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ーー梅雨の蒸し暑い時期が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今回は、当社の技術顧問である榊剛史と、当社のCTOである上原尚とに、当社のプロダクトである「Suit UP」について対談してもらいました!
世界的AI研究者である榊博士と、当社以外でもCTOとして各種プロダクトの開発をリードしてきた上原CTOには、「Suit UP」がどう見えているのか、率直な意見を聞いております!
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高橋:
お二人とも本日はよろしくお願いします。早速ですが、現在開発中のプロダクトである「Suit UP」に関してどのようなプロダクトであると考えてらっしゃるのでしょうか?
上原:
本日はよろしくお願いします。
「Suit UP」ですが、一言で申し上げると、一般的なタスク管理ツールの上位互換、になっていると思います。
とりわけ、組織情報をタスク管理ツールに加味しているところが新しく、組織構造の変化や入退社者の情報がプロダクトに反映されることによって、承認権限者などを自動的・動態的に変化させることを可能にしています。
「Suit UP」の他の特徴的なポイントとしては、「トップマネジメントの視点」から作られているプロダクト、ということが挙げられると思います。
タスク管理ツールを、現場レベルからの導入を前程にしたプロダクトとすると、一部の部署では上手くいく一方、一部の部署では上手くいかず、結果、全体としても失敗に終わる、というケースが発生します。
このため、タスク管理ツールについては、トップマネジメントからの導入を前程として作り、実際にそのように導入していくのが望ましいと考えています。そしてそれを実現しているのが「Suit UP」です。
最後にもう一点付け加えると、個人タスクの履歴から、個人や部署を比較しながら、タスクの消化状況を比較できるところや、ベストプラクティスを探していけるといった点が新しいところだと感じています。
高橋:
ありがとうございます。榊先生、続けてお願いします。
榊:
本日はよろしくお願いします。
「Suit UP」ですが、レッドオーシャンの中でブルーオーシャンを探しているプロダクト、という印象を持っています。代表的な例で言うと、Slackのようなツールです。
Slackですが、当時すでにチャットツールというものは世に広まっており、普通に考えるとレッドオーシャンの状況でした。しかしSlackは敢えてそこに切り込み、現在ではチャットツールのスタンダードとして確立しています。
タスク管理ツールも既にいくつか有力なプロダクトが出てきてはいますが、その多くは、実はエンジニアのタスク管理の中から生まれてきたものであり、エンジニアの文化に縛られずに様々なケースで使える、という条件を満たしているものはまだ誕生していない認識です。
そのため、一見レッドオーシャンの市場の中に、ブルーな領域があるのではないか、と考えています。
エンジニアのタスクのように、しっかりタスクが切り分けられている職種ではなく、タスクがまだぼんやりしているところに管理を組み込める、としたら全く新しいものになると考えています。
高橋:
お二人ともありがとうございます。それでは続きまして、作業としての「タスク管理」を「タスク管理ツール」にすることの難しさがどのようなところにあるのかを教えていただけますでしょうか?
