連載「安武社長、本音聞いてもいいですか?」第6回目のテーマは、「社長の仕事って何ですか?」です。みなさんは「社長」というポジションに、どんなイメージを持っていますか? 今回は、安武さんが社長に就任した理由や、RITという会社の社長だからこそ感じている、社長業の面白さや醍醐味についてお話を伺いました。
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ー創業メンバーの中で、なぜ安武さんが社長になったのでしょうか?
正直に言うと、「なんとなくの雰囲気」ですね(笑)
RITは3人で創業しましたが、1人はスポーツビジネス、もう1人はソーシャルビジネスと、それぞれやりたいことがはっきりしていました。自分自身もスタートアップに挑戦したい気持ちはありましたが、明確に「これをやりたい」というものがあったわけではなくて。その2人を見ていて、やりたいことが違う人同士を融合させたら何か面白いことができるんじゃないかと思って私から声をかけたという経緯があったからということと、あとは性格的なところも大きいですね。私は長男で、人の面倒を見るのがあまり苦じゃない。もう一方で、2人は年上ですが、自由にやりたいタイプだったので、自然と今の形になったのかなと思います。
ー世の中の社長像と、実際の社長はどれくらい違いましたか?
社長になる前は、世の中の社長ってキラキラしていて、楽しそうだなという漠然とした憧れがありました。
でも、実際にやってみると、そこまでキラキラしている感じはなかったですね。連日接待だったり、平日自由に動いている社長さんもいらっしゃいますが、少なくとも自分はそういうタイプではないですね。
ー社長という立場になって気づいた「社長業の本質」は何だと思いますか?
もともとコンサルの仕事をしていたので、仕事の本質自体は大きく変わっていません。ただ、見る範囲が変わりました。以前はお客さんや上司を見て仕事をしていましたが、今はお客さんに加えて、一緒に働くメンバーや仲間のことを見る立場になっています。
社長だからといって、未来が見えているわけではないんですよね。お客さんやメンバーとコミュニケーションを取りながら、情報を集めて、わからない中で道筋を作っていく。そして、その判断に最後は責任を持つ。それが社長の仕事の本質なんじゃないかなと思っています。
ー理想と現実のギャップはありましたか?
大きなギャップはなかったです。ただ、社長やリーダーにはいくつかタイプがあると思っています。カリスマ的にリーダーシップを発揮して「俺についてこい」というタイプもいますが、私はどちらかというと、社員の意思や思いを大事にして、サポートや調整役に回るタイプです。
その分、ビジョンを強く打ち出すことに苦手意識を感じることもありました。メンバーが30人くらいになった頃、ボトムアップでやっていく中で、コミットメントが薄く見えるフェーズがあったんだと思います。社内で「安武は社長に向いてないんじゃないか」「別の人が社長をやったほうがいいんじゃないか」という議論が出たこともありました。
でも、タイプが違っても、最終的にぶつかる悩みは同じ。やり方が違うだけで、行き着く先は一緒だなと、今は感じています。
ーRITの社長だからこそ感じる、社長業の面白さや醍醐味は?
RITは、人材が本当にバラエティに富んでいます。「これ通りにやれ」という均一な人材を取っているわけではなくて、それぞれがキラリと光る武器や思いを持っている。だから、私が想像していなかったアイデアや、新しい事業が自然と生まれやすいんです。基本的には任せることが多くて、相談を受けたときに方向修正するくらいですね。自分一人ではできないことが、どんどん形になっていく。その想像を超えてくる感じが、一番の面白さだと思います。
ー今、社長として最も時間を使っている仕事は何ですか?
昔から現場主義なので、お客さんに使っている時間が一番多いです。
営業の提案を考えたり、ディスカッションしたりする時間が全体の3割くらい。案件として実際に稼働している時間が2〜3割ですね。残りは、従業員との1on1や議論、親会社や経営企画関連の調整などです。中でも一番やりがいを感じるのは提案営業です。新しいことでお客さんに喜んでもらえる価値ある提案ができたときは、やっぱり楽しいですね。
ー最近、若手に任せた「社長レベル」の仕事にはどんなものがありますか?
最近では、育児休暇から復帰した20代後半から30代前半のメンバーが、事業部長というポジションを担っています。RITは事業部制を取っており、事業部長は一つの事業を預かる立場です。事業部の経営者として、事業全体の統括・運営を行い、戦略を考え、市場の変化に迅速に対応しながら、利益目標の達成に責任を持っています。事業部を任せるというのは、会社経営にかなり近いレベルの仕事です。だからこそ、彼には家庭も忙しい中でこの役割を引き受けてくれたことに、本当に感謝しています。
ー若手が誤解しがちな「社長の仕事」「経営の役割」とは?
「社長は自由」「キラキラしている」というイメージは、結構誤解だと思います。実際は、自由に見えて全然自由じゃない。メンバー一人ひとりのキャリアや不満に耳を傾けますし、お客さん、株主、親会社など、いろんなステークホルダーとの調整も必要です。ずっと人と向き合って調整している仕事なので、思っているほど自由ではないですね。
ー今、社長として一番の挑戦、悩んでいるテーマは何ですか?
一番の挑戦は、事業開発を続けていくことです。RITは事業を作り出すことに重きを置いているので、そこはずっとチャレンジし続けています。
悩みとしては、メンバーのケアですね。社歴や年齢によってライフスタイルのフェーズが変わると、悩みの内容も変わってきます。これには正解がないので、一人ひとりと向き合っていくしかないと思っています。
ー将来、事業を率いる側に回りたい若手へメッセージをお願いします
社長の仕事は、最終的にすべて自分で決める仕事です。良くも悪くも、全部が自己責任。でも、そのチャレンジを楽しめる人にとっては、本当に人生が豊かになる仕事だと思います。
大事なのは、ポジティブでいられることと、自分の信念を信じてやり続けられるかどうか。そして課題に対して『何とかなるだろう』と楽しみながら取り組めるマインドが必要だと思います。そういう姿勢があれば、社長業はすごく面白い仕事になるんじゃないかなと思います。