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AIで、エネルギーデータから社会に貢献できる多くの価値を見出す|インフォメティス・アルゴリズム開発部・田中剛

今回は、アルゴリズム開発部のリーダー・田中剛さんに、チームのミッションについてお話を伺いました。

田中 剛(たなか つよし)
2018年入社
京都大学大学院を卒業後、ソニー株式会社に入社。画像の信号処理、次世代映像アプリケーションの研究開発に従事し、その後、VR開発ベンチャー、保育サービスの開発ベンチャーを経て2018年にインフォメティスに参画。

ミッションは、エネルギーデータに多くの価値を見出すコアAI技術の開発

――アルゴリズム開発チームのミッションを教えてください。

私たち、アルゴリズム開発チームのミッションは、エネルギーデータから抽出できる様々な情報に多くの価値を見出す、コアAI技術を開発することです。

エネルギーデータから、活動ログや家の在・不在、電気異常など、様々な情報を得ることを、当社では「エナジーインフォマティクス」と呼んでいます。

エナジーインフォマティクスによって多くの価値を生み出し、将来的に、各家庭に設置されているスマートメーターに当社の技術を導入することができれば、エネルギーデータを活用して様々な社会課題解決ができると考えています。アルゴリズム開発チームは、そのコアとなるAI技術開発を行っています。

――具体的にどのような技術なんでしょうか?

代表的なのは、どの家電が・いつ・どのくらいの電力を消費しているのかを把握することができる機器分離推定技術です。家庭の全ての電流が集まっている分電盤に当社のセンサーを付けることで、各家電の使用電力量をAIで推定できるようになります。電流には波形があって、エアコンにはエアコン、洗濯機には洗濯機の特徴があるんです。電流波形の特徴をAI分析することで、「何時に、どの家電で、何ワット使用している」ということが分かるようになります。

また、分電盤から電気異常を検出する技術も研究開発しています。家庭にある分電盤は、家じゅうの電気のハブです。そこから様々な情報を得ることで、家の中で起きている電気の異常を検出できる可能性があります。AIを用いて、こうした異常をより早い段階で検知することに価値があると考え、日々研究しています。

家電のメカニズムを知り、データ収集から関わって、大事な情報を選び抜く

――技術開発をしていくうえで、大切なのはどんなことですか?

とにかく、データをよく知ることです。機械学習は様々なことに使われていますが、たとえば画像や文章はふだん見たり使ったりするものなので比較的理解しやすいですよね。しかし電流データはふだん見ることもなく、特殊なものなので、まずはデータそのものをよく知ることが重要になります。

――毎日当たり前に使っている電気ですが、どんなものか全然考えたことがないです。

家電によって電流の波形が違うと言いましたが、もっと言うと、メカニズムによって特徴が変わります。たとえば、エアコンとこたつはどちらも暖を取るものですが、温める原理が違うので、まったく異なる波形をしています。逆を言えば、機能の異なる家電でも、メカニズムが似ていれば似たような波形になるんです。私たちの研究では、回路の仕組みや家電の使われ方などのドメイン知識が役に立つので、積極的に活用しています。

それから、電流波形は混じり合うとお互いの特徴を打ち消し合う特徴があります。絵の具の赤と黄色が混ざるとオレンジになるのと同じように、本来の特徴がつかみにくくなるんです。使えるヒントを全て使わないと推定の精度を高めるのは難しいんですが、使えるヒントを有効に使うためにも、データを良く知っておくことが大切だと思います。

――他にも大切なことはあるんでしょうか?

