この記事はログラスデザインマネージャーの高瀬が投稿したnote記事です。
こんにちはログラスでデザインマネージャーをしている高瀬です。 本日はログラスアドベントカレンダーday 24! クリスマス・イブに合わせて「デザインへの恋と愛」というテーマです。 皆さんはデザインを学んだり実践したりする中で、
「あの人、上手すぎ…」 「もっと上手くなりたい」 「自分の方がもっと上手くできるのに…」 と感じた経験はありませんか? 私はたくさんありました。
デザインのスキルや仕事の進め方は教えてもらえる機会は多いのに、こういった 嫉妬心 / 劣等感との付き合い方 、それが及ぼす キャリアへの影響と関係については誰も教えてくれない。 デザイナーが抱える嫉妬心や劣等感はデザインに対する「恋」と「愛」に分類され、デザイナーの成長において重要な役割していると私は感じています。
「デザインへの恋」とは、自分自身がデザインを上手くこなすという自信や、常に向上心を持って挑戦を続ける情熱です。自分が一番上手くデザインできるんだ!っといった、デザインに恋い焦がれている状況。
一方「デザインへの愛」とは、チームや組織への貢献としての愛情、このデザインを任せたい。自分より優秀なデザイナーを採用したいっといった、自分以外の誰かにデザインを任せるという組織とデザインへの献身です。
この記事では、私が経験・観測したデザイナーのプライド / 嫉妬心と成長のマインドセットについてを紹介します。デザインへの恋と愛の相互作用を理解することで、デザインの世界における自分の役割をより深く理解し、創造性と成長を促進するキッカケとなれれば嬉しいです。
嫉妬心と劣等感 デザイナーとしてのキャリアを始めたばかりの頃は、より優れたデザインを作り出す能力を身につけたいと強く望んでいます。この初期段階では、自己の成長意欲が強く、憧れのデザイナーや作品に対する刺激も非常に強いのが特徴だと感じています。
熱心な努力と実践を重ねることで、徐々に自分のデザインスキルが向上し、少しづつ思い描いた通りのデザインを作り出せるようになります。この段階に至ると、デザイナーは自己の成果に対して一定の自信とプライドを持ち始めます。
しかし、この成長とともに、他のデザイナーや作品への嫉妬心・絶望感が芽生えることもあります。「あの人のデザインうま過ぎ」「なんで自分がアサインされないんだ」「表彰されなかったのが悔しい…」これらの感情は、しばしば否定的なものとして見られがちですが、実はデザイナーの創造性と成長の重要な源泉となり得ます。 この感情は、自分自身のデザインスキルやスタイルに疑問を投げかけ、常に向上しようとする強い動機づけとなります。嫉妬心を創造的なエネルギーに変換することで、デザイナーは新しい技術の習得、スタイルの探求、さらには革新的なアイデアの発想に挑戦することができます。
デザインだけではなく、多くの人に共通することですが、嫉妬心 / コンプレックスなどの 劣等感 と、何かを成し遂げたいと思う 使命感 は表裏一体だということです。劣等感はしばしばネガティブな印象が大きいのですが、そこに秘めているパワーを正しく導けば大きな原動力へと変換できる力があります。
【例】 あの人のデザインに圧倒的に劣っている。(劣等感)→より良いデザインを自分が提供するためには何をすべきか(使命感)
【私の場合】 父の死で何もできなかった虚無感(劣等感)→ 世の中のペインを解決できるデザイナーになりたい(使命感)
劣等感は、デザインの世界での自己向上と刺激的な挑戦を促す原動力となるのです。
※参考文献:小野壮彦「人を選ぶ技術」
しかし、重要なのは嫉妬心 / 劣等感を健全に扱うことです。嫉妬心を他人に向けて負のエネルギーとして発散することは避けるべきです。「あのデザインは大したことないよ」「あの人はわかってない」「自分のほうがすごいぞ」っといった嫉妬心のダークサイドに落ちては行けないのです。 嫉妬や劣等感を感じた自分を受け入れ、その悔しい思いを胸の内に秘める。その代わりに、その感情を自身の成長と学びの機会に変えることが重要です。 これこそが、デザインの道において自己実現へと繋がるポイントだと感じています。
キャリア デザイナーのキャリアはおおよそ、デザインへの恋(自己の成長)から始まっていくのが多いと感じています。 やはりデザイナーという職種は、自分で手を動かして作ることを生業とする職種なので、いいクリエイティブを作りたい、もっと良くしていきたいと思うのは必然です。
しかし、デザイナーとしての成長と共に、この恋は「愛」へと進化します。これは、個人の情熱を超え、チームや組織全体への貢献へと変化するプロセスです。
