こんにちは。株式会社シンシア・ハート代表取締役の堀内猛志(takenoko1220)です。
僕は前職で、50名から4000名まで成長した企業の人事役員を務め、節目ごとに生まれる“人”と“組織”の課題に向き合ってきました。
現在は、成長企業向けの戦略人事コンサルティングと、ミドル・ハイレイヤーに特化した人材紹介に取り組んでいます。
このシリーズでは、僕の経験をもとにしながら、40代からの「キャリア中盤」の戦い方をお伝えしていきます。
第3回のテーマは「4つのレイヤーで捉える自分の現在地」です。
目次
はじめに
仕事における4つのレイヤー
Layer 1:支援層
Layer 2:推進層
Layer 3:戦略層
Layer 4:創造層
具体的な職種で見るレイヤー
仕事をレイヤーで捉えるべき2つの理由
①やりたい仕事を見極める
役割が明確な欧米と曖昧な日本
飼い殺しのリスク
②どのレイヤーを目指すべきかを考える
日本では自分の現在地が見えにくい
かっこいいだけの職種名に飛びつかない
おわりに
はじめに
前回は、「“開発職”の正体」をテーマに、開発職とは「創造する役割」であり、何を創造するかに応じて「市場開発」「事業開発」「組織開発」「技術開発」に分かれることを整理しました。
そのうえで、キャリア中盤で重要なのは、どんな名前の仕事に就いているかではなく、自分の業務の中にある「創造」の割合をどう増やしていくかだと述べました。
今回は、自分の現在地を把握するために、仕事を「支援」「推進」「戦略」「創造」の4つのレイヤーで捉える考え方を整理していきます。
仕事における4つのレイヤー
まず、僕の考えをマトリックス図にしたものを見ていただきたいと思います。左側は「最適化」を目指す収束型の仕事で、コストを抑えるバックオフィスの職。右側は「最大化」を目指す発散型の仕事で、売上のトップラインを伸ばすフロントオフィスの職とイメージしてください。
その上で、それぞれの職には共通する4つのレイヤーがあります。下から順に、「支援層」「推進層」「戦略層」「創造層」です。ここからは、それぞれの層について解説していきます。
Layer 1:支援層
人は、新人・未経験から仕事を始めることがほとんどです。その場合、一人でできることはなかなかないので、上司や先輩のサポートをすることになります。これが支援層の役割です。
Layer 2:推進層
周囲をサポートする中で力をつけたら、次は自ら業務を推進する役割を担います。
Layer 3:戦略層
事業を推進するにあたっては、その勝ち筋を考えている人がいます。この層が戦略層です。既存営業やルート営業、新規営業を担う部隊が、いかにして勝てるようにするかを企画・立案する役割です。
Layer 4:創造層
戦略層の上のレイヤーには、創造層があります。この役割は、戦略以前に「どこのフェーズで戦うか」というマーケットの発見や、「どういったものを作って戦うか」というビジネスそのものの創造がミッションです。
具体的な職種で見るレイヤー
ここでは、営業を例に、レイヤーごとの具体的な職種名を紹介します。
Layer 1:支援層 → ルート営業(同じ相手に対して継続的に顔を見せていく)
Layer 2:推進層 → 新規営業(既存の顧客だけでなく、新規の顧客を開拓する)
Layer 3:戦略層 → 営業企画(ルート営業や新規営業の勝ち筋を企画・立案する
Layer 4:創造層 → 新市場開拓営業(BtoBからBtoC向けへの転換、大手企業エンタープライズの開拓、海外進出の検討・決定)
仕事をレイヤーで捉えるべき2つの理由
僕が、こうしたレイヤーを理解することが重要だと考える理由は、大きく分けて2つあります。
一つは、就職や転職にあたって、本当にやりたい仕事を見極めるため。そして、自分の成長のために、次はどの層を目指すべきかを考えられるようにするためです。
①やりたい仕事を見極める
前回の繰り返しになりますが、僕が定義している分類は、「職」と付いてはいるものの、「職種名」そのものではありません。あくまで役割です。
そのため、型やレイヤーによってそれぞれ担っている役割は異なるのに、まとめて「営業職」といった呼ばれ方をすることになります。ここに、就職・転職先を選ぶ上での難しさがあります。
特に、日本の求人票は難解です。「営業」という職種で募集が出ていても、業務内容には、顧客との関係構築、新規開拓営業、営業戦略の立案、関係部署との連携といったことが並列で書いてあります。つまり、一つひとつの仕事の割合は、一見しただけではわからないんです。
また、職種名には、企業側の思惑が入ることもあります。「営業」という職種名だとなかなか人が集まらないので、「アカウントエグゼクティブ」といったカッコよく見えるワードに言い換えるのですが、結局のところ仕事内容は営業です。ずるいですよね。
実際に、企業としてやらせたいのは9割方泥臭い営業なのに、求人票ではたった1行しか記載していない、といったケースは多くあります。転職活動をするにあたっては、応募・選考の段階でその点をしっかりと見極めて選ぶことが必要です。
役割が明確な欧米と曖昧な日本
欧米はジョブ型雇用なので、職務記述書(ジョブディスクリプション)からはみ出たことを指示された場合、被雇用者側から「私の仕事じゃありません」と断りさえする文化があります。
