環境で、どう理想に向けて走り、どうビジョンを共有していくか。それを今、考えているところです。
──小林さん、その「個の強さ」が揃った今、次なる課題は何だとお考えですか?
小林: 「個の強さ」は今集まり始めている。しかし、「組織の強さ」はこれからのフェーズ。全般的に見て、「組織」として「スタメンはここが強い」と言い切れる段階にはまだ至っておらず、こちらにいるお二人のような、最初の「火種」が灯り始めたところだと考えています。この火種が組織全体に燃え移り、じわじわと、しかし確実に燃え続ける「組織の炎」になっていく必要がある。そうなった時、スタメンは本当の意味で「強い会社」になれると考えています。
CPOの葛藤:「仕組み化」が「当事者意識」を阻害ずるジレンマ
──今、小林さんから「火種」という言葉がありましたが、長田さんはその「火種」をどう組織の炎にしていくか、具体的なビジョンはお持ちですか?
長田: その「火種」をどう「仕組み化」していくかという点において、私は今、強い危機感を持っています。 「仕組み化」は絶対に必要なプロセスですが、それを担えるのは、結局、新倉さんのような経験値のある方々です。彼らがガツっと仕組みを作ってしまうと、半年後、1年後、その仕組みが完成した時、多くのメンバーにとっては「自分たちの知らないところで、上の人たちが決めたルール」が出来上がっている。これが、私が最も恐れる「オーナーシップが弱い、受け身体制の組織」です。
「なんとなく上の人が作ってくれるのを待つ」空気 。
「勉強会や教え合う文化は欲しいけど、自分が教える側に回るのは気が引ける」という抵抗感。
「テックブログを書くことに抵抗がある」という消極性。
彼らが「求めている環境」と、「自分がやるか否か」という当事者意識の間に、ギャップが少しずつ生まれ始めてしまう。このギャップを超えることが「火種」から「組織の炎」につながると考えています。
──その「当事者意識のギャップ」が、具体的に見える場面が出てきていると?
長田: ちょうど先日、新倉さんが開催してくれた品質勉強会が象徴的でした。 その場には質問したいことが本当なら山ほどあったはずが、大半の質問をしていたのは一番知識がないはずの私でした。他のメンバーは、「いいと思います」「素晴らしいですね」という感想コメントで終わってしまった。
「コト」に向き合いたい人はたくさん揃っています。でも、「自分が何をわかってないかに、気づけていない」ことがある。 課題を提供されれば解決できるが、誰かから聞いた情報が「そうなんだ」で終わってしまう。これが、私が今「正しい推進を意識しなければいけない課題の種」だと思っています。
新倉: 勉強会の反応はとても良かったのですが、賛同が中心で、議論という点では正直物足りなさもありました。そういう意味での「若さ」が、まだ組織に残っていると感じます。
長田: そうなんです。仕組み化を進めた結果、個が弱くなり、ただ仕組みに従うだけの「受け身状態エンジニア」の組織が出来上がることだけは、絶対に避けなければならない。
意外とこういう組織のあるあるとも言える場面が、決して見過ごしてはならない非常に難しい本質的な課題だと思っています。
小林: そうですね、私も大手企業を含め数社を経験してきたのでイメージできますが、問題の本質はとても深いところにあります。
なぜメンバーが受け身になっていってしまうのか。それは、組織のベクトルが「人」に向かっているからだと思います。
「上の人が」とか「シニアの●●さんが」と、主語が「人」になっている限り、それは「意見」ではなく「文句」や「忖度」にしかならない。 そうではなく、「品質保証として、この基準が欲しい」あるいは「プロダクトマネジメントとして、この仕様が必要だ」と、主語を「コト」(=事象・課題)に向かせなければならない。
──「コト」に向かう。シンプルですが、実践は難しいですね。
小林: シニア側と若手側、双方の課題がありますよね。 シニア側は、「前職が、前職が」と過去の成功体験を語って「前職のノウハウ」をそのまま持ち込むのではなく、スタメンの現状に合わせて最適化する「守破離」の難しさがある。同時に、若手側もシニアの意見を「はい、分かりました」と鵜呑みにするのではなく、「自分はこう思う」と自らの「意志」を発信していく「健全な葛藤」が必要です。シニアが伝え方を工夫し、若手がそれに臆さずぶつかっていく。その両輪が回り、本質的な議論が起きた先にしか、「コト」に向かうというゴールはありません。
長田: スタメンのプロダクト組織は今、新たな成長フェーズに入り、改めて「コト」に向かうカルチャーを創れるかどうかによって、組織の強さを問われている。私もそう思っています。
コトに向かい本気でぶつかり合える。スタメンが目指す「真の心理的安全性」
小林:スタメンには創業期から受け継がれている「素直であれ」という、互いをリスペクトし学習し続けるための大切なカルチャーがあります。ただ、組織がスケールしていく中で、この“素直”が「空気を読んで波風を立てないこと」「萎縮すること」にすり替わってはいけない。
私は今、少し離れた立場から組織を見ていますが、今のスタメンは非常に「いい会社」です。メンバー同士の関係性も良好でコミュニケーションがしやすく、一緒に働く人や組織に対してのリスペクトも持っている。
だからこそ、創業時に私たち「個」が持っていた「コトに向かって本気で議論する熱量」を、今の組織に馴染む形で再注入していきたい。それは決して今の組織を否定することではなく、「個」が「チーム」の形を成してきた今だからこそ、プロフェッショナルな集団として、もう一段上の「誠実さ」を目指すという意味合いです。
長田: 私もスタメンはとても「いい会社」だなと思います。メンバーのポテンシャルもあり、だからこそ「言わないままじゃ、もったいないぞ!」と、笑顔で喝を入れる場面もあります。プロダクトの価値を極限まで高めるために、職位に関係なく鋭い問いをぶつけ合える状態を、さらに磨き上げていきたいですね。
──── 互いのリスペクトという「土台」があるからこそ、次のフェーズは「健全な摩擦」を求めていく、ということですか?
