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皆様、こんにちは。
カリフォルニアオフィスの臼坂です。
今回のブログでは、アメリカのレストランなどで支払うチップ(Tip)に関して書きたいと思います。
旅行や仕事でアメリカに来られたことのある方は、支払いの時にチップの計算をしなければならず、「面倒だなぁ」と思ったことや、チップを加算することで、料金がかなり高くなってしまい、「えらく高くついたなぁ」と思ったことがあるに違いないと思います。
個人的には、今日、何故チップというものが存在するのか、正直不思議に思うところもあります。
今回は、そんなチップの歴史と現在の必要性について書きたいと思います
チップの歴史
今や当たり前のようになっているチップですが、過去を振り返えると紆余曲折があったようです。
チップという言葉の由来は明確ではないようですが、一般的には17世紀のイギリスで使用されるようになったもので、その言葉の起源は「To Insure Promptitude」、つまり「迅速に対応してもらう」ということだったようです。
その後、19世紀にアメリカ人がヨーロッパに行き来するようになった際に、ヨーロッパからチップという慣習をアメリカに持ち込んだとされています。
この頃のチップは、お金持ちが自分に対するサービスを良くさせることと、自分がお金を持っているということを自慢するために、お金を渡すというものだったようです。
1900年初頭には、こういった行為は、お金持ちとその他の人々との階級主義につながるとして反対運動がおこり、チップを払うという行為は法律違反だという抗議がおこりましたが、ワシントン州を除いて、その他全ての州で違法ではないと判断されました。
(そもそもアメリカは、「全ての人は平等」という原則にたっているので、階級主義を促進させることは違法だというものです)
一方、ワシントン州においても1926年には違法ではないという判断になり、チップを払うという行為は認められるようになりました。
1960年代に入り、アメリカ議会は、チップを受け取る仕事についている人々の最低時給を$2.13に設定するととに合意しました。
この背景は、チップを受け取るのであれば、最低時給$2.13とそれに対する税金が課せられても大丈夫だという判断によるものだったようです。
当然、最低時給だけでは生活ができないので、この時からチップはボランティア的なものではなく、その人たちが生活するために必須なものになりました。
(実際、私が幼い時にアメリカに住んでいたときは、「レストランのウエイターやウエイトレスは、チップで生活しているから絶対に払ってあげなくてはならないもの」という説明を受けました。)
それが今日まで続いているといった感じです。
アメリカのチップの歴史には、このような背景があったんですね。。。
最低時給の現状
2018年における最低時給に関して調べてみたところ、いまだにチップを受け取る仕事についている人とそうでない人との区別というものが、いまだになされているのが分かりました。
アメリカの連邦政府が定めたチップを受け取らない人の最低時給は$7.25ということですが、州によってはそれよりも高い金額を最低時給として定めている州も多々ある状況です。
(例えばですが、アリゾナ州の最低時給は、$10.50、フロリダ州は$8.25、カリフォルニア州は$11.00…)
そして一方、連邦政府が定めるチップを受け取る仕事をする人への最低時給は、なんと$2.13でした。
50年以上もの間変わっていないというは驚きです。。。
下記の図は、アメリカにおけるチップを受け取る仕事をしている人への最低時給に関する図になっています。
- グレー色:チップを受け取る仕事をしている人も、チップを受け取らない人と同等に最低時給を雇用主が支払っている州
- 緑色:チップを受け取る仕事をしている人に対して、雇用主が連邦政府の設定している最低時給よりも高い時給を支払っている州
- 青色:チップを受け取る仕事をしている人に対して、雇用主が連邦政府の設定している最低時給を支払っている州
また、法律的に改定された部分としては、チップを受け取る仕事をしている人の給与(最低時給+チップ)が連邦政府の定めた$7.25に満たない場合、雇用主は従業員の給与(最低時給+チップ)に加え、その給与と時給$7.25の差額を支払わなければならないというものです。
つまり、チップを受け取る仕事をしている人も、最低保障時給として$7.25の時給が保障されるという状況です。
