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たまにはロングインタビューなど。メイキップの飽くなき挑戦。

アパレル業界の「さ・さ・げ」に新たな切り口を。メイキップが取り組むファッション業界の課題とは?

アパレル産業のBtoCのEC化率は、2017年で11.5%(電子商取引に関する市場調査、経産省(2018年))。物販系分野全体のEC化率が5.7%であることに鑑みれば、アパレルはかなりEC化率が進んでいるといえる。それに伴いEC独自の業務が発生したり、店舗では発生しない課題も生じている。

アパレルの世界には業界用語で「ささげ」と呼ばれる業務がある。「(さ)撮影」「(さ)採寸」「(げ)原稿作成」の頭文字をとったものだ。撮影はその名のとおり商品の撮影。採寸は商品の寸法を測ること。原稿作成は商品の説明を記すことだ。これらの業務は店舗販売では基本的に発生しない、EC独自の業務である。

また、消費者がECでアパレル商品を購入するときにネックとなるのがサイズの問題だ。S、M、Lや号数などの表記が一般的ではあるものの、ブランドごとにサイズが統一されているわけではなく、「こちらのブランドではMだがあちらのブランドではL」といったことは珍しくない。海外ブランドならセンチ表記かとインチ表記かといった問題もある。 そんなアパレルECの課題に取り組むファッションテック企業が、当社メイキップだ。


ECサイトでも自分にピッタリのサイズがわかる

当社が展開するサービスは2つ、「unisize(ユニサイズ)」と「SASAGE.AI(ササゲエーアイ)」だ。 まずはunisize。身長、体重、年齢、簡単なアンケートに答えると、買おうとしているアイテムのうち、どのサイズが自分にぴったりかわかるというサービス。主にアパレルECサイトの商品詳細ページに導入されており、料金体型はサイズ推奨数に応じた課金性。2016年2月からサービスを開始し、2019年1月時点で約70サイトで利用されている。


ECサイトの商品詳細ページで、いざ商品を買おうと思ったときにサイズで悩んだ経験がある人は多いだろう。とくに初めて購入するブランドだと店舗で試す機会がなかったり、海外ブランドだとサイズ表記が日本と異なっているケースもある。そんなときにunisizeがECサイトに導入されていれば、自分に合うサイズがわかる。

unisizeの使い方は次の通り。

unisizeが導入されているECサイトの、商品詳細ページにあるunisizeのバナーをクリック。性別、お気に入りブランドサイズ、身長、体重、年齢、身体特徴(腕が長いなど)を入力すれば、自分のオススメサイズを紹介してくれる。洋服のシルエットも出るようになっており、Lだと膝が隠れるけど、Sだと膝が出る、といったこともシルエットで見て把握できる。サイズのレコメンドエンジンは国内外に複数あるが、「丈感含めた着用感をシルエットを表示して教えてくれるサービスは当社のunisizeだけ」


とはいえ同じ身長や体重でも足や腕が長い人がいるように、身長や体重といったデータだけでは、正確なサイズが割り出せないのでは?そこの補正はどうしているのか。


「unisizeでは身長、体重、年齢を聞いていて、そのユーザーの骨格を推測しています。何百体という体のサンプルを色々なところから入手して、人体の構造を研究して、身長、体重、年齢がこういう人はだいたいこういう体型で、腕の長さが身長の何%、といった情報がわかるようになっています。そこに身体特徴を聞くことでさらに補正。そこに洋服の情報を組み合わせて、膝が出たり丈感はこうなる、といった具合で洋服をレコメンドしています。」


