今回から数回に渡り、2024年3月に新設された『Human-centric AI Lab』を紹介していきます!
第一弾は専門家であり部署の室長でもある木村さんに、当『Human-centric AI Lab』について紹介をして頂きましょう。
インタビュアー(以下Q):早速ですが、木村さんインタビューよろしくお願いします。
木村:田中さん、よろしくお願いします。
Q : 新設された『Human-centric AI Lab』はどのような部署ですか?
木村 : AIの中でも注目を集めている生成AIという技術を活用して、社会に貢献することを目指す部署になります。
Q : なるほど。AIはこれからどのように社会に浸透していくのでしょうか?
木村 : すごいことになります(なってます)。皆さんはパソコンやインターネットを当然のものとして使っていますよね。それが存在していなかった時代など想像できないから「昔の人はパソコンも使わずにどうやって仕事をしてたんだろう?」とか「資料とかどうやって探してたんだろう?」と疑問に思うのではないでしょうか。これと同じように、数年後には生成AIが「なくてはならない存在」になる時代がやってくると考えています。
Q : なるほど、それは凄いですね。それでは「Human-centric」というのはどういう意味ですか?
木村 : こちらには「技術とは人間の役に立ってこそ」というメッセージを込めました。生成AIも、私たちの生活や社会を豊かにするために活かされるべきだと考えています。
Q:今回設立された新部署は、どのような経緯で始まったのでしょうか?
木村 : 初めに弊社の業務内容を簡単に紹介させて下さい。弊社の主な業務はITインフラ事業になります。社長は以前から、これまでとは違う新機軸の事業を立ち上げたいと数年に渡り考えていたそうです。そこに、脳研究をしていた私が入社したことで新しい部署の立ち上げが始まりました。
Q:最近は生成AIが話題になっていますよね。2024年のノーベル賞にもAI関連の研究が選ばれたとニュースで見たように思います。
木村 : そうなんです。2023年は生成AI元年と言われ話題になりました。2024年にはAI関連の研究がノーベル賞を二つも受賞(物理学賞と化学賞)しています。ChatGPTなども登場し、日常的にAIを利用する場面が増えていますよね。
Q:私も記事の編集にChatGPTを使っています(笑)。
木村 : そこで弊社では、生成AI事業への参入を決断し『Human-centric AI Lab』を設立しました。これからは、AIを使いこなせる人材がますます必要になると考えています。
Q:AI事業としては、どのような方向を目指すのでしょうか?
木村 : 「最新の研究開発を行います!」と言いたいところですが、そこまでのリソースは持っておらず、弊社が新規参入できる事業には何があるか試行錯誤した結果、教育事業から始めることにしました。
Q:具体的にはどのような内容でしょうか?
木村 : 既存の関連企業の皆さまは、生成AIを利用して業務改善を目指されているのではないかと思います。この方向性は多くの社員の定型業務の効率化につながることもあり、明らかな勝ち筋であるように思えます。しかしながら弊社では、汎用性のあるコンテンツを利用できる社員を育てるのではなく、会社独自のオリジナルコンテンツを作成できるようなコア人材(高度AI人材)の育成事業から始めるのがいいのではないかと考えました。
Q:なるほど。目の前にある業務の効率化ではなく、未来への人材育成ということですね。
木村 : その通りです。育成事業を通して生成AI業界での地位を確立し、そこから生成AIを利用した開発事業にも取り組んでいこうと考えております。
Q:なるほど。しかし教育事業というのは具体的な目標がないとなかなか難しいのではないでしょうか?
木村 : おっしゃる通りです。この高度AI人材の育成にふさわしいのが後述するE資格だと考え、E資格取得に向けたスクーリング事業を始めることにしました。
Q:主な事業がITインフラだと伺いましたが、どうして新たにAI分野に進出する決断を行ったのでしょうか?すでに説明頂いた内容と重複するかもしれませんが改めてお願いします。
木村 : 社長はAIを軸にした事業計画を数年前から考えていたそうなのですが、適切な人材がいなかったため実現できなかったと聞いています。後発にはなりますが、これからさらに進化していくであろうAI業界には、私たちが新たに挑戦できる余地がまだまだあると感じています。
Q:AIを活用するエンジニアというのは、具体的にどのような仕事を行うのでしょうか?また、これまでのエンジニアとはどう違うのでしょうか?
