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Wantedly Journal | 仕事でココロオドルってなんだろう?

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「商品の数は、個性の数」タカラトミーの玩具開発は、つくる社員の個性がキモ

タカラトミーのシーズ開発課長が語る、ユニークなおもちゃを生みだす秘訣とは

2017/03/06

「トミカ」や「プラレール」、「リカちゃん」など数多くのヒット商品を生み出してきた玩具メーカー、タカラトミー。その研究開発部シーズ開発課を率いる加藤 國彦(かとう くにひこ)さんにお話を伺っています。

前編では玩具開発の裏にある取り組みや苦難、喜び、そしてアイデアをどうビジネスに落とし込むかというテクニックも伺いました。

前編▶︎おもちゃづくりは右脳と左脳―タカラトミーの商品をつくる、アイデアの種の生み出し方

後編では、玩具メーカーで働く魅力や今後の夢にまで踏み込んで語っていただきます。

ツンデレなワンセグテレビの開発秘話

これまで数え切れないほどの商品を開発してきた加藤さん。これまでに印象的なエピソードがあったか伺いました。

「よく覚えているのは、開発した商品がヤフトピ(Yahoo!ニュースのトピックス欄)の一番上に載ったときのこと。『SEGNITY(セグニティ)』という音声ガイド付きのワンセグTVを発売したとき、『ツンデレなワンセグテレビ』という文句でトピックスに掲載されました」

−ツンデレ、ですか?

「ツンデレボイス機能というのをつけていて、購入当初は『テレビでも見る気!?』とか『うるさいわね~』と言ってくるけど、使い込んでいくと『一緒にみよっか~』なんて言ってくるんです」

−ツンデレですね(笑)

「ツンデレです(笑)今でこそツンデレという概念も普及していますが、発売した2007年頃にはまだまだ新しい概念だったんです。そもそもワンセグ自体が最新の技術でしたし、ツンデレ要素も新しいとなっては、世間にウケるかどうか以前に上司からGoサインをもらうのも一苦労でした。ツンデレの概念を正しく説明できる自信がなかったので、結局『使うと仲良くなれるテレビを創ります』という説明に留めて、ツンデレにするという部分は伏せていました」

−ということは上司の方がツンデレ機能を知ったのは…?

「ネットに出たときですね(笑)やはり本当に理解してもらうためには実物まで用意しないと通じないものですから」

−加藤さんはなぜツンデレなテレビを創ろうと思ったのでしょうか。

「当時声優業界全体が盛り上がり始めていて、ビジネスチャンスがありそうだと踏んでいました。直感だけでなく、ここは左脳の出番なのですが、直感を裏付けるために数字も調べ、声優が来ていることを確信しました。そこで、ツンデレとは何かを理解するためにアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』を毎日見て、マスターできたと思った頃に自分でシナリオを書いてみたんです」

−シナリオもご自身で書かれているんですか!

「そうなんです。そこまで自分でプロデュースできるというのはタカラトミーならではの仕事の面白さですね。ですが、そのためには技術面でも流行面でも、世の中の流れをかなりキャッチしていないといけませんし、社内のことも社外のことも全部知っているくらいの心意気が必要ですね」

「商品の数は個性の数」

『JOY! VR 宇宙の旅人』や『SEGNITY』をはじめとしてタカラトミーでは幅広いジャンルで商品開発を手がけており、「こういうものを創らなくてはいけない」という固定概念は存在しないのだとわかります。

−お手元にあるいろいろな商品は、全て加藤さんが携わったものですよね。そちらの猫ちゃんのおもちゃはどんなものですか?

