エージェンティックコマースのフェーズ論を更新する——Dan Shipper の 6 つの予測と、5 月の業界進捗
5 月に AI ネイティブな会社 Every の Dan Shipper が出した予測を要約する。これはフェーズ論の延長ではなく、別の世界線を提示している。 1: オートメーションは嘘。エージェントには世話する人間が要る。Every は AI に最も前のめりな会社でありながら、この 1 年で社員を 15 人から約 30 人へと倍増させた。何かを自動化するたびに、その自動化がちゃんと回っているかを見張る人間が上に必要になる。AI は仕事を奪うものではなく、マネジメントの対象になった。 2: パーソナルエージェントは敗れ、スーパーエージェントが勝った。Dan は「全員が自分専用のエージェントを持つ」という考えから「会社に 1 つのエージェント」へ完全に意見を翻した。Open Claw 周りの個人エージェント熱が冷めたのは、しょっちゅう壊れる上に、サーバーに SSH して面倒を見る手間が重すぎたから。Shopify は River、Ramp も社内エージェントを持つ。全社共通の汎用エージェント (たとえばデータ問い合わせ用) を上に置き、モデルが自律的になるにつれて下へ専門特化させていくのが定石になりつつある。 3: SaaS は死なない、むしろ今すぐ SaaS 株を買う。エージェントは SaaS を消すのではなく、SaaS のユーザー数をむしろ増やす。実際、全員がエージェントを使っている Every でさえ、SaaS への支出は前年比で増えている。 4: 自分の AI を SaaS に持ち込むと、トークンの経済性がひっくり返る。Proof や PostHog のようなアプリを自分のエージェントの中で動かすと、消費されるのはベンダーではなく自分のトークン。これは AI を抱き合わせた瞬間に潰れると思われていた SaaS の利益率を、逆に守る。これからのプロダクトは「人間とエージェントが同時に同じ作業を協働する」前提で作る必要があり、エージェントは数秒で膨大なリクエストを飛ばせるため、承認用のインボックス、ログ、即座のロールバックが欠かせない。 5: CLI の時代は終わった、ただし完全には消えない。Claude Code が効いた理由を CLI という形だと勘違いした人が多かったが、本当の決め手は「エージェントが自分のコンピュータ上で動く」ことだった。実際に GUI に移ると、人類がなぜ GUI を作ったのかを思い出す。Every の技術者の大半は、もはや CLI をメインの作業面としては使っておらず、ときどき切り替えて使う程度。 6: 唯一の生き残り戦略は「モデルに乗る」こと。リリースのたびに岩をひっくり返して「今ならできるか」と試す。AI の最前線はサンフランシスコではなく、AI が現実の人間の営みと出会う場所にある。 この 6 つは個別に読むと SaaS 投資論のように聞こえるが、エージェント決済のフェーズ論に置き直すと別の意味を持ち始める。