本格イタリアンジェラート店「GELATERIA LA FESTA(ジェラテリア ラフェスタ)」は、2017年7月に丸森町にオープンしました。
Wasshoi Lab設立当時、「祭りの重い神輿もみんな笑顔で力を合わせれば担げるように、会社でも一つのアクションを仲間と共に行い、高め合っていきたい」という「わっしょい=和背負い」コンセプトが頭の中にあり、「ラフェスタ」=お祭りと名付けました。
-インバウンド総合推進や地方創生コンサルティング、地域プロモーションなどの業務が多いWasshoi Tohoku Group(以下、WTG)ですが、なぜジェラテリアをオープンさせたのでしょうか?
丸森町の小学校で、出前授業のボランティアで講義をした際に、「丸森町を盛り上げたいんだけど、何がいいかな?」と子どもたちに問いかけたところ「町の真ん中にアイスクリーム屋さんがほしい!」という意見。「分かった、やります」と答えたことが開店のきっかけの一つ。
また、観光事業の当事者として、エンドユーザーの目の前で働く経験を積みたかったからです。飲食業は学生時代のアルバイトも含め未経験。大きなチャレンジになると考えました。
失敗から学んだ飲食店の経営
地元食材を使えば地産地消になり、地域復興にも貢献できます。地元生産者の牛乳と、旬のフルーツや食材を使ったジェラートは大ヒット。メディアにも取り上げられ、それを見たお客さまが遠方から来てくれるほどでした。
しかし2年目以降は赤字続き。丸森町は誰もが知る観光地ではありません。一般的な観光客狙いのビジネスではなく、ラフェスタを目的に来ていただくしかない。それは分かっていましたので店もおしゃれにし、質の高いおいしいジェラートを作りました。食べてくださった方々からは高い評価をいただきましたが、原価や人件費が収益以上になっていた。ビジネスとして成立していなかったのです。
当時、他の事業は絶好調でしたので、「それで補填すればいい」という甘えがあったと思います。さらに、店の経営を店長に任せ、上がってきた数字を見て「赤字をなんとかしろ」と追い詰めるだけで、建設的なコミュニケーションが取れていなかった。経営側とショップスタッフの意思疎通がなく、次第にいがみ合う雰囲気になっていきました。飲食のマネジメントを私自身が全く分かっていませんでした。
2019年にはお土産需要を見込んで仙台市にある三井アウトレットパーク仙台港に2号店と、田舎町でも流行スイーツを楽しめるお店を作ろうと、丸森町に生タピオカ店をオープン。どちらも好調で、特に生タピオカ店は県境にあることもあり、宮城県・福島県から老若男女、たくさんの地元のお客様に来ていただき、行列ができるほどでした。
しかし2019年10月の台風19号で生タピオカ店は被災した上、ブームも下り坂に。ラフェスタ2号店も新型コロナウイルス感染症の影響でアウトレットの利用客が激減したため売り上げが低迷し、赤字が続きます。2021年3月期決算では、グループの経営メンバーから撤退を迫られました。
新型コロナウイルスの収束も見えず、赤字は累積する一方。普通の経営者なら当然、撤退以外の選択はしないでしょう。 でも私は、やめたくなかった。 自分が丸森町の子どもたちに約束して開いた店。資金を出して店舗機材を揃え立ち上げ、観光飲食業の経験を積もうと思った。しかし、その後は人任せ。自分は運営で実際に何をしたのか。
4年間、結局、何一つコミットしてこなかった。 このままでは終われない。初心に戻り、改善しなければならない。 「継続させてほしい。自分が責任者としてマネジメントする。現場では課長クラスに下がって、ショップスタッフと必ず立て直す」と経営メンバーに頼み、了承してもらいました。
-どのようにして立て直したのでしょうか?
最初に行ったことは、ショップスタッフからのヒアリングです。すると「実際の店の状況を把握していない経営側から数字的な目標を課されても納得できない。現場を知ってから言ってほしい」という声が上がりました。 それからは最低でも月2回、繁忙期にはさらに回数を増やして店頭に立っています。
飲食の経営は責任者が現場で、自ら率先して働く姿を他のスタッフに見せないとうまくいかないと実感しています。 さらに定期的な会議を設定。経営側だけでなく現場で働くスタッフも売り上げ目標から逆算して原価や人件費を計算するなど、店の経営を自分事と捉える主体性を養ってもらうため、スタッフ全員と丁寧なコミュニケーションを重ねました。
1年間で店の売り上げは黒字転換しただけでなく、新型コロナウイルス禍中の2022年当時、WTGの稼ぎ頭でした。 私の怠慢が招いた大変な状態から、ここまで回復することができた。苦労はしましたが、一人一人とのコミュニケーションの大切さや、飲食業で成功を収めるパターンなど、この経験から気付いたことがたくさんあります。撤退せず、続けて良かったと心から思っています。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
以上が『Wasshoi Lab 創業ストーリー vol.3』となります。