DeNAでゲーム事業に次ぐ“第2の柱”、ライブ配信事業をリードするライブコミュニケーションアプリ『Pococha(ポコチャ)』。そんな『Pococha』のBusiness Intelligence(BI)チームに、9ヶ月前にシニアディレクターとして鵜飼 勇至(うかい ゆうじ)がジョインしました。
8年前のDeNA West(当時のDeNAのアメリカ事業)でのレイオフを経て、Amazon本社やユニコーン企業でプロダクトマネージャーとして経験を積んできた鵜飼が、なぜ今DeNAに戻ってきたのか──。
鵜飼が目指す「最強」のBIチームについて聞きました。
INDEX
外資コンサル→DeNA→アメリカ駐在、そして…
▲DeNA Corp. Senior Director, Business Intelligence, Pococha 鵜飼 勇至(うかい ゆうじ)
2005年東京大学でロボット工学の修士号を取得後、アクセンチュアに新卒で入社してハイテク企業のコンサルティングに携わる。その後、2011年にDeNAに入社。ソーシャルゲームのデータアナリストを経て、2013年米国支社のプロダクトマネジメントチームの立ち上げを行う。2016年同支社閉鎖に伴うレイオフ後も米国に残り、Amazon及びPlaycoでのプロダクトマネージャーを経て、2023年8月よりDeNAに復帰し現職。趣味は社交ダンス。
──まずは自己紹介を兼ねて鵜飼さんの現在の仕事内容と、これまでのキャリアを簡単に教えてください。
2023年の8月に『Pococha』のBIチームにジョインしました。BIチームというのは、簡単に言えばデータ分析チームですね。『Pococha』で日々蓄積されている膨大な量のユーザー行動データを分析し、事業の意思決定のサポートを行っています。
また、BIチームのディレクターと同時に、『Pococha』のエコノミクス領域のプロダクトマネージャーも兼務しています。プラットフォーム内の経済に関する機能や施策、具体的にはライバー(配信者)の評価・報酬制度や、マネタイゼーション関連機能の企画を行っています。
アメリカに住んでかれこれ11年になりまして、フルリモートで日本のPocochaチームのメンバーと一緒に働いています。
ちなみにですが、DeNAには2度目の入社になります。
──そうなんですね。1度目の入社はいつだったんですか?
2011年です。新卒で外資系の経営コンサルティングファームに入ったのですが、クライアントの事業のお手伝いをしているうちに、自分で事業を推進してみたいという気持ちが強くなっていきました。
そんな中、当時ソーシャルゲームで注目を浴びていたDeNAのことを偶然知ったんです。面白そうな会社だなと興味を持ち、ソーシャルゲームのデータアナリストとしてジョインしました。
──当時のDeNAはどのような雰囲気でしたか?
とにかくスピード感がありました。朝リリースした機能のデータ分析を午前中に行って、午後イチで改良版をリリースしてまた分析する、みたいなことをしていましたね。当時はデータアナリストという肩書きで働いていましたが、やっていたことはアメリカのソーシャルゲーム会社で言うところのプロダクトマネージャーに近かったと思います。
私は当時データ分析のバックグラウンドは全く無く、またデータに基づいたゲーム運用の方法論なども社内にまだ十分に無かったのですが、前職で身につけた問題解決や資料作成のスキルを応用して何とか食らいついていました。
すると、幸運にも担当したゲームが大ヒットし、そのノウハウをアメリカ事業にも展開してきて欲しいということになったんです。サンフランシスコオフィスに駐在員として派遣され、プロダクトマネジメントチームを1から立ち上げることになりました。
──アメリカで1からチームを立ち上げるのは、大変なことも多かったのではと思います。
めちゃくちゃ辛かったです(笑)。もともと海外で暮らした経験も無ければマネージャー経験もありませんでしたから。日本人駐在員が起こしがちな失敗のほとんどを経験しつつ、何とかチームの立ち上げに成功しました。
その後3年半ほど、あの手この手と力を尽くしたのですが、残念ながらアメリカ事業を劇的に好転させることはできず……。2016年10月、DeNAのアメリカ支社を全てクローズするということになり、私はサンフランシスコ支社に所属を完全に移していたため、他の現地メンバー同様にレイオフとなりました。日本に戻る選択肢もありましたが、アメリカに残って新たなチャレンジができる環境を探しました。
──その後は?またどういう経緯でDeNAに戻ってきたのですか?
