税理士、カメラマン、ハウスクリーニング、リフォームをはじめとして、20以上のカテゴリーを展開するマッチングプラットフォーム「ミツモア」の急成長は、スピード感のあるプロダクト開発に支えられている。毎日のように新しい機能がリリースされるスピード感を実現しているプロダクト開発コミュニケーションの秘密は何なのか。プロダクト開発を牽引するCEO、CTOに話を聞いた。
石川彩子
柄澤史也
ミツモアのプロダクト開発の強み
ーーはじめにミツモアのプロダクト開発の強みはなんなのでしょう?
柄澤:ミツモアはこれまで開発速度を重視してやってきたこともあり、ほかと比べてかなり速いと思いますね。副業で手伝ってくれているエンジニアも、本業の会社と比べてgithubの速度が尋常じゃないと言ってくれています。
ABテストを1日で複数実装して途切れなく行ったり、トップページの大規模リニューアルを1か月程度でやってしまったり。
石川:スピードもそうですけど、実現したい世界を実現する力がすごいなと思います。しかもなるべくシンプルな実装で。
普通にやったら無数のシステムが乱立してメンテナビリティも低ければ、バグも出れば、使いこなせもしないものができてしまいそうなところを、美しくシンプルで汎用性も高い単一のシステムで解決している。
汎用性の高いマッピングシステム
柄澤:(石川)彩子さんが言っているのはマッピングシステムのことですよね。
ミツモアのサービス提供の流れは、依頼者がミツモアの用意した質問に回答することで依頼内容が作成され、依頼内容に基づいて事業者が見積を出すというものです。
マッピングシステムというのは、依頼者の回答の組み合わせによって処理を変更する機能です。
石川:マッピングシステムはすごくて、汎用性が本当に高くて、すべてに使えるんですよ。家の延床面積と何階建てかを答えただけで、外壁の面積が勝手に計算されるとか。
事業者さんは外壁の面積が知りたいけど、依頼者さんは外壁の面積を知っていることは少ないわけです。そういった複雑なあらゆることをつなぐのをマッピングシステムという一機能で解決してしまっているのはすごいなと。こんな美しいものがよくできたなと。
プロダクト開発のコミュニケーション
柄澤:僕のモットーとして、こうやりたいと言われた時にできないですとは言いたくなくて、やり方はエンジニアで決めさせてもらうことが多いんですけど、やりたいこと自体を否定しないように心がけています。過去の経験上、難しくても意外といけるということはあると思っていて、真剣に考え抜くとうまくいくこともあるので。
やりたいと言われたときにそれはちょっと、と思うこともあるのですが、実現したいこと自体は間違っていないことが多いので、なんでそれをやりたいんですか?というコミュニケーションをしていくと、本当に実現したかったことが見えてきます。
ーービジネスサイドとのコミュニケーションを大切にしているんですね。
柄澤:コミュニケーションを大切にしようとエンジニアチームでも言っていて、実装してみたら思っていたものと違うことはいろんな会社でありますし、過去にはミツモアでもあったわけですけど、そういったことは最近なくなっているように思います。
あんまり僕は「ビジネスサイド」という考えをしていなくて、そもそも同じものを作っていると思っているので。非エンジニアの人もやりたいことは明確で、でもプログラミングの経験がないから勘所がわからないというだけで、そこに自分のようなエンジニアが入って議論をする必要があると考えています。
ーープロダクト開発はどういったコミュニケーションで進んでいくのでしょうか?
柄澤:こういうことをしたいというニーズが起点になるのですが、それをそのまま実現するのではなく、嚙み砕いて、よりきれいな実装をして、最終的にみんなハッピーになるにはどうしたらいいかと考えるところから始まります。
こういう機能だとスケジュールはこれくらいで、今の問題は何か、それに対して何をするか、メリット、デメリット、インパクト、議論点などを洗い出します。
そこからキックオフをして、週次のミーティングで進捗確認をしていくという流れです。
ーーお話を聞いているとプロダクトマネジメントがうまくいっている印象を受けるのですが、何か課題はあるのでしょうか?
柄澤:プロダクトのクォリティは高いと思っています。アウトプットも、開発プロセスも洗練されていっているように思います。足りないなと思うのは、全体を通した優先順位付けを開発・ビジネスの両面からすることですね。
石川:部分最適が進んでいるがゆえに全体最適ができていないという面はたしかにありますね。コアな部分は作りこんでいるので質が高いのですが、全体を俯瞰して見てどうするか、ユーザーエクスペリエンス全体の設計をするのはあまり進んでいないように思います。特にリピートの体験はまだまだですね。
柄澤:いろいろなプロジェクトが同時進行していて、3か月~半年程度の中規模スコープでのKPIに対する施策で改善していくというアクションが多く、それぞれの施策は正しいのですが、積み上げていくと正しくないものができてしまうというか。便利を積み重ねても便利になるとは限らないというか。
ユーザー体験を一貫して見る、ユーザー体験を設計するというのはあまり強くない気はしますね。ユーザーの価値をひたすら追求する専任の人が社内にいないので、プロダクト開発にかかわって、ユーザー体験を考え抜いた経験のある方が入社してくれるとうれしいですね。
石川:真実を突き詰めてぶらさない力があれば未経験の方でもバリューを出せると思います。あとはそれをちゃんとコミュニケーションする力。
いろいろなことを気にして会社全体、プロダクト全体で起こっていることを理解する。それぞれのチーム状況に対する共感力は絶対に必要で、でもユーザー体験という真実は突き詰めてぶらさない。
ーー将来的にはどういったコミュニケーションになるのが理想なのでしょうか?
柄澤:現状の流れにくわえて、プロダクトマネージャーチームが全体を把握していることが重要だと思います。
全プロジェクトのミーティングにプロダクトマネージャーチームのメンバーが誰かしら参加している状態が理想です。そしてプロダクトマネージャーチームミーティングで情報交換がなされ、コンフリクトが解消されているとよいと思います。
ーープロダクトマネージャーチームを組成していくことが今後重要になりそうですね。
柄澤:将来的には3、4人くらいのチームを作れるとよいと思います。
石川:はじめからチームになっていることがマストではないと思うので、まずは真実を突き詰められる人が中心になって、徐々に全体を見られるようになっていくとよいかと。
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