商品サイズのデータ管理に苦戦するアパレルブランド

unisizeは自分の体型にあったサイズをレコメンドするサービス。そのためにはユーザのデータはもとより、各ブランドの洋服サイズを把握する必要がある。

そもそもアパレルブランドのサイズ感は各社でまったく異なっている。各アパレルのサイズは「腕の長さはxxセンチ、肩はxxセンチのトルソーを、私たちはMサイズと定義します。そこから何センチ上げた物をL、何センチ下げた物をSとします。」という具合に、各ブランドごとが独自に規定し、各社のサイズとしている。


unisizeをアパレルブランドが導入するためには、アパレル側が各洋服の寸法を把握していないと導入できない。ところがこの点、実際には「アパレルメーカー側が、実際に作っている洋服のサイズを細かく把握していないことも多い」のが現状。


unisizeの事業をはじめてみて驚いたこと、それはアパレルブランド側が製品の正確なサイズ情報をもっていない、という現象が多々あるのです。実際に同じ商品を何着も作っているのだから情報がないということはないはずなのですが、製造と販売が切り離されていることもあって、少なくともECサイドの方々はデータとして管理していない、というのです。


EC管理者が正確な商品情報をもっていない。そうすると、unisizeを導入してユーザに最適なサイズ情報を提供するということができない。そこで当社が考えたソリューションが「サイズを簡単に計測できるサービスを作る」ということだった。このアイディアが2つめのサービス「SASAGE.AI(ササゲエーアイ)」。


ささげのコストは1/3に。時間も大幅に短縮

サービス名にもなっている「ささげ」とは、「撮影」「採寸」「原稿作成」を意味する業界用語。

撮影はその名のとおり商品の撮影。採寸は商品の寸法計測。原稿作成は商品説明の文章だ(ざっくりいうと、ECサイトに載っている写真や文章のこと)。ものにもよるが、通常のささげは1アイテム3000〜4000円程度で提供されることが多く、SASAGE.AIはこれを早く、安く、簡単にしていこうというコンセプト。


SASAGE.AIは、AIを使ってささげ業務の効率化を図るクラウドサービスです。ささげしたい商品をハンガーで吊るして、写真を前後から撮影。そのデータをSASAGE.AIにアップロードすれば、瞬時にサイズが判明するという画期的な仕組み。

撮影の際には、10cm単位のドットが打ってある背景でハンガーに吊って撮影。肩幅やバスト、ウエスト、裾がどの部分であるというのをAIが自動認識することで、サイズを計測している。

撮影した画像は単に白抜きされるだけではない。3D技術を用いて、自動でモデルが着用しているイメージも生成できる。つまり、商品の前後の写真を撮影するだけで、洋服の採寸、実際に人が着用してるかのような写真も作ってしまう。

さらにSASAGE.AIでは、原稿(商品説明文)の自動生成も可能。たとえばワンピースを撮影すると、写真から特徴点を抽出して、これは黒のワンピースで型はマーメイドで、おでかけ用途にピッタリ、といった具合に自動で原稿を作りあげる。

SASAGE.AIを利用していただければ、ささげはすべて自動的にやってくれます。一般的なささげは、1アイテム3000円程度が相場ですが、SASAGE.AIなら撮影・採寸・原稿すべてやっても1000円程度で済みますから、コストは約1/3で済みます。 また通常のささげは、だいたい1週間程度時間がかかります。SASAGE.AIならモデルが着用したかのような画像もすぐにつくれますし、原稿作成も一瞬です。なので時間の節約にも繋がりますね。


そもそもささげ業務は専門業者に委託するケースは少なく、フルフィルメント(ECにおける商品販売のための一連の業務)業者が実施しているケースも少なくない。基本的にアパレルは倉庫や物流業者に在庫を一旦預けることとなるため、彼らがささげ業務をやってしまうのがもっとも効率がいいのだ。

とはいえフルフィルメント企業としては、EC販売の増加に伴って作業は増えるものの、スピード感は必要だし金額は上げれないしで、ささげの取扱いは難しいのが実情。

たとえば倉庫では、棚が自動で動いたり、ロボットみたいなテクノロジーがどんどん導入されている中で、ささげという非効率な業務をやってる場合じゃない、という危機感があるようです。なのでささげ業務をしているフルフィルメントの会社にSASAGE.AIを提案したら、安いし早くなるしいいよね、と受け入れるようになってきました。
労働集約性がECのボトルネックになる