木村 : エンジニアといえば一般的に、フロントエンドエンジニア(いわゆるWeb系エンジニア)かバックエンドエンジニア(こちらはインフラ系エンジニア)をさしていると思います。ここに新しく「AIエンジニア」が加わるのではないかと私たちは考えています。とはいえ、まだ「AIエンジニア」としての役割が明確に定義されているわけではないんですよね。
Q:たしかに「AIエンジニア」と言われても、「Webページをつくれます!」と比較すると、イメージがわきづらいですね。
木村 : 「AIエンジニア」という言葉が指す範囲は様々です。例えば、ChatGPTなどを上手く活用するスキルを持つ人を指す場合もあれば、大規模言語モデル(いわゆるLLM)そのものを開発できる人を指すこともあります。まだまだ発展途上の分野だからこそ、私たちにとって挑戦しがいがあり、そこに大きなチャンスがあると感じています。
Q:これまでAIと生成AIを混在してしまいましたが、改めて何が違うのか説明してもらえませんか?
木村:AIは「Artificial Intelligence(人工知能)」の略称で、人間の知能を人工的に模倣するということを目指す技術の総称になります。具体的には、将棋を指すAIから産業用ロボットまで様々な分野が含まれています。その最終形態は”ドラえもん”をつくること、と言ってもいいかもしれません。
Q:ドラえもん!私も欲しいです。でも可能なんでしょうか?
木村:残念ながら今は無理です。産業ロボットとドラえもんには大きな壁があります。その壁を壊してくれるかもしれないと期待されているのが、AIの中でも生成AIと呼ばれる分野になります。生成AIというのはAIの中の一つの研究領域で、言われたことをする機械ではなく、言われていないことができる機械を目指す分野になります。新しいことを”生成する”という意味をこめて、生成AIと呼ばれるようになりました。生成AIは人間の脳を拡張しようとする試みといえるのかもしれません。
ドラえもんはまだですが、この技術の成果は、自動翻訳、文書や画像生成アプリとして皆さんのスマホの中に取り込まれています。最近では家電製品や車の自動運転などにも利用されるようになってきています。
Q:次に、教育事業について伺っていこうと思います。
「E資格取得に向けたスクーリング事業」を始めるということでしたが、「スクーリング事業」というのは具体的にはどの様な内容になるのでしょうか?
木村 : 「スクーリング事業」というのは、ひらたくいうと”学校”に行くということです。中学生や高校生が学校に行って勉強を教わるように、受講者の皆さまが、私たちの講義を受けにくるという形式を想定しております。もちろん、企業様からの依頼など人数が多くなる場合には私どものほうから出向き講義・講演を行うということも可能です。
Q:わざわざ授業を受けに行くのは面倒くさいと思うのですが・・?
木村 : そうですね。お気持ちは分かります。大人になってからの勉強というのは、自分で本を読んだり動画を見たりして学ぶスタイルが主流ですからね。
Q:実際、先生に教えてもらえるのは高校(もしくは大学)までで、その後は自分で学ぶしかないと考えている人も多いと思っていたのですが、それは正しくないということでしょうか?
木村 : そういう訳ではありません。最終的には自走できなければダメですから。ちなみに、田中さん(インタビュアー)は、自分で何かを勉強しているときに理解できないことがあったらどうしてますか?
Q:googleで調べたり・・もちろんChatGPTなども使います!
木村 : 田中さんは質問するチャネルを複数持っており、とても素晴らしいと思います。では、きちんと解決できてますか?そして、自分が理解できたかどうかをどうやって判定していますか?
Q:たしかに・・・いいたいことは分かってきました。
木村 : 大人になると、分からないことを質問できる相手がいない・・という状況は比較的多いのではないでしょうか?たいていの場合、聞く人もいないから、知らないままでもいいやと忘れていくように思います。脳は不安をためるのが嫌いなので、わかっていなくてもわかったことにすることが得意なんです。
Q:いわれてみるとそうかもしれません。伸び悩んでいるときに必要なのは、山岳ガイドのような人なのかもしれませんね。自分の勉強法が正しいのか不安に感じるときは確かにあります。
木村 : 田中さんの後輩や部下は「分かったつもり・知ってるつもり」になってたりしませんか?
