「社内報に書くことがなくて…」「採用広報の記事、どう書けばいいの?」
これは、それぞれのサービス提供者である私たちが最も多く受ける相談のひとつ。執筆経験がない中で記事を任されるのは荷が重いですよね。でも、記事の質と量が施策の成否を分けるのもまた事実。
そんなとき出会ったのが、新聞部の高校生がつくる記事。完成度の高さとネタの多様さに驚きました。
「どうやって書いてるの?(書けるようになったの?)」そんな疑問から、今回は全国有数の強豪である「埼玉県立 川越高校 新聞部」の皆さんにお話を聞きました。
取材を通じて見えてきたのは、“記事と向き合う姿勢”の純粋さ。この記事が、「書くこと」に悩む方の小さなヒントになればうれしいです。
「人のことなら、地味なことでも記事になる」
最初に、「どんな内容を記事のネタにしているか?」という質問をぶつけました。
「もちろん校内の行事は書きます。例えば球技大会や文化祭ですね。これらは、“事実ベース”で内容を構成するので、情報発信としての機能が大きいと思います。これはこれで大切ですが、“意外な反響が得られる記事になる”のは先生たちの意外な一面ですね。趣味や性格が見えると、すごく反応があるんです」
「例えば強面の名物先生をインタビューしたら、実はめっちゃアニメ好きで。それを記事にしたら、他の先生や生徒のリアクションがすごくて(笑)」
事前に準備してくれていたノートにも、
「先生へのインタビューや部活以外の姿を掘ると、意外性があって面白い記事になる」
「校内の変化や、ふと気づいた違和感をメモしておくと、意外と記事になることが多い」
とありました。
「あとは、校内・校外それぞれだったり、真面目なものと箸休めのものだったり、一辺倒にならないように様々なものを織り交ぜています」
社内報・採用広報とも大きな共通点として、「人にフォーカスした話は鉄板」というのは高校生も肌で感じているんですね。個人的には、「先生もこういう記事があると距離が詰めやすくなって助かるだろうな」と思います。読み物として面白いことにとどまらず、様々な活動へいい影響を及ぼしていそうで素晴らしいです。あとは、表層的なプロフィールだけじゃなくて、意外性を引き出すような質問をいくつか持てると良いのかも、というのも学びでした。
また、記事のカテゴリーのバランスを意識しているのも注目すべきポイントですね。
「例えばちょっとこれは良くないなという慣習を敢えて取り上げて是正を促す思いで書いた記事もありました。実際、今年に少しマシになったなーと実感できたこともありました(笑)」
素晴らしきジャーナリズム魂…と感服しながら、「読まれることの次にある、行動を促す」ことが目的であるという原理原則を教わったような気がします。
▶ヒント:社内報や採用広報でも、“地味だけど人柄が伝わる話”こそ読まれる。
実績の話よりも、「実はこういう趣味がある」「子育てと仕事の両立で工夫している」など、“人の輪郭が見える話”にこそ共感が集まります。意外性を引き出す質問をいくつか持てると良いですね。
※川越市長選の記事は、かなり踏み込んだ内容で読み応え抜群でした。
「たくさん書く、たくさん読む。結局、それでうまくなる」
「文章が好きな人が多いですか?」という質問に対しては、意外な答えが返ってきました。
「むしろ、得意じゃない人も多いです。入部の動機も、文章が書きたいというよりは校外含め、色んな人にインタビューできるという理由が多いですし。でも、不思議と部内に居心地のいい空気があると、だんだんみんな書けるようになっていくんです。だから技術よりも“空気”。まずは1年生が気楽に過ごせる雰囲気作りを大事にしています」
部内では、新入部員と雑談を交えながら自然に馴染ませる工夫がありました。その結果、最初は思うように書けなかった部員も「だんだん伝えたいことが記事に出てきた」と語ってくれました。この問答からの示唆は、「あまり細かいことを気にしすぎずに、思いの向くままにたくさん書くこと」が上達への一番の近道ということかと思います。また、雰囲気づくりが出来ることでたくさん指摘がしあえるということで、指摘を貰うことはもちろん、指摘をすることで文章がどんどん上達する感覚もあるそうです。
顧問の吉田先生からは別の観点で、以下の補足をいただきました。
「彼らは他校で制作された新聞も含めて、おびただしい量の記事を読む機会があります。それを通じて、だんだん自分たちの“基準”が育つのかもしれません」
なるほど。他社が公開している記事などをたくさん読み込むと、様々なヒントがあるかもしれませんね。四の五の言わずに、「量が質を凌駕する。書く量も、読む量も大切」というのが学びでした。
▶ヒント:
あまり失敗を恐れずとにかくたくさん書くこと。そしてたくさん読むことで上達する。
「いい記事って、“問い”があるものだと思う」
「ずばり、いい記事ってなんだと思いますか?」という核心を突く質問にも様々、熱を帯びて回答していただきました。
