Wantedlyでプロダクトデザイナーをしている中野です。普段はVisit Culture Squadという部署でWantedlyの開発に携わっています。
私は今まで、いわゆる「コミュニケーションデザイナー」として、主にグラフィックデザインやPR、ブランディングなどの領域でデザインをしてきました。
そこから一念発起し、畑違いとも言える「プロダクトデザイナー」にキャリアチェンジしてもうすぐ1年が経ちます。
同じデザイン職とはいえ、アウトプットの目的やユーザーとの距離感が大きく変わる世界。この1年は毎日が試行錯誤の連続でした。
今回は、元コミュニケーションデザイナーの私がプロダクトデザインの「壁」にどう向き合い、最近ではClaudeなどのAIツールをどう活用してものづくりに向き合っているのか、リアルな舞台裏をお話ししたいと思います。
目次
キャリアチェンジでぶつかった「静」と「動」の壁
1画面へのこだわりを打破した、AIプロトタイピング
自分のスキルアップとチームの生産性を、日々模索する
未経験でも怖くない!同じことを何度も聞けるAIメンター
最後に:道具を問わず「つくること」が好きな人へ
キャリアチェンジでぶつかった「静」と「動」の壁
プロダクトデザインの世界に来て、以前の経験が大きな武器になった部分もあります。それは「画面を美しく、意図をもって構成するスキル」です。
グラフィックデザインで培った、1画面における情報の優先度を整理する経験やタイポグラフィ・色・レイアウトに関する感覚などは、UIを作る際にもそのまま活きていると感じます。
しかし、それ以上に「これまでの常識が通用しない壁」にもたくさんぶつかりました。
一番のギャップは、基本的には1枚の絵で完結する「静的なデザイン」から、ユーザーの操作によって状態(ステート)や前後が変わる「動的な体験」へのシフトです。
プロダクトデザインは仕様の理解や、考慮しなければいけない文脈の量が桁違いに多く、最初は「考えるスコープが広すぎる……!」と脳がパンクしそうになりました。
また、ツールが長年使ってきたAdobeから使い慣れないFigmaに変わったことにも苦戦したことのひとつでした。グラフィックは出力した時の見た目さえ整っていれば、最悪データがどうなっていてもなんとかなります。しかしプロダクトは、裏側のデータ構造をきちんと整理してコンポーネント管理しなければチーム開発に影響が出ます。もともと大袈裟な性格の私にとって、この「中身も綺麗に管理する」という作業は苦手分野で、今でも奮闘しているポイントです。
こうしたギャップや今までの制作のやり方との違いもあって、私は無意識のうちに「Figmaで1画面を作り込むこと」にこだわってしまい、前後の地続きな体験を考えることに苦手意識を持っていました。
1画面へのこだわりを打破した、AIプロトタイピング
そんな私のデザインプロセスを変えるきっかけになったのが、最近本格的に活用し始めた「Claude Codeを使った動くモックアップ作成」です。
プロダクト開発では、デザインを決める前に、プロジェクトのスコープ(どこまでやるか)を整理します。「このスコープにおいて何ができるか」を複数案考え、実装工数やスケジュール、技術的制約を他職種と相談しながら進めるのですが、そのときに「各案の具体度を高め、必要なことを洗い出す精度を上げたい」と思ったのがきっかけでした。
最初は「Figmaの静止画で事足りることを、リッチにやりすぎているかもしれない」という迷いもありました。ただ、実際にやってみると自分自身の思考プロセスに大きな変化が起き、**かなりの時間節約**になっていると感じます。
Figmaでラフを作ったあと、それを元にしたモックアップ作成とアイデアの発散をClaudeで行うようにしたところ、「1画面の完成度(静)」にこだわる傾向が消え、「ユーザーの体験の磨き込み(動)」に自然とフォーカスできるようになりました。動くものを自分で触りながら試行錯誤することで、Figmaの画面を眺めているだけでは気づけなかった「前後の繋がりの違和感」や「必要な仕様」が、とても早い段階で洗い出せるようになったのです。
自分のスキルアップとチームの生産性を、日々模索する
このようにAIを活用するアプローチを取り入れたことで、チーム全体のすり合わせのスピードが上がったり、議論がスムーズになったりと、生産性に寄与しているのは確かだと実感しています。
ただ、今のやり方がベストだとは思っていません。プロダクト開発は、PdM(プロダクトマネージャー)やエンジニア、デザイナーがそれぞれの視点の違いをぶつけ合うチーム戦。
自分のスキルアップはもちろんですが、どうすればもっとチームの役に立てるのかを考えながら、日々使える道具は何でも使って、試行錯誤しながらプロセスをアップロードしている最中です。
実際、Claudeで作ったモックをベースにメンバーとコミュニケーションするようになってからは、共通認識を持つのが早くなりました。静止画や言葉(文章)で説明するよりも、実際に動くものが1つある方が、お互いのイメージのズレが少ないと感じます。
「これなら実装のイメージが湧く」「この仕様だと工数が膨らみそうだから、こっちの案にしよう」といった、スコープや工数の議論が以前よりスムーズに進む感覚があります。まだまだ実験中ではありますが、自分自身の成長だけでなく、チームでの共創がより円滑になるようなアプローチを、これからも色々と模索していきたいなと思っています。
未経験でも怖くない!同じことを何度も聞けるAIメンター
ここまで読んで「未経験の領域で、そんなに早くキャッチアップできるの?」と思った方もいるかもしれません。
正直、プロダクトデザインの文脈や専門知識、技術的な事など、新しく覚えなければいけないことはまだまだ山積みです。でも、今の時代は本当に恵まれているなと感じます。なぜなら、AIに何でも、何回でも質問して学べる環境があるからです。
チームの先輩やエンジニアに「これってどういう意味ですか?」と何度も聞くのは、忙しそうだし少し気が引けてしまうこともあります。でも、AI相手ならどれだけ初歩的な質問をしても、自分が納得いくまで何回でも丁寧に解説してくれます。(私はよく「私を専門知識が全くない小学生だと思って教えて!」とお願いしています笑)
初心者にとってこれほど頼もしいメンターはいないなと思います。この「いつでも、何度でも聞ける良い先生」が横にいてくれたからこそ、未経験の畑違いな領域でも恐れずに、スピード感を持って知識を吸収し、日々の試行錯誤を楽しめているのだと思います。
最後に:道具を問わず「つくること」が好きな人へ
コミュニケーションデザイナーからプロダクトデザイナーへの転向は、同じデザインと言っても全く分野の違う領域で、最初は圧倒されることもたくさんありました。
ですが、私自身がそうであるように、元々アウトプットの形や媒体にこだわりがなく、「道具を問わず、ものをつくることそのものが好き」というマインドがある人なら、このキャリアチェンジは十分に選択肢としてアリなのではないかと思います。
テクノロジーはどんどん進化しています。Figmaの管理が少し苦手なら、AIを使いながら自分もチームも豊かになるやり方を日々アプデしていく、という私のようなアプローチだって、正解の1つになり得るのが今のプロダクトデザインの面白いところです。
自分がこれまで培ってきた「つくることの筋力」を信じて、新しい道具を味方にすれば、きっと新しいものづくりの楽しさに出会えるはずです。
この記事が、キャリアに悩むデザイナーの皆さんの背中を少しでも押すことができれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!