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社員インタビュー#9 CSS振付師の波乱万丈なキャリアとものづくりの哲学


デジタルトランスフォーメーション事業部
テクニカルグループ グループ長 中矢 雄介(なかや ゆうすけ)さん

アルバイトからスタートした北海道での社会人生活

ーオロへの入社前までの経歴について教えてください

いちばん最初は、大学卒業後に紳士服の会社でECサイト担当のアルバイトとして入社しました。その会社はスーツ専門店だったんですけど、WEBサイトのシステム構築や販売管理に携わってましたね。そう、インハウスのWEBデザイナー、と言えば聞こえは良いですが、実はフリータースタートだったんです(笑)

ーそうだったんですか!当時は北海道在住だったんですよね?

ええ、北海道に住んでました。オロに入社した当時も北海道支社勤務でしたし。
大学時代は情報系の科目を専攻していたので、漠然とプログラマー方面に就職するんだろうなとは思ってたんです。それで当時、募集枠が多かったアウトソーシング系の会社の面接をたくさん受けていたんだけど、動機がふんわりしていたから、それを見抜かれて落ちまくっちゃって(笑)
唯一内定をくださった会社もあったんだけど、全国転勤や出張が多い会社だったので辞退してしまったんですよね。

ーそれでまずはアルバイト、と。

そうですね、まずは働かないといけないなと。ただどうせバイトするなら好きなことをやろうと思って、WEBサイト制作のバイトをすることを決めたんです。WEBサイト制作は高校くらいから趣味だったので。

ー好きなことを仕事にされたんですね。

でもある日、いきなり社員全員、自社の倉庫に集められて。

ーえっ

「本日をもって我が社は倒産となります」っていきなり通達されたんです(笑)

ーえええ?!

社員さん達の怒号とか凄かったですよ。僕はアルバイトだったので、そこまで痛手ではなかったんですけど……。
結局、別会社に買収され、僕自身はそのまま同じ業務を継続してました。ただ、WEBサイト制作に携わるはずが、だんだんメルマガ配信、注文のあった商品の梱包と発送や在庫管理など、ショップ運営がメインの業務になってしまった。それで退職したんです。

今では社内外のエンジニアをリードする力を持つ中矢も、最初から順風満帆なキャリアではなかった。

ーその後はどちらに勤めたんですか?

東京に本社があるデザインオフィスですね。札幌支社に、WEBデザイナーの正社員として入社しました。
仕事内容はWEBデザイン中心で、システム開発を少し。ただその会社、経営者の兄とその弟が経営していたんですけど……。

ーはい(嫌な予感)

ある日、その二人が兄弟喧嘩で袂を分かってしまったんです。弟が管理していた札幌支社は独立して別会社に(笑)

ーそれは大変でしたね……。

しかもだんだん、仕事内容がWEBデザインよりもシステム開発が増えていきました。最終的には8~9割が開発の仕事。開発をやりたかったわけじゃなかったので、退職しました。そのあと、2008年の夏にオロ北海道支社に入社したんです。

ー紆余曲折あってオロに辿り着いたんですね。今更ですが、どうしてオロに?

前職に勤めていたときに、東京の仕事に触れる機会があったんですけど、そのときに東京のレベルの高さにすごいなって思う機会が何度もありました。それもあって、将来的に東京に行けるチャンスがある転職先を探していたんです。

でも、「東京は怖い」という気持ちもあったので(笑)
北海道にいながらも東京の仕事に触れられる、東京へ出張したりして東京の仕事に触れる機会がある会社を探していて、オロを見つけました。面接官の印象が良かったというのもありますし、業務内容もWEB制作系だったので、内定を貰ってすぐに入社を決めました。

エンジニアとしての転機は、想定外の業務へのチャレンジとFlashの衰退だった。

「実は理系じゃなかったのかも。だからプロフラマーの道には就かなかったんだと思う」という中矢。大学では情報工学を学んでいたが、学生時代から好んでいたのは「アニメーション」や「動き」だった。

ー現在の仕事内容について教えてください

メインの担当はWEBサイトやサイネージコンテンツの「動きの部分」、インタラクション、アニメーション、UXを支えるところに携わっています。あとは開発系も少し。それからチームマネジメントですね。

ー中矢さん、そもそもWEBに興味を持たれたのは何がきっかけだったんですか?

