連載「安武社長、本音聞いてもいいですか?」第16回のテーマは、「AIネイティブ世代と働くということ」です。AIがこれだけ浸透してくると、新しいものを飲み込むスピードにも世代差が出てきます。特に、これから社会に出てくる若い世代ほど、AIを使うことへの抵抗が薄いと感じます。今回は組織の中で世代を超えてどんな変化が起きているのかを聞きました。
ーそもそも、「AIネイティブ世代」を意識するようになったのは、いつ頃からですか?
今年に入ってからですね。社内向けのAI研修を作っていく中で、意識するようになりました。その時は60本くらい教材を作ったんですが、教える対象によって反応がまるで違ったんですよね。入社して数年のメンバーは、レポートみたいな作業をAIに任せることに、ためらいがない人が多くて。ああ、この世代の感覚はもう自分たちとは違うんだなと感じました。「AIネイティブ世代」という言葉自体は最近よく聞くようになりましたけど、現場で感じていたのはそれより前からだった気がしています。
ー具体的に、どんな場面でその世代の違いを感じますか?
一番わかりやすいのは、AIに何を任せるかの違いです。集計とか報告書とか、いわゆる作業寄りの仕事は、若い世代ほど迷わずAIに任せます。その分、浮いた時間で「次はこうしたらどうか」という提案を早い段階から出してくる。一方でベテランのメンバーほど、そういう作業を自分の手でやることに慣れてしまっていて、そこに時間を取られがちなんですよね。結果として、若手の方が先に提案を出して、経験のあるメンバーが後から集計作業に追われている場面を、最近はよく見かけます。
別にどちらが良い悪いという話ではないんです。単純に「そこは任せていい」という発想がまだ無い世代と、最初からある世代の差なんだろうなと感じています。
ーベテラン社員からすると、ちょっと複雑な気持ちになりそうな話ですね
そうですね。そこは配慮が必要なところかもしれません。ただ、これは脅威というより、単純に作業のやり方が変わったというだけの話でもあると思うんです。ベテランメンバーが持っている現場感覚とかお客さんとの関係とか、そこはAIにはまだ代わりができません。若手が作業を任せるのが早いのと同じくらい、ベテランには積み上げてきたものがある。どっちが上とかじゃなくて、噛み合わせの問題なんですよね。実際、ベテランと若手をあえて同じチームに組ませることも増えていて、そこから生まれる化学反応は見ていて結構面白いです。
ー社内でもAI活用のレベルには差があると思いますが、どう捉えていますか?
段階はあると思っていて、自分の中では4つくらいに分けて捉えています。
ほとんど使っていない段階、一部の人がチャットで壁打ちしている段階、日報や週報みたいな定型業務に組み込まれている段階、そして最後は、情報収集から提案までAIが自律的に動いて、人はもう判断だけをすればいい段階。ざっくりこんな感じです。どの段階にいるかで見えてる景色がだいぶ違うので、まず自分たちが今どこにいるのかを知るところから始めるのがいいと思っています。
ーその中で、RITのメンバーは今どのあたりにいるんですか?
全員が最上段まで来ているわけではないです。部署やチームによってばらつきがあって、進んでいるところは定型業務がかなり自動化されていますし、そうでないところもまだ残っています。
今年、AI研修を60本作ったのも、社内のレベルを底上げしたかったからなんですよね。教えるだけじゃなくて、自分たちで使いながら形にしていくプロセス自体が、レベルを上げる一番の近道だという実感があります。
ただ、「定着させる」というのは苦労している部分です。研修をやった直後はみんな使うんですけど、しばらくすると元のやり方に戻ってしまう人もいて。頭で分かるのと、日々の習慣になるのはやっぱり別なんだなと実感しました。だから今は、研修をやりっぱなしにしないで、実際に使う場面とセットにするやり方に変えています。
ーAIネイティブ世代が入ってくることで、逆にベテラン社員が学ぶこともありますか?
たくさんあると思います。年次に関係なく、AIの使い方が上手い人に聞きに行く、という場面が普通に増えました。前までは経験年数がそのまま頼りにされる基準だったんですけど、今は違う軸が一本増えた感じです。むしろその方が健全かもしれません。
年次とか役職じゃなくて、AIの使い方が一番うまいメンバーに、「AIエバンジェリスト」として社内に広める役割を任せています。経験の長いメンバーが彼から学んでいる場面も普通にあります。年次の壁は、役割の作り方次第で意外と簡単に越えられるんだなと思いました。
ーAIネイティブ世代の若手に伝えたいことは何ですか?
AIを使えることは、もう強みにはならないと思ってます。使えて当たり前になっていくので。大事なのは、空いた時間で何を考えるかです。作業をAIに任せた分、次に何をやるか、どう動くかを自分の頭で決められるかどうか。そこができる人は、世代に関係なく強いはずだと思います。
うちにはまだ、その両方が育っていく途中のメンバーもたくさんいます。得意なところを持ち寄って、教え合いながらやっていく。そういう形が、今のRITには合っているように思います。世代で線を引く必要は無くて、AIを使いこなしているメンバーから学べばいいし、逆に若手の感覚から学ぶベテランがいてもいい。こんな人材がどんどん増えていくと、組織としての強さの中身もたぶん変わっていくでしょう。そのためには、まず経営陣である自分たちが一番使いこなしていないといけないですね。
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