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【そねせん!第20回】「開き直り」の境地で51/49の意思決定し、自らの人生の主権を握る

こんにちは!ランサーズの曽根です。今週は「経営・組織」編の第5回になります。いよいよというか、ついにというか、全20回の最終回!になります。

前回の「マネジメント」に引き続き、今回最終回のテーマは「意思決定」。自分がここ1年の間でもっともつきつけられた課題のひとつが、「最後の一人になる覚悟」をもつ、ということだったのですが、まさにそんなここ1年の悩みや個人的な葛藤も含めて、今回書かせていただきました。

3月最終営業日、3月決算の方は年度末の最終営業日という、めちゃくちゃ忙しい日にはなりますが、ぜひとも最後の最後までお付き合いいただければ幸いです!



意思決定できる数には限りがある。本当に重要な問いの意思決定に時間と意識を使う

意思決定に関する個人的な体験から話を始めたいと思います。

2017年の4月、マネジメント研修を受けている中で、4週間ほど、自分自身の業務の中における意思決定の数をかぞえてみたことがあります。

内容としては、採用面接の可否からサービスロゴの選択、組織体制の決断などなど、大小さまざま。

細かいものも含めて、4週間での意思決定の数は56。そのうち、まぁ最低限の成功といえたものが43、明らかに失敗だったなと思うのが13でした。

1日あたりの意思決定機会がだいたい3つ。期間中で一番多い日で7つ。これが、多いのか少ないのかは正直わかりません。

が、ひとつ間違いなく気づいたのは、意思決定できる数には限りがあるということ。

意思決定にはそれなりのパワーと適切なマインドが必要で、いわば「精神と時の部屋」に入る必要があるわけです(わからない方も多いかもしれませんが・・・)。

あわせて、ランサーズに加わってからの2年半(※当時)における会社としての重要な意思決定の数も、四半期ベースで振り返ってみました。

その数、47。四半期平均でいうと5つ。ビジョンの変更とか、行動指針の変更とか、新規サービス立ち上げなど、会社を左右する大きな意思決定。その中でもさらにクリティカルなものは16くらい。

ぼくの記憶の鮮明さの強度もあるかもしれませんが、クリティカルな意思決定は、2017年以降どんどん増え、特にクリティカルな意思決定の数はYoYで実際に3倍くらいになっていました。

意思決定の機会が増えていくと、たいして作業をしたわけではないのに、ドッと疲れるんですよね。

良い意思決定をしたときは、それが心地よい疲れになったりもするんですけど、後味の悪い(=腹決めのできていない)意思決定をすると、なんだか鈍い疲れが残る。

個人として仕事の中で行う日々の意思決定、経営陣として経営の中で行う重要な意思決定を振り返ってみて、昨年の7月に「意思決定の7つの問い」というものをつくりました。

上記の経験がベースになったのは確かなのですが、この「7つの問い」をつくるうえで、僕がとても参考にしたのが、田坂広志さんの『意思決定の12の心得』です。

この著作の中で、田坂さんは、意思決定に必要とされるのは、以下の3つの力だとおっしゃっています。・

・「直観力」=感が鋭い(理屈だけでは答えの出ない問題に正しい答えを見出す)
・「説得力」=言葉に力がある(組織内での合意を得て、組織を動かす)
・「責任力」=腹が据わっている(意思決定に伴うリスクをとり、その結果に責任を取る)

意思決定において本当に重要なものは何なのかと問い詰めていく中で、もちろん、本質的に重要なイシューに向き合い、そこに対して仮説を立てて、必要十分な材料をそろえたうえで、「80/20の判断」でも「50/50の賭け」でもない「60/40の決断」をする、というのはたしかに大事です。

でも、それ以上に本当に重要なのは、意思決定の「あり方」なんじゃないか、と最近強く思っています。

つまり、田坂さんの言うところの、言葉に力があり(=説得力があり)、腹がすわっている(=責任力がある)ような「あり方」にどうなれるか。まさにここについて、ぼくの思うところを書いていきたいと思っています。



意思決定の「あり方」―考え抜いた先にある「開き直り」の境地で意思決定する

意思決定の「あり方」を考えるうえで、本ブログでも初期に紹介した朝倉祐介さんの『論語と算盤と私―これからの経営と悔いを残さない個人の生き方について』の中で紹介されている、サッカー日本代表の元監督で、今はFC今治のオーナーをされている岡田さんのエピソードが非常に面白いです。

1998年の第一回ワールドカップの出場がかかったジョホールバル決戦の前日、プレッシャーの極限に立たされた中で、「今もっているすべての力を出し切る。でもそれでダメだったら、もうしょうがないやん。」と思った瞬間に、怖いものがなくなったといいます。

考えて、考えて、考え抜いたあとの智恵がつきた状態の先にある洞察。無心になった状態でのある種の覚悟。「これで失敗ならOK」という、良い意味での開き直り。遺伝子に「スイッチ」が入る瞬間。「火事場のくそ力」ではないですが「正念場の直観力」のようなもの。

