経営管理クラウド"Loglass"のお客様対応工数を最適化してNPSも上げた魔法のようなCSOps実践例|ヒルマㅣPoker Garden
こんにちは、朝でも夜でも比留間(@hiruma_poker)です。 この記事は【株式会社ログラス Businessチーム Advent Calendar 2022】の19日目の記事、の続編となります。 ...
https://note.com/hiruma_poker/n/n46c18266868e
この記事はログラス カスタマーサクセス部の比留間が投稿したnote記事です。
こんにちは、朝でも夜でも比留間(@hiruma_poker)です。
この記事は【株式会社ログラス Businessチーム Advent Calendar 2022】の19日目の記事、の続編となります。
生成AI/LLMチームの加賀谷さん(note/Twitter)に「ビーフストロガノファー」と「きんぴらごぼう」の話を紹介してもらい、自分も「きんぴらごぼう」にならねばならぬと、日々がんばっております。今回はそんな一端をお伝えしていきます。
NPSは継続的に取得してプロダクト・サービス改善に繋げていく指標ですので、noteでも取り上げ続けていきたいと思います。
先の取り組みを通じて、2022年10~11月に収集したNPS(ネットプロモータースコア)調査ではプラスの結果を得ることができました。もちろんすべてがCSの貢献ではなく、プロダクトの貢献や、ペインの強いお客様を見つけてきてくれたマーケティング、セールスの貢献によるところも大いにあります。
上記は、前回のnoteの再掲です。プロダクトローンチ2年半でこれだけの評価をいただけているのは、PMFしている証拠であると思います。
さて、早速結果を発表します。
NPS結果:6.4(推奨者スコア-批判者スコア)
※小数点第2位四捨五入
と前回より、2.3ptアップしました!
※ツイートは「1年間」ではなく「最新の」ですね。
調査概要
・期間:2023年3月30日~2023年4月14日
・対象:導入から3ヶ月以上経過した顧客の管理者
・調査対象企業回答率:82.4%
・調査対象回答者回答率:45.7%
次の章から、どのようにしてこの結果を得るに至ったのか、主にCSOpsの側面からお伝えしていきます。
漸進的な改善というよりも、変更前後の差分、そして好影響が大きいので「改革」と呼ばせていただきます。
この節が、このnoteの最大の肝です。サマリの図解から出してしまいましょう。
ログラスでは、SaaSビジネスで一般的なオンボーディング・アダプションという区切り方を元にしつつも、お客様がお客様自身の状況(繁閑・活動テーマなど)にあわせて支援モードを選択していただくという仕組みを展開しています。
この仕組みの展開以前は、導入完了後のお客様に対して、導入時に行っていた週次定例を、お客様ごとに様子を見ながら隔週、月次、2か月に1回、3か月に1回、あるいは定例をやめて都度化、と順次減らしていきながら落とし所を見つけるというラフな活動をしていました。
運用に不安のあるお客様であれば、月次定例を維持して手厚くサポート、不安なく運用いただているお客様には定例をやめ必要に応じてお会いする、という柔軟なお客様支援サービス(≒カスタマーサクセス対応)をしていました。ある種、これが前回までの高いNPSに繋がる要因のひとつとも思います。
しかし、今回の改革では、そうした柔軟なお客様支援サービスのかたちを整え、ゆるやかに形を作りました。
それが、支援モード:①運用モード・②活用モードの定義です。
①運用モードでは、お客様との会議体は四半期に1度、1.5時間の定例会です。いわゆる、クォータリービジネスレビュー(以後QBR)・エグゼクティブビジネスレビュー(以後EBR)への移行です。QBRのアジェンダなどの詳細は、このnoteの反響が良ければ記事にするか考えます。
②活用モードでは、お客様の経営管理高度化テーマに応じて、お客様とLoglass活用プロジェクトを立ち上げ、推進します。こちらも、詳細を書くと本筋から逸れてしまうためは反響に応じて検討します。
QBRについては、以下の記事の"⑭アダプションは高単価SaaSのQBRが参考になる"の節を参照ください。
QBRを通じて、活用提案や新機能の紹介、そして解約阻止または契約拡大のための提案を整理し、時にはセールスが同席してエクスパンション提案する、という動き方がアダプションでは一般的です。
これはエンタープライズ向けのSaaS企業が先に進んでいる印象です。
LayerXのバクラク事業は単価が手頃でSMB顧客の比重が高い・かつ一度業務にはまれば解約されにくいため、オンボーディング側が先に整備されたのだと思います。
そもそも国内では高単価SaaSはまだまだ少ないのですが、少しずつ日本のSaaS企業でも高単価な製品が増え始めているため、今後アダプションフェーズのノウハウがどんどんと開示されていくでしょう。
引用|LayerX(バクラク)のカスタマーサクセスから2023年の最新のCS戦略を理解しよう
上記のように、言及されておりますが、本noteはこの文脈に乗るものと筆者としては考えています。