僕がそもそも「WEB面白いな」と思ったきっかけは、約20年以上前にネットサーフィンしていて目にしたGIFアニメのバナー広告だったんです。

当時はただの画像広告が多かったんですが、突然動いているものを見て衝撃を受けました(笑)それで「自分もつくりたい!」ってと思ったんですね。遊びでFlashをメインで色々作ったりしていました。

ーエンジニアのキャリアにおけるターニングポイントってありましたか?

ありますね。ひとつは、オロに入社したタイミングでFlashコンテンツ制作とコーディングをメインで携わったことです。デザインオフィスにいたこともあるから、最初はデザイン中心でやろうと思っていたんだけど、一旦フロントエンドエンジニアの領域に舵を切ることになった。
もともとFlashを使ってたから、そこでプログラミング慣れしていたし、フロントエンドエンジニアリングも面白いなとは思っていたんです。でも想定外の領域を任されるようになったことが、大きな転機になりましたね。

もうひとつは、Flashが衰退したとき。
当時のApple社のCEO、スティーブ・ジョブズがFLASHをiPhone製品でサポートしないと決定したときですね。
それによって、何かコンテンツを提案するときに急激にFlash技術を除外するようになりました。FlashをWEBで使うにはユーザー側にFlashPlayerという専用アプリのインストールを強要してたんですが、「ミドルウェアに頼らないと再生できないものはいらない」という風潮になりました。

ー中矢さんはプライベートでもFlash作品を多く作ってきたんですよね。Flashの衰退は受け入れ難いものだったのでは。

すごく嫌でしたよ。当時はそれはもう反発しました。これまで培ってきたものが無に帰す恐怖も大きかったんですけど、なにより当時はこの流れにそもそもブラウザが追いつかなかったんです。Flash技術を活かせないから、お客様から見ると制作の質が落ちたように見える。これまでFlashでできていたことが、できなくなってしまったからです。それはお客様からすれば納得がいかないですよね。「今までできていたのに、何でできないの?」って。僕自身も自分のアウトプットに納得できない、とても苦しい時期でした。代替技術としてJavaScriptスキルをイチから勉強しなおしたのが、まさにターニングポイント。

ーさまざまな背景はあると思いますが、中矢さんはどうしてFlashが衰退したのだと思いますか?

先ほどお話ししたFlashPlayerの諸問題は前提にあるとして、コンテンツ提供側もまた、見た目のインパクトだけにこだわりすぎたからじゃないかなと。ほとんどのFlashサイトは使いやすさをガン無視していて、謎のオープニングアニメーションとか、極端に個性的なUIを作り出すことがトレンドだった。僕もそういうマインドだったし。そうなると当然、ユーザーにとっては使いにくい要素が多かったんです。本来のアニメーションはUXを高めるために必要なもの。だから、ジョブズに怒られたんだと思います(笑)

つまり、アニメーションはUXチューニングなんです。メニューを開くときの動きひとつでも印象が変わりますし、使いやすさに影響します。

だから基本的に、インパクトやカッコ良さよりも、気持ちよさとか心地よさ、情報媒体としてのUXが一番大切。僕らは常にそのサイトに来る人に何を届けるかを考えないと、ユーザー置き去りのFlash時代に戻ってしまう。

ーなるほど。

あ、でもこれはというアニメーションやインタラクションは誰にも言わずサイトに仕込むんですよ。遊び心です(笑)どの案件でも遊び心は仕込ませて頂いてます。

ーお客様の反応はいかがですか?

これ面白いよね、いいね、という反応をもらえることが多いですね。
忙しさにかまけていると、仕事がつまらなくなっちゃうじゃないですか。だから自分もお客様も楽しめる仕込みは忘れません(笑)

オロのデジタルトランスフォーメーション事業部サービスサイトのアニメーションも、中矢が手掛けている。画面遷移の速さも「実際に速く表示する技術」と「速そうに見せる技術」とある。このサイトでも「速そうに見せるアニメーション」が駆使されている。

「アウトプット」で広がる世界

個人作品を作り始めたのは2017年頃から。プライベートでCSSやJavaScript作品を含むと300近くある。

ー今まで手掛けてきた作品で、個人的に印象に残っているものはありますか?

