【代表インタビュー】アウトバウンドコールシステム国内トップシェア!3年後のIPOを目指すセールステックベンチャーが今も大切にしていることとは
Scene Liveはアウトバウンドで国内トップシェアを獲得したリストナビゲーターを開発し、12年前に創業したベンチャー企業です。セールス領域、中でもアウトバウンドコール領域でいち早くSaaSを開発した先見性は、代表の磯村氏がコールセンターで実際に働いた経験から生まれたそう。現場のニーズに寄り添う丁寧なカスタマイズが特徴で、その使いやすさから選ばれ続けています。
現在、約1,000社のコールセンターを顧客として抱える同社は、蓄積している音声データを音声・感情解析することで、アウトバウンドコール領域に新たなソリューションを提供しはじめています。この技術が可能にしてくれる未来について詳しく伺うと、同社がプロダクト開発にも、社風においても、徹底的にこだわる現場・本質主義が、原点である「ものづくり」の姿勢から一気通貫していることが見えてきました。
3年後の上場を見据え、採用も注力しているScene Live創業社長の磯村氏に、現在思い描いている未来について伺いました。
磯村 亮典 / 代表取締役
2008年に某通信系ベンチャーに入社し、テレマーケティング部門のマネジャーに就任、頭角を現す。2010年に営業組織としてScene Liveを設立し、代表取締役に就任。2011年にIT事業に転換とともに株式会社化する。これまでにインサイドセールス向けコールシステムやオンラインプレゼンツールなどをリリース。アウトバウンドコールシステム国内トップシェアを確立し、IPOを目指す。
コールセンターの経営判断をデータドリブンで。音声・感情を解析して課題を抽出
ーー創業時に開発したリストナビゲーターはコールセンターに特化したプロダクトで、セールス課題が抽出できることで、押し売りの必要がなくなる、まさに現場に必要とされる技術と伺いました。
我々はソフトウェアメーカーとしてセールスコミュニケーション・テクノロジーを提供しています。リストナビゲーターは開発後も10年間、2週に1度程度の頻度でアップデートを入れて、現場の利用価値にフォーカスし、圧倒的な生産性を獲得することで選ばれてきました。コールセンターでのセールスは「商材」「顧客リスト」「オペーレーター」の3大要素があります。どこをどう改善すれば受注件数が上げられるのかは、これまで現場主観の「勘」で判断されてきました。我々はそこにテクノロジーを導入し、より的確な経営判断を可能にしています。成果と紐づいた質の高いデータを大量保有して解析し、営業コミュニケーションを正しく導くのが使命ですね。導入すれば押し売りの必要がなくなる世界観が実現できるので、必要な方に商品のお知らせをするといった営業スタイルに変わっていく未来がすぐそこまできています。
ーーセールスに特化した他社プロダクトとの違いはなんでしょうか。
まずは「セールス」という大きな括りで展開されているサービスと比べて説明すると、有名どころである「Salesforce」「ベルフェイス」「ZOOM」などとはそもそもセールスという括りの中で領域が異なります。弊社はCTI領域といった「電話とコンピューターを統合する領域」でサービスを展開しています。アウトバウンドコール領域に特化しており、その領域におけるデータの収集や無駄を省いた生産性の高い運営ができる状態を提供しています。一方で、上述したサービスはCRMというセールス全体のデータを管理/改善できたり、オンライン商談をスムーズに行えるような価値を提供していたりと、一口にセールスといっても中身はまったく別分野の領域となっています。
同じCTI領域で他サービスとの違いで言えば、基本機能であるデータの収集や無駄を省いた生産性の高い顧客対応の最適化はもちろん、音声解析だけではなく、感情解析の技術に強みを持っている点があげられるのではないでしょうか。
ーー音声・感情解析は先端をいく技術ですね。どのように解析をするのでしょうか。
音声解析は電話内容の文字起こしや話す速度、声の周波数の揺れや会話をかぶせているかどうかなどを測り、ベストな状態を目指すものです。オペレーターと顧客のやり取りの記録に乖離が生じるといった問題も解決できますし、話す速度や話を被せるといった営業においての基本的な課題の特定が可能です。
感情解析の方は内部研究を進めている段階で、今後リリース予定ですね。音声に含まれる感情を読み取り、DiSC分析の4タイプに分けます。DiSCはセールス心理学でもよく使われている手法で、独自にカスタマイズしています。保有している音声データから、顧客のタイプ分析と購入履歴から傾向をみていくわけです。すると、この商品はどのDiSCタイプからの購入が多いのか(売りやすいのか)、どのタイプにどんなコミュニケーションが向くのかを把握できるようになります。このデータから、商品に合うタイプのリストの収集に投資をしたり、オペーレーターのコミュニケーション手法を工夫するなど、データに基づく経営判断ができます。コアエンジンはイスラエルで開発されたもので、その技術をいかに現場での利用価値の高いものにカスタマイズできるかが我々の勝負どころです。
音声や感情解析にはかなりの時間と労力がかかります。まだまだこの技術は発展途上ではありますが、我々は数万件のデータを集約して活用できるプラットフォームを持っているため、おこがましいですが技術の発展においても可能性を秘めた企業といえるのではないでしょうか。
顧客とつながる社員の声を受け止められる社内カルチャーとともに、社会的にも信頼される企業へ