「新聞って紙じゃないですか。だから、“興味ない”って横に置かれたらそれで終わり。逆に言うとちょっと読んでみようかなって思ってもらえたら、それだけで勝ち」
「記事を読んで、“へぇ”で終わらずに、読んだ人が考えるきっかけになったらいい。自分と関係ないと思ってた話も、実はつながってるんだなって気づけるような」
事前の準備ノートには、以下のメモが。
「内容に“記者の思い”が込もっている記事は、読まれ方が違う」
「問いがある記事=読者の中に“もう一歩考える余白”がある記事」
書きたいことを思いを込めて書き、その上で読み手をハッとさせるような問いがあると、惹きつける文章になるんですね。そのための具体策は例えば以下でしょうか。
- 「あなたなら、どう行動しますか?」など、“読者に思考を促す一言”を添える
- 「本当にそれでいいのか、今も悩んでいる」など、敢えて言い切らず、途中経過も見せる
- 「なぜこの記事を書くのか」を記事冒頭で投げかける
大きな問いにまっすぐ答える生徒たちを、顧問の吉田先生の嬉しそうに見ているのが、印象的なパートでもありました。
▶ヒント:読まれる記事には“問い”がある。
事実を並べるだけでなく、「なぜ?」「あなたならどう思う?」と問いを投げかける視点が、読者との接点になる。
編集の仕組みとサイクルが、書き続ける土台に
川越高校・新聞部では、月1回の「一般紙」、年1回の「特別紙」、スポットで出す「号外・特集号」の発行が定着しています。
「1ヶ月かけて編集会議 → 取材 → 執筆 → 校正 → 印刷の流れを回しています。トップ記事は1面、あとは自由度を高く。写真やレイアウトにもこだわっています」
記事づくりが習慣化されているのは、このサイクルが部内で定着しているから。役割分担やスケジューリングなどは型を作っているそう。一方で、あまりかちっと固めすぎずに「面白そうなテーマ」があれば、柔軟に特集を組むこともあるそうです。
ツールなども専用ソフトを使って、効率的に記事作成を進めているとのこと。
部長を務める生徒さんは、もともと美術も好きなので構成へのこだわりが強く、渡してくれたノートにはこちらがうっとりしてしまうような構図が描かれていました。これらは別の鍛錬が必要そうなので、弊社サービスも含めて、ツールの力を借りれると良さそうです。
※部長を務める生徒さんのノートより。構成を固める箇所と自由度の高い箇所をわける。(きれい!)
▶ヒント:
月次・四半期など定例発行をサイクルとして決めながら、特集やインタビューを差し込む形がおすすめ。記事の流れや役割分担をテンプレート化しておくと続けやすくなる。
「チームとして楽しんで書くこと」が一番大切
最後の質問として、残りの部活期間どんなことを目標にしたいか、部長に尋ねると、照れくさそうにこう返してくれました。
「まずは、楽しむこと。やっぱりこれは大前提として、その上で尊敬している他校に近づきたい」
楽しむことを何より重視されていることが伝わります。なぜ大事にしているかを聞いてみると、「書き手の想いを凝縮させる必須条件」と捉えていることが伺えました。
部員同士の雑談や、部室での他愛ない会話が“ネタの種”になっているという話もあり、あらためて「雰囲気」がアウトプットに直結することを実感させられます。「部員の誰かが書いた記事に、他の誰かが『それ面白いね!』と自然に反応できる空気があると、全体のクオリティも自然と上がる」といった言葉も印象的でした。
細かいテクニックはあとから付いてくるので、まずは“書きたいものを楽しんで書く”。これに勝る対策はないのかもしれません。
▶ヒント:
楽しんで書いた記事に、書き手の魂が宿る
※記念写真も新聞部のメンバーに撮っていただきました
まとめ
社内報や採用記事に活かせる!川越高校新聞部から学んだ5つのTips
① 人に焦点を当てる記事は鉄板。“地味だけど人柄が伝わる話”は読まれる
② 失敗を恐れず、とにかくたくさん書くこと。そしてたくさん読むことで自ずと上達できる
③ 事実を並べるだけでなく“問い”を与えるバリエーションを持つ
④ サイクルを決め、ツールやテンプレートもうまく駆使して継続しやすい体制にする
⑤ とにかく楽しんで書くこと。楽しまないと想いが伝わらない。
さいごに
純度高く、誠実に新聞制作に向き合う高校生の皆さんの言葉は、社内報ツールや採用サービスを提供する立場である自分にとっても、「記事のあるべき姿」について本質を見せられるものでした。
記事とは、情報ではなく“つながり”を届ける手段なのかもしれません。
「何を書けばいいか分からない」と悩んだときは、川越高校・新聞部の皆さんの言葉と姿勢を思い出してみてください。
きっと、あなたの職場の中にも、“言葉にすべきこと”は眠っています。
それを見つけ、言葉にする小さなきっかけとして、楽しんでたくさん書いていきましょう。
この記事が、“発信”を担う皆さんのヒントになれば嬉しいです。