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クライアントが求める「新しいことがやりたい」を実現する、ソリューション事例「スマホ連動型自販機とアプリ acure pass」


チームラボのプロジェクト

一般的に「受託開発」「クライアントワーク」「SI」という言葉を聞いたとき、どのような仕事を連想するでしょうか。IT系の仕事をしている人の中には、「作るものが最初から決まっていて、新しい技術を試したりすることは難しい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

外から見るとアートの印象が強いであろうチームラボにおいても、実は自社プロダクトの開発やクライアントワークの割合が、プロジェクトの多くを占めています。かくいう私も入社以来、ソリューション(社内ではクライアントワークのことをこう呼んでいる)プロジェクト担当のカタリストとして3年以上働いてきました。

チームラボの「ソリューション」は、一般的な受託開発とは異なる点があります。例えば、一般的な受託開発では作るモノや納期・予算がクライアント側で決まっていて、それに従ってプロジェクトを進めるのが基本的なケースだと思いますが、チームラボの「ソリューション」では作るモノが最初から決まっているケースがあまりありません。

チームラボでは創業当時から、デジタル技術を駆使した革新的な提案をすることで、クライアントの信頼を積み上げてきました。チームラボなら他にはないことをやってもらえるんじゃないかという期待値から、「何か新しいことをやりたいんですが、面白いアイディアないですか?」といった、ふわっとした相談からプロジェクトが始まるケースがほとんどです。

余談ですが、新卒で入社した時はクライアントワークのことをなぜ「ソリューション」と呼んでいるのか私には分かりませんでした。正直なところ、1年目の頃はただ横文字にしてカッコつけているのではないかと思っていましたが、今では、まだ企画が煮詰まっていない段階、つまりはクライアントがぼんやりとした、やりたいことや課題を持っていって、それに対する具体的な「策」を提示する状態から携わることが多いので、「ソリューション」と呼ばれるようになったのではないか?と、まともな思考を持てるようになりました。


ソリューション=チャレンジングなクライアントワーク

クライアントから「新しいことがやりたい」という依頼を受けているので、当然提案する内容・開発する仕様はチャレンジグな要素を内包します。

決められた仕様を決められた予算内で納期までにきちんと開発することを「守り」とするならば、チームラボに求められるのは、飛び抜けたアイディアや実験的なプロダクトをテクノロジーによって実現し、クライアントの新しいビジネスへ貢献する「攻め」や「チャレンジ」のスタイルです。

例えばFinTech・IoT・VRなどの新しい分野、テクノロジーを使った新しい事業へ一歩踏み出したいクライアントに対して、社内にいる様々な分野のスペシャリスト達が力を合わせて最適かつ品質の高いソリューションを提供できる事がチームラボの強みです。


スマホとサイネージ自販機を連動させる大規模プロジェクト

チームラボのソリューションの一例として、2017年4月にリリースを迎えたプロジェクトをご紹介します。

JR東日本ウォータービジネス社からの依頼で開発した、スマホ対応型の新しいサイネージ自販機およびスマホアプリ「acure pass(アキュアパス)」です。私自身もこのプロジェクトには企画・デザイン・開発管理・PRの部分をカタリストとして担当しました。

本サービスはアプリで事前に購入した商品を駅の自販機で受け取れるという新しいプラットフォームというコンセプトで開発されたものです。「これまでにない自販機の価値を世に提案したい」というクライアントのミッションだったため、会社としても、プロジェクトチームとしても、私個人としてもチャレンジングな体験がたくさんありました。

以下に紹介するこのプロジェクトの制作プロセスを通じて、チームラボのソリューションがどのような仕事なのか、少しでもお伝えする事ができればいいなと思います。

acure pass: https://www.acurepass.co.jp/



皆が慣れ親しんだモノを新しく作り変えるというチャレンジ

私は最初に「新しい自販機を作る」という言葉を耳にしたとき、先進的なことが色々とできそうな、新しいイメージが浮かんできました。しかしながら「自販機」というモノは30年以上もほぼ同じ形態を保ち続けており、ビジネスモデルにも大きな変化がありません。