当時Amazonが新しくゲーム開発チームをつくるタイミングで、そこにプロダクトマネージャーとしてジョインし、拠点をサンフランシスコからシアトルに移しました。
Amazonでの4年間は、いわゆるAmazon流のプロダクトマネジメントに触れることができ、多くの学びを得ました。一方で、自分の思うようなスピードでゲームをリリースすることができないもどかしさもあって。よりスピード感のある環境を求め、Playcoというゲーム系のスタートアップ企業に転職しました。
──巨大企業からスタートアップ企業に転職とは、ギャップがすごいですね(笑)。
Playcoでの日々は期待通りの素晴らしいスピード感で、忙しくも充実した毎日を送っていました。ほぼ毎日何かしらのアップデートをリリースして、すぐにデータ分析を行って改善点をディスカッションしてと、まるで2011年当時のDeNAに戻ったかのようでした。
そんなとき、何人かの転職エージェントの方から「Pocochaのプロダクトマネージャーポジションを受けてみないか」というお誘いを受けたんです。もちろん『Pococha』は知っていたものの、日本居住者向けのポジションだろうと思い込んでしまい、正直最初は気にも留めていませんでした。
しかし、あるエージェントの方から「このポジションはアメリカ居住者でも大丈夫です。Pocochaは世界市場で勝つために、本気でグローバルでチームをつくろうとしています」という話を聞き、それならばということで現在に至ります。
『Pococha』の持つ大きな可能性を実感。しかし課題も
──DeNA復帰の決め手となったのは何だったのでしょうか?
1つは、『Pococha』が非常に面白いプロダクトであるということです。ライバー(配信者)とリスナー(視聴者)が相互にコミュニケーションを取り合って複雑なコミュニティと経済圏を形成している様子は、1つの小さい国家のように感じられます。
このような複雑なプロダクトの舵取りができるというのは、プロダクトマネージャーとして非常にやりがいがあると感じました。
──プロダクトが魅力的だったと。
それは間違いないです。しかし、一番の決め手になったのは、『Pococha』が日本発のプロダクトとして本気で世界を狙っているということでした。
触ってみるとよく分かるのですが、『Pococha』は他のライブ配信サービスとは異なる、ある種非常に日本的なユニークな提供価値を持っています。このような世界観のプロダクトで本当に世界を獲ることができたなら、これは1つの社会現象になるのではないかと高揚感を覚えました。
DeNAサンフランシスコで一度は途絶えてしまった夢の続きが見られる。迷うこと無くDeNAへの復帰を決めました。
──アメリカの会社から久しぶりに日本の会社に戻ってきて、何か日米のギャップのようなものは感じましたか?
これは日米のギャップなのか、Pococha特有のものなのかは分かりませんが、プロダクトマネージャーの役割やスキルセットが結構違うなと感じましたね。
──と言いますと?
私が所属していた企業をはじめ、アメリカの多くのテック企業では、プロダクトマネージャーには高いデータ分析スキルが求められます。何か新機能を開発したり施策を打つ際には、データによる仮説の裏付けを示し、リリース後にはデータに基づいて効果を評価する。これが基本動作となっています。
一方、『Pococha』のプロダクトマネージャーには、ユーザー理解、クリエイティビティや、ビジョンを示す力などがより求められているように感じます。
──なるほど。そのギャップは、『Pococha』にとっては強みになるのでしょうか?あるいは、世界を獲る上で課題になってくるのでしょうか?
