人が暮らしを立てていくうえで必要な「衣食住」のうち、不動産は「住」を担う大きなコンテンツです。「誰にとっても必要な『住』に関わるということは、世の中のすべての人に影響を与える仕事であるということ」。そう話すのは、株式会社スタイルポート、マーケティンググループ グループマネージャーの森下です。不動産を取り巻くDXの現状や、いまスタイルポートに参画することのおもしろさを、たっぷりと聞きました。
レガシーな業界に変化を起こすキッカケとなるサービスをつくる
目次
- レガシーな業界に変化を起こすキッカケとなるサービスをつくる
- 縁を感じて入社。現在の役割は「メンバーの市場価値を高めること」
- 成長フェーズを楽しみながら、不動産業界の新スタンダードを作っていく
- スタイルポートについて
——はじめに、スタイルポートがいまどんなフェーズにあるか、教えてください。
不動産業界としてのフェーズで見ると、いま大きな変化が起きているところです。スタイルポートは、その変化を起こすキッカケとなるサービスを提供している。そこにおもしろさがあります。
会社のフェーズとしては、伸びているからこそまだまだ穴ばかりの組織ですね。手を伸ばせばいくらでもやることがある状態です。失敗も成功も含めいろいろチャレンジする機会があるので、しっかり経験を積めるのではないかと思いますね。
——不動産業界の変革期とおっしゃいましたが、前職のリクルート時代にSUUMO事業に携わってきた森下さん自身、不動産DXが業界に与えるインパクトについてどう感じていますか?
不動産は衣食住の中の1つで、すごく大きなコンテンツです。家を買うことがゴールではなく、人生を過ごすためのプラットフォームなんですね。
誰にとっても住む場所は必要で、広く捉えると世の中のすべての人に影響を与える仕事。そこに携わるのはすごくおもしろいことだと思います。
不動産業界の中でも、スタイルポートがメインでやり取りしているのはマンション業界です。デベロッパーはマンションを1棟建設するのに、銀行から何百億円というお金を借ります。その返済までに何年もかかるビジネスモデルなんですね。それができるのは一部の信頼ある企業だけです。ですから、マンション業界は不動産業界の3割にも満たないほど狭い領域なんです。かつ、レガシーな業界なので変化が少ない。
同じ不動産業界の中でも賃貸は、たとえば賃貸のサイトを見るだけで、内覧せずに物件を申し込む人がかなり増えてきています。ですが、居住用のマンションを購入する場合は「見ずに買う」という人はあまり聞いたことがありません。同じ不動産でも賃貸に比べると、DXが進んでいないんですよね。
ただ、最近では少しずつ、消費者の意思決定の選択肢にデジタルが参入し始めました。マンションデベロッパーが「確かにデジタルもあるよね」と考え始めた段階なんだと思います。
リアル一辺倒だったところにデジタルが入り込む。その推進は、実は10年前からSUUMOが取り組んでいるんですよ。
たとえばマンション販売の集客は、ずっと以前は電柱に貼られた看板を利用して行われていました。それがチラシや雑誌になり、テレビCMを打つようになり、インターネット集客になっていったんです。
こうした集客側のDXは進んでいたんですが、販売側のDXが進んでいなかった。そこにスタイルポートやその他の会社が参入し、大きく変わり始めています。特に、コロナ禍をキッカケにガラッと変化してきていますね。
現在はちょうど過渡期で、どれくらいDXが進むのか、変化するのか、まだわかりません。お客様の家を訪問して営業をするところからスタートして、電話になり、メールになり、それに加えてデータ解析をするようになり……と、いまあるものをガラッと変えるのではなく、少しずつ改善してフィットさせていく形でDXが進んできていると思います。
——そうした業界のフェーズで、いまスタイルポートに参画するおもしろさについて教えてください。
スタイルポート自体が成長途上にあります。ある種の不安定さがあるんですね。売り方もお客様の課題感も刻々と変わっていくなかで、PDCAを回して商材をどんどん新しく更新していくおもしろさがあります。
エンジニアとの距離が近いこともメリットの1つですね。元々不動産業界に携わっているメンバーが少なく、お客様がプロダクトをどう使うか想像しづらい面があるんです。そこにマーケティングのメンバーが、お客様と対峙して得た声をフィードバックして改善に活かしています。お客様から聞いた声をそのままプロダクトに反映できる──プロダクトを一緒につくっていく感覚を持てると思いますよ。
縁を感じて入社。現在の役割は「メンバーの市場価値を高めること」
——森下さんはなぜスタイルポートに入社しようと思ったんですか?