前回のNPSが示すように、既存の柔軟なお客様支援サービスも、成果(アウトカム)は出ていました。しかし、おかげさまでお客様数が爆発的に増えており、そうなるとお客様との会議体も比例して増えていきます。
もちろん採用数を増やし、既存のお客様支援を継続することも戦術のオプションとしてありますが、CS人件費は原価に該当させるのがSaaS事業では一般的ですので、SaaS KPIメトリクスは悪化します。つまり、投資家からの評価は下がるということです。
会議体の開催も、準備・実施・後続対応・その他リスケジュールといったタスクを積み重ねると無視できない業務ボリュームになっていきます。
より素晴らしいSaaS事業、投資家から評価される事業とするためには、より強靭で生産性が高く、スケーラビリティのあるお客様支援サービス(≒カスタマーサクセス)のオペレーションを構築しなければなりません。
こうしたことを背景に、ログラスのアダプションにおける取り組みに私がテコ入れをはじめることになります。
私自身もアダプション担当の1人として、既存の柔軟なお客様支援をしていました。多くのお客様と会議体を開いた経験における気付きとして「月次定例を開催するが、お互いアップデートがほとんどないことがある。」ということが分かってきました。
そしてそれを深ぼると「予算策定時期などによるお客様の繁忙」という事実と、示唆として「Loglassを用いた経営管理業務の月次周期性」によるものであることが見えてきました。後者を補足すると、毎日使うツールであれば使用頻度に従いなにがしか新たな要望や質問も上がりやすいですが、月次で使うツールでは要望や質問が思い浮かびづらいのです。
つまり、経営管理クラウドベンダーとして、経営管理・経営企画の皆さまにサービス提供する上で、どうしても動かせない制約条件があるということです。
既存の柔軟な運用においては、大してアップデートのない密度の薄い定例会であったり、リスケジュールというかたちで現れ、カスタマーサクセスの生産性を蝕んでいたのはこれらの制約条件に反していたことが真因だと考えました。
この問題を解決するために、私は自分の知識・スキルの中にある大きく2つの概念から着想を得ました。それは①サービスサイエンスとサービスレベルオブジェクティブ(以後SLO)と先述の②QBRです。
サービスサイエンスに関しては以下を参照したり、Google検索してみてください。サービスサイエンスは前職のLTS時代に学びました。
SLOに関しては以下を参照してください。
つまるところ、サービスへの満足・不満は、サービス内容そのものではなく、受益者のサービスに対する期待値と、提供者が提供するサービスの知覚価値の乖離によって起きるということです。
1泊7,000円のビジネスホテルのフロント対応が素っ気なくても「そんなもんか」とあまり気にならないですが、1泊30,000円のリゾートホテルのフロント対応が素っ気なかったらがっかりしますよね。
サービスの受益者、消費者(カスタマー・コンシューマー)はサービスに対して事前期待を持っており、それをしっかり把握して、サービス設計・改善していきましょう、というのがサービスサイエンスのコンセプトになります。
さて、話を戻します。ログラスのカスタマーサクセスの既存運用に関して、お客様とSLOを明示的に合意はしていませんでした。しかし、お客様との過去の接点などで、暗黙的にサービスレベルの期待(月次定例でケアしてくれる、Slackでメンションして質問したら返信してくれるなど)はあります。
これを、ログラスのアダプションフェーズのお客様に対して、すべて期待値調整していく必要があります。ログラスはまだSLOという用語を使ってお客様に示していませんが、章の冒頭で示した図解と補足スライドを用いて、お客様への期待値調整を行っています。
QBRは、期待値調整に用いるひとつの活動に過ぎませんが、これまで月次定例で行っていたアジェンダを内包しながら追加も行っています。これにより、お客様は既存のサービス(月次定例運用)の改悪ではなく、よりスマートなかたちへの改善と捉えることができます。
さらに、なにより重要なことは、お客様の繁忙・閑散期に合わせることです。
ログラスのお客様(経営企画チーム)は、少なくとも年間の半年間ほどは多忙を極めます。来期予算策定という(上場企業であれば)最終期限が決して揺るがない業務を、長いと半年、短かくても3か月弱ほどかけて行います。また、年次決算説明会は年度締めからおおよそ1か月半後に開かれますので、振り返り、分析、資料作成、経営報告を一気に行います。
ほとんどのお客様は、こうした時期に「Loglassをもっと活用しよう!」というリソースもないですし、そんな気分にもなりません。
たとえ忙しくても、ログラスのCSと月次で30-45分くらいは時間を取って会ってくれるかもしれません。
しかし何度も繰り返すように、時間を設けても「特に新しい質問、要望はありません。」となってしまい、CSも最近リリースした機能を少し紹介するだけです。さっと紹介しても、よほどクリティカルな機能でなければ、お客様は新しく使い始めないことは、このnoteをお読みのCS職経験者であれば、共感するところでしょう。
