AIコンサルが考える「デジタル・トランスフォーメーション」のかたち(3回目)|テクプレたちの日常 by ABEJA|note
ABEJAで企業のAI導入支援にかかわる佐久間隆介が、コロナを受けてデジタルトランスフォーメーションやAIの導入について解説するメディア勉強会の3回目です。 ...
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ABEJAで企業のAI導入支援にかかわる佐久間隆介が、コロナを受けてデジタルトランスフォーメーションやAIの導入について解説するメディア勉強会の3回目です。
佐久間隆介(さくま・りゅうすけ)=1979年生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、アビームコンサルティング(当時デロイトトーマツコンサルティング)に入社。2014年より最年少執行役員。2019年よりABEJAに参画しグローバルビジネス展開、企業のDX支援・AI活用のプロジェクトマネジメントなどを担当。同年12月よりUse Case事業部長。
佐久間:さて、今度はAIについて解説していきます。DXを構成する技術の中核でもあり、ABEJAが得意とする部分でもあります。
AIができることを4つに整理しました。事象や物の「分類」、経済変動や傾向の「予測」、サービスや提供物の「最適化」、事象の原因、法則性などを見つける「理由の発見」ですね=下図。
どういう事に使いたいのか、状況にあわせて、適切な手法を選ぶのが大事です。
その中で、まず「機械学習」について非常に簡単に説明します。例えばリンゴとバナナの違いについてコンピュータに教えるとき、リンゴは「色は赤い」「形は丸い」バナナは同様に「黄色い」「長細い」と、人間が判断するときに何の特徴に着目しているのかをなぞった上で、それをパターンとして覚えさせる必要があります。
そうすれば、新しく物体を判断するときに、この物体は赤いようなので、リンゴの可能性が出てきた、丸いようなのでリンゴの可能性が出てきたーーなどと特徴を重ねながら判断ができます。ところが、ルールの設定が十分でなかったり、間違えたりすると、例えば先ほどの条件付けだけでモモが出てきた時、多少色の濃いモモだったらその色を「赤」と誤認する場合もあるし、さらに丸いので「リンゴ」となってしまうかもしれない。
そういった弱点がこれまでの機械学習にはあります。そこで、どこに着目すべきか、事前に特徴を断定して教えるのではなく、データそのものをとにかくたくさん見て、そこに出ている特徴を自ら学習していく手法が出てきた。それがディープラーニングです。
※なお、ディープラーニングも定義上は機械学習の一部なのですが、ここでは便宜上これまでの機械学習を「機械学習」と呼んでいます。
機械学習は、前述の通りうまく判断できるための特徴を検討しそれをコンピュータが分かるロジックにして作り込むことが大変なのですが、ディープラーニングでは十分な特徴を読み込み、高い精度を出せるだけの質の高いデータをいかに多く集めるかが比較的大変です。
こちら=上図は、AIがデータの種類ごとにどんなことができるか、そしてそれに相性の良い具体的なAI技術が何かをまとめたものです。
「テーブルデータ」、つまり表計算ソフトでイメージされるようなデータはディープラーニングではなく機械学習を使うことが多いです。なんらかの値を予測したり、データの傾向を分析してくれます。
「画像」や「動画」は、ディープラーニングが比較的得意とするデータです。前に述べた絵や写真の内容の判定以外には、例えば、映画やCMなどの動画で「このシーンは登場人物が○○をしているシーンだ」とシーンの種類を推定してくれます。
「自然言語」は文章を要約したり類似度を判定したり間違いを正す、などの活用方法があります。
「音声」は、音声を自動的にテキスト化するのもそうですが、画像でも画像生成がAIでできるように、音声生成もあります。
「その他」はいろいろなものがありますが、例えば化学式のデータを学習させて、「こういう新しい素材ができるのではないか?」と、何億、何兆以上のパターンを瞬時に計算できるコンピュータの特性を用いて今まで解けなかった科学の問題を解かせるものがあります。
ディープラーニングは新しい技術だからと言って必ずしも絶対の正解ではありません。
何万件ものデータを学習して人間レベル、場合によっては人間以上のレベルのタスクを実現することが強みなのですが、画像や動画のような重たいデータを読み込ませないといけないので、高性能のCPUが必要です。ほかにGPU (Graphics Processing Unit) という画像処理に非常に優れた半導体チップおよびそれが載ったグラフィックボードも使うことがあります。シンプルに言うと、ディープラーニングはコストが高いです。
コストは高いが性能も高い。ならばとっておきの場面に使うべきですよね。
例えば、あるケースでは、画像認識によって人の作業を代替可能な工程が膨大にあり、自動化が実現した際の価値が大きいと判断され、高額でもやってみようとお客様に言っていただけました。同様のケースは結構あります。ものすごい高い効果が得られる訳ではなく、少しだけ便利にしたい、というような話なら、ディープラーニングではなく比較的安価に開発・運用できるルールベースのアルゴリズムを使ったほうがいいかもしれません。
優れたアルゴリズムやモデルは、もちろん日進月歩で登場しているのですが、それが全てを左右するわけではありません。与えるデータのボリュームや性質次第で精度も変わります。例えるならAIは「赤ちゃん」のようなものなので、いい人間にしたいのなら、どんな経験をさせ、どんなものを読みきかせるべきか、を親が考えるのと同じように、AIにどういうデータを学ばせれば特定のタスクを適切なレベルで実施できるのかを考える必要があります。
特にディープラーニングで何かをしたいと思った時に「そのタスクは何か」「そのタスクに重要になりそうなデータは何か」をまず突き止めることが大事です。そのデータを特定し、業務上問題なく集められ、それを学習させる形に的確に加工できるのなら有用な手法です。
事例をいくつかご紹介させていただきます。
サプライヤー大手「デンソー」様のタイ工場ではカイゼン活動の一環で、作業時間の短縮のための測定をAIを組み込んだカメラで測定しました。ヒトの動作から、たとえばこの腕がこう動いたとか、顔の向きがこうなったという動作をAIによって読み取り、人間が測定するよりも効率的に作業時間を把握する取り組みを行っています。
ひかりTVを運営する「NTTぷらら」様では、いわゆるVoD(Video on Demand)においてAIを使った番組のレコメンデーションに取り組みました。イメージとしてはユーザーが最初に見るトップページ上に、普段見ているジャンルや嗜好に近いコンテンツをおすすめしています。このレコメンデーションの運用を開始してから、有料コンテンツの売上が20%程度増えたそうで、大変ご好評をいただきました。
医療機器メーカー「トプコン」様の事例は研究段階ではありましたが、健康診断などでおなじみの眼底の検査画像で、白内障や緑内障などの眼の病気だけでなく、糖尿病などの生活習慣病も見つけられないかという取り組みにAIを活用しています。なるべく早期に発見して、注意を促せないか、と。ドラッグストアなどで来店客が気軽に検査できる将来を目指す意義の大きな取り組みです。
(④に続く)
(2020年8月14日掲載の「テクプレたちの日常 by ABEJA」より転載)