一方で、日本ではいまだにメンバーシップ型雇用が主流です。そのため、1日、1ヶ月の中で、どの仕事がどれくらいの割合かまで整理できている企業はほとんどありません。
そのため、入社後に求人票にはなかったことを指示されても、いきなり役割が変わっても、「会社命令だから仕方ない」と受け入れるしかなく、期待と異なる環境で働かざるを得ない状況になっている人はたくさんいます。
飼い殺しのリスク
僕が最も危惧しているのは、責任感が強い方が、「この仕事を選んでしまったのは私だし、いつかは戦略・開発の仕事もやらせてくれるはず」という思いで頑張り続け、支援層や推進層の仕事ばかりに数年を費やしてしまうことです。
人は、自分の能力よりも高いところで努力するからこそ成長します。もちろん、そういったことをやらせる側に問題があるのですが、やらされている側も飼い殺しにされないような対応をとることが必要です。
②どのレイヤーを目指すべきかを考える
レイヤーの考え方を取り入れると、「自分は与えられた仕事をこなせているか」「この先、どこまでキャリアを伸ばせそうか」といった現状をより立体的に捉えられるようになります。
新人のうちは、そこまで考えが至らないのも当然でしょう。しかし、ミドル世代であれば、業務を棚下ろしし、自分自身を振り返ることができるようになります。「自分はどう成長してきたのか」を見つめ直してみましょう。
まずは、下記のように書き出してみることをおすすめします。
創造の業務:0%
戦略の業務:10%
推進の業務:80%
支援の業務:10%
※上記に記載の業務割合は、推進業務が中心の方のイメージです。
大切なのは、「今の自分はどのレイヤーにいて、どのレイヤーの仕事を増やすべきか」を把握することです。
仮に、自分の現在地を100だとすると、最も成長実感を得やすいのは、少し背伸びが必要な120レベルの仕事です。適度な負荷がかかることで、集中力も高まり、やりがいにもつながります。ただし、現在地よりもあまりに高い200レベルの仕事ばかりだと、常に無理を強いられ、心身を壊してしまう可能性があることには注意が必要です。
逆に、100以下の仕事ばかりだと、快適ではあっても成長実感を失い、次第に飽きや停滞感につながっていきます。特に、80未満の業務レベルが多ければ、暇すぎて毎日がつまらないでしょう。
だからこそ、自分の業務内容や役割が、今の自分にとって適切なのかを定期的に見直すことが重要なのです。
もし、「ずっと背伸びしすぎている」「逆に簡単すぎる状態が続いている」と感じるのであれば、まずは上司にアサイン変更を相談してください。それでも変わらないのであれば、環境を変える、つまり転職することを選択肢として考えるべきです。
日本では自分の現在地が見えにくい
ただし、この見極めは日本では簡単ではありません。欧米のようなジョブ型雇用が浸透している社会では、職務や役割が明確です。一方で、メンバーシップ型雇用が主流の日本では、仕事の範囲も評価基準も曖昧になりがちです。
さらに、転職が前提ではない働き方の中では、自分の仕事を外と比較する機会も多くありません。そのため、「自分はどの力を伸ばすべきか」「今、自分はどのレイヤーの仕事をしているのか」が見えにくくなってしまいます。
だからこそ、自ら意識して現在地を可視化してみてください。会社や肩書きに任せるのではなく、自分の仕事をレイヤーで捉え直し、成長できるレイヤーを目指す姿勢が、キャリア中盤には欠かせないと思います。
かっこいいだけの職種名に飛びつかない
ただし、自分の能力よりも高すぎるレイヤーを選ぶことは推奨できません。そもそも、そんな人を雇ってくれる企業はほぼないに等しいでしょう。サッカー未経験の人がいきなり「監督として雇ってくれ」と言ったところで無理な話です。
ところが、僕の経験上、知識も経験がなくとも、戦略や開発を担いたがる人はたくさんいます。単純に、職種名の響きだけで選んでしまうんですよね。つまり、「営業」より「営業企画」の方がかっこいいから目指したくなるんです。
仮に「営業企画」をやりたいのだとしたら、面倒だとしても、支援層のルート営業や推進層の新規営業を経験しないと、本質的なことは理解できません。
誰しも一足飛びに成長することはできないので、職種名の印象だけに引っ張られることなく、自分の成長のために必要なステップを踏んでほしいと思います。
おわりに
20〜30代で支援層・推進層を経験した後、多くの40〜50代は戦略層のレイヤーにとどまりがちです。かつてはそれが合理的なキャリアでもありました。しかし、AIの進化によって、その前提は大きく揺らぎ始めています。だからこそ、管理職や企画職で止まるのではなく、ゼロから価値をつくり、それを前に進める開発職へと歩みを進めることが、これからのキャリア中盤ではますます重要になっていくのです。
ただし、いきなり開発職になることはできません。自分がいまどのレイヤーにいて、次にどのレイヤーを目指すべきかを見極めながら、少しずつ創造の割合を増やしていくこと。その積み重ねが、これからの時代を生き抜く力につながっていきます。
次回は、職種名にかかわらず、どんな仕事でも開発職へ近づいていけるという視点から、代表的な職種ごとの成長パスを見ていきます。