Q:そうですね。自分の部下に「〇〇さん、これ分かりましたか?」と聞くと、「はい、分かりました」と言われることが多いのですが、時間が経つにつれ「あれっ・・この人、伝えたことを分かっていないな・・」と思うことがよくあります。
木村 : そうなんですよ。餅は餅屋じゃないですが、その道のプロの人たちというのは尋常じゃないくらい詳しいので、身近に質問できる人がいたほうが成長すると思うんですよね。
Q:なるほど。それでスクーリングという形式なんですね。
木村 : 個人的なことなのですが、私は大学卒業後、大学院に進み博士号を取得しました。学部生の後半から大学院にかけての教育というのは先輩や教授先生などの各種スタッフの方がつきっきりで指導してくれることが多くなるんですね。この経験は私自身が持っている誤解や誤読を修正することに大きく貢献し、その後の研究活動を自走していくための強力な力になりました。
Q:確かに、専門家のフィードバックがあると自信を持って進めますね。その経験がスクーリングという形式に反映されているんですね。
木村 : そうなんです。間違いをその場で指摘してくれたり、「これはこういう意味ですよ」と教えてくれる先輩や先生がいる環境が、学びのスピードと質を高めると感じております。そこで弊社の教育事業でも、あえてスクーリング形式を取り入れることにしました。これは、単なる講義の提供にとどまらず、受講者が自分のペースで進めつつも、分からないところはすぐに質問できる環境を整えることで、学びをより深く、実践的なものにするためです。
Q:それは心強いですね。質問できる環境があると、学習へのハードルを下げられますね。
木村 : はい。自己学習だけでは不安に感じることも多いでしょうから、スクーリングの仕組みを通して「専門家に聞ける」という安心感を提供したいと思っています。
Q:最後に「E資格」について教えて下さい。聞いたこともないのですが、一体どのような資格なのでしょうか?
木村:E資格とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催するディープラーニング(深層学習)の理論的な理解と開発実装能力(いわゆるプログラムスキル)を認定する資格試験になります。この資格試験の学習を通してAI技術の基礎から応用の手前までをまるっと身につけることができます。
Q:他の資格試験と比較して、E資格にはどのような特徴があるのでしょうか?
木村:まずは難しい。次にE資格は資格試験=記憶ゲームという常識に反した野心的な特徴を二つ持っています。ひとつ目は、知識の暗記ではなく「本質の理解」が問われる点です。そしてふたつ目は、試験を受けるために特定の認定講座を修了する必要があることです。弊社もそのような講座を提供しており、受講を検討していただけると嬉しいです(こちらは今後のStoryで詳細を説明していく予定です)!
Q:なるほど。難しいということは準備にかなりの勉強量が必要なのですね。
木村:はい。JDLAのHPにも、試験だけではこれらの技術を習得しているかどうかを担保できないため、認定事業者にその業務を委託しているという記載があります。
試験範囲も膨大で、専門家といえども合格するのは容易ではないと言われております(私は余裕でしたけど・・)。
Q:具体的にはどのようなスキルが身につくのでしょうか?
木村 : E資格への合格を目指すことで、深層学習や生成AI技術に必要な知識を網羅的に習得することができます。また、Pythonのプログラム演習も含まれているため、単なる座学を超えた実践的なスキルも学ぶこともできます。
Q:しかし難しいということは、資格取得がキャリアにも有利に働くということですね。
木村:そうですね。この資格を取得することで、AIに関する知見があることを証明できますし、その難易度から転職などを考えている方にとっても大きなアピールポイントになりうると考えております。
E資格に関しては、今後のStory記事で詳細を説明していく予定です。
Q:木村さん、本日はありがとうございました。
木村:田中さん、こちらこそありがとうございました。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました!今回は、2024年3月に新たに設立された『Human-centric AI Lab』についてご紹介しました。次回は、AI Labの室長である木村さんの素顔に迫っていきたいと思います!一体、どのような人物なのか?その背景や考え方などをじっくり伺っていこうと思いますので、どうぞお楽しみに!