先日、ペンシル社外取締役でアメリカ在住35年になる岩瀬昌美が「アメリカ市場攻略のリアル」というテーマのもと、ウェブセミナーを開催しました。
※この記事は、ウェビナーの内容をwantedly用に改編・編集しております。
——35年アメリカのLA在住の視点で読み解く、リアルな攻略法
「アメリカは物価が高すぎる」。
そんな声を、あなたも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
「アメリカ市場攻略のリアル」をテーマにウェビナーに登壇したのは、ペンシル社外取締役であり、米国在住35年の岩瀬昌美。著書『大谷マーケティング』でも話題の視点から、アメリカ市場の“誤解”と“可能性”を語ってくれました。
家族4人で野球観戦すれば14万円。Tシャツは8,000円、ビッグマックは1,000円超。数字だけを見れば確かに衝撃的ですよね。
ですが岩瀬によると「富裕層が集まる特別な場所だけを見て、“アメリカは全部高い”と決めつけるのは間違い」である、と。
たとえば、Domino's Pizza。23ドル(約3500円)くらいで買えますし、セールなら8ドル(約1200円)台もあります。場合によっては日本より安いこともあるそうです。
「高い国」ではなく、「幅がある国」。
まずはそこから理解することが大事なんだと感じました。
実は違う?!コストコのメイン客層
アメリカと聞くと、現地の大家族が大きなカートを押しているイメージ、ありませんか?でも、Costcoのメインターゲットは、2021年のデータでは「年収12万5,000ドル(約1800万円)以上のアッパーミドル層、平均39歳のアジア系アメリカ人女性」なんだそうです。
これ、意外ですよね。
4年制大学を出てしっかり教育を受け、共働きで稼ぎ、合理的に買い物をする層。実はアジア系の方々が、かなりの購買力を持っているそうです。なのに日本企業は、「まず白人の人たちに認められないと」と思い込んでしまい、実態とズレたターゲット戦略で失敗してしまう。もし日本でアジア圏のお客様に売れている商品があるなら、アメリカ市場でも十分にチャンスがあるのです。
そう考えると、少し現実味が出てきませんか?
「全米展開」しなくてもいい
「今の自社規模でアメリカに進出しても売上に繋がるか?」これも、事前の質問で最も多かった疑問の一つです。アメリカ全土を相手にしようとすれば、膨大なマーケティング費用や人件費がかかり、尻込みしてしまうかもしれません。しかし、岩瀬が指摘するのは「カリフォルニア州」という市場の大きさです。
実は、日本の面積とカリフォルニア州の面積はほとんど同じ。しかも、GDPはすでに日本を超えている巨大市場なのです。
「カリフォルニア州だけで勝負しても、日本の売上の倍になる可能性がある」こう考えると、一気にハードルが下がります。特に、カリフォルニア州はアジア系人口の絶対数が一番多いため、まずはここだけにターゲットを絞ってピンポイントで攻めるのが、最も効率的だと言います。
巨大なアメリカ市場も、分解して捉えれば攻略法が見えてきます。また、アメリカ市場の爆発力は、日本とは桁違いです。
『LABUBU(ラブブ)』というキャラクターをご存じでしょうか。ほとんど知られていなかった存在が、わずか1か月ほどで世界的ブームに。私もついつい、ブームに乗ってキーホルダーを買ってしまいました(笑)。
※カリフォルニアの高級モール、South Coast Plazaでは、以前Sanrioのショップだった場所が、いつの間にかPop Martに変わっていたそうです。「儲かる」と見れば、すぐに動く。このスピード感も、アメリカらしさだと感じました。
「クールジャパン」は通じない?
最近よく耳にする「クールジャパン」という言葉。
実は現地ではほとんど知られていないそうです。
岩瀬は現地では「クールジャパンって何?」という印象だと言います。以前、北米最大の展示会である「コスモプロフ」に行った際の話が象徴的です。展示会では、韓国企業の勢いが圧倒的でした。
数年前は“日本ブランドのモノマネ”のようなブースが多かったのが、今はもう全然違う。「韓国No.1ビューティー」「ソウル」と堂々と掲げ、ブースの作り込みやお金の掛け方も凄まじい。一方、日本企業は存在感が薄い状況だと言います。
今頑張らないと、この圧倒的な勢いに全部押し切られてしまう。それがアメリカ市場のリアルです。
日本食ビジネスの実態
日本食も、実は商売としては日本人が勝てていないという実態があります。全米に約2万5,000軒ある日本食レストランのうち、日本人オーナーは約1割。残りのほとんどは、他国籍のオーナーが経営しています。なぜなら、「儲かるから」です。
岩瀬が隣のチャイニーズレストランのオーナーに「なぜ日本食店を始めるのか?」と聞いたところ、「チャイニーズのランチで『牛肉とブロッコリーの炒め物』を売れば5ドルだ。でも、同じ肉を使って『照り焼きビーフ』と呼べば、アメリカ人は10ドルで買うんだよ」と笑いながら答えられたそうです。
このように、日本食の持つブランド力によって、他国籍のオーナーが儲けを出しているのが現実です。
ただし最近は、「OMAKASE」が300〜400ドルでも満席で予約が取れない店がザラにあります。市場は、これまで日本食に慣れてきた現地の人たちが、次は「本物の日本の味」を求めているという、次のフェーズに進んでいるのだと感じました。
失敗の原因は「そのまま翻訳」
日本で成功したやり方を、そのままアメリカでも実行する。
これが一番危ないと岩瀬は言います。
例えば丸亀製麺。
日本ではうどんといえば“あっさり・ヘルシー”なイメージがあると思います。しかし、アメリカで一番目立つポスターは「豚骨スタイル」のこってり系。アメリカ人はうどんに天ぷらを山盛りにして食べるのが大好きだからです。
日本のこだわりを押し付けるのではなく、彼らが何を求めて行列を作っているのか。そういう「アート」の部分を読み解き、求められている価値に翻訳すること。
ここが分かれ道なんですね。
20ドル(約3000円)のスムージーが売れる世界
ロサンゼルスの高級スーパー、Erewhonでは、20ドル(約3000円)のスムージーに行列ができるそうです。おにぎり1個6ドル(約900円)でも、迷わず買う人がいます。
「高いから売れない」ではなく、「高くても価値を感じる層に届いていない」だけなのです。
アメリカは市場が分断されています。しかし、それは「狙いを定めやすい」ということでもあります。アメリカの人口のたった1%の富裕層。この40万人を捕まえるだけで、日本のGDPの半分を相手にするくらいのインパクトがあるのです。
だからこそ、狙いを定めれば大きな成果が出る可能性があります。
今、世界が集まるロサンゼルス
ロサンゼルス・オリンピックを控え、LAには世界中の富裕層、ドバイの王族のような投資家までが集まっています。「この寿司を自国でもやりたい」「このビジネスを持って帰りたい」と、ロサンゼルスが世界へのハブになりつつあります。
岩瀬が最後に言っていたのは、こんな言葉でした。
「アメリカだから無理、ではなく、どの州の、どの層に、どう届けるか。そこまで分解できれば怖くない」
巨大に見える市場も、分解していけば具体的になります。怖がるより、解像度を上げること。それが、アメリカ市場攻略の第一歩なのかもしれません。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!もっと詳しく知りたい方には、元のウェビナーも見れますので、こちらからどうぞ!
https://www.youtube.com/watch?v=h5stvkKOBqM