AI時代に、ライターは何をするのか。1000本以上の記事を書いてきた私が大切にしていること
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AIの能力が、日々どんどん高くなっています。なかでも特に進化を感じるのが、文章生成です。
「もう、ライターは必要ないのでは?」そう感じている方も少なくないかもしれません。
私は2019年に新卒でWebメディアを運営する企業に入社し、そこから現在までライター・編集者としてキャリアを進めてきました。新卒の頃から文字起こしにAIを使っていましたが、数年前から文章の校正や言い回しの調整などにもAIを活用するようになりました。
AIの精度が上がったことで、これまで文章を書くことに苦手意識があった方にとって、文章作成のハードルは大きく下がったと感じています。頭の中にアイデアはあるのに、ボキャブラリーや文章力が足りなくてうまくアウトプットできなかったものを、AIの力を借りることで形にできる。誰もが考えや経験を言葉にして発信できるようになり、表現の選択肢が広がったのは、ライターをしている身としても、とても素晴らしい変化だと思っています。
一方で、ライターが届けられる価値とは何かを、これまで以上にシビアに問われる環境になってきているとも感じます。
そこで今回は、私が考えるライターの本質的な価値と、実際に私自身がどのようにAIを活用しながら記事を作成しているのかについてお伝えしていきます。
目次
ライターは「相手に伝わる文章」をつくる仕事
企画書をつくる:企画の切り口は自分で定める
文字起こし:粒度を指定して、素材を整える
構成を考える:自分の頭に取材内容を叩き込む
執筆:最初から完成を目指さない
仕上げ:AIに整えてもらい、自分の原稿に戻す
AI時代に、ライターが心がけたいこと
ライターは「相手に伝わる文章」をつくる仕事
ライターというと、「文章を書く仕事」というイメージが一般的にあると思います。
ただ、私自身はライターの仕事を「相手に伝わる文章を書く仕事」だと捉えています。
当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、この「相手に伝わる」という部分にこそ、ライターの仕事の難しさと面白さがあると思っています。
では、相手に伝わる文章とはどんなものなのか。
商品紹介であれば、その商品の良さをきちんと理解し、受け手に届く言葉に変換すること。インタビュー記事であれば、話し手が伝えたいことを汲み取り、読み手が理解しやすい形に翻訳すること。
つまりライターは、ただ文章を書くだけではなく、情報と受け手の間に立ち、過不足なく情報を届ける役割を担っているのだと思います。
言葉にしたからといって、その内容が相手に100%伝わることはほとんどありません。丁寧に説明して伝えたつもりでも、実際にはその半分も伝わっていなかった、なんてこともよく起こりますよね。
それでも、受け手に情報をできるだけ正確に届けるにはどうしたらいいのか。そこで必要になるのが、書き手である自分自身が伝えたい内容や背景にある情報を深く理解し、自分の中で咀嚼したうえで、その解像度を限界まで引き上げることだと思っています。
良い文章を書くために必要なのは、単なる文章力だけではありません。文章全体の流れを組み立てる編集力、相手にわかりやすい言葉へ変換する翻訳力、自分の文章や伝わり方を客観的に捉える力など、複数のスキルが必要です。
考えれば考えるほど難しい仕事ですが、新しい表現に出会ったり、より良い構成を模索したりするたびに、やっぱり文章を書く仕事は本当に楽しくて、とても奥が深いなと感じます。
企画書をつくる:企画の切り口は自分で定める
では、実際にAIを使いながらどのように記事をつくっているのか。今回は、インタビュー記事の作成にフォーカスして紹介していきます。
まず取材前に必要になるのが、企画書と質問案です。取材では、事前準備がとても重要です。取材相手に企画意図を伝え、どんな話を聞きたいのかを整理しておく。この準備が十分にできていないと、良いエピソードを引き出すことは難しくなります。
私はまず、自分でリサーチをしながら、企画の軸と質問案を並行して考えていきます。この段階では、最初から完璧な企画書をつくろうとはしません。整っていなくてもいいので、自分がどんな切り口で話を聞きたいのか、何を面白いと感じているのかを書き出していきます。