長田: はい。先日実施した社内アンケートでは、「心理的安全性が非常に高く、何でも挑戦できる」というポジティブなフィードバックがメンバーから寄せられました。これはスタメンが築いてきた大きな資産です。
ただ、私が目指したいのは、その一歩先にある本質的な心理的安全性です。それは単なる「仲の良さ」ではなく、チームの目的を通して「高い要求や本質的な議論の中で、このチームなら最高の着地点を見つけられる」と確信できる信頼関係のこと。
小林: いわば「心地よい居場所」としての安全性から、「コトに向かうための安全性」へと、その質をさらに深めていくフェーズですね。
かつてヤフーの川邊さんたちがおっしゃっていたように、組織には刺激を入れる「ナマズ」が必要なんです。CTOの野口さんや、ここにいる長田さん、新倉さんのようにプロとしての明確な意見を持って組織に刺激を入れる存在が組織内部/外部から現れることで、動物園からサバンナのようなたくましいプロ集団へと進化していけるはずです。
──── その「刺激」こそが、組織を停滞させない原動力になる。では、具体的にシニア層にはどのような振る舞いを期待されているのでしょうか。
新倉: その変化を現場で加速させるのが、私のような立ち位置のシニアエンジニアの役割だと感じています。スキルとしての牽引はもちろんですが、シニアが「私がこれを実行するから、あなたはこれを頼む」だけのトップダウンは、長田さんが懸念する「受け身状態」を加速させる。
私の役割は、「答え」や「完璧な仕組み」を与えることではなく、組織に「刺激」を与えることだと考えています。「これについて、あなたはどう思う?」とあえてボールを投げ、メンバーの意識がどう変わるかを観察する。あらゆる視点と刺激を与え続け、周囲がその変化に気づくのを支えることこそ、シニアメンバーの第一の役割だと考えています。
長田: まさにその通りですね。シニアエンジニアの方々には、単なる技術力の提供だけでなく、そうした「議論の先導役」になってほしいんです。
小林: 私は、もし組織が「現状維持の心地よさ」に傾きそうになったら、あえて「壊す」ことを厭わず、「そもそも我々はどうありたいのか」新たなアジェンダを投げ続け、ファシリテーションし、徹底的にフォローしたいと考えています。そうした積み重ねから、CTOの野口さんや長田さん、新倉さんの議論の中に、新人が飛び込んできて「私は違うと思います」と本気で言える環境が、我々が目指すべき本当の心理的安全性です。
その「健全な葛藤」のプロセスを一つひとつ丁寧に作り上げ、組織の血肉に変えていくのが、これから加わるシニアやリーダーの役割だと、私は思います。
「当たり前の水準」へ ― 思考を止めず、刺激となれ
──ありがとうございます。最後に、この「健全な葛藤」の場に、これから加わってくれる未来の仲間へ、皆様それぞれの言葉でメッセージをお願いします。
小林: 私は、一言で言うと「当たり前の水準を上げたい」。これに尽きます。 技術の水準も、プロダクトの水準も、組織の水準も、そして先ほど議論した「個」が持つ心理的安全性の「当たり前」の水準も。 この水準をもっと上げる。それこそが、創業期から掲げる「人と組織で勝つ」ための、唯一の強みになると信じています。
長田: 組織のレベルが上がることと、優秀な人材が集まることは、完全にリンクしています。どこの会社も創業時は凄いメンツだったのに、「今となっては誰でも入れる」のような状態は避けなければならない。
組織としての基準やカルチャーが磨かれ続けている状態を、ぜひ今後新しく加わってくださる方にも共に目指していただけると嬉しいです。
新倉: 私は、「仕組み化」は目的ではない、ということを伝えたい。「何も考えない」という状態は避けたいんです。ルーティンワークは仕組み化して脳の使う領域を減らし、空いたリソースを「ビジョンを語る」といった、もっと大事なところに振り分けたい。
結局、組織を当事者として見たときに、自分より目線・視座の高い組織というのは絶対に作れない。だから、自分自身が目線・視座を上げ続けるしかない。そうやって自分が大きくなることで、初めて組織も良くなっていくのだと、そう思っています。そんな変化を楽しめる方と、ぜひ一緒に働きたいですね。
最後に
スタメンでは、一緒に挑戦をしてくれる仲間を絶賛募集中です!
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