京都府宮津市で立命館大学生向けにまちづくりを体感する2泊3日のプログラムを開催しました。
立命館大学には、課外活動を通じて学⽣に学びと成⻑の機会を提供するために、参加費⽤の⼀部を補助し、課外プログラムへの参加を奨励する「成⻑⽀援型奨学⾦」という制度があります。
大学生活で何かやりたいけれど、何をやればいいのかわからない学生に対して、学生生活の中でやりたいことやチャレンジしたいことを見つけたり、きっかけになるような機会を提供しています。そこで、「地域創⽣」をキーワードに一緒にプログラムを開催できないか、とお問い合わせをいただき、今回の共同プログラムが立ち上がりました。
今回のプログラムの様子を動画にまとめたのでぜひご覧ください。
▼プログラム概要
今回のプログラムでは「関わりの選択肢」を増やし、「意志を持って」関わり方を選ぶという目的のもと、事前学習〜現地でのフィールドワーク、また事後学習を通して今後の地域と自分のあり方を考えるプログラム内容を実施しました。
実際に地域で学生さんたちがプログラムを通じてどのようなことを行い、学びがあったのかをまとめておりますのでぜひご覧ください!
①事前学習
事前学習では、まちづくりの基礎を学び、課題設定の重要性を体験するワークをオンラインで実施。
まちづくりは様々な観点から捉えることができますが、
今回のプログラムでは「まち」がどのように生まれたのか歴史から紐解いて、まちづくりを学んでもらいました。
また、「なんとなく地域が衰退してはまずいのではないか」というところから、「こんな課題につながる問題に繋がるから解決していかないといけない」と、事実を知って何が課題かを認識してもらうために、課題発見の重要性を体験するワークを行いました。
課題設定する上で大事なのは、情報を鵜呑みにしないこと。
だからこそ現地に足を運び自分の目で見て体感することの重要性を理解してもらいました。
②現地フィールドワーク
初めて宮津に訪れた人が「もう一度きてみたい」と思うような宮津の未知の良さを見つけるべく、地元の方へのヒアリングや、体験などもセットで宮津市の魅力や課題を頭と体で感じる2泊3日のプログラムを行いました!
DAY1地域で遊び、地域の良さを体感せよ!
DAY1〜DAY2の午前中は、「町中散策チーム」と「上宮津散策チーム」に分かれて地域体験と地域の先人プレーヤーたちにヒアリングを行いました。
ー町中散策チーム
まずは「海鮮かわさき」さんで、宮津の新鮮な海鮮丼をいただきお腹を満たしてからフィールドワークスタート!
今回はゲストハウス「ハチハウス」オーナーの寺尾さんと一緒に町を散策しました。
・最初に訪れたのは山王宮日吉神社。
神主の宮司さんより昔から行われている伝統行事のご説明をいただきました。
特に何も考えず参加していた行事には、たくさんの昔から人の想いからできており、行事に参加することは町の伝統を残し未来を作ることにつながる事なのだと学生が感想を述べていました。
・古民家をリノベーションした地元の居酒屋「和み〜なごみ」
伝統を残しながら、人と人を繋ぎ、新たなコミュニティを創っているオーナーたちの元へ。
元の良いものを残したいと、パブ時代の間取りで好評だったカウンターのレイアウトはそのまま残したり、蔵時代の立場な梁を露出させてみたり。伝統を受けづきながら、新たなコミュニティの場を作っていらっしゃいます。
ご本人たちは、別にまちづくりをしているつもりはないとおっしゃっていましたが、どんな人も温かく迎え入れ、地域内外の人たちを美味しいお酒とお話でつなぎ続ける、宮津に取ってなくてはならない拠点となっています。
・寺尾さんの運営しているゲストハウス ハチハウス 。
遊休不動産の改装もこのまちで生まれ育った自分だから色々な人が協力してくれて実現ができたり、その後の運営も1人だけでは実現できなかったそう。
移住をしたい、ゲストをしたいという方はたくさんいるし、色々質問をもらうが、いつも自分が生まれ育った場所ではやらないのはなぜ?と質問をするとおっしゃっていたのが印象的でした。
・地元の漁師「本藤水産」の本藤靖さんの漁師小屋
宮津の海を守り、次世代に継承するための持続可能な漁業を行っている本藤さんにお話を伺いました。
今の日本の漁業は漁れるだけ漁って、小さくでも大きくでもグラムで値段が決まる仕組み。希少な魚で卵を持っていたとしても、その後の産卵を考えず売り捌くのが現実。海外では生態系を考え、次の世代に残すための漁業をしているが、日本ではまだ実現できていない。それをこの宮津から変えていきたいと語っていたのが印象的でした。
自分が生まれ育った町の海を守るため、日本の次世代を考えて、味方は少なくても立ち上がって行動している姿に学生たちは感銘を受けていました。
それぞれのお店に行く道端でもたくさんの人々とお話を伺い、地域の濃密なコミュニティを体験。
直接的なまちづくりでなくても、
その地に根ざしてに暮らして、仕事してる事が町を循環してまちづくりに繋がっているのだと知ることのできる町中散策となりました。
ー上宮津散策チーム
上宮津散策チームは一次産業事業を行う株式会社百章の関野さんに引率していただき上宮津を散策。
・地元のお母さんたちと交流
まずは、地元の素材にこだわったお手製の料理を振る舞う、上宮津のおかあさん集団「美味しいがききたくて」の美味しいご飯を食べて、地元のお母さんと交流からスタートです。
交流の中で代表のお母さんが、「私も上宮津の一部になりたい。」と話していて、そう思えるほど、まちと人が密接に関わり循環している地域だと感じました。
・その後は、陶芸家の白石さんと陶芸体験。
自然豊かな土地でこんにゃく作り体験や、陶芸教室を開いている白石さん。実は彼も数十年前に宮津にきた元移住者。
また移住者と地域を繋ぎ続けてきた方です。
白石さんの陶芸教室では、制限時間もなく、作り方もほとんど教えられない。マニュアルに従うのではなく、自分は何を表現したいか、どう感じるか。を心のままに自由に創作し、自分と向き合う時間を大切にしています。参加者も、最初は戸惑いながらも自分の頭で考え、自分の心に従って創作に没頭するという現代ではなかなかできない体験を楽しみました。
ーグループワーク
散策から戻ってきてから、すでに知られている「既知の良さ」と、「良い」かどうかは直感的にはわからない、否定されやすいが新たな価値を含んでいる「未知の良さ」の観点で感じたことを可視化するグループワークを実施しました。
DAY2地域の先人たちに地域の良さをヒアリングせよ!