ご縁ですね。代表の間所と、もう亡くなってしまった私の父が同じ職場で、私自身はリクルート時代に彼と出会っていました。
あるとき、私の父が職場で倒れて、余命宣告をされたんです。そんなできごとがあって1週間も経たないときに、間所から私に食事に行かないかと連絡がきました。てっきり、父の話を元同僚から聞いたのかな?と思ったら、スタイルポートへの転職の誘いだったんです。
彼はニコニコしながら、「新しいことをしようと思ってるんだけど、手伝ってくれない?」と。当時50歳に近いオジサンが、なんて楽しそうなんだ、すごいなと思いました。
私自身父が働く姿を見たことがなかったんですが、その息子を誘うということは、父を認めてくれているという嬉しさがありました。
ただ、すぐには決められませんでした。病院へは毎日行って父と会っていたので、「間所さんが新しい事業をやるらしいよ」と伝えました。でも心配させてしまうのではないかと思って、誘われたことは黙っていたんです。私自身、父の亡くなる年齢と比べると、折り返しを過ぎているタイミング。頭の中で、色々な考えが巡りながらも、次のステージも本格的に考えようと捉えている真っ只中でした。
そうしたら帰り際、「おもしろそうな事業なら、一緒にやってみたらいいじゃないか」と言われて。父はなんとなく、私が間所に誘われたのではないかと感じたようです。
ふつうなら、大企業から、何者かよくわからないスタートアップに誘われたと言ったら心配しそうなものなんですが、亡くなる間際の人間にそう言わせる間所の大きさってすごいんだろうなと思いました。
自分が父の立場だったら、将来息子にこんなことを思える後輩いるかな、
この先、孫に何かを買ったり、面倒を見ることが出来ないことがわかっている中で、一般的には不安と思われる選択を、押すことができることの驚きもありました。
それならこの人のところで、この人が掲げるものの未来を応援しようか、人生には限りがあるから、ちょっと神輿を担ぎにいこうか。そんな思いでしたね。
ただ、当時は当然ROOVもなく、事業の構想も何もなかったんですよね。それでも入社を決断できた理由は、父を認めてくれたことへの感謝と、それをつないでいかなければご縁が切れてしまうという想いでした。形になるまでは一緒に走るぞと思って入社を決めました。
——現在入社して6年。事業はだいぶ形になったと思うのですが、それでもまだスタイルポートにいるのはなぜですか?
まだすべての役割を終えていないからです。メンバーが入ってきて、育ってきてはいる。ただ、「私がいなくなっても、これからスタイルポートに飛び込んできてくれる方が迷わない程度に環境を整えなければ」という感情があります。
メンバーたちはスタイルポートに人生の時間を捧げてくれている。彼ら・彼女らが今後もスタイルポートに居続けるか転職するかはわかりませんが、みんなの「市場価値」を上げたい。だからいまの私の役割は、みんなの市場価値を上げることに尽きます。
メンバーがしっかりと成果を出し、社内外に認められ、どこに出しても恥ずかしくない人材になれるよう、潤滑油として動いていきたい。それが整った頃には、また次のやるべきことが見つかるのかもしれませんね。
成長フェーズを楽しみながら、不動産業界の新スタンダードを作っていく
——森下さん自身がいま、何に一番ワクワクしているか教えてください。
メンバーが楽しそうに仕事に取り組んでいるのが一番ですね。ご縁があって一緒に働いているメンバーたちの成長を感じたり、何かしらの結果を残して次のキャリアにステップアップしたりといったことが一番嬉しいです。
たとえば、リクルートの場合は成長意欲や独立心の強い人が多い。スタイルポートの場合は事業のおもしろさに魅力を感じて入社した人が多いので、成長意欲や野心は二の次な人たちが少なくないんです。
そうしたメンバーの方向性をそろえていくには、カチッとしたコミュニケーションよりも、個々のレベル感に応じたカスタマイズが必要です。メンバーたちの新しいチャレンジを尊重できるような、成長のカスタマイズ性がポイントかなと思いますね。
——3年後、5年後、会社として、森下さん個人はどうなっていたいですか?
マンション販売の領域では、今後まだまだ売上を伸ばせるフェーズだと思っています。面はある程度取れてきたので、3〜5年かけてさらに実績を積んでいきたいですね。
もう1つ、マンション販売で培った知見を持って、戸建てなど次のフェーズへの展開を進めています。同時に、内覧データや販売員のデータ、エンドユーザーのデータなど、データ活用にも力を入れていきたいですね。データを活用して不動産の購入だけでなく、売却にも有用なデータになるので、まだまだ事業拡大の可能性は大きいです。
マンション販売の領域に関しては、ありがたいことにカスタマーのあいだで態度変容が起こりつつあります。ただ、マンションだけでは限りがある。その次のステップを見据えなければスタックしてしまいます。いま、次のステップとして会社として狙っているのが戸建ですね。
今後は当然競合も出てきますし、大企業が参入してくる可能性もある。その前に素早くプロダクトを広げていくために、スピード感を持って成長していかなければいけません。そのための強いチームを作る必要があります。
——チーム作りにあたって、どんな方に参画してほしいと考えていますか?
会社として生きるか死ぬかを賭けたサービスに携わる可能性があるため、「自ら物事やルールを決めていく立場に立ちたい」という方を求めています。ゲームで遊ぶよりも作る側に回りたい方、学園祭の実行委員をしていたようなタイプの方であれば、このフェーズを楽しめるのではないかと思います。
スタイルポートがほかのスタートアップと異なる点は、経営陣の安定感にあります。間所、中條をはじめ、経験が豊富で腹が据わっている人ばかりなので、多少会社が揺れても安定感があります。
だから、入り口でやりたいことの軸が明確でない方でも、入社してからその軸を探していけばいい。会社としてそれを待てるくらいの安定感はありますし、我々にはメンバーの軸が明確になるのを待つ責任があると思っています。