■英文学を学びながら、独学でプログラミングを習得文系エンジニアとしてキャリアを積んだ約20年
ーーエンジニアを目指すようになった原点は、何だったのでしょうか。
もともと家庭用ゲームや、ゲームセンターが流行っていた中学時代に、遊ぶだけではなく、作ってみたいなという想いを持っていたんです。それで、大学時代に英文学を学びながら、プログラミングの勉強をしようとコンピュータサークルに入りました。それがAIやゲームプログラミングに興味を持った原点になると思います。
ーーHEROZ入社以前のキャリアを教えてください。
大学卒業当時は、ヤフーやオン・ザ・エッジなどのITベンチャー企業が続々と立ち上がってきた時、インターネットの将来性に期待する風潮がある中で、自分もプログラムやシステムを作る側に行きたいと思い、卒業後は官公庁系のシステム開発を行うIT系の企業に就職しました。そこで業務アプリケーションエンジニア、インフラエンジニアとして長らく働きました。働く中でオープンソースの開発や、クラウドがもてはやされる時代になり、その後、機械学習やAI開発に自分の興味もそちらに移っていったんですね。そして、自分の興味を突き詰められる新天地を求めて、会社を辞めて転職をしました。
Google傘下のディープマインド社の開発した囲碁AIが、人間の囲碁トッププロ棋士に勝利したというニュースが話題になったことがありました。当時、自分としては先進的な技術を使った開発がやりたいと思っていたので、その囲碁のニュースによって注目されだしたディープラーニングという技術に着目し、それができる会社へ行こうと転職をしたんです。現在HEROZの先輩でもある川島さんには、1社目の新人の頃に出会ったんですよ。川島さんの影響で、ディープラーニングを導入したコンピュータ将棋AIを開発して、世界将棋AI電竜戦で2度の優勝を果たしたり、書籍も共著したりしました。そんな付き合いがある中で、先にHEROZに転職していた川島さんの誘いで、2022年4月にHEROZに転職しました。
■「コンピュータ将棋に還元できることをやりたい」想いを叶えられるHEROZへ入社
ーー先輩のお誘いの他に、HEROZ入社の決め手になったことはありましたか。
やはり、将棋AIに強いところですね。大会で優勝して、書籍も出した。さて、今後さらにどんなことをしていこうかなと考えた時に、自分が恩恵を受けてきたコンピュータ将棋に何か還元できることがしたいと思ったんです。リアルの世界の将棋は、藤井聡太五冠が誕生して盛り上がっているものの、コンピュータ将棋は以前ほど脚光を浴びていない状況です。もっとコンピュータ将棋を盛り上げたいですし、我々がつくる将棋AIをプロ・女流・奨励会員、アマ、地方・海外在住の方にもっと活用していただきたい。そうした想いを叶えられるのが、HEROZではないかと思ったんです。
ーー入社後、どんな仕事に取り組みましたか。
現在も引き続き担当していますが、リリースしたばかりの自社サービス「棋神アナリティクス」の開発です。趣味でコンピュータ将棋の開発をしているし、チームメンバーにも知人がいたので、担当になったことは必然的な流れではあったと思います。具体的には、利用しているクラウドサービスのソリューションアーキテクトと連携しながら、サービスをブラッシュアップする開発などをメインで行っています。
ーー川島さんからは、加納さんが開発チームに加わったことで、延長することなく、サービスのリリースができたと聞いています。それは、自分のどんな強みや経験が活かされた結果だと感じられますか。
これまでに培ってきたクラウドサービスの開発構築経験は、もちろん活きているかと思います。それに加えて、コンピュータ将棋のコミュニティに積極的に参加して議論を重ねるなど、日々知識の習得や技術力向上のために切磋琢磨している部分も役立っているのかなと感じますね。コンピュータ将棋は、有識者があまりいない業界なので、業界特有のノウハウや、幅広い開発経験を持っていると強みになると思います。
■趣味を仕事に活かすことができる職場で豊富な知識と実績を持つプロフェッショナルたちから刺激を受ける日々
ーー仕事のどんなところにやりがいを感じていますか。
