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アカウントアグリゲーションのその先の世界を創る

みなさんこんにちは。
マネーフォワードCTOの浅野です。

本日8月25日に住信SBIネット銀行および静岡銀行との業務提携ならびにSBIホールディングス、静岡銀行およびジャフコから10億円の資金調達に関する記者発表をさせて頂きました。
マネーフォワード、住信SBIネット銀行および静岡銀行との業務提携契約を締結

その中でも、特に当社が推進しようとしている戦略についての想いを書きたいと思います。

そもそもアカウントアグリゲーションとは?

アカウントアグリゲーション(Account aggregation) とは、 インターネットバンキングなどに預金者が保有する、異なる金融機関の複数の口座の情報を、単一のコンピュータスクリーンに集約して表示するサービスの総称。
Wikipedia(アカウントアグリゲーション)より引用

Wikipediaの定義にもあるように、アカウントアグリゲーションとは異なる金融機関の複数の口座情報を一元管理するサービスおよび技術の事を指します。
10年以上前から存在しているある意味枯れた技術であり、全国銀行協会からもアカウントアグリゲーションに関するガイドライン資料が開示されています。

APIが公開されていない金融機関においては、スクリーンスクレイピングという技術でデータを取得しているのですが、金融機関毎にサイト構造は異なり、さらに度重なるリニューアルに追随してシステムを常に改修し続けなければならない為、開発コストは勿論のこと、継続的にユーザーの方に質の高いサービスを提供しつづけるための運用難易度が高いシステムとなっています。

ただ、アカウントアグリゲーションの利便性は非常に高く、個人の点在していたお金の情報を一元管理する事が出来るようになり、全資産や前月の収支を簡単に把握出来るようになるのが特長です。
アメリカでも1500万のユーザー数を誇るmint.comを筆頭にアカウントアグリゲーションをベースとした利便性の高いサービスが多く提供され、人々のお金の課題解決を行うインフラとなっています。

1つ懸念点として挙げられるのは、アカウントアグリゲーションの中でもデータを取得する為にスクリーンスクレイピングを用いる必要のある金融機関においては、インターネットバンキング用のログインIDとログインパスワードをサーバー側でお預かりする必要があり、そこに不安を感じるユーザーの方がいらっしゃるという事です。

マネーフォワードのアカウントアグリゲーションに関する取り組み

資金移動が可能となる情報は一切お預かりしないようにセキュリティ方針を変更

お預かりする金融機関ログイン情報に関するセキュリティ方針変更のお知らせ(2015年08月14日)

これまでも単独で資金移動が可能となるログイン情報は原則としてお預かりしない方針を採用していましたが、例外としていた一部の金融機関口座の自動取得に関しても、一切お預かりしないようにセキュリティ方針を変更しました。

ユーザーサイドから見た場合に、『自分の残高情報や入出金履歴情報を見ることと、振込などの資金移動をすることのセキュリティリスクは全く違う』という感覚があります。
インターネットバンキングへログインし照会のみをする権限と、資金移動まで可能な権限は、はっきりと分離することでその問題を解決する事が出来ます。

実際、ほとんどの金融機関においては振込などの資金移動時にはワンタイムパスワードやトークンや第二暗証番号などが追加で確認されるようになっており、しっかりとした権限分離が行われています。
本当にごく一部の金融機関においてはその権限分離が行われておらず、ログインに必要な情報で資金移動まで行えてしまうケースがありました。

今回当社のセキュリティ方針を変更することで、一部のユーザーに対して自動取得が行えなくなるというご不便をおかけしてしまいましたが、やはり当社としてもいつまでも例外を例外のままにしておくわけにもいかないという判断を行いました。

当社は今後一切資金移動が可能となる情報はお預かりしません。
また、リスクに応じたセキュリティスタンダードと、ユーザーオリエンテッドな金融サービスが国内にも広がっていくことを推進していきます。

