※本記事は、株式会社ENDROLLの採用支援を行うHEROZ株式会社 Bloomworks事業部による取材を書き起こしたものです。
新規に募集をはじめる"ゲームマーケター"の求人を作成するにあたって、ENDROLL代表の前元さんに、このポジションに任せたい仕事は何かと尋ねると「会社を潰す意思決定」との回答が得られました。
...しかし、さすがに理解しかねる返答であったため、その真意を伺うべくインタビューを実施することにしました。
本記事においては、株式会社ENDROLLの変遷や、市場に対する考え方を改めてまとめていくと同時に「会社を潰す意思決定」を任せたいというゲームマーケター採用に対しての期待が詳細に語られています。
是非ご一読ください!
ーではまず、ENDROLLの事業の変遷についてお伺いさせてください。
ENDROLLは『Gamify your LIFE』というミッションに基づき、生活を豊かにするためのスマホゲームを主軸に様々なエンタメコンテンツを創ってきました。
ゲームはあくまでも娯楽であり「あったらいいけど、なくても困らない存在」という見方をされてきましたが、今や「必要なもの」になってきている側面があるように感じます。
人生の中で、うつむいた時、足を止めてしまった時に、ゲームをはじめとする様々なエンタメに心が救われた経験を持つ方は少なくないと思います。
私たちも同様の経験があり、ただの娯楽にとどまらず、ユーザーの皆様の生活へ影響を及ぼすコンテンツを創りたいという思いで会社を創業しました。
まず最初に、ゲームという仮想世界と現実世界の境界を密に繋ぐことはできないだろうかと考え、AR(拡張現実)と呼ばれる技術を活用したゲームを中心に事業を展開しました。
また、いくつかの作品を世に出していく中で、ゲームと生活の交点が多いほどに現実への影響が強くなっていくような手ごたえを感じました。
体験型ARゲーム『ガラパゴスの微振動』はCEDEC AWARDS 2021 ゲームデザイン部門 優秀賞を受賞
ーゲームが現実に与える影響とは?
例えば、『ガラパゴスの微振動』という体験型ARゲームでは、過去改変の仕事(タイムエディター)がユーザーに与えられるのですが、ゲームをプレイするために、実物の封筒やカードを必須アイテムとし、それを持ち運んでいただくことで「秘密の仕事感」が増したという感想を多くいただきました。また、ゲーム内の時間進行と現実世界の時間を連動させるギミックを導入したことで、ユーザーの皆様は早起きをしてくれました。
そういった様子を目の当たりにして、ゲームが現実に確かな影響を出すのだと確信し、生活の課題改善そのものを目的としたゲームの企画も始めました。
ーなるほど、そこが分岐点になったと。
はい、様々な切り口で企画を作り検討を重ねた結果、まずは睡眠課題にアプローチしてみることに決まり、眠れない夜を楽しむアプリと銘打って「よひつじの森」をリリースしました。
よひつじの森は、寝る前のデジタルデトックスと、規則正しい睡眠習慣を身につけることによって、よひつじと呼ばれる眠りの使いたちとの旅の物語が進んでいくという構造のアプリです。
大事にしたことは、睡眠管理のシステムそのものだけではなく、よひつじたちとユーザーとの関係性です。眠れない夜はとても苦しくて、だからこそ眠れなかったことを否定せず、あなたがこの森にきてくれたことが嬉しいのだと、あなたがいてくれるだけでいいのだと伝えたい一心でアプリを開発しました。
今後は、睡眠に関わらず様々な生活領域の課題改善に向けたアプローチをゲームで仕掛けていきたいと考えています。2025年前半には新規のタイトルを2本ローンチ予定です。
眠れない夜を楽しむアプリ『よひつじの森』は、App Storeにて
世界メンタルヘルスデーのフィーチャーストーリーに掲載される
ー類似ジャンルのゲームを今後も続けていくんですね!挑戦をするにあたって、スマホゲーム市場というものについてはどうお考えでしょうか?
大前提として、スマホゲーム市場は現在成熟期にあたり、この中で勝つということは容易ではありません。開発費・プロモーション費は高騰し続けていますし、新しいチャレンジがしにくい土壌だと言われています。結果として、売れ筋のゲームジャンルが固定化されている盤面だと理解をしています。
これは一般的なビジネスでは新規参入が難しいタイミング。
ですが、私たちのようにスタートアップとしての側面を持つスタジオにとっては好機だと捉えています。
市場原理は振り子のようなもので、収束と発散を繰り返します。市場の成長期には参入するプレイヤーが増え、そこから淘汰が始まり、いくつかの勝者に収束します。今がまさにその収束のタイミングなわけですが、この数年先には新たなジャンルが生まれまた発散していくでしょう。
ビジネス云々以前に、市場の膠着はユーザーの飽きや新ジャンルへの渇望を生み出すからです。
その意味で、次のタイミングの発散に備えて、機動力を武器に参入するには我々のようなサイズ感のチームがうってつけなわけです。
ーなるほど。新ジャンルへの消費者からの漠然とした期待の中で、生活に根ざしたゲームというものの勝ち筋・市場性についてはどうお考えでしょうか?
