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モビリティ業界に活路を見いだし、歩んだ軌跡。特殊技術と高品質を提供するエンジニアたちと描く未来

自動車のソフトウェア分野において最先端の技術を提供し、数多くのメーカーのクルマ作りを支える存在となったテクノプロ・デザイン社。時代が動く兆しをいち早く捉え、従来の主力事業からモビリティ分野へと舵を切った軌跡、今後の未来像について、株式会社テクノプロ取締役 兼 常務執行役員(法人営業管掌)兼 法人営業部長の阿部 哲也が語ります。

携帯、テレビ、パソコン……多くの業界の先行きが厳しくなる中、自動車業界に勝ち筋が見えた

私は2011年に株式会社テクノプロ(当時は株式会社シーテック)に入社し、取締役 兼 常務執行役員(法人営業管掌)兼 法人営業部長を務めています。

2023年現在、当社の主力事業となっているのは、モビリティのソフトウェア分野。しかし、はじめからこの領域に注力してきたわけではありません。

当社の設立は1997年。2000年代は、主に携帯電話のソフトウェア・ハードウェアの開発に取り組んでいました。当時在籍していたエンジニアの多くが携帯電話事業に従事していたほどで、かなりの勢いがありました。しかし、iPhoneの登場によって状況は一変。Appleをはじめ、SAMSUNGなどの海外メーカーが次々に台頭し、日本の携帯電話機器メーカーはシェアを奪われてしまったのです。

また、パソコンやテレビなどのデジタルデバイス分野も、グローバルの波に押され、同じような状況に陥りました。国内の大手家電メーカーの回路やメカ、ソフトウェア設計に多くのエンジニアを派遣していた当社も、大きな影響を受けました。

携帯電話もパソコンもテレビもだめなら、これからどうしたらいいか──そう考えたときに思い至ったのが、自動車産業でした。

自動車産業は、裾野の広い業界のため規模が大きく減るリスクが少ないと考えたこと。また、当時から言われていたのは、自動車は「走るiPhone」になるということ。クルマは近い将来、ソフトウェアによって常に外とつながった乗り物になると予測されていたのです。

もともとエンジニアだった私は、その動向を強く意識していました。もし本当にそうなるのなら、モビリティ業界にもソフトウェアの技術が必須になるはずです。しかも、その当時の自動車はハードウェア技術の結集でできており、ソフトウェアについてはわれわれが参入できるチャンスが多くあるのではないかと考えました。そう判断し、クルマの世界へ舵を切ったのです。

シミュレーション用ツールに着目。トップシェア企業と提携してエンジニアを育成

振り返れば、モビリティ分野に目をつけた当時の判断は、賢明でした。実際にここ7〜8年の間に、クルマは「ソフトウェアの塊」に変化しています。あらゆる部分にセンサーとマイコンが搭載され、ソフトウェアによって制御・コントロールされるようになりました。よってソフトウェアは、自動車メーカーにとって避けることのできない重要テーマになっています。

この波に乗るかたちで、当社もクルマの製造領域に参入したい。そうして着目したのが、シミュレーションソフトウェアです。

クルマ作りの現場では、安全性のために製品テストを入念に繰り返します。フレームだけの簡易なデモ機を用意し、すべてのシステムを搭載。シミュレーション用のソフトウェアを使い、デモ機を動かしながら異常がないかを確認していきます。

シミュレーション用ソフトウェアは、現代のクルマ作りには欠かせません。そのため各メーカーは、シミュレーション用ソフトウェアのスペシャリストを雇って、プロジェクトに参入させていました。

当社のエンジニアがこのスペシャリストになれば、あらゆる自動車メーカーからの引き合いが期待できるのではないかと考えた私は、シミュレーション用ソフトウェアのトップシェアを誇るdSPACE社の社長に会いに行き、当社のエンジニアのスキルアップを依頼しました。

まず、当社がソフトウェア知識のある人材をdSPACE社側に紹介します。dSPACE社は、その人材を育成します。そして、教育が完了したら、両社で協働して日本中の自動車メーカーにスペシャリストたちを派遣するのです。

こうして、特殊かつ需要の高いスキルを持った人材を多く育成することに成功しました。dSPACE社の重要パートナーとして、当社は、モビリティ業界内での知名度を大きく向上させることになりました。