日本初、個人向け国内銀行口座すべてに対応完了

自動家計簿『マネーフォワード』が、日本で初めて個人向け国内銀行口座すべてに対応完了(2015年08月18日)

創業以来の目標であった国内銀行のすべてに対応を完了する事が出来ました。
1つ1つ対応金融機関を増やしていき、3年かけてようやくここまでたどり着く事が出来ました。
これにより国内の全ての方に対してサービスを提供する事が出来るようになりました。

これはアカウントアグリゲーション技術の進化の歴史の中でも、1つの大きなマイルストーンだと思います。
これに満足すること無く、今後もユーザーメリットを最大化させる為の取り組みを継続的に進めていきます。

Open Bank API Project

前段までの当社の取り組みは全てアカウントアグリゲーションそのものに関するものでした。

しかし現在のアカウントアグリゲーションは基本的にはスクレイピング技術を用いて行っており、参照権限のみとはいえログイン情報をお預かりする事になってしまいます。
勿論、お預かりする情報に万が一のことでもないよう、セキュリティには万全を期していますが、一方で当社としてもログイン情報を預からずに済むのであればそれに越したことはなく、その為には金融機関がAPIを公開してくださる事が必要です。

その世界を実現する為にマネーフォワードが推進しているのが『Open Bank API』プロジェクトです。

海外でもOpen Bank APIへの取り組みは始まっており、世界的な動きとなりつつあります。
金融業界全体のAPI化が実現することがユーザーメリットを最大化させる事になりますが、特にその中心となっている銀行のAPI化こそが日本の金融業界全体の発展に最も寄与する要素になると思っています。

当社のアカウントアグリゲーションにおいて、既にクレディセゾン様(セゾンカード)とAPI接続を行っています。
ログイン情報を当社でお預かりすること無くデータを連携する事が出来、セキュリティの向上と権限分離を行っており、より安心してご利用頂けるようになっています。

クレディセゾン様との協業は金融業界の中でも先進的な取り組みとなっており、他の金融機関においても同様の取り組みをして頂けるよう当社の体制を強化していきます。

具体的には、本日の記者発表の中でも触れさせて頂きましたが、住信SBIネット銀行様とはOpenAPI化に向けて両社で取り組む為のチームを組成しました。
大手金融SIベンダ様や、他の銀行様ともAPI化の協議を行っています。

銀行がAPIを公開してくださる事はユーザーメリットが非常に大きい為、まずは当社が中心となってAPI化を推進し、その結果として日本のFintech業界全体の活性化に寄与出来ればと考えています。

アカウントアグリゲーションのその先の世界

マネーフォワードは、銀行をはじめとする金融機関が全てAPIを公開して頂き、ユーザー利便性の高いあらゆるサービスがシームレスに繋がる世界を目指しています。

この活動はFintech業界のリーディングカンパニーである当社にしか出来ない事だと確信しています。
当社が先月設立したFintech研究所を中心にあらゆる情報を発信し、金融業界自体を変えていきます。

ただ、金融機関のAPI化が進むと、真にセキュアで安心出来そしてユーザー利便性の高いサービスが多く生まれるようになる代わりに、アカウントアグリゲーション自体の価値はなくなり、当社の技術的優位性がなくなり、PFM業界への参入障壁が低くなり、大手事業者や金融機関がこぞって参加してくるレッドオーシャンの世界になっていきます。

今、マネーフォワードが多大なリソースをかけて推進している「銀行APIがある世界」というのは、言い換えれば自分たちの競争優位性をなくしていく活動でもあります。

しかし、その先にこそ当社が目指すべき本質的価値があることもわかっています。

当社のビジョンは『全ての人のお金の課題を解決する』ことです。
このビジョンを達成する為であれば、あらゆることをすべて飲み込んで、それでも本質的に「ユーザー」の事だけを考えて今は前へ進んでいます。

マネーフォワードの進化と、金融業界の革新を楽しみにしていて下さい。

最後に

マネーフォワードでは、世界を変えたいエンジニアを募集しています。
みなさまのご応募お待ちしております!

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