2日目も2チームに分かれて活動。
ベトナムから宮津へUターン起業し、SDG’sを徹底した手作り石けん製造を行っている「SAPO JAPAN」の河田さんのお話を伺いながら、手作り無添加石鹸のワークショップに参加。
今回つくったのは宮津湾の海底の泥を使った、環境に優しく宮津らしさも味わえる石鹸。宮津湾の泥は、初日にお話を伺った本藤水産の本藤さんがその価値と効能に気づき海底から汲み取って提供しているものです。
地域の中で想いを共にした事業者が、バトンを繋ぎながら共創してまちづくりをしている様子も体験することができました。
もう一つのチームは、株式会社百章の代表を務める矢野さんと共に、リノベーション中の古民家シェアハウスのDIYを体験しました。
高知で起業し、農泊事業やジビエ事業に携わった後、故郷である宮津にUターン一次産業を起点とした関係人口を創出するために、様々なプログラムやツアーを提供している矢野さん。矢野さんからなぜDIYするのか?この地域や古民家をどうしていきたいのか?といったお話を聞きながら、ゲストルームの壁を塗装しました。自分達の証が残る、世界に一つだけの古民家シェアハウスが学生たちの中に誕生した瞬間となりました。
ワークショップから戻ってからは地域の良さをとことん言語化!
2日宮津の人と触れ合い発見したことを、なぜそういう想いになったのかを深掘り、初めて宮津に訪れた人が「もう一度きてみたい」と思うような宮津の未知の良さを見つけるワークを実施。
成果発表のため、学生たちは真剣に議論を重ねていました。
DAY3 発表準備・成果発表
午前中は発表準備で各チームもバタバタ。あっという間に成果発表の時間に。
緊張しつつも宮津市役場の方、町民の方の前で宮津の方達と触れ合ったからこそ感じることができた未知の良さを発表してくれました。
何が正解かはわからない。不安な中、解を出して進めていく事の繰り返しがまちづくりです。
ほんの入口ですが、ありふれた既知の良さではなく未知の良さを言語化していくことで、まちづくりを体感する2泊3日のプログラムが終了しました。
③事後学習
現地でのフィールドワークを行なって終わりではなく、事後学習も行いました。
まちとの関わり方を学び、実際に関わり・発見し、その上で今後の自分のあり方を考えるワークを実施。
自分自身のキャリアや、強みや弱み、そして今後地域とどう向き合っていきたいのかを言語化してもらい約1ヶ月にわたるプログラムが終了しました。
参加学生の声
・一緒に活動することで地域の一員になれたと感じた。今度もどうなるか知りたいし、また来たい。こうやって色々な地域に自分の居場所ができたらいいと思った。
・高齢化社会はマイナスだと思っていたが、高齢者と若い人が意見を交換して循環することがまちづくりにとってとても大事であり、日本にとっても大切だと感じた。
・町についてこんなに真剣に深く考えたことがなかったため、とても良い機会であった。
・色々な人と関われたことが大きかった。将来まちづくりに関わりたいと思っているので今後のヒントにしたい。
・「既知と未知を見つけて、今後の宮津の振興に活かしていこう。」が大きな目標でした。当初、既知とは今の宮津の良さのみをあげればいい。欠点は挙げてはいけないと強く固定概念が働いていました。しかし、ワークを通して既知というのは欠点も入ることを知りました。ただただそれを欠点だと決めつけず、未知の良さとして使えないだろうかと発想を転換させることが大切なのだと感じました。
今回のプログラムを通じ、地域と関わったことで、気になるまちへ、そして関わりたくなるまちへと変化して、学生さんたちが地域と向き合いたいと活動していってくれると嬉しく思います。
今後も我々が掲げているVISIONである「その地ならではの感動体験を提供し、地域に関わる人を増やす。」を実現するためにも、知らない人が気になるまちへ、そして関わりたくなるまちへと変化していくことができるよう事業を進めていきます。