今回の記事は、KOMBUCHA_SHIPを製造しているBrewerの視点で、環境や残渣について、お話できればと思っています。
KOMBUCHA_SHIPを運営している大泉工場に入社する以前の藍染職人時代から気になっていたこと。それは製造過程で出てくる残渣(ざんさ)であり、当時から「何かに生まれ変わらないか」自分なりにちょっとした課題を抱えていました。
縁あって現職であるKOMBUCHA_SHIPリーダーの石橋と共にブルワーをやっていますが、環境に配慮しながら製造を行っているKOMBUCHA_SHIP(コンブチャ シップ)の製造現場でもやはり残渣は出てきます。
残渣の活用として、コンポストにすることで自社の「大泉農場」へ還元していますが、まずは自分にできることを考えました。
染屋の経験から導き出した答え。それは「Kombucha dye(コンブチャ染色)」
染屋時代では、素材との対話・交渉を繰り返してきました。当時から地域における文化的な特性を反映するものづくりを行っていましたが、素材そのものは副次的な要素として新しいものづくりに転用できると思っていました。
「残渣をコンポストとして創造的な解決に導きたい!」
それが「Kombucha dye(コンブチャ染色)」だったのです。
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1)残渣(素材)のポテンシャルを出来る限り活かし切る。
2)周辺環境を理解したうえで、新たな魅力的価値を創造すること。
3)各地域の多様な環境や文化、そこで育まれてきた技術を融合されること。
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コンブチャ製造の残渣を使用した「草木染め」を紹介!
染料となる物質は、布や糸にうまく染まるという染着性が必要です。植物が持つ色素を布に定着させるためには、金属イオンが必要です。そのために拾い集めた鉄くずを、製品にならないKOMBUCHAを過発酵させたコンブチャビネガーを使って鉄を錆びさせました。
草木染めをはじめる前に会社の敷地にある「鉄くず」を集め、今回の「Kombucha dye(コンブチャ染色)」について考えました。
人は昔から自然と関わりながら生きていますが、その中で食の材料を自然から採取しています。
「衣」の素材も綿や麻、絹など自然から取り入れています。「住」ももちろんです。石や鉄、木、土、紙など自然由来のものを使ってきました。病気になれば、自然にある動物や草木の中から薬効のあるものを取って、生で使ったり、煎じたり焼いて治療に使っています。すべて自然との共存で生まれたものです。
人は薬草の「煎汁(せんじゅう)」を取るために濾した布を使い、様々な色がつくことに気付き、布や糸を染めるようになったと言われています。
今回の取り組みは大泉工場という小さなコミュニティを活用し、先人たちの知恵を借り、積み重ねてきた歴史や環境などから滲みでて色が生まれる場所になれば素敵だなと思いました。
~前職でのエピソード~
前職(染屋時代)の慰安旅行で奄美大島を訪れた時のエピソードです。
糸ものを扱う方なら、奄美大島といえば大島紬(おおしまつむぎ)。
非常に精緻な織物であり、その自然環境を活かした泥染めが施され、反物として高値で取引されます。着物好きはみんな欲しがる生地です。
染屋の旅なので、スタッフ一同で泥染め体験しました。昔ながらの方法で藍染をしている自分たちにとって、手足を泥沼に入れながら染色する工程は新鮮でした。
泥の鉄分と反応して色が変化しているのを肌で感じながら、その土地と繋がる感覚は今でも忘れません。
「美しい」とは何か。
世界各地でそれぞれの土地の特色を生かした「衣」があったように、
ここKOMBUCHA_SHIPのブルワーとして、出来ることはないのか、良く考えます。
自分たちの欲望のために、インターネットで材料や道具を買い揃えるのではなく、
そこにあるもので生まれたものもまた別の美しさがあります。
自然環境を取り込んだ生活環境や技術も美しい。川口の土から泥染に適した鉄分が多い土が採掘される訳ではありません。
しかし、鉄で興した事業が盛んに営われていた、ここ大泉工場でKOMBUCHA_SHIPを製造することは唐突に聞こえるかもしれません。なんとも言えない魅力的な場所です。
有機的にモノゴトが繋がり、「新しいもの」が形を変化させて生まれるところ。
思い込めて熱された鉄がものとなり、鋳物といえば川口と地域の特色になったように、今の私たちのKOMBUCHA_SHIPとしての活動がこの土地の養分となり還元され、また新たな地平が生まれることを願ってやみません。