U.S Inc.のブランディング事業を牽引する、共同代表のCOO朝本へのインタビューを前後編の2回に分けてお届けする。前編では、U.Sの創業エピソードとブランディング事業の強みであるクライアントとの向き合い方について朝本の視点で語ってもらった。
せっかくなら、一番遠いところを目指そう。
井澤と二人でU.Sを立ち上げるときにまずやったことは、自分たちができること、やりたいことの棚卸しでした。僕はリクルートではコミュニケーションの領域を中心にキャリアを積んできました。コミュニケーションというと、いわゆるクリエイティブ、広告をはじめとしたメディアでのコミュニケーションをイメージする方もいると思うのですが、僕の場合は、もっと幅広い領域の話だと捉えています。たとえば、サービス業はコミュニケーションで成り立っていますし、空間の演出や、イベント企画はなんかも、人と人の間を媒介するものが違うだけでコミュニケーションの形のひとつですよね。せっかく新しいことを始めるのだから、既存のメディアの枠をとっ払ったて、コミュニケーションのどこまでやれるのか実験をできる会社がを作れたらいいよね、という話をしていました。
そのときに出てきたキーワードが、「10年後、自分達でホテルを建てて運営する」のを目指そう、ということでした。
創業した2018年当時から、すでにAIは台頭していくと言われていましたし、現在、実際にそういう未来がやってきましたよね。この流れでいけば、よりAIやデジタルに置き換えができないことの価値が、ますます高まっていく。具体的に言うと、コミュニケーションや、サービス、体験といったような、「人が企画し、提供することの価値」がもっと高まるのではないかと思っていました。僕らの中では、“ホテル”はサービスや感動体験の1つの最高峰。ここを目指すと決めれば、自ずとやることが見えてくるのではないか、と考えていました。
当時の僕たちが持っていた経験やノウハウから考えると、遠く高い場所にある北極星のような目標でした。今まで井澤や僕がやってきたことから、一番遠いところにあるのは何だろう、と考えた時に出てきたのが「10年でホテルを建てて自分たちで運営する」という目標でした。でも、目指すべき北極星は、できるだけ高くて遠いほうが旅路は面白くなると思いませんか。
もちろん、たった二人しかいないできたての会社がホテルを建てることはできません。投資余力もないし、銀行の信頼もない。10年なんて無茶かもしれない。だろうと感じるかもしれません。それでも、途方もない目標でも、目標を決めさえすれば、やるべきことはおのずと決まってくる。10年後にホテルを運営するためになら何人メンバーがいればいいか、どんな組織が必要か、どんな経験や知識を習得していけばいいのか、一つひとつ足りないものをパーツを見つけて、埋めていけばいい。
最初から一棟は無理でも、一室のアイテムなら作れるるな、という発想は、が、架空のホテルの一室をコンセプトしにU.Sの自社ブランド「room705」につながりました。また、唯一無二の「アート体験」の在り方として、「金沢茶寮」を立ち上げました。そういう意味では、少しずつ、僕らは未来に向かって前進しています。ブランディングの会社でもあり、事業をやる会社でもある。このユニークネスはこの会話がなかったら、生まれていなかったかもしれません。
「クライアント」の課題ではなく、「わたしたち」の課題です。
U.Sの社名には色々な意味を込めているのですが、その一つが「クライアントの一員としてのわたしたち(=US)」です。コーポレートブランディングにせよ、商品やサービスのブランディングにせよ、U.Sの場合、最初はひたすら経営トップの方にお話を伺います。それから一度、経営者の頭の中をトレースしてみる。クライアントの課題解決をソリューションやHowからではなく、本当に達成すべき目的やビジョンは何だろうか、クライアントの一員として考え行動しています。
例えば、U.Sの最初の仕事であり、今もお付き合いを続けさせていただいている株式会社クラッシー様の場合。徳島を拠点に事業を展開するプリスクールの老舗でありながら、今も新しい挑戦を続けられているお客様です。当時30周年を迎えるクラッシー様のさらなる挑戦が、東京・南青山へ「ステラプリスクール」旗艦園の立ち上げプロジェクトでした。そんな一大プロジェクトのリブランディングパートナーに、創業間もないU.Sを選んでくださいました。
社長からお伺いしたお話を元に新しいメッセージやロゴを作るだけではなく、デザインやクリエイティブディレクションの側面からプロジェクトに参加。パンフレットやWEBといった、各種媒体の制作にとどまらず、広報や事業部長をはじめとしたクライアント側のプロジェクトメンバーのみなさんと一緒に、園の内装ディレクションや園に置くインテリアの選定、制服を作ってもらうために、クライアントと一緒にアパレルブランドの「ラルフローレン」に交渉に行ったりもしました。クライアントの一員として、ブランドがしっかりと機能するところまでやりきるU.Sのブランディング事業のスタイルがここで出来上がった気がします。
ひとつびっくりしたことがあって。いつの間にかクライアントの正式な組織図に僕たちの名前が入っていたんです。入れる前に一言言ってくださいよ(笑)とは思いましたが、U.Sだけでなく、お客様もU.Sを「チームの一員だ、わたしたちだ」と思ってくださっていたチームの一員だとお互い思っていた、ということなのでしょうね。
「わたしたち」だと思っていただけるようなクライアントを今後は一層増やしていきたい。そのあたりのことを後編でお話ししたいと思います。
▼「ステラプリスクール」の事例の詳細はこちらから
https://usinc.jp/journal/stella_preschool