自分の趣味が仕事に結びついている点ですね。私はキャリア20年目の節目にHEROZに入社したのですが、これまで趣味が仕事に活かされたことはほぼありませんでした。今は、仕事で得たノウハウが趣味に活かせているし、その逆もしかりという状況で、趣味と仕事の両輪でうまく動けているイメージがありますね。
ーーオンオフの境目がなくなることについては、特に問題はないですか。
技術の向上という観点からは、両輪であった方がいいので特に問題はないですね。ただ、趣味は、楽しいから趣味なんですよね。でも、仕事は違います。モチベーションの高低もありますし、必ずしも楽しいというものではないですよね。楽しいだけでは長続きしないというのが仕事だと思いますし、そこはある程度切り分ける必要があると感じています。
ーー一緒に働くメンバーや職場については、どんな印象を持っていますか。
林Co-CEOも将棋愛好家でご自身がアマチュアの強豪プレイヤーですし、マネージャーには元奨励会員もいて、みなさん将棋界隈のドメイン知識を豊富に持っています。また、会社としては日本将棋連盟との強いパイプも持っていますし、その日本将棋連盟公認のオンライン将棋ゲームである「将棋ウォーズ」の開発メンバーが揃っているんですね。将棋に関する業界知識とオンライン将棋ゲームの運営開発実績を持つプロフェッショナルが集まっているので、自分にとって学ぶ所も大きいチームだと感じています。それから、経営陣との距離が近いんですよ。私も社長とよくオンラインでやり取りをしていますし、魅力的な環境だと思います。
ーー会社の魅力を教えてください。
機械学習やそれ以外の分野で研究されてきた、深い知識を持っている方が多いというのが魅力の1つですね。私のような文系エンジニアでも活躍の場がありますし、仕事以外でもゲームAIのコンテスト等で活躍されている人がいて刺激になります。それから、会社の大規模な計算資源を業務外でも使うことが許されている点も非常に魅力ですね。今はオープンソースを使って誰もが手を動かすことができる時代ですが、やっているとどうしても計算資源の壁にぶつかります。それをクリアすることができるので、エンジニアにとっては最大の魅力だと思いますね。
■これからも経験の幅を広げ、AIで人と社会を幸せにするサポートをしていきたい
ーーこれから、HEROZでどんなことをやっていきたいですか。
私がHEROZに入社した目的は、2つあります。1つは、世界コンピュータ将棋選手権で優勝すること。でも、これはすでに入社早々に達成しました(笑)もう1つが、プロアマ問わず、誰もが活用できるコンピュータ将棋のクラウドサービスを導入することです。これも「棋神アナリティクス」を開発したことで、実はもう達成されてしまったというのが正直なところです。
ですが、引き続き、コンピュータ将棋界やプロ棋界に還元していきながら、まったく別のAI開発にも携わりたいなと思っています。AI開発はライフワークとして、定年後もずっと続けていきたいですし、いろんな分野に携わって経験の幅を広げ、AIを使って家族や自分が幸せに生きるサポートをしていきたいです。
ーー加納さんは夢ややりたいことを常に持っていますよね。そういったものを持ち続けるための秘訣を教えてください。
いろんなことを試す、ということなのかなと思います。新しい技術が年々出てくる業界ですから、新しい分野に関する書籍を読んだり、手を動かして勉強したりは心掛けるようにしています。あとは、現実問題とうまく折り合いをつけていくことが必要なのかなと思います。私がコンピュータ将棋の開発を始めたのは、38歳の時なんですね。この状況は、妻も子どももいるいい歳した大人が、今から新しいことを覚えて大会で優勝を目指すなんて、何を夢見ているんだと、きっと誰もが思いますよね。だから、現実問題として生活の糧を得る一方で、趣味として許される範囲でリソースにお金や時間をつぎ込む。そうすることで、自分のやりたいことを実現させていったように思います。
ーー今後、どんなメンバーにHEROZに来てもらいたいですか。
AIに興味があり、自分の手を動かして、AI技術をどう現実のビジネスに活用できるかまで踏み込める積極性のある人ですね。それが、他者との差別化にもつながりますから。あとは、社内外、いろんなタイプの人間がいるので、ちゃんとコミュニケーションを取って仕事を進めていける人。そういう人材が求められている会社ではないかなと思います。