はい、データのハンドリングも大切なポイントです。現在、1秒に1データ取得しているんですが、1日分で8万6400、1年分で3100万以上のデータ、そしてこれを多くの家庭で集めるので膨大なデータが集まることになります。この大量のデータの中から、機器分離に重要なデータを抽出するのは、機械学習のアルゴリズムを作るうえでとても難しく、とても大切なことです。

機械学習のアルゴリズムには、分電盤のデータと各家電単体のデータを活用しています。家電のバリエーションをいかに揃えるか、いかに多くの家庭のデータを取るか、ということが大事なので、私たちアルゴリズム開発チームもデータ収集の段階から積極的に関わるようにしているんです。他のチームと連携して、少しでも精度の高いデータを集められるように協力し合っているところは、当社の強みのひとつだと思います。

技術開発の結果をすぐにプロダクトに反映できることがモチベーション

――実際、機器分離推定技術はプロダクトにどのように活用されているんでしょうか。

家電の使用状況から、離れた家族の暮らしを見守れる「遠くても安心プラン」というアプリケーションに使用されています。いつも通り家電を使っているから無事だと分かったり、今日は家電を使っていないけどどうしたんだろうと連絡を取ったりと、プライバシーを守りながらそっと見守れるサービスです。分電盤に小さなセンサーを付けるだけで、機器分離のアルゴリズムによって、家電の使用状況が推定できるようになっています。

ienowa(イエノワ)」というサービスでは、月々の電気料金がリアルタイムで分かるだけでなく、電気料金の内訳も分かります。内訳が分かることによって節電意識が芽生え、節約にもつながっています。古い家電の消費電力が高くなれば「そろそろ買い替え時かな」と判断できますし、家族構成が似ている家庭と比較して「うちは冷蔵庫の電気代が高いんだ」ということまで分かるんです。各家電の使用有無がリアルタイムで分かるので、子どもがちゃんと帰っているかどうかも、外出先から確認できます。

――いずれも家電の使用状況がわかることを活かしたサービスですね。

プロダクトやサービスがあることは、アルゴリズム開発チームとしても商品に直結する価値を提供できるというやりがいにもつながっています。自分たちの技術開発の結果をすぐプロダクトに反映できるのは、技術開発者としてのモチベーションでもありますね。

その分プレッシャーもあります。機器分離推定技術では「単にモデルを作って終わり」というわけではなく、誤検知に対して日々改善をしていかなければなりません。例えば、冬にエアコンを使っていた場合の1分の誤検知と、秋に全くエアコンを使っていないのに誤検知してしまった1分ではユーザーからすると意味が大きく違います。エアコンを使ってない日にエアコンが動いていると通知があったら少し怖いですよね。正しい結果と照らし合わせながら、より良いユーザー体験になるように日々改善しています。

目指すは社会インフラ。当社の技術で、社会に様々な価値を提供していきたい

――当社の技術は将来、世の中にどんな影響を与えられると思いますか?

もし、スマートメーターに技術を導入することができれば、数千万世帯へ機器分離推定技術や電気異常検知の価値を提供することになります。その上で、エナジーインフォマティクスで今後実現していく新しい価値をアドオンで提供していくことになり、そのインパクトは個人的にもとても楽しみです。

また、2020年末から2021年1月に問題となった電力不足の解消などにも貢献できると思っています。当社の技術を応用すれば今、どの家電が使われているかを知ることができます。その情報を使って家庭にフィードバックする、つまり、寒い時期にエアコンを止めてもらうことは難しくても洗濯機や調理家電を使用する時間を少しずらしてもらうことは可能ではないでしょうか。そのように、電気の需要が逼迫する時間をずらすことで、需給バランスをとることが可能になります。みんなが少しずつ協力し合えば、状況は大きく変えていけると思っています。

――最後に、当社のアルゴリズム開発チームは、どんな人に向いていると思いますか?

研究だけで終わらず、プロダクトとして世の中に価値を届けられる仕事なので、プロダクト志向の方は楽しめると思います。

また、当社の取り扱うNILM(Non-Intrusive Load Monitoring)の領域でも、画像認識や物体検出で使われる「U-Net」や自然言語処理で勢いのある「BERT」などに注目が集まっています。エネルギー業界未経験の機械学習エンジニアの方も、これらの技術を転用できるのではないでしょうか。

最後に、私はソフトウェアエンジニア出身ですが、データハンドリングやデータの前処理の技術、WEB開発で培った論理的な思考なども、今の業務で役立っています。AI技術について覚える必要はありますが、ソフトウェアエンジニア出身の方でも楽しめる職場だと思います。

――ありがとうございました!

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