自動運転の実用化をめざして。イスラエルで物体認識のレーザー技術を学ぶ

2023年現在、当社がもっとも注力しているのは、自動運転の実用化をめざした取り組みです。自動運転のキーとなる技術は、物体認識で、障害物が壁なのか、電信柱なのか、それとも移動している何かなのかを認識します。人や自転車だったとして、自分のクルマのほうに近づいてきているのか、遠ざかっているのか。現時点の距離はどのくらいか。そんな細かい情報を把握し続ける認識機能が、自動運転には求められます。この細やかな認識をソフトウェアで実現すべく、試行錯誤しているところです。

これを実現するには、カメラだけでなく、レーザーセンサーを組み合わせて物体を捉えるという高度な技術が求められます。カメラだけの場合、遠くから近くに急に視点を切り替えるのが難しく、夜間や悪天候時に認識の精度が落ちるという弱みがあるため、レーザーセンサーと組み合わせるのです。

そこで「LiDAR」と呼ばれるレーザーセンサーを組み合わせて利用します。「LiDAR」はレーザーを対象物にあて、どのくらいの時間で反射してくるのかを捉えることで、物体までの距離を測定するセンサーです。ただ、レーザーは直進性が高く、前方のみがカバー範囲なので、ひとつのレーザー機器で360度全体を見回すためには、センサー自体を回転させなくてはなりません。そこで、カメラとレーザーの両方を搭載し、同期して認識させるのです。こうすることで、ようやく人間の認知に近いレベルの物体認識が可能になります。

レーザー技術を学ぶために、今から4年前、イスラエルへ研修に行きました。レーザー技術はもともと軍事用として発展したもので、軍事大国であるイスラエルのほうが、日本よりもずっと進歩しているのです。

テルアビブのとある企業にエンジニアを送り、1週間にわたって現地スタッフと一緒に仕事をさせてもらいました。当社のエンジニアも、実際にレーザーの測定器をクルマに積んで市内を走り、どのようなアルゴリズムで計測をしているのかを学んできてくれました。そこで得たたくさんの経験と知識は、現在当社が提供しているソリューションの基盤になっています。

最先端を走り続けるために、エンジニアがさらに成長できる環境を整えたい

モビリティ分野に求められるソフトウェアのレベルは、パソコンや携帯電話とは比較にならないほど高度です。自動車は少しの不具合が人命を奪うことにつながりかねないからこそ、圧倒的高品質の製品を提供しなくてはならないのです。しかも、必要なソフトウェアの種類はどんどん増えています。常にキャッチアップを怠らず、技術を磨いていく必要があります。

これまで最先端の技術を追い続けてきた結果、現在当社は、日本のすべての自動車メーカー様と直接お仕事をさせていただけるまでになりました。自動車業界のプロジェクトを担うエンジニアは2,000人近く在籍していますが、特殊なソフトウェア技術を身につけた人材も多いことが強みであり、本当に誇らしく思います。

今後の展望として私が描いているのは、この事業を「プロジェクト」単位で動かすこと。現状、当社はユニットという単位でお客様のプロジェクトの一部として参画することが多くなっています。いわば「個々の優れたエンジニアが集団を作っている」という状況です。

より大きなプロジェクト単位で仕事に取り組み、階層を持った一つの組織にしていきたいと思っています。

なぜなら、リーダーの存在があったほうが、エンジニアのモチベーションが上がり、成長も加速すると思っているからです。それに期限があることも、プロジェクト制の利点です。一つのプロジェクトをやり遂げたら、また別のプロジェクトに参画することでいろいろな分野のプロジェクトを経験でき、スキルの幅が広がります。私もエンジニア出身なのでわかるのですが、同じ仕事を何年も続けていれば、誰でも飽きます。モチベーションを保ってもらうためにも、プロジェクト制は理想的だと考えています。

もちろん、プロジェクト制にすれば、リスクも発生します。もし市場に出た後に問題が起きた場合、当社がすべての責任を負うことになるでしょう。これまで以上にリスク管理を徹底しなくてはなりません。それでもエンジニアの成長のために、プロジェクト制をさらに推進していきたいと考えています。

変化の激しい時代において、われわれはモビリティの世界に活路を見いだし、成長を遂げてきました。これからも最先端の技術を提供できる会社であり続けるために、優秀なエンジニアを育て、業界に貢献していきます。

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