ーー現在、IPOを目指されていると伺いましたが、IPOを目指すわけはなんでしょうか。
一番は社会的信頼を獲得するためです。よく聞かれるのですが、資金調達といった経済的リターンよりも我々が目指す未来に対しての説得力をあげられることに魅力を感じています。「何をやるか」ももちろん大事なのですが、「誰がやるか」も重要だと考えていて、社会的信頼の象徴である上場をしている企業とそうでない企業が同じことを実施したり、問題提起をした時に、間違いなく説得力は変わると思っています。ましてや、まだ普及していないサービスであればなおさら。
ーー組織拡大に伴い、採用も強化しているそうですね。
ここ2-3年で最大200名規模の組織を目指しています。採用の拠点として東京にオフィスを構えることも検討していますが、我々の仕事はインターネットがあれば場所は選ばずにできるので、子育て環境のよい地方や田舎でサテライトオフィスを開設することに関心があります。今もエンジニアの9割がリモートで仕事をしています。現在、フルリモート採用はしていませんが、ビジョンに共感でき、成果をあげれるのであれば、働く場所は自宅でもなんでも構いませんし、ある程度の裁量はおまかせしています。
ーー副社長の今西さんのインタビューでは、カルチャーづくりに注力されていると伺いました。
具体的なカルチャーについては今西の記事を読んでいただければと思うのですが、会社の雰囲気では笑いの文化があるところを大事にしています。マネージャー陣には「会議で笑いが起きないならやめろ」とまで言っています。僕も経営会議でもボケますし、議題だけこなす会議では面白くありません。成績が悪い時ほど会議を面白くして、楽しくやれるようにしようと。会社に卓球台を置いていたり、飲みにいく文化もあります。「オンオフを切り替えろ」というよりも、仕事中も少しでいいから気を抜いて、無駄な緊張感を持たないようにしています。ふざけていても能力を発揮できているならそれが一番なんですよね。構造などの細かい部分については徹底的にディスカッションをしてシビアに検討するのですが、だからこそ、それ以外の部分ではゆるさを意識しています。
ーー社内のボトムアップカルチャーを大切にすることと、コールセンターの現場とプロダクトを結びつける姿勢はリンクしていますね。
おっしゃる通りです。クライアントの現場で本質的に必要とされるソリューションを提供できるよう、技術をカスタマイズするためには、お客さんに近い人たちの声が大事ですから、社内でもボトムアップで現場の声を聞ける仕組みをつくっています。我々も教育に力をいれていますし、現場の声は真摯に受け止めています。
我々は徹底的に本質主義なんです。例えば技術力では世界的にGoogleの方が上ですし、日本の会社でも技術力の高い企業はたくさんあります。一方で、弊社は現場の使い勝手に合わせて本質的なソリューションに近づけるプロフェッショナルだと思っています。要は「技術を磨くだけではなく、技術の使い方」を徹底的に考え抜き、本質を見出しているということです。我々のビジネスモデルと社風には、そういったつながりがあるんです。
CTI領域の常識を作り、労働生産性を上げ、業界に革命を
ーーセールスの課題をプロダクトで解決していくなかで、どんな未来やビジョンを思い描いていますか?
まずは、「押し売り」の営業から「お知らせ」の営業が実現する世界を創っていきたいです。ビッグデータを扱い、しっかりと解析できえれば、「いつ誰が何を」買いたくなっているのかがわかるようになり、そのタイミングでレコメンドをするといったことが実現されると思います。こういった世界が実現すれば、簡易の商材に限定されますが、営業マンはお知らせマンとしての役割を果たすだけになり、労働生産性を上げることに繋がってくると思います。
また、CTI領域に関して新たな常識を作りたいと考えています。具体的には国内営業コールセンターの80%が、我々が作る指標を使う状態を目指しています。これを使わない人がいるの?っていうくらいの常識にする。現在はひとりのオペレーターが1時間あたりに対応したコール数を示す指標「CPH(Call Per Hour)」などがよく使われていますが、そこに我々の感情解析技術での指標を新しい常識として加えようとしています。ここでも国内の労働生産性を底上げするために、アルゴリズムもある程度公開して、僕らのシステムではなくとも指標を導入できるようにと考えています。
ーー自社の利益だけではなく、国全体の働き方改革を後押しする姿勢が素晴らしいです。達成時期の目標はありますか。
感情解析技術は今年4月に第一弾をリリース、半期ぐらい遅れて第二弾をリリース予定です。指標がコールセンターの常識化するのは3年後を見据えていて、IPOを狙っている時期と重ね、我々の企業価値を上乗せしていくストーリーを描いています。
現在は、不動産業界でもどこでも、利益率が高い商品が売られています。営業マンが売りたい商品に力が注がれる現状で、よいものが売れるとは限りません。ですが、データ解析技術を活用してマーケットをより明確に理解できていれば、ひたすらそこにフォーカスして、本当に必要とされるものを作れ、利用価値の高い商品が、ちゃんと売れるようになります。
我々はあくまで“ソフトウェアメーカー”として良いものをつくり、アップデートを繰り返して現場で役立ててもらい、CTI業界でトップシェアも取ってきました。一番良いCTIサービスを作ってきたといえるんです。ですから、今後も“良いものを作る”といったものづくり精神を忘れずに、現場に寄り添っていきたいと思います。