第3回は源明典子(げんめい・のりこ)さん。
自動車販売会社、研修会社を経てスコラ・コンサルトでキャリアを積んできたプロセスデザイナーの一人です。
●「プロセスデザイナー」という仕事の魅力
普通の仕事では、なかなかできない経験がここにあると感じます。決まったことを繰り返すルーティンの仕事ではありません。お客様の組織の状況や条件は、それぞれに異なります。経営者やマネジメント層の人たちから、若手や新入社員の方まで、本当にいろんな役割や仕事の経験をしている人たちと出会います。
私たちプロセスデザイナーは企業の外側にいる、第三者の支援者です。お客様の組織が「もっと良くなる」ために、変化の種を探し、その種を動かすための条件をつくり、動かそうとする人を応援する仕事です。だからこそ、簡単に解決できそうにない悩みに向き合い、一緒に考えることがとても大事になります。長い期間、お客様とおつき合いするプロジェクトでは、仕事の中での深い悩みや難しい課題にも遭遇する場面がたくさんあります。その際は、お客様と一緒に相談しながら「変化や転換点」をつくっていきます。
ときには、「変化」することに対して生まれてくる抵抗もあります。その場合、状況を想定して、「どうやったら良いか?」「どう乗り越えようか?」と打ち手を考えることになります。これを楽しめるかどうか! こういった普通の仕事では、中々できない経験がこの仕事の魅力でもあります。
私たちが「その会社の当たり前」に呑み込まれ、その枠の中でどうするかと考えるのではなく、その会社の当たり前を見抜き、枠を外して考えるトレーニングも欠かせません。もちろん、正解というのはない世界なので「答えのないところを楽しむ」ことができないと苦しいかもしれません。
●「変化を起こす」仕事だからこそ、自らの働きかけが大事
実は、スコラ・コンサルト自体も、自ら変化を起こすことを大事にしている会社です。3年単位くらいで、社内の安定状態をこわす「ゆらぎ」が起こり、変わっていきます。「安定」や「着実」だけに収まらないタイプの組織運営だと感じます。
組織が変化していく、組織の中にいる人たちが変化を起こしていくには、不安定な状況が必要と考えています。こういった変化をお客様の組織でも起こしているし、社内でも起こしています。そのため、「自分で探求する」「自分で仕事を面白くする」「自分から働きかける」という動き方を持っていないと、変化をつくる会社であるスコラで働くのは難しいかもしれません。
とはいえ、「本当に困っているときに助けてくれる」のがこの会社のメンバーです。ただし、自分からSOSの旗を揚げて、伝えていかなければ、サポートももらえません!
「やりたい」「困っている」「できない」というフラグを立てると、それに対していろいろと力になって助けて協力してくれます。そういう仲間への信頼感をとても強く持っています。
●苦しい・つらいとき・・・それは「学び」のチャンス!
以前、ある会社で、経営状況が悪化してリストラが行なわれている最中に、並行して改革もしなければいけないことがありました。その状況の中で、私たちも、社内の方も、動きを起こしていこうとするしんどさ。一緒に動いてくれている社員の人がつらくなってしまう、という矛盾、やるせなさ。「救えなかった」というつらさが今もあります。
別の会社では、役員から「この改革活動はやらない」という発言がありました。実際、何が起きてそういうことになったのかも分からないまま、周囲は何事もなかったかのように矛先を収めようとしたのです。しかし、何が原因か、何が問題かを見なければ、問題解決も改善も、学びもありません。早速、事実確認をさせてもらい、振返りをしたプロセスは、お客さま側にも、私たちにもしんどさがありました。
これらに限らず、改革に関わっていくときには逃げたくなるようなことも、ときにはあります。その時に見て見ぬふりをして放置するよりは、「何かを良くしなくては、何かを変えなくてはいけない」と思います。もし、そこに蓋をしてしまったら、自分に悔いが残るし、そういう自分を嫌になってしまいます。
「自分に力がないから」と思うのではなく、「ないのだったらどうしたらいいか」を考え、社内のメンバーやお客様の力を借りながら、力を使わせてもらうことで乗り越えてきたことを実感しているからそう言えるのかもしれません。