当然、勝ち筋があると考えているわけですが、その背景となる感覚を2つの切り口で説明しますね。
まずは「すでに来ているから、近々もっと来そう」という感覚です。
私たちは新規でゲーム製作を行っていますが、既存の有名IPを活用した位置情報ゲームや睡眠ゲームは近年大きく売り上げを伸ばしています。この成功をIPありきのものだと解釈する方々もいますが、そうではないと断言できます。
IPコラボであっても、体験そのものと親和性が高くないものはうまくいっていませんし、ゲームとウォーキングを組み合わせれば50代以上、ゲームと睡眠を組み合わせれば女性のユーザー層が定着を見せています。これはそれらの健康課題を持つユーザー層の印象と合致しますよね。IPそのものの人気が体験の主体であるのであれば、こういった偏りは生まれないわけで、逆説的にこのジャンルだから獲得できているユーザーが確実にいるということです。
生活に根差したゲームアプリを経験したユーザーさんが増加していることを踏まえると、ここで新規IPが立ち上がる可能性は十分にあるといえます。
2つ目は「ARが普及するなら、そのうち来そう」という感覚です。
家庭用ゲーム機、PC、ガラケー、スマホ。新たなゲームジャンルが立ち上がるタイミングには常にデバイスシフトがあり、それに伴いプレイヤーがリセットされ、ゲームジャンルが変わり、ビジネスモデルが変化し、新たな市場のリーダーが誕生してきました。これは将来にわたっても再現性があることだと考えています。
私たちはAR、空間コンピューティング市場は遅かれ早かれ来るという前提に立っているわけですが、そうすると、人々がグラス型のデバイスを持ち歩く時代の中で、どんなゲームが面白いのかを日々想像することになります。想像というか、これは妄想に近いことなので明確な根拠などないわけですが、位置情報ゲームをグラス型のデバイスで遊べるなんて、楽しいに決まってるじゃないですか。
周りを見渡せばモンスターがいて、お気に入りの子を家に連れて帰れば、寝る前に知らせに来てくれたり、朝一緒にご飯を食べてくれたり、今日の天気を教えてくれたり。
空間コンピューティングというと仰々しいのですが、テクノロジーの進化という点でみれば、ARグラスは最も親密なコンピューターで、自分の見ている世界と連動し、自分に最も馴染みある形でCGを見せてくれるわけです。
だから、自分の生活を支えてくれるようなバーチャルアシスタント・バーチャルペットのような概念の価値が、飛躍的に上がるはずだと予測しています。
ーその新しいジャンルに挑戦するにあたって、マーケティング機能を本格的に強化しようとしているのはなぜですか?
勝負をするべきタイミングが来た時の備えを始めようと思いまして。
エンタメ市場にヒットの蓋然性なんてものは存在しません。著名なクリエイターを集めようと、予算を大きくしようと、もしくは本当に面白いものを生み出したとしても、それはヒットの確率を上げるものであって、ヒットを約束してくれるものではありません。
確実に勝てる会社があるとすれば、それは勝つまでやめない会社だけです。
一方で、勝てたはずのタイミングで勝てないという状況に陥るケースはいくらでもあると思います。そして、その要因になり得るのが私を含めた経営陣の存在で、それに対抗する存在として、強いプロモーションチームが必要だと考えています。というのも…。
動かせる予算規模も大きくなく、資金繰りにも余裕がなく、そういった中でリスクマネーとしてプロモーション費用を支出するということは、経営として、とーーーっても怖いことです。
いいものを作り続けて.、バズが起きるその日を待ち続けるべきである、というかその闘い方でしか大企業に勝てない!と自分に言い聞かせた結果、プロモーション予算を大きく計上できていないのが現状です。
一方で、コンテンツをクリティカルマスまで到達させ、「話題が話題を呼ぶ」状況に引き上げるためにはそんな大人しいことばかりをしていては足りません。奇抜な施策をしましょうということではなく、同じ予算を与えられたとしても、それを365日に均等に割り振るのではなくて、1日に集中して投下する勇気が必要かもしれないということです。それこそ、7年かけて積み上げてきたこの会社を倒産させる勢いで。
時としてそういった決断を下せる、理性と勇気あるチームを創りたいわけです。
ーだから「会社を潰す意思決定」とおっしゃっていたのですね。実際、具体的にはどんなことをやっていく想定ですか?
現状社内に専任のチームはないため、私が中心となり現場クリエイターの手を借りながらなんとかやっていくことが精一杯です。今回採用する方については「意思決定」を任せたいと考えています。手以上に頭を借りたい。
ベースの仕事として、運用中のタイトルについてはデジタル広告の改善から新規プロモーション企画の立案をお願いしようと思っていますが、意思決定という面で言えば、先ほど述べたように「予算配分の権限」もお渡ししようと思ってます。
加えて、新作ゲームを作る際には、制作プロデューサー的な立ち位置として、新規企画に対してマーケティングの観点からの決定権もお渡ししようと考えています。
クリエイティブに特化してきたENDROLLという会社の未来を創るビジネスの要となる立場です。
マーケターは運用した予算規模に応じて成長するといった話を聞いたことがありますが、弊社の予算規模は決して大きくないでしょう。ただし会社が持つ資本に対する広告予算の比率で言えば、群を抜いて高いと言えます。
予算を溶かしてしまえば会社が死ぬ、というプレッシャーを背負うことはとても難しいことだと思います。しかし、勝負に出ることなく、傾斜の低い成長を続けることもまた、スタートアップとしては死を意味します。
信念に基づいた良いクリエイティブを土台に、負けないための経営と、勝つためのプロモーションを機能として会社で合わせ持てたら、あとは来る日を待ち望むだけです。何年先になるかはわかりませんが。
…という話を聞いて、怖さ以上に面白そうだという感情が芽生えた方が、このインタビューの読者様の中にいらっしゃるなら、ぜひ一度お話してみたいなと思います。
編集後記
記事を読んでいただきありがとうございました!
当社では書類なし、合否なし、オンラインにて一度ENDROLLのことを知っていただくカジュアル面談を行っております。
ご関心をお持ちいただけましたら以下よりエントリーのほどよろしくお願いいたします!