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今回は、マネックスグループの新規事業部としても知られる、マネックスゼロ室のインターンに参加いただいた宗田光平さんにお話を伺いました。
宗田さんは大学院で生物情報学を専攻しているそうですが、なぜ学業の分野とは遠い金融に興味を持ち始めたのでしょうか?
家庭では経済ニュースを見て育ったので物心がついた時から金融について考えることはありました。その意識が強くなったのは学部生時代にリベラルアーツ教育の一環で受講した金融関連の講義がきっかけです。金融の現場で活躍する人たちがオムニバス形式で展開する講義で、回を重ねるごとに各国の経済情勢と金融市場について考える時間が増えました。新型コロナウイルスが起きて金融市場が大きく動いていた時期だったので、生き物や細胞の研究に似て予想外の動きをするマーケットにのめり込んでいきました。
大学の講義をきっかけに実際にご自身で投資も始められたそうですね?
投資については何から始めて良いのかわからなかったのですが、成人していたのでひとまず証券口座を開設しました。色々と調べる中で米国株インデックスから始めるのが良いと紹介されていたので、ナスダックETFを試しに少額で購入しました。実際に投資を始めることによって経済ニュースを自分でも毎日見るようになり、ますます金融への興味関心が強くなりました。自分の資産が増えたり減ったりして一喜一憂することもありましたが、リスクとリターンの考えについて学び、今では分散してポートフォリオを組んでいます。
金融関連の募集が数多くある中で、なぜ今回のインターンシップに参加することを決めましたか?
最初は株式や債券といった伝統的な金融をテーマに、専門家と働きながらデータサイエンスの学びができる環境を探していました。その過程で暗号資産のデータ分析をテーマにした今回のインターンシップに出会いました。暗号資産については怪しいイメージがありましたが、米国の機関投資家や企業がビットコインを購入しているというニュースを見ていたので、金融市場として無視できないものという認識はありました。暗号資産のバリュエーションと聞いて難しそうにも思いましたが、未だ誰も解いたことのない問題に魅力を感じて参加を決めました。
どのような業務を担当していますか?
まず暗号資産の価格評価分析に関する論文や、暗号資産に応用できそうな伝統的金融資産で用いられているモデルに関する論文を調査しました。論文を一つ読むだけでも暗号資産や金融に関するわからない用語がたくさん出てくるので、論文を読み解く中で前提知識をインプットしつつ、既存のモデルを参考にしながら独自の仮説を立てて検証を行いました。
仮説検証にあたっては暗号資産関連のどのデータをどこから取得できるのかについて調べることから始めました。その上で最適なデータプロバイダを選定し、APIなどを利用して欲しいデータを取得しました。分析手法は元となる論文やレポートを参照し、不明確なものについてはオープンソースで公開されている計算モデルなどを応用できないか検討しました。
こうした仮説検証プロセスで得られた結果をレポートの形にまとめて公開しました。レポートを書き上げる際には、金融機関が出しているレポートなどを参考にしつつ、ゼロ室の方や金融アナリストの方にもアドバイスをいただきました。
今回のインターンシップでは「暗号資産のバリュエーション」という難題がテーマでしたが、苦労したこと、やりがいを感じたことなどを教えてください。
最初の論文調査では、ただでさえ知識が不足している分野の文献を英語で読むことが大変でした。データ分析に関しても、暗号資産はまだ歴史が浅いため、十分なデータが取得できないという問題がありました。調べを進める中で、既存のコモディティに関するモデルをビットコインに当てはめられないかという仮説が思い浮かんだのですが、ビットコインの先物市場が未成熟のために断念したこともありました。
一方で、日本の金融機関として暗号資産市場の分析レポートを対外的に発信できたことは良い経験になりました。国内で暗号資産に関するデータ分析や独自指標開発に取り組んでいる金融機関はほとんどないため、海外で見られている情報をアレンジして日本に届けるだけでも有益なコンテンツになります。ありがたいことに私が担当したレポートは金融業界誌「週刊金融財政事情」にも掲載されました。
宗田さんにはweb3チームも兼務してもらいました。投資的な観点で見る暗号資産と事業的な観点で見る暗号資産で違いはありますか?
