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デザインは多数決では決まらない。

少し前、デザインのことで少しだけ揉めた。誰かが悪かったわけじゃない。むしろ、全員が善意だった。だから難しかった。3店舗目のオープンに合わせて、記念品をつくろうという話になった。コアメンバーで話し合い、アイテムを決め、デザインを起こし、見積もりまで進んだ。あとは発注するだけ。そんなタイミングだった。少し時間にも余裕があったので、自分は何気なく言った。「せっかくだし、みんなにも意見を聞いてみようか。」今思えば、これが失敗だった。話し合いの流れを把握していないスタッフに、「これどう思う?」と聞いてしまった。人は、意見を求められると、良かれと思って改善点を探す。「強いて言えば。」「もっとこうした...

飲食未経験、1人目社員。

約7年アパレル業界に居た私が、なぜここにいるのか。少し考えてみました。接客業に携わる中で、現場と本部との間に生まれるすれ違い、お客様に一番近い現場だからこそ見える課題やアイデアを形にする難しさを感じました。そんな疑問が、自分自身の働き方を見つめ直すきっかけになりました。自分のやりたいことを改めて考えた時に、もっとブランドの成長に自分自身が深く関われる環境に身を置きたい。現場経験を活かして、あえて慣れ親しんだ環境から一歩飛び出して、自分の力を試してみたい。そんな思いから、ここにきました。入社後は、まずカヌレの製造をマスターします。カヌレ専門店ですからねっ。飲食未経験でも、問題ありませんでし...

若い頃は分かりやすいものが好きだった。

自分が社会人になった頃は、今以上にロジカルシンキングや構造化がブームだった。外資コンサルからスタートアップへ。そんな人材の流れも手伝って、社内でも社外でも通じるカタカナ用語が一気に増えた時代だったと思う。特に、KPI、コミット、PDCA。この三つの単語は、夢に出るほど聞いた。経営層の間でも同じブームが起きていたのだろう。アジェンダの共有は24時間前に。「コンセンサス取れてる?」「プライオリティは?」「バッファーどれくらい見てる?」そして、「バリューねぇな。」「ボトルネック、お前じゃん。」今思えば、かなりパワハラめいた言葉も飛び交っていた。横文字を使うと人は高圧的になってしまうのか、こんな...

青天の霹靂

事業を始めた頃のことを振り返りながら、そもそもなぜカヌレを選んだのか、少し考えてみました。当時、代表の上田と一緒に何か事業をやろうということだけは決まっていて、具体的に何をするかを考えている段階でした。そのとき上田から最初に出てきた提案が「カヌレ」。ノータイムで「いいね」と返したと記憶しています。ただ、今になって考えると、もし最初の提案がカヌレではなく、アパレルだったり、レストランだったり、別のプロダクトだったらどうなっていたのかなと思います。少なくとも即答ではなかったかもしれません。そもそも、普段から甘いものをあまり食べないので、特にクッキーやタルトなどのガチ目の焼き菓子は苦手で、どち...

そこに集まっている空気みたいなものも一緒に買っている。

行列を見ると少し気になる。並びたいわけではない。ただ、何が起きているのだろうとは思う。人は自分で価値を判断しているようでいて、案外そうでもない。誰が買っているのか。どれくらいの人が集まっているのか。そういう情報を手掛かりにしている。権力者が買えば格式が生まれる。有名人が買えば話題が生まれる。社会現象が起きれば、今度は好き嫌いに関係なく無視できない存在になる。面白いのは、物そのものは変わっていないことだ。価値は物の中だけにあるわけではなく、その周りにも存在している。同じ服でも、有名な俳優が着ていると少し気になるように。同じ本でも、みんなが読んでいると手に取ってみたくなるように。店をやってい...

デザインと経営

なかなか長くなってきたデザインキャリアの中で、これまで多くの企業やブランドをデザイナーという立場から支援してきました。経験を重ねる中で、自分なりの判断軸やスキルも少しずつ身についてきた実感がありました。一方で、自分自身が資金を出し、ブランドの運営側に入ってみると、それまで培ってきた経験や感覚だけでは判断できない場面に、数多く出会うことになりました。もちろん、ある程度は想像していた世界でしたが、実際に飛び込んでみると、その何倍もの「知らなかったこと」や「これまでとは違う感覚」がありました。売上は日々変化し、うまくいかなければ事業そのものが立ち行かなくなる。一方で、うまくいけば人生を変えるほ...

「カヌレが絵文字になるまで。」デザイン会社発の僕たちが、カヌレブランドを始めた理由

株式会社BEUYSの代表をしている上田です。現在、都内で3店舗、「MM Canelé」というカヌレブランドを運営しています。ただ、僕自身はパティシエでもなければ、もともと飲食業界にいた人間でもありません。もともとはデザイン会社として、企業やブランドのビジュアルやコンセプトをつくる仕事をしてきました。はじまりは、二人のデザインプロジェクトBEUYSは、2011年に二人のクリエイターで始めた小さなデザインプロジェクトです。名前は、ドイツの芸術家 Joseph Beuys(ヨーゼフ・ボイス)から取りました。ボイスには「すべての人は芸術家である」という有名な言葉があります。彼は絵画や彫刻だけでは...

