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こんにちは、Medii広報です。今回は、Mediiが提供する医師専用オンライン専門医相談サービス「E-コンサル」の有用性を学術的な観点で研究・検証するリサーチプロジェクトのリーダーであり、現役医師である古矢裕樹さんにインタビューしました。Mediiでの仕事内容や医師の仕事との両立、Mediiを通して実現したい医療の未来についてお話いただきました。
医師として感じた課題。目指す医療の未来がMediiと重なった
ーー古矢さんの経歴を教えてください。
人の役に立つ仕事がしたいと医師の道を志し、2012年に千葉大学医学部を卒業しました。若くして原因不明の難病に苦しむ患者を助けたいという思いと免疫学の深遠さに魅せられ、2014年に膠原病内科を専門としました。臨床経験を通じて医師一人で出来ることの限界を切に感じ、医学生や初期研修医を対象としたインカレ勉強会サークル(関東若手医師フェデレーション)や後期研修病院先の成田赤十字病院研修医勉強会の設立・運営にも関わりました。
一方で、膠原病領域における治療の選択肢自体に限界があることから研究にも興味を持ちました。2020年に千葉大学にてPh.D.を取得し、現在はBeth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical Centerにてポスドクフェローとして勤務しています。
ーMediiを知ったきっかけや、参画するに至った理由は?
千葉大学で勤務していた頃は、いわゆるバイトとして様々な病院やクリニックで働く機会に恵まれました。それまで私は検査も専門科へのコンサルト(※1)も全て自院内で完結する総合病院での勤務しか経験していませんでしたが、それらが普遍的なものでなかったことにようやく気付きました。
医師個人の能力向上や最先端治療の研究の大切さは言うまでもありませんが、日本全体の医療の底上げのためには専門医の知見を日本の隅々まで届けることが必要だと感じました。
そんな折、2021年に共通の友人伝いの紹介で、代表の山田さんからMediiの症例検討カンファレンスのプレゼンターをやってくれないかという依頼がありました。症例検討カンファレンス自体も有意義でしたが、それ以上に驚いたのは、山田さんがDtoD(Doctor to Doctor)遠隔医療を通じて目指す医療の在り方が、私が感じている医療の課題を解決した先にある未来と非常に近いものである、ということでした。自分はちょうど研究留学中でしたが、国内にいたときよりも時間に余裕が出来る可能性が高いと考え、Mediiに参画することにしました。
※1)主治医一人では解決が難しい症例について、他科や院外の専門医に相談すること
E-コンサルの有用性に科学的な裏付けを
ーMediiでの仕事内容を教えてください。
私はリサーチプロジェクトの総括として、日本におけるDtoD遠隔医療に関わる研究活動をするのがメインの業務となります。
MediiのE−コンサルのようなDtoD遠隔医療は、専門医診察へのアクセス向上や不要な専門医受診の回避、コンサルテーションを通じたプライマリ・ケア医教育などの利点があり、欧米を中心に急速に広まっています。例えばロサンゼルス州保健サービス局では、システムの開始から3年で毎月12,000件を超えるコンサルテーションが寄せられるとの報告があります(※2)。DtoD遠隔医療に関連した論文が年間100前後出版されている一方で、日本発の論文は依然としてなく、国内でDtoD遠隔医療を広めるための科学的裏付けが乏しいのが現状です。
そこで、リサーチプロジェクトのミッションとして「DtoD遠隔医療の必要性・有用性を検証し、日本での普及を目指すこと」を目標に以下3つの視点から研究活動を行っています。
①日本においてDtoD遠隔医療が果たす役割はなにか?
②どのようなDtoD遠隔医療プラットフォームが必要なのか?
③実際にE−コンサルを使用された方は何を求めているのか?
※2)Los Angeles Safety-Net Program eConsult System Was Rapidly Adopted And Decreased Wait Times To See Specialists, Health Aff (Millwood). 2017;36:492-499
ー具体的にどのような研究をしているのでしょうか?