上原:
既存のタスク管理ツールの特徴の一つとして、自由度が高いということがあるのですが、実は自由度が高すぎると、ユーザーの使いにくさに繋がる、という問題が生じます。「何をどうすれば良いのか分からない」「どこから手をつけて良いのか分からない」といったようにです。そのため「Suit UP」においては、自由度を下げる、ということと、使い勝手を上げる、ということとの両立を目指して開発を進めています。
ここで、使い勝手の良さを上げるために、多くのユーザーにとって既知のプロダクトであるExcelに近い操作感を目指しているのですが、実はこれが非常に難しいと感じています。
流石は世界中のユーザーに数十年も愛され続けているプロダクトでして、普段我々が何気なく使っている複数の行やセルをまとめて追加・編集・削除するような機能を実装するのも実際にはかなり難度の高い作業になります。
Excelは凄いな、と日々感じながら作業をしています笑
高橋:
ありがとうございます。Excelの凄さは、エンジニアの皆様の普段の苦悩の様子から自分もやっと理解できるようになってきました笑 それでは榊先生、続けてお願いします。
榊:
「一般的なタスク管理ツール」というものを作るのは実際にはとても難しいことだと思います。異業種についてはもちろんですが、同業種であっても、会社ごとにタスクの切り分け方が様々だからです。
これまでも、特定業種向けや自社向けのタスク管理ツール、というものは比較的上手くいっていた一方、汎用的なものについては現在にいたっても「これ」という特定のものは存在していません。
先ほど少し触れました「Slack」によってチャットツールの基準は確立されました。「Suit UP」はタスク管理ツールのスタンダードになろうとしていますが、そこが難しく、またそこを成し遂げることができれば非常に有力なツールになると思います。
高橋:
ありがとうございます。続きまして「Suit UP」の強みに関して、特にUXの部分を中心にお話頂ければと思います。
上原:
やはり「Excelの使い勝手」+「低い自由度」を両立させることで、ユーザーにとにかくやさしい、というところだと思います。
榊:
ExcelっぽいUIは確かに大きな強みだと思います。多くの方が知っているExcelやGoogleスプレッドシートの使い勝手ですが、実際にはこの再現はハードルが高く、Googleをもってして、ようやくExcelに近いものを作ることができた、というレベルです。逆に言うと、誰もが望んでいるExcelっぽい使い心地を実現しているプロダクトは、実は自分の知る限り、今のところ上記の2つしかありません。これを自分たちの特殊ツールに落とし込めたとしたら強みになると思います。
高橋:
ありがとうございます。それでは続きまして、「Suit UP」をどのような会社に使ってもらいたいとお考えなのか伺えますか?
上原:
少人数の会社は一般的には関係が密でコミュニケーションが活発、というイメージがありますが、実はコミュニケーションが不活発な現場を見てきました。特に、他の職種のメンバーの仕事が理解できていない場合にこの傾向が強くなり、コンフリクトが生まれてしまう時があります。
「Suit UP」は各部署のタスクを整理して表示することができますので、他の部署の仕事に関しても「こういうことをしているんだ」と。仲間の理解が進むことで、より社員の皆様に良い環境になっていくのではないかと思います。
榊:
個人的に気になっているのは、私自身も当事者なのですが、アカデミック業界です。
実はアカデミック業界といえど研究ばかりしているわけではなく笑、授業の準備や学会報告など、多様なタスクが発生しています。しかし、それをツールで行うのではなく、頭の中で管理してしまっているケースは多いと感じています。このため、アカデミック業界の生産性向上に繋がるのではないかと考えています。
他には教育現場などでしょうか。
教師の方の業務の大変さは最近になって理解が進んできましたが、可視化できれば、その大変さがより理解でき、先生と保護者の方とのコミュニケーションの向上につながると考えています。
高橋:
ありがとうございます。それでは続きまして、「Suit UP」が普及していく中で、社会にどのような良い影響を与えることができるとお考えですか?
上原:
部署内と部署間、あるいはプロジェクト内とプロジェクト間のタスクが連携していくことになりますので、会社全体のタスクの繋がりが見えやすくなります。ナレッジの共有も進むことになると思いますので、仕事がよりスムーズになっていくのではないかと考えます。
榊:
いわゆる「DX」が進むのではないでしょうか。最近ではAIがトレンドではありますが、これまでもことあるごとに「IT化」という言葉は登場してきました。しかしながら実際のところ、日本の生産現場ではIT化は進んでいないところも多いです。一つの要因として、現場が許してくれないから、というものがあると思いますが、トップマネジメントから入れていく前程を持つ本プロダクトが浸透していけば、IT化の進展に繋がるのではないかと考えます。
上原:
榊先生のお話に付け加えさせて頂くと、ExcelやGoogleスプレッドシートは広く普及していますので、その特徴を持っている本プロダクトは、DXのとっかかりとして良いのではないかと考えます。また、AIとの関係で言えば、タスクや業務フローが明確化されると、AI化できるところ・すべきところ、が明確化されます。このため、AIの導入の前程としても活用して頂けるのではないかと思います。
高橋:
ありがとうございます。それでは続きまして、ChatGPT(AI)が仕事でも活用されるようになってきている中、今後、AIによって働き方はどう変わっていくとお考えでしょうか?
