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先日、取締役会で『経営・管理職層におけるジェンダーギャップ』について議題を扱いました。これまでに、制度設計や組織診断結果に対する議論はありましたが、『経営・管理職層におけるジェンダーギャップ』に絞って議題を扱うことは、会社を設立して以来、初めてのことでした。
このテーマについて、多面的にコトを見れていなかったり、社内でも議論や考えが成熟しているとはまったく言えない段階での情報発信ではありますが、この過程を残すことに意味があると思い、綴ることにしました。
今日は、取締役会までの道のりについて残したいと思います。
「難しい問題だよね」
私が、『経営・管理職層におけるジェンダーギャップ』についてアクションしようと考え始めたのは、このニュースを見てからでした。
このニュースを見て、私は笑えませんでした。アディッシュにおいて実現できていませんし、何よりも、女性当事者として「これは難しいよな」と思ってしまった自分がいました。どこか他人事でした。
しかし、取締役に女性を起用するよう求める海外投資家が現れているというニュースを見たり、イベント登壇者におけるジェンダーギャップに関する考えが綴られたnoteを拝読したりしているうちに、2030年に向けて、今度こそ変わっていくのではないか。そうであってほしいという願いを抱いていることに気づきました。
そして、この課題を自分事と捉えるならば、アディッシュで声を上げるのは私だろうと心に決めました。
今年6月頃から、自分の考えをアウトプットし、社内外問わず壁打ちをさせていただく機会を増やしていきました。
・数字目標を置くと、手段が目的化しやすくなるのではないか
・そもそも男性が多い職種なので、女性が増えるイメージが持てない
・多様性の観点だと、女性だけ、というのは違和感がある
・男性管理職を減らす基準を設けるということか
・管理職になりたい人ばかりではないと思う
・管理職にならなくても、自分の裁量を持って働けている
・果たして経営に女性は必要なのか
・業績あるいは会社経営にどんな良い影響があるのか
など。男性女性問わず、様々な声をもらいました。
皆さんだったらどう考え、どのように表現しますか?
ここで思考停止してしまうと、「頭では分かる(気がする)けど、難しい問題だよね。また今度話そう」で終わってしまいます。これまで、いつもそうであったように。
トップから「構造の問題」にフォーカスする
壁打ちを経て、私が大きく感じたことは2つあります。
ひとつは、トップが重要だということです。上記の声はどれも、良い悪いではありません。一方、これらの声に対して正解もありませんし、いますぐ管理職に女性がいなければ会社が潰れる、という状況でもありません。そうなったときに、『経営・管理職層におけるジェンダーギャップ』というテーマに対してどう取り組んでいくか、はたまた、いまは注力しないという意思決定をするかは、これは意思決定、つまり代表取締役あるいは取締役会マターであると思いました。
次に、この領域にタッチすると、ロジックよりも感情の割合が高まる、ということです。社内外でアウトプットする中で、多くの違和感やもやもやの声をもらいました。どれも切実でした。だからこそ、取締役会で扱う際には、ロジックで話す必要がある、と思いました。感情の割合が高まったら、また、「難しい問題だよね」で終わってしまう。進むものが進まなくなる、と感じました。
この過程を経て、いただいた複数の声に自分なりに見解を持ち、取締役会では「構造の問題」という切り口にフォーカスして課題提起することに決めました。
働きやすさと向き合ってきたのに、女性比率は下がった
さて、アディッシュの状況を見てみましょう。
アディッシュは、会社を設立してから、「ひとりひとりが自ら働き方・キャリアをつくる会社をつくりたい」という思いで、制度づくりや対話の文化づくりに取り組んできました。
Forbes JAPAN「JAPAN WOMEN AWARD2016」総合ランキング第4位、2018年度ウーマンエンパワー賛同企業アワード「特別賞」といった賞をいただく中で、「女性に特化した制度はありますか?」というインタビューを受けることがありますが、「ありません」と答えています。「ジェンダーやその他切り口に関わらず、働くひとりひとりの人生と向き合うこと」をポリシーとしてきました。
現状としては、会社を設立したときよりも、女性の割合が高くなりましたし、様々な年代・バックグラウンドを持った人が働き続けられる環境になりました。もちろん、まだまだ道の途中ではありますが、少なくとも、「アディッシュは女性が活躍していない会社だよね」と表現する人はいないのではないかなと思います。
次に、指導的地位に女性が占める割合を見てみます。