研究内容を一部を紹介します。
例えば①に関連しては、難病患者が非難病患者に比べてより遠方への通院を余儀なくされており、負担を感じていることを明らかにし、2023年のプライマリ・ケア学会で発表しました。
また、2022年のリウマチ学会においては、厚生労働省Webサイト上の年度別・県別の指定難病疾患患者データから九州内において家族性地中海熱研究センターの位置する長崎で他県と比べて有意に患者数が多いことを見出しました。九州内での患者数不均衡は疫学観点のみからは説明が難しく、家族性地中海熱の専門知見が均等に分布していないことが示唆されます。
このように、E-コンサルが解決の一助になり得る日本の医療課題を少しずつ明らかにしています。
また、②に関連して、東京医科歯科大学との共同研究として医療僻地・地域病院医師への定性的研究によりE-コンサルへの潜在的需要と心理的ハードル、解決策としてのプラットフォームの最適化と保険適応されることでの正当な報酬の必要性について検討しました。研究結果は2022年に遠隔医療学会へ、2023年には国内論文へその結果が発表(※3)されました。
最後に③については、MediiのE-コンサルの相談内容を分析し、E-コンサルが診断未確定患者の相談、診断確定患者の治療方針の相談、個々の患者に限定しない一般論に関する質問など多彩な需要があることがわかりました。また、紹介すべきかを相談した症例においては、E-コンサルにより71%が不要な紹介を回避することが出来ていたことも判明しました。本邦におけるE-コンサルの可能性を示す研究結果であり、2021年に遠隔医療学会で発表し、現在は関連論文の執筆中となります。
リサーチプロジェクトの業務は、Mediiの事業が本当に社会に必要なものか、自信を持って推進できるのかというQuestionに答えを与えるものであり、やり甲斐があると感じています。近い将来、E-コンサルが患者アウトカムの改善に寄与するか否かについての研究も行いたいと考えています。
※3)非同期遠隔コンサルテーション:専門医偏在問題の部分的解決策として の可能性と課題, TMA 2023 vol.76no.8/5.9.15〈691〉
勤務医の中だけでは得られない刺激や新たな価値観
ー本業とMediiでの仕事はどのように両立しているんですか?
基本的にMediiの仕事は早朝にやると決めています。朝5時前に起きてコーヒーを淹れている間にニュースと最新論文のアブストラクトとMediiのSlackを確認して...というように、生活のルーティンに本業とMediiの両方を入れています。
元々朝早くから仕事をすることは好きなタイプでしたが、Mediiで仕事をするようになってからさらにしっかり起きられるようになりました。朝から仕事をしていると自己肯定感が上がり、本業にも良い影響があるように感じます。
実際に、留学後から現在までに2報の筆頭著者論文と1報の2nd author論文を出すことが出来ました。
ーMediiでの副業で得られたものはありますか?
Mediiでの副業は、日本の医療を良くするため、目の前の患者を診る以外にどのようなアプローチができるかという点で私に新しい価値観をもたらしてくれました。Mediiのプラットフォームを通じて助かっている患者・医師がいるという事実は非常に高揚感のあるものです。
また、Mediiには当然広報・マーケティング・エンジニア・デザイン・人事などを含めた各チームがあります。さらに、高い能力と向上心を兼ね備えた素晴らしい学生も参画しています。勤務医としては関わることのなかった多くの仲間と仕事をすることは大変刺激的ですし、自分も負けていられないとエネルギーをもらっています。
ーMediiでは多くの医師メンバーが様々なチームで活躍していますが、どんな医師がMediiに合っていると思いますか。
現在の診療に閉塞感や行き詰まりを感じている方、好奇心旺盛な方、馴染みのない分野の人たちとの共同作業にストレスを感じず楽しめる方は合っていると思います。Mediiで一緒に働けることを楽しみにしています。
ー最後に古矢さんの今後の目標を教えてください。
基礎研究を通じて最先端の治療につながる種を探しつつ、Mediiを通じて日本の医療の底上げに貢献すること。両極端な方向性ですが、どちらにも関わることのできる今の状況を幸せに思っています。