「無人でモノを売る」ということは「商品を放置する」ということですから、それを安全に取引として成り立たせている「自販機」というシステムは、改めて考えてみるとかなり完成された凄いサービスです。

一方、無人販売と言えども人が関わっていない訳ではありません。商品を購入するお客さんだけでなく、陳列する商品のラインナップを考える人や、商品を補充する人も自販機に関わるユーザーの一人です。

エンドユーザーが使いやすい自販機のあり方は、自分が自販機で商品を買った事があるので何となく考えられそうですが、商品の陳列を考える人や、補充をする人が使いやすい自販機のUI/UXは、そもそもその仕事をやったことがないので最初は全く想像ができませんでした。

サービスとして完成されつつあり、かつ関わる人も多いモノを新しく作り変えるというのは、実はすごく難しいことで、同時に非常にやりがいのあるチャレンジでした。



未知の分野の業態を詳しく学び、UI/UXに落とし込む

本プロジェクトでは、開発メンバーで協力して現場の人にヒアリングを重ねたり、自分達がその作業を体験してみることによって、ヒントを得ようと模索しました。実際に現場では、デザイナーが車椅子に乗りながら低位置でも商品を購入できるUIのデザインを作成したり、エンジニアが商品の補充をしながら商品補充画面の設計・実装をしたりといった、小さなチャレンジを重ねることで、未知の領域のユーザーに対してサービスを設計するという大きな目標が達成を実現できたように思います。

改めて考えると、「新しい自販機を作る」「自販機の業態を詳しく知る」ということは人生レベルで見ても相当レアな部類の体験です!ビジネスを長い間続けてきたクライアントと一緒に仕事をやるからこそ、その業態について詳しく知ることができ、かつ業態の外の人間がそれをするからこそ新しい提案ができます。なので、プロジェクトを終える頃には業界のめちゃくちゃマニアックな知識がメンバー全員の頭にインプットされていることは、チームラボでは珍しくありません。


他分野のプロフェッショナルと一緒に仕事をする

どんなプロジェクトでも同じだとは思いますが、規模が大きくなると専門分野も枝分かれしていき、結果的に一つのチームに様々な分野のプロフェッショナルが集合することが多くあります。

本プロジェクトでも、社内のエンジニアやデザイナーだけでなく、機体の製造メーカーや、プロダクトデザイナー、カメラマン、サウンドクリエイターなど、様々な人たちと一緒にモノ作りを進めてきました。

自分にはない経験や知識を持つ異なる分野の人たちと接することで、新しい考え方や価値観を得て、次の自分のモノ作りに活かすことができます。当たり前の話ではありますが、意外とこの経験ができる仕事や環境は多くないように思います。

私自身の話をすると、音楽の経験がなく自販機のサウンドを選ぶのにはとても苦労しました。しかし、音楽経験が豊富なメンバーと一緒に仕事を進めることで、「サウンドの良し悪しはこうやって判断すればいいのか!」と音楽経験のない自分も決め方の知識を得ることができ、自分自身の小さな成長に繋がったと感じました。

チームラボはそういった分野をまたいだメンバー同士のインタラクションによって新しい知見を得ることを非常に重視する会社です。

本プロジェクトでは、例えばエンジニアやUIデザイナーにもプロダクトデザインの製造現場に立ち会ってもらい、議論に参加したり意見を出してもらったりすることで、それぞれ「ハードウェアのデザインをする」という新しい考え方や価値観に触れるチャンスがあったと思います。もちろん、ハードウェアのデザインに限らず、色々な場面でそういったチャンスに多く触れられたプロジェクトだったのではないでしょうか。