アディッシュでは、職位はロールのひとつにしかすぎないという認識をするようにしていますが、世の中の定義にあてはめて算出すると、指導的地位に占める女性の割合は14%でした。ちなみに、平成30年度雇用均等基本調査によると、課長相当職以上の女性管理職を有する企業の割合は21.7%。女性管理職を有する会社において、管理職に占める女性の割合は11.8%とのことです。
全体感を見ると、定量的にも定性的にも、アディッシュの状況は悪くはないと言えるのではないかと思います。
しかし、指導的地位に占める女性の割合については、アディッシュ社員の女性比率61%から期待される割合、あるいは目標30%に対しては遠い。
さらに、例えば役員を見ると、むしろ比率は下がっています。会社を設立したときは6名だった役員が、2020年には11名に増えたのですが、女性は変わらず私ひとりです。女性比率は16%から9%に下がりました。
結論、働く土台・選択肢をつくることは引き続きやる。でも、それだけでは足りない。指導的地位に占める女性の割合が自動的に上がるということはなく、組織規模が大きくなっていく中で、天然でやっていると、むしろメンズ体制になるということに気づきました。
次の指標を「壊れたはしご」におく
もう少し具体的に数字を見ていきます。
アディッシュは、社員のうち61%を女性が占めていますが、次のロールでは20%に下がります。役員比率がどうこうもありますが、ここですでに比率が壊れています。採用および昇進における格差「壊れたはしご(*1)」の現象が起きているのです。
では、この「構造の問題」をどのように扱うか。
そこで、これまでの変遷とともに、これからの道のりをもう少し見える化することにしました。
これまで、アディッシュでは、「働き続けられる土台・選択肢がある」「対話をする文化がある」ことを描いて、制度設計をしてきました。これらは一般的に、育児休業取得・復帰率や残業時間等の指標で図られています。この段階をStep1とし、引き続き、社内で組成している働き方委員会を中心に取り組んでいきたいと考えています。
その上で、次の中期のテーマをStep2とすると、「壊れたはしご」に取り組みたい。この場合の指標は、次に自分の職位を引き継ぐ場合に浮かんだリストの男女比率を見える化することではないかと考えています。必要があれば、育成計画あるいは採用計画を見直していく。このステージでは、男女双方の「無意識の偏見」にも取り組む必要があるだろうと考えています。
2027年以降のStep3では、女性管理職30%の比率が継続的に担保できるほどに候補者がスタンバイしている状態であり、ここでようやく「管理職に占める女性の割合」という指標が出てくるイメージをしています。その上で、男性の母集団が多い職能別での議論、あるいは国籍等の観点で取り組んでいくことが、アディッシュのグループ経営にとってありたい姿なのではないかと考えています。
いざ、取締役会。
すっかり前置きが長くなりましたが、この議題を取締役会で扱ったときにどんな反応が出るか、まったく想像ができませんでした。
取締役会で唯一の女性が、経営・管理職層におけるジェンダーギャップについてプレゼンをして、10名の男性役員がコメント及び議論をするという構図です。久しぶりにドキドキしました。
ここまで書いてきた現状共有や、2030年までの大きな方針についての意見を募ったところ、
・数字から見る現状への言及
・「壊れたはしご」の存在を認めた上で議論するのは良い方向
・女性役員を登用して業績に影響があった事例のシェア
・女性の上司/部下を持った経験のシェア
・直線的な昇進だけでなく、役割(CxO的な)の視点も入れていきたい
・目指したい像へのフィードバック
など、結果として、男性役員が次々とコメントをする展開となり、この様子は、私個人として、地味にグッとくるものがありました。
議論を経て、以下の方針で取り組んでいく認識を確認しました。
・経営・管理職層のジェンダーギャップにおいて、構造にフォーカスした指標を設けて取り組む
・経営計画に本項目を新設し、取締役会においても議論対象とする
余談ですが、取締役会前に、代表の江戸に提案をぶつけた際、「取り組んでいく方針に賛成であるが、むしろこういう設計にしたほうが、代表である私の責任となるからこうしたい。そうしないと進まないのではないか」というフィードバックがあり、経営計画に入れ、取締役会で議論の対象とする運びとすることができました。
じゃあ、具体的にどう取り組んでいくの?という点では、ようやくスタートラインです。これから実験を重ねていくことになりますが、今後も、『経営・管理職層におけるジェンダーギャップ』に関して細々と情報発信していきたいと考えています。
(*1)「壊れたはしご」について
経営陣に女性が少ない原因は「ガラスの天井」ではなく「壊れたはしご」 —— マッキンゼーの最新レポート
(*2)本記事に使用しているスライドは、取締役会資料の一部を抜粋し、社内用語を一般的に伝わる単語に変換して掲載したものです。
(*3)関連記事
上場を経験したからこそできる、「身近な社外の女性役員」という役割