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漢方のDXを掲げるスタートアップ「VARYTEX」代表に聞く、会社創設から2年の軌跡【前編】

今回は、VARYTEX株式会社の代表平野にインタビュー形式で創設から今日までのストーリーや創業に込めた想い、そして弊社が描いていく漢方の未来について語っていただきました。

漢方や医療業界、ヘルステックにご興味のある方は是非、御覧ください!

1. まずは、VARYTEX株式会社を設立した背景を教えてください。

―漢方の‘本当の価値’が理解されていない―

きっかけは漢方業界が抱える課題を解決したいという思いからでした。

ツムラで働いていた時、冷えやだるさ、イライラなど病気とは診断されないような心身の不調が漢方専門医の治療で救われる場面をたくさん見てきました。

ところが、医師にとっても、漢方医学を習得するハードルは高い。

漢方医学には、単に不調の内容だけでなく、その人の今の体調や体質を総合的に判断した「証(しょう)」という独自の考え方があり、この「証」に合わせて、最適な漢方薬を選ぶのが難しいからです。

「証」を見極めるための理論と技術は、漢方医学を長い時間をかけて学び、師匠(漢方専門医)に弟子入りするなどして研鑽を積む必要があります。漢方医学は、奥が深く、不適切な処方をすると、効果がないだけではなく、むしろ症状が悪化してしまうこともあるからです。

そのため、漢方薬を使用するのは臨床医師全体の89%もいるにもかかわらず、漢方専門医の数は約2000名にとどまり、その発展や拡大を阻害する要因になっていたのです。

漢方の本当の価値は、「証」にあった漢方薬を使用すること(随証治療)で、いわゆるパーソナライズ治療を実現することなのですが、漢方医学の習得が難しく、使いこなせる医師がまだまだ少ないというのが、漢方業界の課題のひとつでした。

―最初は漢方薬のDtoCからスタートー

ただ医療用漢方製剤で8割以上のシェアを誇るツムラでも難しいことが、スタートアップに簡単に解決できるわけもなく、最初に取りかかったのは、一般生活者を対象としたDtoCのオンライン漢方薬販売ビジネスでした。

スマホで問診に答えていくと、独自に開発したアルゴリズムでその人の「証」を割り出し、最終的にその人に最適な漢方薬を購入できるサービスです。

そんな構想をしていたところに、タイミングよく同じ志をもつ優秀なエンジニアやマーケター、管理部門を任せられる人材との出会いもあって、会社を設立し、本格的に開発に着手した、というのが始まりです。

2. これまでどういったことをしてきたのですか。

2021年3月にVARYTEXを設立し、その年の8月にDtoC漢方薬販売ブランド「KAMPO MANIA」を立ち上げました。このサービスでは、お客様自身が自分の「証」を把握し、気軽に漢方薬を購入したり、健康維持・向上に役立てていただくとともに、メディアとしての性格も兼ねた情報発信に利用できればと思っていました。

徐々に利用者も増え、売上も伸び始めていましたが、どちらかというとユーザーのニーズや

UI/UXの改善点など、色々なデータが取れたことが大きかったです。メインユーザーは女性でしたが、自分自身がどのような体質なのか、どのような対策を取るべきなのか、パーソナライズされた情報に興味があることがよくわかりました。

ビジネスプランとしては、ドラッグストアや鍼灸院などのパートナーとのコラボレーションや、パーソナライズのアルゴリズムに興味を持っていただく企業とのアライアンスを検討していた時期もありました。

3. 2年目には大きな資金調達をしていますね。どういったきっかけだったのでしょう?

事業計画を構想していた時期から、KAMPO MANIAブランド、つまりDtoCではスケールが難しいことは想定していました。漢方薬の仕入れ値の高さ、薬剤師等の人件費、集客コストなど、漢方薬販売の収益化は簡単ではありません。漢方相談薬局のように販売価格を高く設定することには抵抗もありましたので、当初の販売計画はあまり大きなものではありませんでした。

ただ、本丸である医師向け漢方診断支援ソフトウェアの開発は、簡単ではないことがわかっていたので、創業より4年後の第二ステージでの挑戦と位置付けたていました。

しかし、2022年初旬、日経デジタルヘルスにとりあげられた当社の記事を見た日本東洋医学会にお声をかけていただいたことが、事業方針を一気にピボットするきっかけになりました。

日本東洋医学会は、漢方医学における唯一・最大の学会組織であり、漢方専門医の認定なども行なっている機関です。学会では、ISO(国際標準化機構)で伝統医学に関するフレームワークやソフトウェアの採択を目指すプロジェクトが進んでおり、当社が開発した「証チェックシステム」をベースとした、ソフトウェアの共同開発を進めることになりました。

医師向け漢方診断支援ソフトウェアを開発・販売することは、当社にとっても中長期的な悲願ではありましたが、そのコストを漢方薬販売で形成することは難しく、この時点でVCからの資金調達を進めるという経営判断をしました。

4. VARYTEXの今後の展望は。

現在開発をすすめている医師向けのプロダクトは、漢方診断補助として、最適な漢方薬の提案を手助けするだけではなく、禁忌の医薬品や常用している医薬品との飲み合わせなどを考慮して選択をしたり、処方の際の注意を促したりといった医師のヒューマンエラーを減らすための実用性も兼ね備えています。我々は、「漢方の理論を体系化する」という、かつて誰も実用化できなかった世界をテクノロジーの力で作っているのです。

ゆくゆくは画像診断などを織り交ぜていくことも考えています。

昨年、病理医が行ったがんの診断とAIの画像認識精度が90%を超えたことが話題になりましたよね。現在、同じように我々のアルゴリズムと専門医の診断が、どの程度一致できるかという検証が始まっています。

本格的に実用化に向けた取り組みができるまで辿り着けたのは、各方面の方々の期待があるからこそと思っていて、メンバーもフルスロットルで進めています。

漢方業界の今後の展望やVARYTEXの働き方については代表インタビュー後編に続きます。

【後編の記事はこちら】

漢方のDXを掲げるスタートアップ「VARYTEX」代表に聞く、当社が築いていく漢方業界の未来【後編】 | VARYTEX株式会社
VARYTEX代表平野に創業の想いやこれまでの軌跡をインタビュー形式で語っていただいた前編に続き、後編では漢方業界や当社で働く魅力についてお話ししていきます。 【前編の記事はこちら】 ―漢方薬を使いこなせる医師はまだ少ない― 先程もお話しした通り、32万人の臨床医師のうち、約9割は漢方薬を処方したことがあるとわかっています。※出典 ...
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