プロダクトで世界を獲るためには強固なビジョンは非常に重要です。明確なビジョンを示せるというのは大きな強みだと思います。一方で、先ほど述べた世界のテック企業と同様に、データに基づいたシビアな判断ができることも、同じくらい重要なのではないかと考えています。
データの力で『Pococha』の成長をドライブする
──その課題に対してどのように取り組んでいこうと考えていますか?
プロダクトマネージャーの意思決定を、BIチームがデータの側面から強力にサポートできるようにしたいと考えています。
指標をモニタリングして課題を早期に発見する、施策の前提となる仮説の確かさをデータで検証する、施策の効果を事前に見積もり、リリース後には定量的に検証するなど、データの力を使って『Pococha』の成長をドライブしていきたいです。
──そのビジョンの実現のためにBIチームで現在取り組んでいることはありますか?
現在BIチームでは、外注型組織から参謀型組織への転換を図っています。
従来のBIチームは、Pococha内のさまざまなチームから日々寄せられる大量のデータ分析依頼に、チーム全員で対応するという動きをしていました。
分析依頼は多くの場合、施策の終盤や、あるいは施策が終わってから出されることが多く、事前の分析設計が不十分で、効果的な分析ができないというケースが多くありました。
また、その都度多様な領域の分析依頼に対応するため、アナリストの各領域の理解はどうしても限定的なものになってしまい、データ分析はしたもののそこからの深い示唆出しやアクションの提言につなげられないという課題がありました。
これらの課題を解決するために、BIチームを参謀部隊と分析部隊に分けました(図参照)。
参謀部隊のメンバーは、Pococha内で特に重要な重点領域に専属でアサインされ、ビジネスオーナー(多くの場合プロダクトマネージャー)と密にコミュニケーションを取ります。各施策の立案段階から議論に加わり、ビジネスオーナーに伴走してデータ視点で意思決定をサポートしていきます。
一方分析部隊は、参謀がアサインされていない領域・チームからの分析依頼に対応しつつ、重点領域に関してその高度な分析能力を活かし、参謀だけでは実施が難しい複雑な分析のサポートを行います。
このような組織構造と働き方の転換により、深いビジネス理解に基づいた、より有意義な分析やアクションの提言を行えると考えています。とはいえ、なかなか理想通りには進みませんけどね(笑)。
欲しいのはデータとビジネスをつなぐ参謀人材
──組織構造を変えただけでは不十分ということですね。他に何が課題なのでしょうか?
シンプルに人材不足というのがあります。各領域に必要なだけの参謀を十分にアサインできておらず、本当にやりたいレベルまで深く突っ込んだ分析や施策の提言ができていません。
これは単純に人数が足りないというだけではなく、参謀に求められるスキルセットが、従来のアナリストとは異なるというのが大きいです。
これまでのアナリストの採用は、とにかく分析スキルの高さを主眼に置いてきました。その結果、現在のBIチームのメンバーは高度なデータサイエンスやAIのスキルを有しており、テクニカルスキルに関してはおそらく日本トップクラスの人材がそろっています。
一方で、彼らは必ずしも1つの領域に深く入り込んで、自らビジネス課題の解決をドライブしていくという動き方が得意なわけではありません(たまにどちらもできる化け物みたいな人もいますが(笑))。
──現在は後者のような、自らビジネスをドライブしてくれるような人材が必要ということですね。
はい。イメージとしては、戦略コンサルや業務コンサル出身者ですね。複雑なビジネス課題をデータ分析課題に落とし込み、分析部隊の高度な分析力も活用し、より事業インパクトのある分析、提言ができる人材を求めています。
もちろんコンサル出身者に限らず、事業会社でアナリスト組織をリードしていたような方も合うと思いますし、これからこのような領域にチャレンジしたいと思った方には是非応募していただきたいです。
『Pococha』はいま、非常にエキサイティングな局面を迎えています。『Pococha』が世界を獲れるのか、はたまた日本だけで終わってしまうのかは、この1〜2年の動き次第と言っても過言ではありません。
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