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東南アジアのテック企業のインパクト

こんにちは!ウォンテッドリー コーポレート担当執行役員の兼平(プロフィールはこちら)です。

今回は、ウォンテッドリーが進出しているシンガポールを含む東南アジアのテック企業の動向について見ていきたいと思います。テック企業では何かと米国が注目されますが東南アジアも熱いですね!

ゴジェックとトコペディアの経営統合

2021年5月17日にインドネシアの配車アプリ大手の「ゴジェック(gojek)」と同じくインドネシアのEコマース大手の「トコペディア(tokopedia)」の経営統合が発表されました。統合後の新会社は「ゴートゥーグループ(GoTo Group)」となり、両社の頭文字を取ったわかりやすい名称となっています。

日経新聞などでも報道されたので、ニュース自体は見かけた方も多いかもしれません。

トコペディアはサイバーエージェントやソフトバンクグループからも資金調達しており、日本に馴染みのある企業と言ってもいいかもしれません。

ゴジェックのリリースによると、インドネシアにおける史上最大の事業統合であり、アジアでもテック企業としては最大規模となるとされています。

The agreement marks the largest ever business combination in Indonesia and the largest between two Asia-based internet media and services companies to date.

出所:https://www.gojek.com/blog/gojek/goto/

新会社の規模を物語る数値として、MAU(Monthly Active User)は1億人以上、2020年のGTV(Gross Transaction Value)は220億ドル以上(1ドル=110円換算で2兆4,200億円以上)、インドネシアのGDPの2%を占めるエコシステムを構築していると公表されています。

  • Total Group Gross Transaction Value (GTV) of over US$22 billion in 2020
  • Over 1.8 billion transactions in 2020
  • Total registered driver fleet of over two million as of December 2020
  • Over 11 million merchant partners as of December 2020
  • Over 100 million monthly active users (MAU)
  • An ecosystem that encompasses 2% of Indonesia’s GDP

定義の違いはありますが、GoTo GroupのGTVとメルカリ(証券コード:4385)のGMV(Gross Merchandise Value)と比較すると、メルカリJPが約2,000億円、メルカリUSは約3.2億ドル(1ドル=110円換算で約352億円)、合計で約2,400億円と、約10倍の違いがあり、以下に巨大がわかります。

出所:メルカリ 2021年6月期Q3決算資料

また、インドネシアにいては人口の約半数にあたる、1.4億人もの人々が金融システムにほとんどアクセスできない現状を踏まえ、「GoTo Financial」という新しいブランドで決済、金融サービスを提供するとしており、エコシステムの強化が期待されます。

where 140 million people have little or no access to the country’s financial system.
payments and financial services, under the new brand of GoTo Financial, which encompasses GoPay as well as the Group’s merchant and financial services offerings.

リリースには記載がありませんが、今後インドネシア国内・米国で上場するという計画があると報道されています。

経営統合の背景

経営統合の背景には、COVID-19による事業影響と、シンガポールのテック企業である「シー(Sea Limited _ NYSE:SE)」のインドネシア事業の台頭があるとされています。

シーはゲーム、Eコマース、電子決済を手掛けており、ゴジェック、トコペディアと事業領域が重複しています。2019年8月から2021年7月での株価上昇率は1000%(!)と米国の著名なテック企業をおさえ大型株では上昇率世界一とも言われます。注目度ではGAFAやFAANG、テスラが取り上げられることが多いので隠れたホット銘柄ですね。

2020年の業績を見てみると、Revenueは年間44億ドル(1ドル=110円換算で約4,840億円)でYoY 101.1%と著しい成長を遂げています。時価総額は約1,500億ドル(1ドル=110円換算で約16兆5,000億円)となっています。

出所:シー 2020年Q4 Infographic

このシーの急成長が東南アジアのテック業界再編を促した影響で、シンガポールの配車アプリ大手のグラブ(Grab)のSPAC(特別買収目的会社 - Special Purpose Acquisition Company)との合併を通じた上場延期につながったとも言われています。事業が重複していること、トコペディアが合流したことでより広範なエコシステムの構築が期待されること、グラブのお膝元であるシンガポールでゴジェックの利用者が伸びていることなどがあげられます。加えて、グラブのガバナンスへの懸念などもあるようです。

GoTo Groupの誕生後、シー、グラブと合わせて東南アジアのテック企業3強と言われることもありますが、2021年7月にはインドネシアのEコマース大手の「ブカラパック(bukalapak)」がユニコーンとしてインドネシア証券取引所に上場するなど、東南アジアのテック企業はさらなる盛り上がりを見せています。

GoTo Groupのあるインドネシアの人口は約2.7億人、ASEAN(東南アジア諸国連合)全体で見ると約6.6億人と米国の2倍、EUの1.5倍の人口を誇ります。現状では米国、EUなどにGDPは劣りますが、言い換えるとそれだけ非常に巨大な市場が眠っている地域とも言えます。中国、インドに見るように数は力と言えるでしょう。産業のデジタル化が与えるインパクトも大きく、今後ますます東南アジアのテック企業の注目度が高まっていくと思われます。

最後に

GoTo Groupの誕生、グラブの上場延期、シーの絶好調な株価など、ここ数ヶ月でニュースが続いたことを受けて改めて東南アジアのテック企業の理解を深めることができました。

ゴジェックは配車アプリですが、インドネシアの生活にかかせないバイクにマッチさせることで競争優位性を築いてきたことなどを調べていくうちに、前職のHonda時代の知識がこんなところで活かせるのかと思い、どんなキャリアを歩んでいても経験を活かすことは出来るのだなと思いました。

また、普段SaaS企業や米国企業の分析をすることが多いですが、異なるビジネスモデル、地域のことを分析すると、頭がリセットされ、新たな視点や気付きを与えてくれるように思います。

ウォンテッドリーのシンガポール事業では、基本的には日本同様にWantedly Visitを提供しています。文化や商習慣の違いもあり、プロダクト、サービスのローカライズをどこまで進めるかといった日本とは異なる課題が面白い部分です。コーポレートとしても、現状は主たる機能は日本側に置いていますが、事業の拡大と共に機能のローカライズを進めていく必要があると認識しており、いつ、どうやってそれを進めるべきか考えていくことなどの形でも海外事業に携わることができます。

米国以外の企業分析に興味がある方、海外事業を進めていくうえでコーポレートをどう組み立てるかに興味がある方、ぜひ一度お話しましょう!

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