私自身、暗号資産を投資するものとしてしか見ていませんでしたが、web3やメタバースの文脈で暗号資産の技術がどのように活用されるのかを調べることで、それが将来的には私たちの生活で使われるものになる可能性について学ぶことができました。
このことは暗号資産のバリュエーション研究に取り組む上でも役立ちました。今はまだ暗号資産の投機的な面ばかりが注目されていますが、暗号資産の実需での利用が広がることで適正価格の評価もしやすくなると思います。
※レポートを読んでくれた外部の方と意見交換することもありました
今回のインターンを通して、宗田さんが考える暗号資産の未来について教えてください。
1年足らずのインターンでしたが、その間にはテラショックやFTXショックといった大きな事件が暗号資産市場で起こり、改めて暗号資産の危うさに触れました。一方で、海外の大手金融機関が市場に参入したり、商品が組成されたりする流れを見て、暗号資産が金融市場におけるアセットクラスの一つとして認知されつつあることも感じました。
今後は米国を中心に暗号資産規制が整備される中で、世界的にも色々なプレイヤーが参入しやすい市場に発展していくと思います。規制が進む日本でも機関投資家らがファンドやETFなどの形で間接的に暗号資産投資を始める日はそう遠くないと予想しています。
暗号資産のバリュエーションについては、ビットコインとイーサリアムに限ればすでに割安割高を判断できる環境ができつつあります。ブロックチェーン上のデータを活用した暗号資産ならではの指標もあり、歴史的なデータが揃うことでモデリングの研究も進むでしょう。
マネックスゼロ室はどのような環境、雰囲気ですか?
自分のやる気次第で興味のあることは何でもできる環境が整っています。その分、自分で意欲的に考えて作業に取り組む必要がありますが、ゼロ室での活動を通じて自分が設定した目標に向かって自走する力が身に付きました。週次の定例会ではメンバー同士で相談できる機会があります。またslack上では、日々のニュースなどが情報交換されていたり、その内容や作業についてわからないことをいつでも相談することができます。
また私がweb3チームを兼務したこともそうですが、イベントに参加したいとか、マネックス証券やコインチェックの人と話してみたいとか、自分のやりたいことを伝えることで色々な経験ができる環境です。
今回のインターンシップでは同年代の仲間も一緒に参加していました。刺激を受けたことはありますか?
学校に通っているとどうしても同じような人ばかりが集まってしまいますが、今回のインターンでは本当にバラエティに富んだ人たちと関わりを持つことができました。アメリカの大学に通いながらシリコンバレーを夢見ている人や、Kaggleコンペでデータ分析に励んでいる人、ドイツ留学しながらデジタル通貨に強い関心を寄せる人など、周りにはいない優秀な同年代と一緒に話しながら、暗号資産について学び、自身のキャリアについても考える良いきっかけとなりました。
今回のインターンシップで得た経験を今後どのように活かしていきたいですか?宗田さんの夢もお聞かせください。
暗号資産のバリュエーションモデルに関するリサーチをレポートとして一つ形にできたことは自信に繋がりました。最初は難しく思える仕事でも自分で試行錯誤しながら取り組むことでやり切ることができるということを学びました。また暗号資産やweb3の世界は移り変わりがあまりに速いので、毎日の情報をキャッチアップすることに必死でした。そのような先端領域で業務する上での思考力を養うこともできました。
何より、今回のインターンを通じて、暗号資産は投資対象としてそこまでリスクが大きいばかりではないことに気づけたので、今後は自分でもポートフォリオの一部に暗号資産を組み入れたいと思います(笑)
これからインターンシップへの参加を検討している人に一言お願いします。
正直なところ暗号資産のバリュエーション研究は簡単ではありませんが、金融があまり詳しくなくてデータ分析が好きな人も、データ分析が得意じゃなくて金融が好きな人も、暗号資産で何かやってみたいという人はぜひチャレンジしてください。苦手なことがあってもゼロ室には色々な特技を持ったメンバーがいてサポートしてくれます。このインターンから暗号資産の価格評価モデルの考案者が生まれることを私自身、楽しみにしています。