変化が早くて価値観が多様化して不確実なVUCAの時代において、正解なんてわからないし、全員にとっての正解なんてほぼありえない。60/40の意思決定どころか、51/49の決断ばかり。

立場によって正解は変わるし、そこにあるのは、自分にとっての正しさよりもその意思決定によって導き出される結果だと思います。だからこそ、結果に対して適切に責任をとることが意思決定者にとって重要なんだと。

でも、じゃあ「責任をとる」ってその立場を辞めることなんですか?というとそれは違うのではないかと考えています。

最近つくった「Lancers Management Way」の中でもすごく重要にしている指針のひとつが、結果責任をとるということ。

良い結果責任をとるというのは、「結果はすべて自分にある」という考え方ではなく、「失敗したらすべて自分が説明責任を果たす」というもの。

意思決定が間違っていて失敗したのだとすると、それに対して、うやむやにせずに徹底的な振り返りをして、そのうえで自らの間違いや過ちを認めて、そのうえで次は絶対成功させるための仮説をしっかり提示する。そこまでやって初めて説明責任が果たせる。

それを積み重ねた人だけが持つオーラ。「あ、この人は自ら意思決定の重みをしっていて、そこに対して結果責任をとれるな」と周囲に感じさせる空気。本当に重要な意思決定に必要な「あり方」を知っている人だけに見えてくる良いあきらめの境地。

なかなか言語化するのが難しいんですが、難しい意思決定の機会が多くなっていく中で、そういう「あり方」を磨いていきたいな、と日々思っています。



自分の意思で行動を起こすことによって人生は豊かになる。「人生の主権」を自分で握る

少し話は飛びますが、最近、人の幸せを左右するのは「自分の人生において、自ら主体的に選択ができる機会が多い」=「自分らしく生きる」ことではないかと思っています。

これ、実は科学的に証明されているらしくて、人工知能研究でも有名な日立研究所の矢野和男さんの『データの見えざる手―ウェアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』で近しいことが書かれていました。

いわく、幸せを決める要素の50%は遺伝など先天的要素で、50%は後天的要素。後天的要素のうち、お金などの環境要因は10%程度で、残りの40%は日々の行動習慣や日々の行動の選択にある、と。(※ポジティブ心理学で有名なソニア・リュボミルスキの『ハピネスの方法』が典拠)。

人は、何かの意図をもって行動をするとき、幸福感を得る。

「人生の主権」を自分で握るということが人生を豊かにする。

これに関連してもうひとつ面白いなと思ったのは、「仕事ができる人は成功するので幸せになる」のではなく、「幸せな人は仕事ができて成功する」ということ。

なぜか。それは、低い幸福感は気分をよくする活動(気晴らし・運動)につながる一方で、高い幸福感は(困難・面倒であっても)重要な活動につながるからだ、ということです。

意図をもって主体的に行動することで幸福感が高まる⇒幸せになることで重要なことに向き合える⇒重要なことに向き合うと仕事で成功する⇒仕事で成功すると、どんどんその人に意思決定の機会が増える。そういうサイクルがあるんじゃないかな、と。

個人的なことを言うと、ぼく自身最近よく考えるのは、自分の人生の中で、いつから自分自身のことについて大きな意思決定をするようになったのだろう、ということです。

振り返ると、大学に入学して、建築という自分の好きな専攻分野を選択するまで、ぼくは自分の強い意思で何かを決めたことはなかったんじゃないか、と思います。

誰かにすすめられたから、親が言っているから、世の中的にそうらしいから。

そういう理由で、「選択肢を狭めない」範囲でなんとなく自分の進む道がいつの間にかそうなっている。

第3回の「『1億総デザイン社会』の未来―モデルなき時代に、働き方をハックする」でも書かせていただいたような、(同じく多動的に見えても)「可能性を限定しない」道を選ぶ人と、「ハマって飽きる」を繰り返す人との違い。

自分の働き方を、「決めてもらう」のではなく、ハマる経験を得にいくために自ら「決める」時代。

大げさに聞こえるかもしれませんが、意思決定は人生の経験を豊かにするんじゃないかと。

来たるAIの時代=知能革命の時代において「人間にしかできないことは何か?」といったテーマが出てくる中で、「AIは知覚ができない」「AIは問いを立てることができない」「AIはクリエイティブなひらめきができない」など言われますが、もっとも根源的なのは、「AIは意思を持てない」ということかと思います。

機械は責任をとれないし、立場によって正解のかわる高度に感情的・複雑的な51/49の決断はできない。そこには、人間の根源的な存在価値があるんだと思っています。だからこそ、意思決定は人の感情を動かし、生きているという実感を与えるのではないかと。