僕個人の作品なんですけど、一番印象に残ってるやつは『Paper Bird』です。それまでも作品をアップロードしてはいたんですけど、ある日突然CodePenサイトのトップに掲載されて、当時2017年の多くのエンジニアの作品群の中で、特に印象に残った作品のひとつとして取り上げて頂きました。

そしたら作品に『いいね』がたくさんついて、Twitterのフォロワーも増えた(笑)技術的にそれを超える作品は他にもたくさんあるんですけど、この作品は立体的な関節表現に初挑戦した作品です。他の作品たちにもそれぞれストーリーがありますが、この作品が今でもすごく印象に残っています。


CodePenサイト内で大きな反響を獲得した作品「Paper Bird」
CodePen運営チームによるラジオでピックアップされた際は「この作品はただの鳥じゃない。鳥をとりまくすべての環境を表している」と紹介された。海外の有名なフロントエンドエンジニアに対しても名刺代わりになるような、中矢の代表作のひとつだ。

ーエンジニアとして成長するために必要なことは何だと思いますか?

アウトプットですね。特に、仕事外のアウトプット。もちろん仕事だけでもいいんですけど、仕事は利害のベクトルが少なからずあるじゃないですか。自分なりのカッコよさを追求したいけどできないストレスとか。なので、公開・非公開はどちらでもいいので自己表現のスペースをもって、ものづくりをちゃんと好きでいて、突き詰めてやること。僕はそれが大事だと思います。

あとはほら、アウトプットして公開すると、SNSのフォロワーが増えて、友だちが増えて、人生ハッピー!ですよね。勉強会にも誘われるようになるし、人間関係の輪が広がっていく。困ったときに助け合うことができる仲間が増えるから。たまに、困ってる技術的課題をtwitterでボソッとつぶやくと、スッとヒントをくれる人もいる。あれは本当に嬉しいですよ。

ー中矢さんにとって アウトプットとは?

僕にとってのアウトプットは ❝ブレイクスルー❞ です。何かを変えたいと思ったときに、これまでやってこなかったことだからチャレンジした。それが僕の場合は個人作品のアウトプットでした。

僕がCSS作品を投稿しはじめたきっかけは、技術的に行き詰まりを感じていたというところが大きかったんです。そこで、それまでやってこなかったアウトプットを始めました。

当初は派手なアクション超大作の量産を目指してやっていたんですが、テーマが重すぎました。アウトプットのスピードが落ちてしまって、2週間で1作品くらいのペースになってしまった。なので、30分くらいで完成する小粒作品を1日1個、どんどん量産していくことにしました。毎日やることを掲げ続けていく中で、「意外とできるな」と思って続けてたら、「Paper Bird」がピックアップされました。1年間で150個くらい作りましたよ。

ーCSSの本質とはなんでしょうか

難しい質問!(笑)CSSそのものはレイアウトでしかないんですよね。
WEB制作のエンジニアリングにはマークアップとレイアウトの基礎があって、CSSはそのレイアウト側を受け持つ基礎技術でしかない。だけど見た目のコントロールだけを突き詰めて昇華すると、基本的にはトチ狂ったものができ上がる。

だから僕は、CSSの本質は「潜在能力」だと思っています。
CSSは誰にでも書けるんだけど、簡単な仕様の中でも、極めていくと少しクレイジーなゾーンに入っていく。そこを掘っていくと、「これ、CSSでできてるの?」っていう狙ったとおりの反応がもらえる作品が出来上がっていくんです。
自分で言うのもなんですけど、別にCSSじゃなくても実現できるものを、あえてCSSでやっちゃうのクレイジーなんですよ。だから作品紹介するときには「業務には一切応用できません」と必ず伝えています(笑)

ー今後やりたいこと、注力したいことは何かありますか

僕の軸はずっと変わらなくて、今後もアニメーション、動き、インタラクションのところに携わっていきたいですね。結局やりたいのはアニメーションなので、体験を引き上げるUXチューニングを追求していきます。

ー ありがとうございました!

中矢主催・オロスポンサーのCSS勉強会「Meguro CSS」ではCSSに興味のある皆さんのお越しをお待ちしています!(現在は次回開催を調整中です)
*ご連絡の際は中矢のTwitterアカウントまで

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