「これはタカラトミーアーツから発売されている『ムニュムニュ ドレミファキャット』という猫型楽器トイです。12種類の猫がそれぞれドレミファソラシドと黒鍵に対応していて、音遊びや演奏を楽しむことができます」

−そのアイデアはどのように生まれたものなのでしょうか。

「これは部署でアイデア会議をしたときに、当時チームにいた女性社員が出してくれた企画です。何か楽器を作りたいけれど普通の楽器じゃ面白くない。だったらかわいい楽器にしたらどうかと言ってイメージ図を描いてきてくれました」

加藤さんは、今度は袋に入った小さなチップを見せてくれます。

「小さいですが、こちらは半導体です。ベイブレードに入っている極小のNFCチップで、個体識別のためのID代わりに使ったり、大会参加時のエントリーなどもできます。これはたまたま商談会で村田製作所さんがこの技術を発表していて、なんらかの方法で使ってみたいと思い導入したものです。

それから、玩具というジャンルからは外れますが、エステーさんとの共同開発で放射線量計も創りました。これは2012年に発売されたものですが、前年の3.11を受けて企画が立ち上がったものです。放射線に関する専門知識なんて一切ない状態からのスタートだったので、『放射線ってなんだろう』と妻に問いかけたら、物理Ⅰの教科書を渡されました(笑)同位体(アイソトープ)とは何か、そこから勉強です」

−なぜ玩具メーカーで線量計を開発することになったのですか?

「震災のあと、公園から子供達の姿が消えました。誰もいない公園を見て、すごく世紀末感があって…そんな中、たまたま社内に放射線量計があったのでそれで近所の計測をしたところ、妻が子供を外で遊ばせるようになったんです。そのとき、うちの会社が携わる手伝う意義があるなと思いました」

やってみたいと思ったものを実際にトライできる…それがタカラトミーの魅力なのだと加藤さんは言います。

「VRやリカちゃんから線量計…この幅の広さで商品開発ができる会社はそうそうありません。家電の会社だったら家電だけ、車の会社だったら車だけですよね。さらに、うちでは新しい商品を創るとなったときに大きな裁量を持つことができます。ゲームを作ったときは絵コンテも自分で書きましたし、奥さんが描いた猫の絵を参考にした商品が店頭に並んだこともあります。

これをやってみたいと思ったらとりあえずやってみる。玩具はある意味、遊びから生まれていると思うんです。 “商品の数は個性の数”です。ひとつひとつの商品の裏にはその企画を立てた人物の個性が色濃く反映されているんですよね。そしてそれこそが、タカラトミーがユニークな商品を出し続けられる理由なんです」

管理職としての働き方

−タカラトミーで働き始めてから18年目、これまでに仕事観に変化はありましたか?

「管理職になってから、やはり自分だけではなく部署全体がハッピーになるためにはどうしたら良いかというのを考えるようになりました。以前は自分の創りたいものを追い求めていて、いざやってみたら想定の3倍お金がかかってしまいましたなんてこともありましたが(笑)でもそんな挑戦も認めてもらえる環境だから、自分でやれることを考えてオリジナルの商品を開発することができました。

今は自分がチームの個性をどう生かすか考える立場ですが、イメージは広大な草原に柵を立てて自由に放牧するという感じ。先ほども言った通り商品は“人の個性”なので、その人が考えないとその商品は生まれてこないわけです。いろんなことを自由にやってもらって、いいところをきちんと拾っていくのが理想かなと考えています。そうすると時折、チームの管理ができていないなんて言われますが…」

−タカラトミーには個性的な方が多そうです。

「そうですね。たとえば『JOY! VR 宇宙の旅人』のチームを見ても本当に個性的です。同じような人が集まると同じようなものしかできませんが、いろいろな人が集まれば発想のエリアもぐんと広がるので大歓迎ですね」

−今のお仕事では社外とのお付き合いも多いと思うのですが、どんな関係性を築くのが理想とお考えですか?