自分が理解できるレベルのラフな文章で大丈夫です。この作業で大切なのは、きれいに書くことよりも、自分の中で浮かんだ関心や問いを逃さないことだと思っています。
もちろん、自力での検索には限界もあります。そのため、場合によってはAIのディープリサーチなどを使い、知りたい情報をさらに深掘りすることもあります。
ただし、リサーチのすべてをAIに任せきりにはしないようにしています。というのも、自分で情報を探していると、当初は想定していなかった有益な情報に偶然出会うことがあるからです。また、リサーチしながら必要な情報を自分の中で考えることで、「この企画では何を聞くべきか」「どこに面白さがあるのか」が少しずつ見えてくることもあります。
効率だけを考えれば、最初からAIに整理してもらうほうが早い場面もあります。けれど、リサーチの過程で自分の中に問いが生まれたり、企画の切り口が深まったりすることも、記事づくりにおいては大事な時間だと思っています。
また、AIが出してきた情報をそのまま受け取らないことも意識しています。必ず情報元にアクセスし、自分の目で確認し、その内容を自分の中で理解するようにしています。
リサーチを通じて情報を集めたら、その内容をもとに企画の軸を考えていきます。この企画で何をテーマにするのか、どんな切り口で話を聞くのかは、必ず自分で考えるようにしています。取材は、聞き手の質問によって内容のクオリティが大きく変わるものです。だからこそ、自分が聞きたいと思ったことや、面白いと感じたことの熱量を大事にしたいと思っています。
企画の方向性と質問案が固まったら、企画書としての形に整える段階でAIを活用します。AIに文章を整えてもらいながら、自分が企画書で伝えたい内容と齟齬がないかを確認し、企画書を読む相手に伝わる形へと調整していきます。
まとめると、リサーチ、企画の軸、質問案は自分で考え、言語化する。そのうえで、企画書として伝わる形に整える部分ではAIを活用しています。
文字起こし:粒度を指定して、素材を整える
取材が終わったら、次は文章化に向けた準備です。
まず最初の作業となる文字起こしはAIに頼ります。ツールはいろいろありますが、私はClaude Codeを使うことが多いです。音声ファイルを読み込ませたうえで、「えっと」「あー」などのつなぎ言葉のみを削除し、それ以外はできるだけ発言内容をそのまま残してください」といった形で指示しています。
また、話者が複数いる場合は、事前に誰が参加しているのか、それぞれの名前もあわせて伝えています。インタビュー記事では、話者の言葉のニュアンスや温度感が重要になるため、発言を過度に要約したり整えたりせず、できるだけそのまま残してもらうようにしています。
ちなみに、AIに「この音声ファイルを文字起こししてください」とだけ指示すると、発言がかなり要約され、整えられた状態で出てくることがあります。インタビュー記事では、話者の言葉の温度感やニュアンスが大事になるため、どれくらいの粒度で文字起こしをしてほしいのかを明確に伝えることが重要です。
Nottaなどの文字起こしサービスも含め、方法はさまざまです。自社で契約しているサービスや、自分が使えるツールの中でいろいろ試し、扱いやすいものを選んでみてくださいね!
構成を考える:自分の頭に取材内容を叩き込む
文字起こしができたら、次は取材内容を改めて咀嚼し、理解を深めながら記事構成を考えていきます。
まずは文字起こしをざっと読みながら、企画内容に沿っていない部分を削除します。私はこれを「間引き」と呼んでいます。文字通り、不要な部分を削り、必要な情報だけを残す作業です。
間引きが終わったら、その状態の文字起こしをもう一度最初から読み直し、内容をトピックごとに整理していきます。あわせて、発言の要所要所をひとことずつメモに書き留めていきます。
私はこの工程にMiroを使っています。Miroの存在を知らなかった頃は、付箋にどんどん書き込み、A3の紙に貼って整理していました。
実際のMiroのボード。話題ごとにひとことメモをまとめています
この作業をしていると、感覚としてはほとんど文字起こしを改めて自分で書き起こしているくらいになるかなと思います。ただ、単に発言を写すのではなく、話者の発言を自分の言葉や、読者が理解しやすいであろう言葉に置き換えながら、さまざまな角度から内容を理解・整理していきます。
この工程を、私はかなり大事にしています。
理由は二つあって、一つは取材内容に対する自分の理解度が一気に上がることです。もう一つは、内容を話題ごとに整理しやすくなる点にあります。
