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暮らしの最適化をビジョンに掲げ、「帰らない日は家賃がかからない家」を提供する unito。その新しい概念は、デザイナー とつゆうた さんによって、言葉になり、色と形を帯び、みなさんにお届けできるものになりました。
今回の記事では、「帰らない日は家賃がかからない家」unito の住民さんが増え続けている今だからこそ、その始まりの話を伺いました。
そして最後に、とつゆうたさんが、unitoに触れる日々のなかで考えた、自身の理想の暮らしを教えていただきました。
「暮らし」のスタンダードを変える、新しい概念づくりのはじまり
ー unitoとは、いつ出会ったんですか?
代表の近藤佑太朗さん、こんちゃんと、もともと経営者友だちで、以前からこんちゃんの事業を手伝っていました。unitoについては、その延長線上で、こういうの考えていると、いまのunitoの事業構想を話してくれたのがきっかけです。
ー事業の構想段階からジョインされてたんですね。
名前やビジュアルを通して新しい概念をつくるということは、自分がやっていこうと思っていた仕事だったから「それ僕にやらせてくれない?」って僕からお願いしました。そこからデザイナーとして、unitoの概念を一緒に作り始めたんです。
住み方自体の概念が新しくなるというのが、すごく面白いなぁって思ったんですよね。
暮らし方が結構大きく変わるなぁって思った。「あれ?そんな選択肢あるんだ。」ってびっくりするような。こんちゃんはこういうことをやりたい人なんだろうなって、改めて思いましたね。
そんな新しくてびっくりすることを、スタンダードにしていくことを僕はしたいなと。それがスタンダードになったとき、暮らし方が変わった状態だろうなって。新しい概念を打ち立てて、それがスタンダードになっていくってすごいなって。
新しいシステムとして帰らない日は家賃がかからない「リレント」っていう料金システムがあるけど、「unitoが広げたいのは、リレントではない」ですよね。
なにがやりたいかって「暮らし方」が変わって、生活が変わって、一人ひとりが理想の暮らし方を叶えられる世界をつくるっているのが、unitoがやりたいことで、それをちゃんと伝えられるブランド、サービスにしなければならない。そこをしっかりできるようにしたいと思いました。
ー 一人ひとりが理想の暮らし方を叶えられる世界をつくる「unito」。そのブランドを確立するために実際どんなことをしたんですか?
プロセスとして大きく2つあって、1つ目は、アイデンティティの抽出です。
アイデンティティっていうのは結構内面的な話で、そもそも自分たちは何がやりたかったんだっけ?っていうのを、しっかり、自分たち自身で言語化する作業です。わかりやすく言うと、企業でよくビジョンやミッションって言われる部分です。
ディスカッションやワークショップを通して、誰かに伝えるためではなくて、あくまで自分たちのことを理解するために、こんちゃんはもちろん、僕や他のメンバーの共通認識にしていきました。
2つ目は、それをどうやって伝えるか。僕がブランドと呼んでいる部分です。
その、アウトプットはめっちゃ明確で、名前、ロゴがメイン。デザインのパターンやタグラインもそれに付随して生まれてきます。
unitoの仕事は印象的で、大きな分かれ道があったんですよ。伝え方の方向性を3パターン考えて持って行った時のことなんですけど、ここでに何を選んだかによって、大きくイメージや形が変わっていたと思います。
1個目のパターンが「都市鳥」。都市に住んでいる鳥ってあえて都市に住んでいるんですよ。自然にいるより都市にいる方が、外敵がいなくて守られているからって、住むのに最適化された場所として、都市を選んで住んでいる鳥がいるんです。unitoって、主に都市に広げるサービスで、利用者はアドレスホッパーのように自由にいろんな場所を転々としている、その姿が都市鳥と重なるなと思って生まれたアイディアでした。
2つ目のパターンが、「アルトバウ」。ドイツ語ですね。「アルト」が古い、「バウ」が家という意味で、つまり「アルトバウ」とは古い家。ちなみに新しい家のことは「ノイバウ」っていうんですけど、ドイツでは賃貸を探す時に、「アルトバウ」か「ノイバウ」かっていう選択肢があるんです。日本だと築浅の物件の方が人気だったりするんですが、ドイツだと築年数が古いアルトバウの方が人気だったりするんですよね。
アルトバウは、住む人のセルフビルドが繰り返されて出来上がった空間で、前の住民のひとがつけたかわいいシンクとかが残っていたりして、そういう時間をかけて、いろんな人の手によって作られた家が、ある人にとって最適な家になるって面白いですよね。そこが、なんというか、unitoの100年後にスタンダードになる暮らし方を作っていくというところに重なるなと思って、1つの方向性として提案しました。新しい概念だけど、伝統や厳格さ、クラシックさのある方向性で、新しい伝統をつくっていくというイメージです。
3つ目のパターンは、今のunitoの方向性として採択されたもので「メルト」。境界線を「溶かす」という意味です。住むと泊まるの境界線を溶かす。最も抽象的で、最もシンプルなイメージ。
ただ「メルト」という言葉は、建築的には少しネガティブなイメージなので、その方向性をもったまま他の言葉にできないかというところで、生まれたのが「unito」。住むと泊まるの境界線を溶かすのではなくて、住むと泊まるの間の新しい単位を作ろうというコンセプトです。
unitoという新しい単位を通して対象物を見ると、新しいかたちに見えるっていうのが、ロゴになっています。unitoは、新しい単位をもって世界をみて、新しい暮らし方を探していくという方向性をビジュアル化しました。
ー 実際にとつさん自身は、新しい単位「unito」をもって、どんな新しい理想の暮らし方を描いているんですか?