人生を豊かにし、自らの人生の主権を握っていくうえでも、意思決定力をさらに磨いていきたいな、とあらためて思う今日この頃です。



今回のポイント

というわけで今回のまとめです。

意思決定できる数には限りがある。本当に重要な問いの意思決定に時間と意識を使う
意思決定の「あり方」―考え抜いた先にある「開き直り」の境地で意思決定する
自分の意思で行動を起こすことによって人生は豊かになる。「人生の主権」を自分で握る

自分の人生を振り返ると、すごく抽象的な表現ですが、20歳くらいまで自分の人生はモノクロだったな、と思うことがあります。「???」と思えるかもしれませんが、20歳くらいになって、はじめて自分で「建築をやる」と決めて、自分の意思を持つようになって初めて人生がカラーになった気がします。んで、自分で意思決定をするようになって、大きな失敗を重ねることによって、痛みも知って、初めてそのカラーが静止画から動画になっていく。

そもそも意思決定のための問いがたてられていない。問いはあるがそれに対して仮説が立てられていない。仮説はあるが説明できる材料やロジックがない。材料やロジックも必要十分だが意思決定する「あり方」になっていない。

意思決定のあり方においては「開き直り」が重要、と書きましたが、思い起こすと、自分の人生における大きな意思決定はいつでも最後は直感で、ほとんどオプション検討とかしてこなかったなぁ、と。それが、フランスへの海外留学だったり、小学校の同級生との結婚だったり、風呂がガラス張りのエキセントリックな住宅の購入だったり、大手企業からベンチャー企業への転職だったり。

本ブログでこれだけロジックこねくりまわしてたくさんフレームワークを紹介してきたわりに、振り返ると、想像以上に自分は直感型の人間なのかもしれません。

何はともあれ、6か月にわたって本ブログを書いてきましたが、読んでくださった皆さん、本当にお付き合いありがとうございました。書いている中で、友人から「読んだよー」とコメントをもらえるのがうれしくて、ほぼ初めてお会いする方から「いつも読んでます!」とあいさついただけたのがびっくりで。

全20回分のテーマについては、9月の時点で最初から決めていたのですが、なぜかいつもその週に書くテーマが自分の直面する課題に重ね合わされることが多くなっていました。正直、書きながら、実体験を重ね合わせて、自分自身が一番「教えて!」と心の中で叫びながら連載してきたのかもしれません。その好奇心とみなさんからの気づきがこのブログの源泉だったかな、と。学びと気づきを与えてくれたこの機会とそこからの出会いに、あらためて、感謝の気持ちをこめて。

ありがとうございました!!!


これまでのバックナンバー

【キャリア編】
第1回:キャリアを「えらぶ」のではなく「つくる」方法―キャリアの「タグ化」のすすめ
第2回:市場価値の磨き方―ステージ×役割でとらえるキャリア論
第3回(前編):1億総デザイン社会の未来―モデルなき時代に、働き方をハックする
第3回(後編):1億総デザイン社会の未来―働き方は、よりフリーに、スマートに、クリエイティブに
第4回:成長は失敗を糧に―非連続な成長は、アンラーニングと意識の変革から
第5回:「乾けない世代」と「好き嫌い経営」―働く「個人的大義」を大切にせよ


【ノウハウ編】
第6回:「ネクタイ事件」で学んだ、本当の問題解決―ポジティブ思考でいこう
第7回:「伝わる」プレゼン―聞き手が「自分ごと化」できるストーリーをつくる
第8回:ブレストはアイデアをひきだす脳内スパーク―「ブレスト筋」を鍛えよう
第9回:SMARTなゴール設定と早めのトレードオフ決断でプロマネを成功させる
第10回:知的生産性の上げ方―時間の使い方を設計し、会議をプロデュースする


【事業編】
第11回:「4次元チェス」的戦略―不確実な未来のシナリオに、骨太な仮説をそえて
第12回:『新規事業のつくり方―アセットを活用するか、リーンに立ち上げるか』
第13回:予算計画のつくり方―楽観と悲観、経営と現場を反復横跳びする
第14回:本質的なKPIをモニタリングし、計画と予測の「ギャップを埋める」
第15回:M&A、それは究極の意思決定。PMI、なんて深淵な人間ドラマ


【経営/組織編】
第16回:ユーザーに学び、社会に訴えかけ、組織を動かすミッション・ビジョン
第17回:強い言葉で行動指針をつくり、模倣困難なカルチャーづくりに投資する
第18回:安心感×成長実感でエンゲージメント・ドリブンな組織をつくる
第19回:マネジメントに必要なのは、矛盾に向き合い、乗り越えるための真摯さ
第20回:「開き直り」の境地で51/49の意思決定し、自らの人生の主権を握る


【番外・総集編】
番外編①:エン・ジャパン主催の「ワーク&プライベート・シナジー勉強会」での登壇
番外編②:ランサーズ勉強会(L-Academy)の「戦略ケーススタディ」のレポート
総集編(前半):「一億総デザイン社会」を生きるためのキャリアと仕事の考え方
総集編(後半):「VUCA時代」を勝ち抜くための事業と組織の考え方

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