であれば、3か月に1回の会議体に変更し、お互い省エネで運用しつつ(運用モード)、「予算はまとまったが、もっとこうすればよかったな。ログラスのCSに相談してみよう。」という気持ちになったら、お互い時間も意識もリソースもかけて経営管理の高度化をしていく(活用モード)ほうが、事前期待に合っていると、私は考えました。
こうした着想のなかで、冒頭の支援モード:運用モード・活用モードの定義が生まれました。
アダプションフェーズのお客様に順次、この支援モード選択をご案内していきました。各社さま非常にスムーズに受け容れていただき、質問や確認はあるものの、変更に対するクレームは現在まで1件もありません。
アダプションフェーズのお客様の定例会議体頻度が、月次から四半期ごとになることにより、カスタマーサクセスの工数もおおよそ3分の1に減っていく(最適化されていく)ことになります。細かく計測できていないものの、準備や後続対応、リスケジュールなどの間接業務も減ったので、体感では4分の1ほどに減っています。
また、まとまった時間が生まれ、かつ意識・認知のリソースも解放されますので、個人の生産性も上がり、CS組織内の改善施策や採用活動にリソースを充てることができるようになりました。
そして、冒頭にお伝えしたようにお客様のプロダクト・サービスに対する評価であるNPSも4.1pt→6.4ptと2.3pt増加しています。
このようにして、お客様対応工数を最適化してNPSを上げた魔法のようなCSOpsを実現しました。
NPSはプロダクトとサービス両方を加味して、他者に推奨できるかを質問した結果指標ですので、NPSの結果は、CS/CSOpsだけの成果ではありません。
プロダクトの改善についても、少し補足させていただき、詳細はまた別のnote記事やアドベントカレンダーなどでエンジニアチームからお伝えできればと思います。
2022年は、マスタ一括作成/更新といった運用負荷を軽減する機能や、UX改善に繋がる小規模な機能リリースを行いました。これにより、既存のお客様から引き続き高い評価を得られたものと思います。
2022年に障害が何件か連続して起きました。経営データという大切なデータ、間違ってはいけないデータを扱う私たちは、早急に改善すべき事態としてBut We Go(越えられない壁はない)し、品質改善プロジェクトを進めました。
その品質改善プロジェクト結果、障害は激減しました。障害が減ることにより、エンジニアチームもカスタマーサクセスチームも自身の業務により専念できるようになります。
こうした取り組みも、NPSで良いスコアを得られて要因の一つだと考えています。開発チームには本当に感謝です。
ログラスという会社は、高い目標に進むなかで、たくさんの問題に直面します。それでも、ログラスにいるメンバーが、リソースをかけて解決しよう!と取り組みはじめたことは、ものの数週間、数か月で解決し、物事が好転していきます。
これは本当にすごいことだと、コンサルタントとして多くの企業さまの業務の現場を見てきたからこそ思います。採用も素晴らしいですし、チームワークも素晴らしいです。経験あるメンバーが議論し、意思決定しているので、もちろん不確実性はある中なので間違うこともありますが、的は外しているとは思わないです。
プロダクトチームには本当に日々感謝しています。
スマートフォンも、パフォーマンスを優先したいならハイパフォーマンスな設定・モードにし、充電を長持ちさせてたいなら省電力モードにしますよね。こうして自分の意思で選択し、操作(実装)がカンタンにできれば、不満は起こりません。
サービスは目には見えない活動なので、iOS・ソフトウェアのように数タップで機能・役割をガラッと、カチッと変えることはできません。それでも、概念的な整理、定義によって、サービスのかたちを作り出し、お客様も自社も幸福な状態に導くことができます。
CSOpsとして、映える「ビーフストロガノフ」ではなく、実用的な「きんぴらごぼう」をこれからも作りだしていきたいと思います。
プロダクトの機能リソースや、マーケティングやセールス、採用のKPI達成、そうした日の当たりやすい職種の活動と比べると、地味で、組織に与えるモメンタムも相対的に弱いです。
しかし、お客様にもっとも近く、もっとも直接的に便益を伝えられるのはカスタマーサクセスです。これは間違いないです。そして、お客様から1番はじめに直接感謝の言葉が届くのはカスタマーサクセスです。
LTV Firstを体現し、お客様には便益、自社には収益をもたらすのがカスタマーサクセスです。
私は、このように今の仕事を捉えています。
さて。お決まりですが、そんなログラスのカスタマーサクセスを一緒に創り上げませんか?
面談の希望や登壇の打診がございましたら、Twitter(@hiruma_poker)など各種SNSからメッセージいただけますと幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。皆さまの歩むキャリアとぜひご縁があることを願っています。
比留間
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Crystal Jo, Isaac Smith, Kanashi, Julia Taubitz, Artem Maltsev