外交の国が教えてくれたこと。

「無視。」と聞くと、あまり良い印象のある言葉ではない。でも、フランスでは「無視する」というのが、交渉術のひとつらしい。これを ignorer(イニョレ) と呼ぶそうだ。反応する価値があるものを選び、言葉を交わしてもうまくいかないと感じる場面では、徹底して話さない。相手の土俵に乗らない。「聞く」と答えなければならなくなるから、あえて聞かない。そんな外交技術があるらしい。そういえば、フランス映画を観ていると、「なんで返事しないんだろう。」と、やきもきする登場人物がたまにいる。あれは、この「イニョレ」を切り取ったものだったのかもしれない。ちなみに英語では ignore(イグノア)。と呼ぶそうだ...

1が3になった。

8月15日に、MM Caneléの3店舗目となる初台店がオープンした。1店舗目の清澄白河をつくったときは、正解なんて分からないまま、自分たちがいいと思うものをとにかく形にした。2店舗目の駒沢では、清澄白河での反省と、駅というまったく違う環境にどう持っていくかを考えた。そして3店舗目の初台。店が増えるにつれて、「MM Caneléらしさとは何か」を考えることが増えた。ロゴが同じならMMなのか。同じ什器を使えばMMなのか。同じ商品を同じように並べればMMなのか。たぶん、そういうことではない。同じにすることと、揃えることは、少し違う。変えていいものと、変えてはいけないものがある。ブランドをつく...

若い頃は分かりやすいものが好きだった。

自分が社会人になった頃は、今以上にロジカルシンキングや構造化がブームだった。外資コンサルからスタートアップへ。そんな人材の流れも手伝って、社内でも社外でも通じるカタカナ用語が一気に増えた時代だったと思う。特に、KPI、コミット、PDCA。この三つの単語は、夢に出るほど聞いた。経営層の間でも同じブームが起きていたのだろう。アジェンダの共有は24時間前に。「コンセンサス取れてる?」「プライオリティは?」「バッファーどれくらい見てる?」そして、「バリューねぇな。」「ボトルネック、お前じゃん。」今思えば、かなりパワハラめいた言葉も飛び交っていた。横文字を使うと人は高圧的になってしまうのか、こんな...

見つけてもらおうと思うと、主張が強くなってしまうから。

先日、飲食経営のコンサルをやっているという男がやってきた。「もっと目立った方がいいですよ。」と言われた。たしかに、もっと目立ってもいいなと思い、話を聞いてみた。コンサルの男は、・駅に広告を出しましょう。・駅からお店までの道順がわかる看板を出しましょう。・お店の照明をもっと明るくした方がいいです。・キャンペーンは打ち出してますか?・夏はアイスとドリンクが必須です。・動画戦略はお考えですか?・地域商店とコラボの企画はどうですか?と、それらを行うことで少なくとも30%以上の集客改善ができると言った。見つけてもらうためには、どれも正しいと思った。見つけてもらえなければ、お店は存在していないのと同...

星より言葉。

口コミは商品を評価しているようでいて、実は「買った理由」を書いている。「店員さんが親切だった。」「友達に勧められて。」「包装がかわいかった。」「種類が豊富で選ぶのが楽しかった。」「天井が高く開放感ある空間がおすすめ。」書かれているのは、味の話ばかりではない。特にカフェは面白い。お店はスペシャルティコーヒーへのこだわりを打ち出していても、口コミには「居心地がよかった」「長居できた」「店員さんが優しかった」など、コーヒーについての書き込みはあまり見られない。人は、自分が何に価値を感じたのかを、案外正直に言葉にしている。だから口コミは、商品の感想というより、そのブランドの答え合わせなのだと思う...

いいチームの条件。

昨日、デザインについて書いた。そのあと、昔見た動画を思い出した。「思いつく人〜完成させる人」という動画だ。ひとつのものが出来上がるまでには、思いつく人がいて、計画する人がいて、形にする人がいて、広げる人がいて、修正する人がいて、華やかにする人がいる。そして、必ずと言っていいほど、全部を台無しにする人がいる。もちろん最後は、完成させる人もいる。笑い話のような動画だけれど、かなり本質を突いている。組織というのは、案外こんなものなんだと思う。先日の出来事も、少し似ていた。企画を考え、形にして、積み重ねてきたものを、自分が何気なく集めた「意見」が、危うくひっくり返しかけた。だからといって、「意見...

カヌレが絵文字になるまで。

カヌレが絵文字になるまで。iPhoneで「ショートケーキ」や「プリン」と入力すると、それぞれの絵文字が出てきます。なぜ、これらのスイーツには絵文字があるのか。それはきっと、長い時間をかけて多くの人に知られ、親しまれ、ひとつの文化として市民権を得てきたからだと思っています。一方で、カヌレはまだそこまでの存在ではありません。「カヌレ」という言葉の認知度も、ショートケーキやプリンには及ばない。もちろん、iPhoneで「カヌレ」と打っても、まだカヌレの絵文字は出てきません。だからこそ、MM Caneléの存在を通して、カヌレというお菓子の認知そのものを少しずつ広げていきたい。いつか、老若男女が「...

ゼロから立ち上がる瞬間に、居合わせる幸運。

「自分以外の誰かと、一つの物事を同じ目線で見つめることができる時間というのは、思っている以上に貴重なのかもしれない。」これは、朝井リョウさんの小説『イン・ザ・メガチャーチ』の中で、ファンダムのつながりや尊さを表す一節なのだが、とてもいい目線で思わずメモした。推し活に限らず、誰もが経験するであろう、部活や文化祭が、その感覚として分かりやすいだろうか。ひとつの目標を、自分以外の誰かと、同じ目線で見つめることができる時間。それは思っている以上に貴重で、大人になると、その機会は極端に減ってくるように思う。これにはタイミングもあるように思う。何かがゼロから立ち上がる瞬間に、その場に居合わせる幸運。...