デザイナーが経験と共に学ぶ重要な要素の一つは、自分のデザインがチームの一部であるということです。個人の才能やビジョンが重要である一方で、チーム全体の目標やプロジェクトの成功に貢献することも同様に重要です。このバランスを学ぶことは、昨今の組織におけるデザイナーの成長において不可欠です。
「デザインへの愛」とは、組織やプロダクト/サービスへの深い関与と貢献を意味します。
「この事業、組織をより成功に導くために、優秀なデザイナーに牽引してもらいたい。そこは自分じゃなくていい」 「事業へのデザインの投資を最大化するために、Aチームのデザイナーさんは別のチームに行って貰わないといけない」
こういった、プレイヤー(デザイナー)としての自分を捨てて、成すべきために何をするのかを考えて実行することが求められます。 これには、他のメンバーの意見を受け入れ、共同で創造的な解決策を見つける柔軟性も含まれます。時にはリードをとり、時にはサポートすることで、プロジェクト全体のバランスを取ることも重要です。
この恋から愛への移行は、デザイナーとしての成熟を示します。個人の情熱をチームの成長に注ぐことで、より大きな影響を与え、自分自身も成長することができます。
ここで注意しておきたいのは、恋と愛の状態のどちらかが優れているわけではないことです。 恋は稚拙で愛の方が優れていると捉えてしまうかもしれないですが、「デザインへの恋」をひたすらに追求し、 誰もが追いつかないプロフェッショナルの域に辿り着くことも素晴らしいキャリアの1つ です。
また、恋か愛かの2択しかない訳ではありません。 ひたすらに恋してる状況と愛してる状況は共存する事も可能です。 私はこの状況に近いのかなと感じています。以下の2つが共存している感覚が有ります。
①自分がデザインのトップラインを伸ばすんだという感覚 ②組織にとって永続的に良いデザインが創出される組織を作るために誰かに任せて行きたい(自分じゃなくていい)という感覚。
このバランスや環境を見つけることは、デザインの道における重要なステップとなります。
環境 デザインにおける「愛」への進化は、適切な環境やタイミングがなければ達成が難しいことがあります。 多くのデザイナーは個人としての成長やプロジェクトへの貢献を重視しますが、それだけでは組織全体としての「愛」を育む環境を作ることは困難です。
私はありがたいことに今の組織(ログラス)と出会えたことで、デザインへの愛やデザイナーとしての高い視座を学ぶチャンスに巡り会えました。 参考までに記事を掲載しておきます。
私の場合、一人目のデザイナーとしてログラスに入ったときは「自分がログラスのデザインをリードするぞ!」っと気持ちで息巻いておりました。ですが、実際には事業の成長速度がすごく、デザインを一人で回すことが困難でした。このことが私にとっては衝撃的で「自分のエゴ(自分でデザインする)がボトルネックになってはいけない。この組織に永続的に続く良いデザインを作れる環境を作るのが自分の責務だ。」と一気にデザイナーとしての視座が変わったのを覚えております。
ただ、このような環境や体験に巡り会えることはとても稀だと思います。
最近は少しづつ増えてきていますが、日本においてはデザインを組織全体の成長や目標に結びつけるための実践的なチャンスやポジションがまだまだ少ない印象をうけます。具体的な役職としてはデザインマネージャーだったり、VPoD(Vice president of design)の役割です。 このため、デザイナーはしばしば「恋」の段階に留まり、チームや組織への「愛」へと進化するチャンスが少ないのだと思います。
一方で、適切な環境・ポジションが存在しないことではなく、デザイナー自身がその環境を見つけ、それを「愛」へと変換することができていないことにもあるかもしれません。 デザイナーの多くは自分がデザインを作ることに大半の時間を費やしている印象が強いです。 プレイヤーとしての自分を捨てて、より大きなビジョンの達成のために組織のエコシステムにどうデザインを接続していくかもっと向き合う必要性があります。 デザインマネージャーなど組織づくりにフォーカスする役割・ポジションはまだまだレアで少ないですが、デザイナーのキャリア先として、デザインマネージャーという選択がもっと当たり前になっていき、活躍の場を増やせるといいなと感じています。
おわりに 改めてですが、もし自分の嫉妬心や劣等感で悩んでいる人がいれば、それはデザイナーの成長として正しく、大きな原動力になります。
デザイナーのキャリアとしては、デザインへの恋心を突き詰めてプレイヤーとしてプロフェッショナルになる道もあれば、自らデザインすることをあえて捨て、組織におけるデザインへ献身する道もあります。
以上、この記事が誰かのためになれれば嬉しいです。