上原:
開発の現場からお話すると、AIが実際にプログラムを自動生成してくれるようになっていますが、結論、正しくない場合があります笑
ですので、間違ったコードに気づけるかどうか、という、結局は本質的な力をつける必要があります。
また、プログラムをどう使うか、どう利用できるのか、という、読解力に近い能力がより求められてきていると思います。とりわけ、プログラムをAIが書くようになる一方、コミュニケーションの部分が相対的な作業量としては増えていますので、その部分で力を付けていけるかが大事だと考えています。作業を依頼する側のニーズの本質的な理解が求められますので、本当にエンジニアリングで対応すべき課題なのか否かの判断といったところから、しっかり対応していくことが求められていくと考えます。
榊:
ネガティブに言えば、ホワイトカラーの格差が大きくなると考えます。よく言われることではありますが、AIがやってくれるところが増える一方、これまでその仕事をされていた労働者の方は代替されてしまう。
一方で、考えられる人は時間を有効活用できるようになり、本質的な課題を見つけやすくなり、そこに力を入れられるようになるというプラスの影響があると思います。
高橋:
ありがとうございます。それでは続きまして、榊先生、せっかくの機会ですので、直近のAIのトレンドについて教えてください。
榊:
AIですが、過去に何度かのブーム、というものがありまして、2012年〜2013年頃から第三次ブームが始まりました。具体的には、AIが画像を理解できるようになってきた、という段階です。この頃の中心的な課題は、人間の認知機能の模倣、というものです。
そして、2017年以降は、まさに今話題になっている生成系の領域が中心になっています。今や第三次ブームから第四次ブームに入ったとも言われています。これは人間の認知機能ではなく、脳の動きの模倣を目指しているものです。
一方、研究分野としてはAIは非常に大きなコストがかかる、サイズの大きなものになってしまいました。汎用のスパコンでも学習に数年かかるためAI学習専用のスパコンが必要になる、といった状況です。お金について言えば、数百億とか。そのような投資サイズになる研究対象はこれまで物理学の一分野のみ、とかでした。必要となる研究者の数も多く、ChatGPTに関するペーパーには、数百人くらいで作られたものもあります。このため、限られた人・組織しか取り組めない研究分野になりつつあります.規模が大きく、一部の人しか取り組めないということは、これまでのアプローチでできることの限界に近づきつつある、ということかもしれません
一方で、人間の思考は脳からのみ生まれるのではなく、身体からきているのではないか、といった考え方から、新しいAI研究のアプローチが生まれるかもしれないとは考えています。こういった考え方を専門用語で「身体性」言うのですが、テキストから得られた情報を処理するだけでなく、身体を介した認知過程の存在を前程とすることで、全く違うものが生まれるかもしれない、という気づきです。
AIという言葉は、実は1950年くらいから存在していますが、しかし時代によって指示対象となっているものは変遷しています。人間の知的活動自体が定義されきっていないためで、そこの定義が変わることで、今後もAIは変化していくものだと思っています。
高橋:
ありがとうございます。それでは続きまして、上原さん、直近のエンジニアのトレンドについて教えてください。
上原:
先ほどのお話とも関係しますが、コミュニケーションの重要性がエンジニアの仕事においてますます高まっていると思います。AIをはじめとするツールの発達によって開発のスピードは上がっていますので、そのサイクルをどう円滑化するか、が大事になってきていると感じます。
また、AIの発達によって、エンジニアはいなくなっていくかもしれません。というよりも、今とはエンジニアの定義が変わっているかもしれない、と考えたりもします。
近年では、ビジネスサイドの方にもエンジニアに近い知識が求められてきていると考えていまして、両者は従来よりも近寄ってきている気がしています。
高橋:
お二人とも本日はありがとうございました。
榊・上原:
ありがとうございました。