僕自身かぁ…。まず住む場所は、いくつかの拠点を持ちたいなぁと思っていますね。3箇所かなぁ。地元の岡山県と、ヨーロッパかアフリカ。地域性や国の文化だったり、僕は「偏り」と言っているんですけど、そういうものに触れられる場所に拠点をおきたいですね。あとは東京。東京はお金の廻りが激しい分、いろんなひとが集まるし、いろんなものが生まれるし、やっぱり面白い場所だなと思っています。
ー「偏り」って面白いですね。もう少し教えてください。
人って誰しも「偏り」を持っていると思っていて、僕はそれがすごく好きで。例えば、目が黒いとか、髪がちょっと茶色いとか、食べ物の好き嫌いとか、人の前で話すのが苦手とか、誰かといないと寂しいとか、そういう「偏り」って誰にもあって、なおかつ、最後に自分自身が自分であるためにすがれる、最後の要素でもあると思っていて、大切にしたいと思っています。むしろもっと「偏り」を活かす生き方ができたらいいなと思っているんですよね。
現実そういう「偏り」は、ネガティブに捉えられがちで、その環境のなかでの多数派に引っ張られて消えて行ってしまう。それが僕はちょっと嫌で、むしろ魅力として肯定されるようになってほしいと思っています。
例えば世界が赤色だったら、赤色はなんでもないものになってしまって、逆に青色に特別感や違和感を感じるじゃないですか、それと一緒で「偏り」が一人ひとりの「手触り」を生むんですよ。
「手触り」って、自分が触れたことがあるものの差分でしか生まれないと思っていて、僕自身が、もっといろんな「偏り」に触れて、「手触り」に敏感になれるように、今いる東京だけではなく、いろんなところに拠点を持ちたいと思っています。
ー「偏り」に触れるために暮らす拠点を増やすんですね。まずはなにから始めますか?
まさに来年、ヨーロッパに行こうかなと思っています。
目的は単純で、デザイナーとして、タイポグラフィを基盤としたグラフィックデザインだったり、ヨーロッパのデザインに触れたいなと思っています。
日本のデザインって、僕はアメリカの考え方が基盤になっていると思っていて、商業的主義というかコマーシャリズムが強いと思っています。アメリカは、産業ありきのデザインで、実際に、有名なアートディレクターって、多くは広告代理店にいるんですよ。それに対してヨーロッパは、デザインが民衆から生まれていて、アートや芸術の分野から派生して生まれたデザインなんですよね。そういうデザインの伝統に、もっと触れたいです。
新しいものをつくるって、当たり前のことを言いますけど「今までにないものをつくる」という意味じゃないですか。これまでに堆積してきた「今までつくられたもの」を知ることが大切だと思っています。そのために今は伝統のあるヨーロッパのデザインにもっと触れたいですね。
ー 拠点が増えて行ったら、unitoに住むのが良さそうですね!
もっと、東京の拠点の色を薄くしたいですね。いまは、自分のワークスペースとか、自分のものとかをたくさん家に置いてしまっていて、まだunitoには住めないけど。まずは、岡山とかヨーロッパですごす時間を増やして、東京の時間を減らしていきたいです。その時は、僕もunitoに住みたいと思っています。