州によって最低時給も異なっており、政府が設定している最低保障時給である$7.25を大幅に上回る時給を雇用主が支払わなければならない州もあります。
例えばアリゾナ州では、チップを受け取る仕事をしている人の最低時給は$7.50ですが、最低保障時給は、$10.50となっています。
つまり従業員は、時給として$7.50を受け取り、チップ収入が全くない場合は、雇用主から差額$3.00をプラスで受け取るということになります。
チップの意味合いの移り変わり
昔のように、チップを受け取る仕事をしている人がチップを貰える・貰えないに関わらず、時給$2.13だけしか雇用主から貰えない場合は、それで生活をすることは完全に無理なので、チップは必須だと考えますが、最低時給が保障されている今はどうなんでしょう。。
雇用主からすると、チップが支払われないと従業員に対して差額を補填しなければならないので、チップを支払ってもらうことは必須だと思っていると考えます。
しかし一方で、従業員の立場から見ると、チップをより多く貰えれば貰えるほどお金が入るのでチップは欲しいものだと思いますが、最低時給は保障されているので、万が一チップが無くてもベースの時給はカバーされるので、チップは必須ではない状況だと言えます。
本来あるべき姿
本来あるべき姿としては、法律で決まった金額だからということではなく、やはり雇用主は従業員に対して相応の時給を支払うことが本来あるべき姿なのではないかと思います。
つまりチップの意味合いが、お金持ちの自慢から、従業員の生活を支えるためのものへ変化し、今や雇用主の損失を補うためのものになっているとも言えると思います。
また、その相応の時給を支払えるようになる為に、雇用主はどのようなサービスを提供するかを考え、従業員とともにお客様から必要なお金を支払ってもらえるようにするという姿勢が必要で、雇用主がそのような努力をせずに、本来雇用主が担う責任を客先に丸投げするというやり方はやはり間違っているように思います。
確かに、チップは従業員に対するインセンティブのような位置づけのものでもあり、チップが多ければ従業員は時給以上にお金を貰えるという側面はありますが、この部分に関しては、あくまでも雇用主と従業員の間の取り決めであるべきでもので、雇用主と従業員が一緒になって同じ目標に進むために設定することによって、本当の意味のあるものになるように思います。
チップを払う必要性について
さて、チップの意味合いが雇用主の損失を補うためのものと考えた場合、本当にチップを払う必要があるのかといわれると、非常に微妙な感じがします。
恐らく雇用主は、時給の補填が発生する可能性を考えて値段設定をしており、その補填額を考慮した請求額に加えてチップを支払うことは、客側の立場で考えると本来払う必要のない金額を上乗せして支払うという形になっているのではないかと思います。
このような状況下では、チップというものは本来は必要のないものなのかも知れません。
しかしながら現実はというと、アメリカではチップを払うということが慣習化していて、デフォルトで支払わないといけないものになっています。
なので、納得できる・できないに関わらず、チップを支払う必要はあるのというのが現実です。
チップは、税金(Tax)を加える前の金額に対して計算をするもので、おおよそ請求金額15%のチップを支払うというのが最低額で、サービスが良かったりした場合には20%を支払えば問題ない範囲です。
余計ないざこざや面倒を避けるということを考え、取りあえずチップは払うようにした方が良いかと思います。
最後に
今回、日本にはないチップという慣習について書いてきましたが、やはりチップという習慣はいびつなものだという思いが強くなりました。
もしかすると、このチップという慣習を変えさせられるような方法を見つけられればいいのですが。。。もしかすると、新しいビジネスになるかも。。。
追記:サービスチャージについて
アメリカでは、チップとサービスチャージというものがあります。(”Gratuity”と記載されてたりします。 )
チップは、支払いを行う人が金額を決めて支払うものですが、サービスチャージは、大人数(一般的に6名以上)だったり、ホテルなどの施設でデフォルトで加えられる金額です。通常18%くらいが請求されます。
このサービスチャージは、「Mandatory Service Charge」というもので、必ず支払う必要があります。
一方で、このMandatory Service Chargeがある場合、チップを追加で支払う必要はないので、人数が多いときには、レシートをきちんと確認することをお勧めします。