そのためには、相談できる社内外のいろいろな先輩者だったり、視座の高い人たち、専門分野における有識者をどれくらい自分の周りに持っているか、が大事になります。そういうネットワークの力を借りて、いろいろ学ばせてもらうことで、次のチャンスにつながっていくと感じます。
●スコラ・コンサルトで働く面白さ~社内の部活「エンジニアLink」について
「日本のものづくりを元気に! 次世代の若手が仕事をもっと面白くする!」という思いで4年前に立ち上げたのが「エンジニアLink」です。これは、お客様先での仕事ではなく、スコラ・コンサルト社内のいわば「部活動」です。
そもそものはじまりは、ある企業の開発部門をお手伝いしたときに遡ります。部門の一部の社員はイキイキしているのに、大半の若い社員は職場で楽しそうに働けていなかったのです。開発という面白い仕事をしているはずのメンバーが、一日誰とも話をすることなくひとりで黙々と一日の仕事を終える状態を目の当たりにしました。支援の結果として、若手の社員たちが元気になるきっかけをつくれた、と思います。「この経験を他の会社で活かしたい、エンジニアのみなさんに恩返しをしたい」と思うようになりました。
なぜなら、その企業での支援を通して、「こういうことが私は好きなんだ!」と実感し、自分の本当にやりたいことは何かが理解できたから。試行錯誤の中で、自分の成長も促進されました。私一人ではできなかったけれど、一緒にやってくれるスコラの仲間がいたから、やれたんだと思います。
参加している若手エンジニアたちに聞いてみると、「新しいことに取り組みたいが、自分の周りにそういうフィールドがない」という理由で集まってきているようです。「いろいろな人に会える」「新しい企画をしてみたい」というエンジニアにとって、面白い機会の提供になっているのでしょう。
また、エンジニアは教えたがりなところがあり、私たちが興味をもって彼らの話を聞くことやゆるく応援していることに、心地よさがあるようにも思います。加えて、この場では会社と違って忖度しないで「心理的安心安全性」「何を言ってもいい」があると思われているのも大きいかもしれないですね。
これまでは、東京での開催でしたが、この10月、12月に「エンジニアLink In NAGOYA」を開催します。活動の詳細については、下記フェイスブックで見れるのでぜひ!
※https://www.facebook.com/engineerlink/
●未来に向けて取り組みたいこと
企業が成長するのに必要な「変化」を、常に実践できるように「チームによるイノベーションのプロセスデザイン」を仕事に組み込むことが必要ではないか、と考えています。継続的に社内の方が取り組み続けることで、仕事のしかたや成果が進化し続けることを可能にするためです。
また、日本のものづくりを大きく変化させようとするムーブメントが活性化する時期と見ていて、「日本のイノベーションってすごい!」と実感できる状態をまたつくれるのではないかとも思っています。日本発のグローバルスタンダードが、世の中に本当に役に立つものを創る。そういうことをどんどん起こしていけるよう、私たちも何かを仕掛けていきたい。そういうことを考えていると、ワクワクします。
さらに今は、組織が強い個を必要としている時代です。組織が個をコントロールするのではなく、強い個がいるところが、強い集団を創っていくように感じているんですね。そういう意味で、私たちも変わっていく必要があります。世の中が変わっていくときに、同じことをやっていても価値がありません。何を学習するのか、何を取り入れるのか、自分自身が変化していくことがより大事になる。周囲の環境も、自分自身の生活や状態も変わるから、それを含めて、何より変化を自ら楽しむことが大切だと思います。
★Tさんから見た源明さんの強み
人物的に面白い人。朗らかで、裏表がありません。言うべきことは言っても嫌みがなく、気持ちよく、受け入れられる。プロセスデザイナーとしては、事実に向き合うフラットさがある。周りの人の話を受けとめて、形にしていくのがとてもうまい。もう1つ、モノゴトや状況をドライブしていくエネルギーがある。葛藤や辛いことがあっても、「良くしたい」という思いがあって、周囲にいい刺激を与える強さがありますね。