「社内と同じで、やはりその人たちがハッピーになれるかを考えています。企業と企業で付き合うときは、お互いにビジョンがあるので、一過性で終わるのではなく次も組みたいなと思ってもらえるかどうかが大事です。なので、相手がタカラトミーに何を求めているのかを考えます。お互いに良い付き合いができればそこからさらに人を紹介されたりして、チャンスも視野もどんどん広がっていきます」

−加藤さんのお話を伺っているとすごくお仕事を楽しまれている様子が伝わってくるのですが、逆に仕事をつらいと感じることはあるのでしょうか。

「アイデアが枯渇したときなど、産みの苦しみ自体はあります。けれど、何をやるにしても多少の苦痛はつきもの。仮に転職をいくらしても“楽園”なんてものはなく不満と満足の割合が変わるだけですし、どの会社に行こうがどの部署に行こうが満足と不満足は絶対にあると思います。なので、その部署、その状況で自分が何を出来るかを考えるようにしています」

昔からものづくりが好き

−産みの苦しみはどのように乗り越えるのでしょうか。

「もうやりつくした、何も出ないって思っていても、外に出かけて刺激を受ければ、この技術は使えそう、このアイデアもおもしろそう、というふうに感じてくるものなんですよ。昔からものづくりが好きで、日頃からいろいろ考えていたようなタイプだったので」

−どんなものづくりをしていたんですか?

「釘をバーナーで熱して叩いてナイフを創ったり、換気扇が壊れたら部品を買ってきて勝手にくっつけたりしていました」

−た、たくましい…!

「小さい頃から物の構造に興味があって、たとえばビデオデッキにビデオがどうして勝手に入っていくんだろうということが不思議で、あるとき分解してみたら戻せなくなって怒られました(笑)空想も好きで、宇宙がどうできたかなんてこともよく考えていました」

−現在も趣味で何かを創ったりしますか?

「私の趣味は車です。今でこそあまりしなくなりましたが、前はエンジンをいじったりしていました。今は車で行けるところまで行ってしまおう、みたいなことをするのが好きで、あるときは一日に3つの温泉地を巡ったりすることもあります」

−エネルギッシュすぎます(笑)ご自身で今後こういう玩具を創りたいというビジョンがあれば教えてください。

「そうですね……自分の子供が喜ぶものというのがひとつのテーマですね。自分の創りたいものを追い求めつつ、会社や社会にとっても有益で喜ばれるものを創りたいです。

それから自分は転職経験があるのですが、転職のときって履歴書よりも職務経歴書の方が重要になってきますよね。それはつまり、自分が何をやってきたかということを語れるのが大事だということ。自分はこれを創ったのだと胸を張って履歴に残せるものを創るよう意識しています」

−世の中にはおもちゃの開発をしてみたいと思っている方がたくさんいると思うので、ぜひメッセージをお願いします。

「具体的にこれをやったら開発者になれますというような条件はないですが、先ほども申しましたが玩具開発は自己表現なので、自分のやりたいことを明確にし、それを実現していくパワーが大切だと思います」

非常に真摯な姿勢で、ひとつひとつ言葉を選びながら丁寧に回答してくださった加藤さん。そんな中で開発エピソードをお話される際には非常に無邪気な笑顔をのぞかせたのがとても印象的でした。大人になった今もおもちゃを見るとなんとなくワクワクしてしまうのは、開発している方もワクワクしながら創っているからこその感覚なのかもしれません。

商品の数は個性の数。今後おもちゃ売り場を通りがかったときは、どんな人がどんな想いでこの商品を生み出したのだろうと想像してみるのも楽しそうです。

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Interviewee Profiles

加藤 國彦(かとう くにひこ)
大学卒業後、ファクトリーオートメーションの業務を得て、タカラ(現タカラトミー)に2000年に入社。TVにつなぐカラオケやゲーム玩具、液晶を使ったゲーム玩具の商品開発業務に従事。その後は、新規ライン商材のローンチからイノベーション業務、アドバンストデザイン業務をおこなう。現在、研究開発部シーズ開発課に所属。「すごいモノ」を生み出すために日々奮闘中。

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