インタビューでは、一つの話題を話し切ってから次の話題に進む、というきれいな流れになることはほとんどありません。多くの場合、さっき話した内容の続きが、別の話題の中で出てきたりします。
ひとことメモにして整理すると、そうした話題同士のつながりが見えやすくなります。また、同じ話題に関するメモを物理的に近くに集めることで、トピックを再構築しやすくなります。
取材、間引き、メモ起こし。この3回を通して取材内容に触れることで、内容への理解がかなり深まります。
執筆:最初から完成を目指さない
ひとことメモが終わったら、記事全体の流れをつくり、いよいよ執筆に入ります。
執筆では、最初から完成形を目指すのではなく、まずは事実として必ず入れたいこと、記事の中でマストで伝えたいこと、話者の熱量が高かった部分を反映させることを意識します。
できるだけ自分の言葉で内容を整理しながら書き進めますが、すべてをその場で文章化しようとすると手が止まってしまうこともあります。そんなときは、表現が思い浮かばない部分についてはひとまず文字起こしの内容をそのまま残し、先に次の話題へ進みます。後から全体を見直しながら整えていく前提で、まずは必要な情報を漏れなく置いていくことを大切にしています。
この時点でできあがった原稿は、正直、他の人が読んでもスムーズには読めない状態です。理解するのが難しい、かなり荒削りな内容になります。それでも、自分が理解できていれば大丈夫です。この段階で大事なのは、完成度よりも、必要な情報を落とさずに置いておくことだと思っています。
仕上げ:AIに整えてもらい、自分の原稿に戻す
ざっくりと原稿ができたら、それをAIに流し込んで、一度文章を整えてもらいます。
このときは、文章全体の構成を大きく変えたり、過度に要約したりするのではなく、言い回しや記事として自然な表現に整えてもらうように指示します。
AIに言葉を整えてもらったら、最後に仕上げの作業に入ります。AIが整えた文章を見ながら、前のステップで作成した荒削りの原稿と照らし合わせ、修正していきます。
ただし、AIが生成した全文にそのまま手を加えていくのではなく、あくまで自分の原稿に戻って修正するようにしています。
理由は、AIの文章に引っ張られすぎてしまうことを避けたいからです。話者独自の温度感やニュアンスを、できるだけ保ちながら整えたい。そう考えると、AIが出した文章をそのままベースにするよりも、自分の原稿を主軸にしたほうが違和感に気づきやすいと感じています。
また、AIが整えた文章は一見きれいに見えるため、気をつけていても無意識に読み飛ばしてしまったり、細かい違和感に気づきにくくなったりします。
だからこそ、AIはあくまで補助線として使う。メインは自分の原稿であり、自分の理解であり、自分の違和感です。
AI時代に、ライターが心がけたいこと
AIは、文章作成においてとても心強い存在です。文字起こし、リサーチ補助、企画書の整理、言い回しの調整など、うまく活用すれば執筆のスピードも質も上げることができます。
ただ、AIに任せる部分が増えたからこそ、ライター自身が何を考え、何を判断するのかがより重要になっていると感じます。
企画の軸をどこに置くのか。
取材で何を聞くのか。
膨大な情報の中から、何を残し、何を削るのか。
話者の言葉のどこに熱量があるのか。
読者に伝えるためには、どんな順番で、どんな言葉に変換すればいいのか。
これらは、ただ文章を生成するだけではなく、情報を理解し、整理し、届けるための判断です。そして、その判断こそがライターの価値なのだと思います。
AIによって、文章を書くこと自体のハードルは下がりました。だからこそ、ライターには「書けること」以上に、「何をどう伝えるか」を考える力が求められているのだと思います。
私自身も、AIを使いながら記事を制作する中で、ライターの役割はなくなるのではなく、むしろより本質的な部分が問われるようになっていると感じています。
情報と受け手の間に立ち、伝わる形に翻訳すること。
話者の言葉の奥にある意図や熱量を受け取り、読者に届く文章へと整えること。
そのために、自分の中で情報の解像度を上げ続けること。
AI時代のライターに必要なのは、AIを使わないことではなく、AIに任せる部分と、自分が担うべき部分を見極めることなのだと思います。
これからも、AIをうまく活用しながら、相手に伝わる文章とは何かを考え続けていきたいです。