予想外の出来事に柔軟かつスピーディに対応する

誰もやったことがない事にみんなでチャレンジするようなプロジェクトだと、セオリー通りに物事が進む訳がありません。振り返ってみると「なんでこんなことが...」と思ってしまうようなレベルの出来事は、新しいプロジェクトにおいては予想外のタイミングで訪れてきます。

「やれると思っていた実装方法であまり上手く動かなかった」「実機で見たときにデザインの印象が全然違う」「ハードウェア込みで動かしてみたらパフォーマンスが全然出なかった」といった出来事には本プロジェクトのメンバー全員が直面しました。規模の大きなプロジェクトであれば、いずれにしても似たような出来事に直面するのではないでしょうか。

このように「作ってきたモノを作り変えなければならない時に、いかに柔軟かつ迅速に対応策を出せるか」という個人の能力を超えたチーム全体の能力は、アウトプットの質に多大な影響を与えると思います。

アプトプットの質を高める方法はいくつかあると思いますが、チームラボの「偉い人を置かない」というアプローチは個人的にすごく独特で面白いと思います。

開発チームに「偉い人」がいると、その人の強引な判断でプロジェクト全体の方針が大きく足を踏み外してしまうリスクがあります。一方で「一人一人の役割」に関係しない「リスクとしての偉さ」を排除したフラットなチームであれば、常に全員で真剣に最適解を考えるようになるため、非常に柔軟なモノ作りができるようになります。

このシステムのおかげもあってか、私はこれまで「本当は無駄な気がするけど、言われたから仕方なくやってる」と思いながら社内で開発に携わった記憶がありません。

本プロジェクトでも、実機で動かした時にパフォーマンスが出ずプログラムの構造を作り変えなければいけない自体に直面しましたが、チームのみんなで三重の自販機工場で合宿をしたりしてなんとか山を乗り越え、クライアントからも「こんなに前向きにモノ作りをする人たちは初めて見て感激した」などと言われていました(笑

実際にあったプロジェクトの珍事件

蛇足ではありますが、プロジェクトを進めていく途中には「えっ、こんなことも?」と思えるような出来事も多々ありました。最後に実際にあった珍事件を少しだけ紹介します。

・実機がオフィスの入り口を通れないので大型自販機を設置できるオフィス周辺の物件を急いで探す

・検証のために自販機にジュースを補充するが、下手な人が担当するとすぐ詰まらせてしまい、プロの補充員の凄さを知る

・PRムービーの撮影にエキストラが必要で、社内メンバーに休日に集まってもらったが、曇っていたので全カットになる

・プロジェクトリーダーが自宅の鍵を自販機の中に忘れる

このような珍体験をあげるとキリがありませんが、現場感あふれる体験はちゃんと覚えておくと、プロジェクトの打ち上げで盛り上がること間違いなしですね!


さまざまなチャレンジの結果とプロセスを蓄積して、人と会社が共に成長していく

すごく個人的な話をすると、私は新卒で入社してすぐの頃は「AWS」の意味も分からないような、システム開発会社の人間としては本当にペーペーの状態でした。そんな状態でもチャレンジしながら色々な経験を積める機会が非常に多く、こうやってWantedlyにドヤ顔で記事を書く事ができるようになったので、素直にありがとうと思います。

次に会社的な話をすると、これもまた私と同じで、私が入社した当時よりかなり(良い意味で)変わっている部分があります。他の記事にあるような勉強会は当時は今ほど活発に行われておりませんでしたし、多様な専門性を持ったメンバーが、さらに増えました!

唯一変わらない企業文化として「チャレンジの結果とプロセスを蓄積して、他の人がアップデートできる状態にする」というものがあります。ソフトウェア開発の文化においては当たり前の話ですが、これを会社の文化に適応しているのはチームラボの面白い所です。

ある意味チームラボという組織そのものが既存の会社のあり方に対するチャレンジだと私は勝手に思ってますが、この文化があるからこそ、会社自体も人間と一緒に色々と試行錯誤を経験をしながら成長(アップデート)しているのでしょう。

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