代表の柄本がメイキップ社を創業したのは2015年。当時のEC化率はまだ5%程度だったものの、これが将来15%、20%に伸びていくと言われていた。しかしそこで柄本が疑問に感じたのは、「サイズがわからないのにECで洋服が買えるのか」ということだった。たしかにECは便利でこれから成長していくポテンシャルがある。しかしサイズがわからないということがボトルネックになれば、成長するものも成長しないのではないか、というのである。逆に言えば、サイズがわからないというボトルネックを解消することはビジネスチャンスである、ということだ。

アパレル側のボトルネックと、消費者サイドのサイズがわからないという課題を解決するべく、柄本はメイキップを創業。unisizeの事業に乗り出した。

アパレルのサイズ問題を解決しようと思っても、創業者たちはアパレルで働いた経験はありませんでした。なので社会科見学ではありませんが、色々なアパレル企業を見学させていただきました。そのさいにびっくりしたのは、このデジタルな時代にアナログな作業がなんと多いことか。すごく労働集約的だったんです。 しかもお話を伺うと、人が全然足りないという。かといって給料を上げる余裕もない。この状態からEC化率を上げようと言っても、絶対にムリじゃないかと思いました。だからこそテクノロジーを使った業務効率の改善が入る余地を、大きく感じたのです。

また柄本は学生時代にラグビーをしていたこともあって、「ウエストの割に太もものサイズが大きくなってしまう」そう。そのためサイズの合うパンツ探しに苦労したという、サイズに対する原体験ももっていた。

そうして当社が最初に開発したのがunisizeだ。しかし前述したように、ささげ業務はECを展開するうえで、アパレルに重くのしかかっている。unisizeを展開する上の障害を解決するという意味でも、SASAGE.AIを開発するに至った。


テクノロジーとユニークなアイディアで業界の課題に取り組む

SASAGE.AIの機能は、2019年2月現在まだ完成していない。採寸に関してはさまざまなカテゴリーで対応できるものの、モデル画像生成に関してはワンピースが中心。他のカテゴリーは2019年から順次展開予定となっている。原稿についても、まだAIが完璧な文章を作るということは難しく、人の手による修正が必要。とはいえ、その精度は上げていきたい。SASAGE.AIでECに登場する商品が増えれば、unisizeはさらに出番が増えるという、いい循環になっている。

unisizeやSASAGE.AIは基本的には、アパレル業界の課題を解決したり、業務を効率化しようとするサービスです。当社は他の会社がやらないことを、我々独自のアプローチでやっていこうというカルチャーです。課題をみつけたけど、誰もやっていない、じゃぁ僕らがやるしかない、という感覚です。 アパレルのサイズ周りって物凄く面倒くさくて手間もかかるんですけど、誰もやってこなかったところなんですね。ささげに関しても同じくで、どこかの会社が物凄い技術力で、同じようなことをやってたいたら二番煎じになってしまう。ただ色々調べていくと実際には、誰もやっていないし、課題には改善の余地があったので、取り組みはじめました。 今後もそういう課題があって、誰もやらなくて、ユニークなアイディアで解決できるものがあれば、やっていきたいと思っています。


アパレルのEC化率は順調に推移しており、今後も安定的に拡大していく。他方で日本の労働人口はこれから減少の一途を辿る。付加価値を生まない業務や、非効率な業務に人員を割く余裕はないし、そもそもなり手もいない。そのため新しく登場するテクノロジーを使って、業務を効率化できないか考えることは、国の成長という意味でも必須の作業だ。

当社はアパレルのささげ業務や、サイズ問題という課題を、テクノロジーを使って解決している。今後も業界の課題に、テクノロジーを使って取り組んでいく。決して消費者から目立つことをしているわけではないが、アパレル業界の健全な発展なためには、欠かせないサービスとなる可能性を秘めている。

今度ECで洋服を買う機会があれば、unisizeが導入されていないか、ぜひチェックを!

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